古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
三重県の発掘現場からの帰り道、忍者のテーマパーク「忍者村」を見つけたDキッズと古代博士。時代劇でよく見る町並みの中、ペット同伴の忍者体験やヒーローショーなどを楽しむ彼らだったが、そこへシークレット恐竜・デイノニクスが現れる。
逃げるデイノニクスを追い、カラクリまみれの忍者屋敷へと足を踏み入れたDキッズだったが、案の定数々の仕掛けを前に大変な苦労を強いられてしまう。
それでも何とか脱出に成功すると、目の前ではデイノニクスを守ろうとするソーノイダと、デイノニクスを狙うイシドーラの間での戦闘が行われていた。更にDキッズとウサラパ達は、介入できないようにイシドーラの恐竜達を見張りにつけられ、身動きが取れなくなってしまう。
だが、ウサラパ達の決死の行動で生まれた隙に召喚されたテリジノとレクシィによって、イシドーラと彼の恐竜達を撤退に追い込むことができた。
そしてデイノニクス達と和解したソーノイダは彼らのカードを手に、アジ島へ逃げ帰っていったのであった…。
前編
どこかの鉄橋
「いやぁぁぁぁ! こっち来ないでぇぇぇぇ!」
とある鉄橋の上を絶叫と共に走り抜けているのは、いつものアクト団工作員の3人であった。その後ろには必死の形相をしたスピノが、そして更にその後ろには『
しかし結局逃げ切ることは叶わず、スピノは『
「いやぁぁ…こっち来ないでぇぇ…。いやいやいや…」
そんなウサラパの祈りも虚しく、スピノは彼ら3人を押し潰しながらカードへと戻っていく。そして土煙が晴れると、そこにはスピノのカードと共に、紙のようにペラペラになったウサラパ達の姿があった。
「よっしゃあ! 見たかアクト団!」
「それじゃあリュウタ。こっちは片付いたことだし早くミサさん達と合流しようか」
「おっと、そうだな! あのアベリサウルスもオレ達が保護しないと…」
そんなリュウタとオウガの会話を尻目に、ウサラパ達は風に乗ってどこかへと運ばれていったのであった…。
その後 アクト団基地「アジ島」
「はぁ〜〜〜〜〜〜…」
ソーノイダは、基地中に響き渡りそうなほどの大きなため息をついた。そんな彼の目線の先には、つい今しがた戻ってきたウサラパ達アクト団工作員の姿がある。しかも彼らの体はまだペラペラのままであった。
「…ワシはのう、お前達のことを全く評価していない訳ではないんだぞい。この前の忍者村ではお前達のお陰でワシもディーノ達も窮地を救われたことだし…ワシが恩義を感じていないかと言われるとそれは違うと断言できるぞい」
だが、と一度言葉を区切ってからソーノイダは声を張り上げた。
「だが! いくら何でも近頃のお前達は目に余るぞい! ここ数日は毎日のように恐竜が出現しておったというのに、全てあのガキンチョ共に奪われておるではないか!
お前達の出撃に使う経費とて無限に湧いてくるわけではないのだぞい!」
そんな彼の怒声に応えるかのように、3人はペラペラの状態から元の体へ戻っていく。
「だってぇ…」
「だっても明後日もなーいっ! よいかっ! お前達の返事は今から『はい』しか許可しないぞい!」
「『はい』だけ…?」
「何でまたそんな…」
「どりゃーっ!」
ノラッティ〜が質問をしようとしたものの、その瞬間彼はソーノイダに蹴り飛ばされていた。その体は部屋の壁にヒビが入るほどの叩きつけられ、小刻みに動くことしかできていない。
そしてソーノイダがすぐ横のウサラパをギロリと睨みつけると、彼女とエドは揃って姿勢を正した。
「口答えは一切許可しないぞい。分かったな?」
「「はっ、はいっ!」」
「その態度でよいのだぞい。では早速! 今すぐ恐竜を探しに行ってこい!」
「今帰ってきたばっかりなのに…」
「返事はっ!?」
「「「は…はいぃっ!!」」」
「よし! では表に出て待っておれ!」
ソーノイダの指示に従い、駆け足で部屋から出ていくウサラパ達。そんな3人を、テリジノは少し心配そうに、ディーノ達は嘲笑いながら見つめていたのだった…。
アジ島外周部
「それにしても…何で出撃するのに外へ出る必要があるのかねぇ?」
「いつもみたいにシュートへ放り込まれるもんだと思ってたザンス」
「…あれ? あそこに何か立ってるッスよ」
エドの指さした先を見ると、砂浜の一角に立て札が1つ設置されていた。早速3人はその前へ行き、書いてある文章を読み上げる。
「『この円の中で待機すること』…って書いてあるザンス」
「この円っていうと…立て札の周りに書かれてるこれのことかい?」
