古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回は後編となります。
まずこの場を借りて、3ヶ月近く更新ができなかったことについて深くお詫びさせていただきます。
年度末に年度始めと多忙な時期が重なったこともあり、5月の中頃から体調を崩して寝込んでしまっておりました。
しかし最近は回復傾向にありますので、これからは少しでも早く皆様に新作をお届けしてまいりたいと考えております。


後編

その頃 オーストラリアに向かったDキッズ達は…

 

「わぁ〜♡ 可愛〜い♡」

 

「ほんと!」

 

「こら! エース! アイン! そんなことしたらダメだろ!」

 

 恐竜探しもそっちのけで、オーストラリアの固有生物たちとのふれあいを楽しんでいた。マルムとリュウタは愛らしい見た目のコアラを愛でており、レックスはワラビーを追い回すエースとアインを何とか引き止めようとしている。

 

『ガブガブ…ガァブッ!』

 

「ああっ! やめろよガブ!」

 

『ガッ!?』

 

『…ゴロロ』

 

 ガブはペットスリングによく似たカンガルーの袋へ潜り込もうとしたものの、子カンガルーからの激しい抵抗にあって地面に転がされてしまった。

 そんな彼に呆れた視線を送りながらも、リュウタとイナズマは助け起こしてあげている。

 

 …そしてオウガはそんな彼らを眺めながら、ミサと並んでウォンバットを撫でてやっていた。

 

「いつまでこんなことやってるんだろ…」

 

『つくづく思い知らされるが…オマエの友人達はいささか楽天的過ぎるな』

 

『キュッ! キュ〜ッ!』

 

 その横でレクシィも呆れ顔を浮かべているが、そんな彼らとは対照的にアメジストはウォンバット達とじゃれ合いに興じており、エンピロに至ってはカモノハシと魚の取り合いをしていた。

 

「まあまあオウガ君。みんなにとっては初めてのオーストラリアなんだから、ああしてはしゃいじゃうのは仕方ないわよ」

 

「そりゃ俺だってはしゃぎたいのは山々ですけど…アクト団もいつ来るか分からないのに…」

 

 そうぼやく彼の目の前では、レックスによる有袋類の解説が始まっていた。

 

「ほら、フクロモモンガのお腹にも袋が…」

 

「ほんと!」

 

「おもしれぇー!」

 

「他の大陸では殆ど絶滅してしまった有袋類だけど、ここオーストラリアではかなりの種類が残っているんだ。動物達も独自の進化を遂げているんだね」

 

「そうみたいね…」

 

「ここまで有袋類を見れたなら、俺も一度でいいからフクロオオカミを見てみたかったな…。

…ってそれより、俺達も早く恐竜を探しに行こうよ。またアクト団に先を越されたら面倒なことになるよ」

 

「まぁまぁオウガもちょっとは落ち着けって! こんな自然豊かなところなら、すぐ恐竜も見つかるよ!」

 

「大丈夫かなぁ…」

 

 

その頃 エアーズロック近くの村

 

 イグアノドンと共に荒野を歩いていたウサラパ達は、どうやら小さな村に着いたようだった。やはりイグアノドンの巨体は村人達の興味を惹いたようで、村のあちこちから彼らの周りへと集まってくる。

 そして、1人の男がイグアノドンの背に跨るウサラパに声をかけてきた。

 

「おい! お前はそのトカゲを乗りこなせるのか?」

 

「え? いや、これはトカゲじゃなくて…」

 

 男の言葉を訂正しようにも、どう言うべきか分からずウサラパは言葉に詰まってしまう。その間にも周囲からは次々と賞賛や羨望の声が上がり、中には彼女を「トカゲ使い」と呼びだす者もいた。

 そこへ、1人の老人が歩み寄ってくる。村人達が彼のために道を開けているところを見るに、この村の長老なのだろうか。

 

「おお、そこのお方。良かったら村で休んでいきなさい」

 

「え? でも…」

 

「ささ、こっちじゃ」

 

 ウサラパの言葉も聞かずに村長は村の奥へと歩いていき、それにイグアノドンも続く。

 

「みんな。この方をおもてなしして差し上げるのだ」

 