ウサラパが指さす先には、確かに立て札を中心として半径2メートルほどの円が描かれていた。
不審に思いながらも3人全員が円の中へと足を踏み入れた…その時だった。突如として円に沿って鉄の壁が現れ、彼らを纏めて包み込んだのだ。それは、まるで半球型のドームのような外観であった。
「「「あらーっ!?」」」
突然の出来事に3人は悲鳴を上げ、ドームの壁を叩くが一向に開く気配はない。その代わりに、壁の向こうからソーノイダの声が聞こえてきた。
「ふっふっふ…どうやら準備ができたようぞいな」
「ドクター! これはどういうことなんですの!?」
「どういうことだと? そんなの恐竜探しに行かせるためのものに決まっておるぞい」
「ここに閉じ込めることとそれに何の関係があるザンスか?」
「それはのう…こういうことぞい! ポチッとな!」
その言葉と共にソーノイダが手元のボタンを押す。するとウサラパ達を閉じ込めたドームが轟音と共にどんどん空へ上昇していく…。
なんと、ドームの下にはロケットがくっついていたのだ。
「そのロケットは燃料が切れるまで絶対に止まらんようになっておるぞい! だから燃料切れまで飛んだらそこから恐竜探しをしてくるんだぞい!」
「「「えーっ!?」」」
「手ぶらで帰ってきたら今度こそおしおきぞ〜い!」
そしてウサラパ達を乗せたロケットは、空高く飛び立っていったのであった…。
次の日 オーストラリア
ウサラパ達を乗せたロケットはなんと丸一日飛び続けた末、オーストラリア中央部の上空で燃料切れとなった。
当然安全に降下するための装備などないので、重力に従って真っ逆さまに落ちていく中、3人はどうすることもできない。
「うわぁぁぁぁ…」
「落ちるザ〜ンス!」
そしてロケットは轟音と共に地面に突き刺さった。やがて機体がゆっくりと倒れると、ひしゃげたドームと共に3人の姿が現れた。全身複雑骨折どころか即死していてもおかしくないはずだが、持ち前の頑丈さで命だけは助かったようだ。
「「ハラホロヒレハレ…」」
「もうやだ…。こんな生活…」
とは言え満身創痍なのは変わらない3人のすぐ近くには、なんとあの卵型カプセルが落ちているではないか。そしてカプセルがひとりでに開き、中のカードを排出すると、そこへ一迅の風が吹き抜けていく。カードはその風に乗って茂みに引っかかると…緑色の光と共に実体化した。
そしてその光の中から姿を現したのは、恐竜研究史の最初期にギデオン・マンテル医師によって発見・命名された鳥脚類…イグアノドンだったのである。
イグアノドンは高く嘶きを上げたのち、近くに倒れ伏している3人のもとへ歩いていく。そしてウサラパへ近寄ると、彼女の顔を舐め始めたのだ。
くすぐったかったのかウサラパが少し身じろぎをし、それからイグアノドンへと視線を向ける。そして、普段の高飛車な様子からは考えられないような柔らかな笑顔をイグアノドンに向けたのち…彼女は意識を手放したのだった。
その頃 日本国三畳市 オウガ宅
この日、リュウタとレックスは珍しくオウガの部屋へとやって来ていた。つい先程まではオウガがPCでやっている恐竜サバイバルゲームについて話していたようだが、今彼らの話題は、後から合流してきたマルムが持ってきたあるものに移っていた。
「マルム、一体何なんだ? それ」
「これ? 最近うちのペットショップで人気のペットスリング! 可愛いでしょ〜?」
それはペットスリング…ペットの犬や猫を抱っこするための袋のようなものだ…であった。マルムも気に入っているようで、わざわざパラパラとランランを入れてやって来たようである。
「へぇ〜…。その袋はペットスリングって言うんだ。正式名称があること自体知らなかったよ」
「ふーん…そんないいもんなのかぁ?」
「あんまりカッコよくないな」
「あぁ、そう…」
しかし、リュウタ達の反応は冷ややかだった。その反応を見てマルムは肩を落としたものの、気を取り直してアピールを続ける。
「で、でもね! これならパラパラやランランとどこにでも行けるし、眠っちゃっても平気なのよ?」
「俺は出先でレクシィやアメジストが疲れてたらカードに戻してあげてるけど…」
「そもそもビジュアルが微妙だよなぁ。まるでカンガルーかコアラみたいじゃん」
彼女のアピールも虚しく、ペットスリングは男子3人の心に響かなかったようだ。だがペットスリングに揺られるパラパラとランランを見つめていたガブは、突如としてマルムの前へ躍り出た。
『ガブガブ! ガァブ!』
「あら? もしかしてガブも入りたいの?」
マルムの問いに応えるように、ガブはペットスリングへと飛びついた。しかし先客のパラパラとランランから激しい抵抗を受け、あっさりと弾き出されてしまう。
それでもガブは余程羨ましかったようで、イナズマの宥めも聞かずにマルムへ必死にアピールを続けていたのだった。
「ガブも気に入ったみたいね。…リュウタもどう? 同じの欲しいでしょ?」
「いらん!」
この機を逃さずマルムがリュウタにセールスをかけるものの、当のリュウタは断りの言葉と共にそっぽを向いてしまったのだった。
その時、部屋の扉が開くとオウガの母親・蘭々美が部屋の中へと入ってきた。どうやら飲み物を持ってきたようだ。
「みんな〜、ジュース持ってきたわよ〜…あら? マルムちゃん、随分可愛いものを持ってるのね」
「おばさんもそう思う?」
「そうね。赤ちゃんを抱っこしてるみたいで…オウガが小さい頃を思い出して、何だか懐かしい気持ちになるわ」
「へぇ〜…リュウタの話は聞いたことあったけど、オウガもなのね〜…」
したり顔になったマルムはオウガへと視線を移すも、リュウタと違い彼に動じた様子はなかった。それが面白くなかったのか、マルムは更に蘭々美へ質問を続ける。
「ねぇ、おばさん。オウガが小さい頃ってどんな感じだったの?」
「フフフ、オウガはね…よその同じくらいの子達に比べると夜泣きも少なかったし、あまり手のかからない子だったんだけど…たまにぐずった時は、マルムちゃんがやっているみたいに抱き上げてあやしてあげてたの。
ここってほら、ちょうど心臓の位置でしょ? 赤ちゃんはお腹の中で育つ間、ずっとお母さんの心臓の音を聞いてるから、それで安心して泣き止んでくれるんじゃないのかしら…」
「心臓の音が…? へぇ〜…」
蘭々美の話に感心した様子でマルムが頷く。そんな彼女に対し、オウガは変わらず平静を保っている…ように見えたが、少し頬が赤くなってきていた。流石に羞恥心を隠せなくなってきているようだ。
だがその一方で、レックスはどこか沈んだ表情を浮かべている。オーエン博士に育てられ、母親の温もりを知らずに育ったと自覚している彼には少し辛い話だったのだろうか。
「あとは、そうね…。この子も昔から恐竜が好きで、どこへ行くにもティラノサウルスのぬいぐるみを持っていきたがってたのよ。それで初めて行った博物館で、どこかに置き忘れちゃった時は珍しく大泣きしてて…」
「母さん、昔話はその位にしてくれよ。それより何で封筒なんか持ってきてるのさ」
遂に耐えきれなくなったのか、オウガが椅子から立ち上がり、蘭々美が小脇に抱えている封筒を指さした。話題を変えることでこの状況を何とかしようと考えたらしい。
「あっ、そうだったわ…。はい、オウガ。さっき北海道の真布井さんのところからトウモロコシとジャガイモが届いたんだけど…それと一緒に玲葛ちゃんと丁睦くんからあなた宛に手紙が来てたのよ」
「…えっ!? それって本当!?」
封筒の宛名を聞くなり、オウガの顔が喜色満点に染まる。そして彼は蘭々美から封筒を奪い取るように受け取ると、早速開封し始めた。
「オウガのママさん。その真布井さんって誰なんですか?」
「私達一家がここへ引っ越してくる前…つまり北海道で、とても仲良くしてもらってたご家族よ。
娘さんの玲葛ちゃんがオウガと同い年で、丁睦くんはその弟。特に丁睦くんは恐竜が大好きなせいかオウガとはすぐ意気投合してね、あの頃はいつも3人で遊んでたのよ」
「へぇ〜…。オウガが北海道にいた頃の友達かぁ…。
ん? でもレクスにテイムって、なんか外国人みたいな名前なんだな…」
「それは玲葛ちゃん達の母方のお爺さんが2人の名前を考えてくれたかららしいわ。そのお爺さんは元々アメリカ人だったけど、日本人の奥さんとの結婚を機に移住してきたみたいなの。
ちなみに母方のお爺さん夫婦は牧場をやっていて、玲葛ちゃん達のご両親は農場を経営しているのよ」
「だからトウモロコシやジャガイモを送ってくれたのね!」
リュウタ達が真布井家の話で盛り上がっている中、オウガは封筒から取り出した手紙を開く。そして読み進める度に、その顔は綻んでいっていた…。
が、その和やかな雰囲気を甲高い通知音が切り裂いた。恐竜出現のアラームである。
すぐさま4人が各々のディノホルダーやディノラウザーを手に取ると、画面にはオーストラリア大陸の地図と、その中央で赤い光が点滅しているのが見えた。
「恐竜だ!」
「悪い母さん! ちょっと行ってくる! 手紙の返事は帰ってから書くからー!」
そう言い残し、Dキッズは足音荒く部屋から飛び出していく。
「あっ…気をつけるのよー!