「あ、どもー…」

 

 こうして、成り行きではあったがウサラパ達とイグアノドンは村人による歓待を受けることになったのであった…。

 

 

それから数時間後

 

「へぇ~…これがエアーズロックかぁ〜!」

 

「ウルルでしょウ・ル・ル!」

 

「でも…それにしたって大きいなぁ…。これが1枚の岩だなんて信じられないよ…」

 

 Dキッズは恐竜を探しているうちに、エアーズロックへとたどり着いていた。各々がその巨大な岩を見上げ、様々な感嘆の声を漏らしている。

 しかし、その場にはオウガとミサ、そして2人のパートナー恐竜達の姿がなかった。これはどういうことなのだろうか。

 

「それにしても…オウガとミサさん、大丈夫かしら…」

 

「動物と触れ合ってた僕達に痺れを切らしたオウガがミサさんを連れて恐竜探しに行っちゃったけど…。

流石に少し浮かれすぎたかもな…」

 

「なーに言ってんだよ! せっかく5人に恐竜が9匹もいるんだし、手分けした方がすぐ見つかるじゃん!」

 

「そういうことじゃなくてだな…」

 

 そう言いかけたレックスの言葉を遮るように、リュウタはエアーズロックの頂を指差してこんなことを言い出した。

 

「よし! せっかく来たんだし登ってみようぜ!」

 

「おい、リュウタ…」

 

「恐竜探さなくちゃいけないでしょ?」

 

「だから! 登って上から探せばいいじゃん!」

 

「…仮に登ったとして、見えるのか? それ」

 

「一応アタシのサングラスについてるカメラ機能を使えば見れなくもないかもだけど…ちょっと無理あるんじゃない?」

 

「もーっ、そんなこと言うなよ! オーストラリアには滅多に来れないんだし登らないのは損だってー!」

 

 結局2人は自身満々のリュウタに押し切られる形で、エアーズロックへ登らされることとなったのであった…。

 

 

エアーズロック 頂

 

 世界的に有名な場所ということもあり、ここには多くの観光客が集まっていた。そんな中巨大な携帯冷蔵庫を背負いながら声を張り上げている2人組がいる。

 

「水はいかがザンスか〜…?」

 

「アイスクリームに冷凍みかんもあるッスよ〜…」

 

「「はぁ…」」

 

 なんとそれはアクト団のノラッティ〜とエドだった。何故こんなことをしているのだろうか。

 大きなため息をついたのち、彼らは怒りを爆発させた。

 

「なーんでミー達がこんなことしなきゃならないザンス!」

 

「そうッスよ! こんなの理不尽ッス!」

 

「何でって…お前達のボスが言ってたんだぜ?」

 

 すると、その後ろから若い男の2人組が声をかけてくる。彼らは先程ウサラパ達を取り囲んでいた村人である。

 

「あの2人は自分の下僕だから、いくらでもこき使っていいってな」

 

「「ええーっ!?」」

 

「オレ達の村で暮らすつもりなら、働かないとダメに決まってるだろ?」

 

「ちょ、ちょっと待ってほしいザンス! ウサラパ様はあの村で暮らすって言ったんザンスか?」

 

「あぁ、勿論! にしてもあの人は凄いぜ! あんな大トカゲと心を通わすことができるんだからな…」

 

「あの人が村にいてくれれば、俺達も心強いってもんだ。…さぁ、何してるんだ。早く売ってきてくれよ」

 

 そこまで言うと、男達はその場を離れていく。取り残されたノラッティ〜とエドは、ウサラパに見捨てられた悲しさからか、はたまた自分達の惨めさを嘆いてか号泣していた。

 

「すいませーん! 水を3本くださーい!」

 

「は、はい! まいどありー! アイスクリームに冷凍みかんもいかがッスか…」

 

 とは言え、客が来たからには応対せねば稼ぐことはできない。早速入ってきた水のオーダーに応えるべく、2人が涙を拭いながらそちらへ振り向くと…。

 

「「あーっ!」」

 

「いつものおじさん達!」

 

 そこにいたのは、リュウタ達Dキッズの3人だったのである。これには双方とも驚かざるを得なかった。

 

「何でお前らがここに…」

 

「それはこっちのセリフだよ!」

 

「お前達がいるということは、この近くに恐竜が…」

 

「し、しししし知らないッス!」

 

「恐竜なんてこれっぽっちも知らないザンス〜!」

 

 そう言い残すが早いかエドとノラッティ〜は冷蔵庫を放り出し、脱兎の如く逃げ出した…下山道ではなく、何故か崖の方へ。

 

「「ズビズバ〜…」」

 

 そして当然の流れとして、2人の体は重力に従い落下していったのであった。

 本日2回目の高所からの落下であるが、どちらも痛みに悶えるだけで重傷を負った様子はないようだ。なんと頑丈な連中だろうか。

 しかも、この一見不幸に思える事態は彼らに思わぬ僥倖をもたらした。

 

ピリッ…ピリッ…ピリッ…

 

「…ん? この音って…」

 

「アクトホルダーの音ザンス! 今の衝撃で直ったみたいザンス!」

 

 なんと、それまでうんともすんとも言わなかったアクトホルダーが再起動したではないか。これで彼らは、再び恐竜を召喚できる力を手にしたのであった…。

 

 

その頃 エアーズロックを挟んで反対側

 

「オウガ君、今向こうからすごい音が聞こえた気がしたんだけど…」

 

「俺には聞こえなかったので気のせいかもしれませんが…もしかすると恐竜が発したものかもしれませんね。行ってみましょうか」

 

 こちらでは、オウガとミサがディノラウザーを片手に恐竜の捜索をしているところだった。しかし、2人の様子を見るに状況は芳しくないようだ。

 

「それにしても…アンバーが反応した地点は確かにこの辺りのはずなんですが、サーチをかけても反応1つ出てこないなんておかしいですよ」

 

「さっきの通話でもウー博士が首を傾げてたわ。どうやらわたし達が到着してから間もなく、反応が消失してしまったみたい」

 

「こんなことなんて今まで一度もなかったのに…一体何が起こってるんだ…」

 

 そんな会話を続けるオウガとミサの後ろを、彼らのパートナー恐竜達も追従していく…が、途中でレクシィだけが足を止めて鼻面を高く上げ、大きく息を吸い込む。

 そして、低く唸った。

 

 

その頃、ウサラパは何をしていたのかと言うと…。

 

「そーれ、もうちょっとー! よっしゃー!」

 

「ありがたい。これで畑が作れます」

 

「おまけにさっきは家造りのための木材まで運んでくれて…感謝してもしきれません」

 

「いーえ、お礼ならこの子に言っとくれ。フフフ…あったかいねぇイグアノちゃん…」

 

 村人達に頼まれ、イグアノドンに大岩を撤去させているところだった。それに村人の会話を聞くと、彼女達も彼女達なりのやり方で村に貢献していたようだった。

 それから村人達は早速土地を耕し始めたところで、ウサラパはイグアノドンと隣り合い、その光景を眺めることにしたようだ。

 そして誰に言うでもなく、小さく呟き始める。

 

「…恐竜があったかいなんて、今まで考えたこともなかった。ただのカード、ただの戦いの駒だとしか思ってなかったけど、この子達だって血の通う生き物なんだよね…。

ここに来なきゃそんなことなんて考えもしなかったし、いっそこのまま暮らしていくのも、案外いいかもしれないねぇ…」

 

 そう呟くウサラパの脳裏に、これまでソーノイダから受けてきた数多の理不尽な仕打ちが過る。しかしその一方で、テリジノやディーノ達を溺愛する彼の姿も思い起こしていた。

 

「少し前のドクターだったら、あんたもただのカードとして扱われてたかもしれないけど…今のドクターなら…。

ううん、どのみちこの子はドクターのお気に入りな訳じゃないからカードにされてそのままストレージ送りにされちゃうわよね…。

そうなるよりは、ここでずっと一緒に…」

 

 その時、イグアノドンが不意に空を見上げると、怯えたような声を出した。それに釣られる形でウサラパも空を仰ぎ見ると…こちらへ轟音と共に小型飛行機が近づいてくる。

 その紫のボディーカラーと、独特のロゴマーク…。

 それは自分が嫌と言うほど見慣れた、アクト団の飛行機だったのである。

 

『…ようやく見つけたぞ! 何をしているウサラパ!