…さて、それじゃああの子達が帰ってくるまでに、フライドポテトでも作っててあげようかしら…」
そして4人を見送った蘭々美はそう呟くと、早速キッチンへ向かったのであった…。
その後 Dラボ
「リアスさん! ウーさん! また恐竜が出たみたいなんだ!」
「ええ、こっちでも確認できたわ。今回の出現場所は、オーストラリア中央部…エアーズ・ロック、別名ウルルの付近のようね」
「グルム?」
「ウ・ル・ル!」
「大地のへそとも呼ばれている、とても大きな一枚岩のことだな。夕方や夜明けなど、時間帯に応じてとても美しく色を変えるんだぞ!」
「そして…今回は私達の次元の恐竜もこの付近に姿を現したようです。これを」
続いてDキッズがウー博士のモニターを見ると、そこでは赤い反応からエアーズ・ロックを挟んだ反対側にオレンジの反応が出ているのが見て取れた。
「まだ現地での目撃情報は得られていませんが、この反応は以前観測されたものと周波数が一致しました。
つまりこの恐竜は、以前君達が確保した…ないしは、取り逃がしたものと同種である可能性が高いということになります」
「取り逃がしたって言うと…」
「前に俺がインドで見失った、あのアパトサウルスかな…?」
「インドとオーストラリアは大洋を挟んで6000kmも離れていますから、その可能性は低いでしょう。
しかし…DPGのリストではまだ危険な獣脚類が何種か確保できていないことが示されていますから、油断はしない方がいいですね」
「…分かりました。それじゃあミサさん。今回も付いてきてもらっていいですか?」
「勿論よ。わたしもエンピロちゃんと頑張るわね」
そんな様子でDキッズが出撃前の確認をしている時、古代博士はまだオーストラリアについての説明を続けていた。
「…で、オーストラリアと言えば原始的な自然が今も広がっているし、それにカモノハシやコアラのようなここでしか見られない生物も多数生息している…。
そうだ! せっかくだから現地の生き物や風景の写真を…」
そう言いながら顔を上げた古代博士だったが、もうDキッズとミサの姿はどこにもなくなっていた。彼が1人で話し込んでいる間にさっさと出撃してしまったらしい。
「あっ…あれ?」
「皆とっくに出発しましたよ」
「やっぱし…」
その頃 オーストラリア
Dキッズが出撃した頃、歩ける位には回復した様子のウサラパ達3人は、あてもなく荒野を歩いていた。四方のどこを見渡しても広がっているのは荒涼とした大地ばかりで、街はおろか家の1軒も見えない絶望的な状況である。
「はぁ…ここはどこなのさ…」
「さぁ…オーストラリアのどこかなのは間違いないんスけど…」
「アクトホルダーも墜落のショックで壊れちゃったみたいザンス…」
「これじゃあ助けも呼べないねぇ…。まあ、連絡できたところで助けになんて来てくれないだろうけど」
そんな状況の中、次第に高くなっていく太陽から強烈な直射日光が投げかけられ、3人の体力を更に削り取っていく。
「あ〜…喉渇いたッス…」
「あぁ…水…水がどこかにないかねぇ…」
と、そこでウサラパがはたと足を止めた。何故なら彼女の足元に、オーストラリア固有の生物・エリマキトカゲがいたからである。
「あら、エリマキトカゲ。初めて見たよ」
「本当ッス。何だか懐かしいッスねぇ」
3人がまじまじと見ていると、突然エリマキトカゲが走って逃げていってしまう。そしてその後を追うようにして現れたのは、体長1〜2メートルはあろうかというオオトカゲであった。
「おっ、オオトカゲ!? 流石オーストラリア、デカいねぇ〜」
「こんなのがゴロゴロいるザンスか…」
更にそのオオトカゲを追って現れたのは、体長10メートル弱ほどの大イグアナ…もとい、イグアノドンであった。
「おや、もっと大きいのが現れたよ…。何だろうねぇ」
「流石オーストラリアザンスねぇ…」
「でもこいつらを見てたところで喉は潤わないッス…」
「あぁ…どこかに水はないのかねぇ…」