早くその恐竜をカードに戻して確保しろ!』

 

「ノーピス…! で、でも…」

 

 そして機体の中からノーピスが呼びかけてくる。しかし当然ながらウサラパのアクトホルダーはまだ動かない上、そもそもウサラパにそうする気はなかった。

 彼女が返答に戸惑っている間に、飛行機が旋回してまたこちらへ戻ってくる。

 

『それとも、ドクターに歯向かうとでもいうのか?』

 

 スピーカーを通しているせいか、いつも以上に冷徹なように聞こえるノーピスの言葉に対し、ウサラパは決意を固めた様子で叫び返した。

 

「…そうだよ! アタシはここが気に入ったんだ!

毎日毎日あんな理不尽な思いをさせられてばっかりなドクターのもとへなんか、金輪際帰るもんかーっ!」

 

「「えぇーっ!? そうなんスか!?」」

 

 この宣言には、ちょうど戻ってきたエドとノラッティ〜も驚きを隠せなかった。先程村人からその意思は聞いていたものの、やはり本人の口から聞くのとはショックが違うのも当然だろう。

 そんな彼らの姿を認めたウサラパは、少し罰が悪そうにしながら彼らにも声をかける。

 

「…あんた達はどっちでもいいよ。好きにおし」

 

「ウサラパ様はああ言ってるザンスけど…どうするザンスか?」

 

「どうするって言われても…」

 

 突然のことでもあるので、エドもノラッティ〜も判断に困りかねていると、凄まじい轟音と土煙と共に飛行機が着陸してくる。そしてハッチが開くと同時にその中から飛び出てきたのは…ノーピスではなくロトだった。

 

「やぁ、いつかはこうなると思ってたけど…意外と早かったね」

 

「ろっ、ロト!?」

 

「ノーピスだけかと思ったら…あんたも来てたのかい!」

 

「でも何しに来たザンスか?」

 

 ノラッティ〜からの問いに、ロトはアクトホルダーとカスモサウルスのカードを手にして答える。

 

「何って? お前らがそのイグアノドンを捕獲したくないとかほざくから、ボクが代わりにやってあげるってことだよ!

行くぞ! アクトスラーッシュ! 轟け! カスモサウルス!」

 

グォォォォ…!!

 

 アクトホルダーがカードを読み込み、カスモサウルスが大地に降り立つ。それに対しイグアノドンがウサラパを守るように構えると、周囲が特殊なバトルフィールドに…あちこちで溶岩が煮え滾る灼熱の大地へ変化していったのだった…。

 

 

 イグアノドンvsカスモサウルスの戦いが始まった頃、リュウタ達とは分かれて捜索にあたっていたオウガとミサもそのことに気づいたようだった。

 

「オウガ君、バトルフィールドが広がっていくわ!」

 

「どこかで恐竜同士が戦い始めたみたいですね。俺達も向かいましょう!」

 

 そして2人が互いに頷き合い、駆け出そうとした時だった。ディノラウザーが甲高い通知音を響かせ始めたのである。咄嗟に2人が画面を覗き込むと、そこには消失したはずのオレンジの反応が現れているではないか。しかも、その地点はここからかなり近いようだ。

 

「くっ、さっきまで手がかりすらなかったのに…何でよりにもよって今…!」

 

「お…オウガ君! あれ!」

 

 ミサが絶叫と共に指差した先を見ると、少し離れたオアシスに巨大かつ優美なシルエットが浮かび上がる様子が目に入ってきた。

 その長い首、巨大な胴体、そして鞭のような尻尾の持ち主は…。

 

「あれは…アパトサウルスじゃないかしら? この前オウガ君が記録してきた映像とそっくりだわ」

 

「そんなバカな! ここからインドまでは2つの大洋を挟んで6000kmも離れてるんですよ! 翼竜や小さい恐竜ならともかく、あんな巨体の持ち主がここまで移動できるわけが…!」

 

「そんなこと考えてる場合じゃないわ! あのアパトサウルス、すごく気が立ってるみたいよ…!」

 