しかし、照りつける日差しの暑さと喉の渇きでそれがイグアノドンだと認識できなかったようである。そしてそのまま通り過ぎてしまう…。
「…ん?」
かに思われたが、違和感を覚えたウサラパが足を止めてイグアノドンの方へ視線を向ける。そして自分の目の前にいるものの正体に気づき、大声を上げた。
「あぁぁぁぁっ! あれぇぇぇぇっ!」
「よく見てみればあれは…!」
「イグアノドンザンス!」
一方でイグアノドンも3人の絶叫に気づいたようで、後ろを振り返る。しかしすぐに視線を前へ戻し、低く啼きながらどこかへと歩き始めた。
「あら? 何ザンしょ?」
「『こっちへ来い』って言ってるみたいッス」
「それなら…行ってみよっか」
「「ヘイヘイホー…」」
どのみち行く宛などない3人である。せっかく発見したイグアノドンを逃さないためにも、彼らは後をつけることのしたのだった…。
それから数十分後、イグアノドンに先導されて3人が辿り着いたのは…彼らが切望していた綺麗な水を湛えるオアシスであった。
「みっ…水! 水だよぉーっ!」
歓喜の叫びと共に3人は一斉にオアシスへと駆け出し、思い思いの形で念願の水を堪能し始める。
「気持ちいぃ〜!」
「ゴクッ…ゴクッ…美味いッス!」
「シュバタシュバターッ!」
そんな彼らの横で、ここまで案内してきたイグアノドンもオアシスの水で喉を潤していた。その様子を見ているうちに、ウサラパの中にある疑念が浮かび上がってくる。
それは、イグアノドンが自らの意思で自分達をここへ案内してくれたのではないか…というものだった。
「あんた…もしかしてアタシ達にここを教えてくれたのかい?」
「まっさか〜。相手は恐竜ザンスよ?」
ウサラパの推論をにべもなく否定するノラッティ〜だったが、当のイグアノドンはウサラパの頬を舐め、顔を擦り寄せている。出会って間もないというのに、彼女にかなり心を寄せているらしい。
「あははっ! くすぐったいよぉ…」
「もしかして、ウサラパ様のことをママだと間違えてるんじゃないザンスか?」
「それこそまさかだよ。こんなに見た目も違うってのに…」
そんな様子でウサラパとノラッティ〜が議論をしていると、イグアノドンは再び立ち上がり、どこかへ歩いていこうとする素振りを見せた。
「おや? 今度はどこに行くんだろうね」
「それよりウサラパ様。あいつを捕まえなくていいんスか?」
「そうザンス! せっかく見つけたんだから、カードにして回収するザンス! でないとミー達帰れないザンス!」
「そうは言ってもねぇ…。アクトホルダーは壊れちゃってるからティラノもスピノも出せないだろう?」
「そりゃあ、まあ…」
「それより、ついて行ってみようよ。あの子と一緒だと、何かいいことありそうだよ!」
ウサラパは明朗とした様子でそう口にすると、イグアノドンの方へ駆け寄っていく。彼女の姿を認めたイグアノドンも、彼女に合わせて頭を低くした。
そして彼女がイグアノドンの首に飛び乗ると、再び頭を元の位置に戻して歩みを進めた。
「はぁ〜、楽ちん楽ちん♪」
「ワーッ! ウサラパ様すごいザンス!」
「おれ達も乗りたいッス!」
そんな彼女を羨ましがったエドとノラッティ〜もイグアノドンへ駆け寄ったものの、イグアノドンは今度は上体を大きく起こして威嚇の体勢を取る。
そのため飛び乗ろうとしたエドとノラッティ〜は乗り損なったばかりか、互いに正面衝突することになってしまったのだった。
「「ぎゃっ!?」」
「あんた達にはダメだってさ。フフフ…」
そう言いながらイグアノドンに笑いかけるウサラパ。その顔は、まるで汚れを知らぬ少女のような清らかさに満ちていたのだった…。
その頃 アジ島
「…ん? 恐竜の反応ぞい」
一方アジ島では、ソーノイダもイグアノドン出現の通知を受け取っていた。
「今回は…オーストラリアぞいか。早速ウサラパ共を向かわせるとするぞい」
そして早速ウサラパ達のアクトホルダーを呼び出すものの、反応はない。向こうのアクトホルダーは壊れてしまっているので当然ではあるのだが、ソーノイダがそれを知らないこともまた当然であった。
「ぬう…これは一体どういうことぞい…」
するとそこで目の前の端末へ着信が入る。ソーノイダがすぐさま応じると、相手はノーピスであった。
『ドクター。恐竜が出現したそうですね』
「うむ、その通りぞい。それであやつらを向かわせようとしたのだが、呼び出しても反応すら返ってこんのだぞい」
『こちらでも彼らのGPSを拾えないので…恐らくアクトホルダーが故障してしまっているのでしょう。こうなった以上彼らを現地に向かわせることは不可能です。
そこで、ご提案があるのですが…』
「提案とな。何ぞい?」
『幸い彼らはアクトホルダーを1つ置いていったようなので、これから私とロトの2人でオーストラリアへ恐竜を回収しに向かおうと思うのです。そこで、出撃の許可を頂きたいのですが』
「そういえば…ロトはカスモサウルスを使いこなしていると言っておったのう。ワシが直接出向かんでも良さそうじゃし…よし! ノーピス! お前に任せるぞい」
『ありがとうございます。では、早速行ってまいります』
『お爺ちゃん、心配しないでよ。僕もカスモサウルスもあれから更に調整を重ねたからさ。今度こそ恐竜を連れ帰ってみせるよ』
「うむ、期待しておるぞい。ロトよ」
そこまで会話をしたところでノーピス側から通信が切られる。それから数分もしない内に、アジ島中に飛行機が出撃する音が響き渡った。
「おぉ、もう出撃していったぞいか。まるで前もって準備していたのかと思うくらい早いぞいな」
そう呟きながらソーノイダは大きく伸びをし、自分の研究室から退出した。行く方向を見るに、キッチンへ飲み物か何かを取りに行くらしい。
「…む? あれは…」
が、キッチンまであと少しというところで彼は足を止めた。何故なら、キッチンから顔を出して周囲を伺うロアの姿が目に入ったからである。さらにその手には、肉の入った袋を抱えている。
彼女は注意深く周囲を見渡してからキッチンを出ると、ソーノイダとは反対側…外へ繋がる廊下へと駆けていった。
(そういえば…確か前にテリジノちゃんが教えてくれたことがあったぞいな。ロアがアジ島に入れた覚えのない恐竜と交流している、と。
今まで何かと事情が積み重なって、ロアのやつに聞くことができずにいたのだが…)
そう思いを馳せながら、ソーノイダは、ロアが去っていった方向へ視線を向ける。
(今なら…この島にいるのはワシとロア、そしてタルボーンヌのやつしかおらんぞい。この機会を逃せば、次はいつになるかも分からんし…。
…よし! こっそり後をつけて、ロアに事情を聞いてみるとするぞい)
しばらく考えた後、ソーノイダはロアの後をこっそり追いかけ始めたのだった…。
今回はここまでです。
またしても更新が遅れ、皆様にご心配をおかけてしてしまったと思いますよ。まことに申し訳ありません。
実は先月身内に不幸がありまして、しばらく筆を執れない状況が続いておりました。
先日ようやく忌明けを迎えて気持ちも一区切りついたので、また投稿をしていきたいと思います。
今回少し匂わせるぐらいで登場してもらった真布井姉弟は、とある方からの提案を受けて登場させることに決めたオリキャラです。彼らのモチーフは…苗字と名前から察することができると思います。
では、また後編でお会いしましょう。
第37話の原作「恐竜!荒野の決闘!」に出演する恐竜について、皆様からのご意見を伺いたいと思います。以下の選択肢から1つを選んで回答して下さい。(選択肢3を選ばれた方は、具体的な恐竜を提案して下さると助かります)
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原作通りサウロファガナクスを出す
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アロサウルス・A(風属性)を出す
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別の超大型肉食恐竜を出す