 確かにミサの言葉通り、アパトサウルスはオアシスの水面を踏み鳴らし、首や尻尾で木々をなぎ倒しながら怒声を上げていた。以前インドで見た時とは明らかに様子が違う。

 

「…そうみたいですね。あのまま放置していたら被害が拡大してしまいます。

…レクシィ、アメジスト。いける?」

 

『…勿論だ。荒ぶるあいつを放置してはおけんからな』

 

『キュッ! キュッ!』

 

「エンピロちゃんもお願いできる?」

 

『ゴルルル!』

 

 それぞれのパートナー恐竜達に確認を取ったところで、2人は彼らをカードへと戻し、ディノラウザーにスキャンした。

 

「ディノスラーッシュ!

燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!

揺るがせ! ステゴサウルス!」

 

ゴガアァァァァッ!!

 

ケエェェェェ…!!

 

「ディノスラッシュ! 湧き上がれ! スピノサウルス・エジプティアクス!」

 

グゴオォォォォッ!!

 

 赤・紫・青の光と共に3体の恐竜達が降り立ち、アパトサウルスへ向けて威嚇の咆哮を発する。それを耳にしたアパトサウルスは受けて立つとばかりにこちらへ走り寄ってきたのであった…。

 

 

一方その頃、ウサラパ達の方は…

 

 こちらの戦況はまさに一方的と言わざるを得なかった。殺気立つカスモサウルスからの猛攻を前にイグアノドンは防戦に徹せざるを得なかったのである。

 しかし遂にその均衡も崩れ、カスモサウルスがイグアノドンを突き倒す。そしてそのまま角で転がし、近くの家屋へと諸共に突っ込んだのであった。

 あの村人達が悲鳴を上げて逃げ惑う中、イグアノドンが何とか立ち上がろうとするものの、再び地面に叩き伏せられてしまう。

 そのあまりに悲痛な光景に、ウサラパは絶叫を上げた。

 

「やめろ! やめとくれ! それ以上その子を痛めつけないでおくれ!」

 

「何言ってるのさ。カードに戻さなきゃ連れて帰れないだろ? そんなことも分からないなんて…犬の方がまだ利口かもな」

 

「くっ…。アタシ達のアクトホルダーさえ使えれば…」

 

「…あっ、そうだったザンス。 ウサラパ様! さっき落とした衝撃でアクトホルダーが勝手に直ったザンスよ!」

 

 思い出したかのようなノラッティ〜の言葉にウサラパは一瞬目が点になるものの、すぐさまその顔は憤怒に染まった。

 

「えっ…? それを早く言わんかいこのスカポンターン! それならとっとと恐竜を出してイグアノちゃんを助けるんだよ!」

 

「あ、謝るザンスからそんなに怒らないでほしいザンスよ…。

アクトースラッシューッ! 燃え上がれ! ティラノサウルス!」

 

ガアァァァァッ!!

 

 叱られつつもノラッティ〜がティラノを召喚すると、すぐさまウサラパが指示を飛ばした。

 

「ティラノちゃん! イグアノちゃんをあのカスモサウルスから守るんだよ!」

 

 ティラノは一声上げてそれに応えると、カスモサウルスの横っ腹へ強烈な頭突きをお見舞いした。完全に意識外の攻撃には対応できず、カスモサウルスの体が地面を転がる。

 ウサラパ達の実質仲間割れにも等しい行動に苛立ちを抑えきれなかったのか、ロトが小さく舌打ちをする。

 

「チッ…あくまでボクに楯突く気か…。それなら纏めて片付けてやる! カスモサウルス! 『(スーパー)アクトフュージョン』!」

 

ゴォォグォォォォッ!!

 

 すぐさまロトが超アクトフュージョンを発動し、カスモサウルスを超アクト恐竜へと変貌させる。その上で彼は1枚の技カードを取り出し、アクトホルダーに通した。

 

「さぁて…それじゃあ本気でも出そうか! 『電圧充填(マックスボルテージ)』!」

 

 技カードが読み込まれ、カスモサウルスの体を黄色の光と紫電が包み込む。するとにわかに空が曇り始め、生じた雷雲から極太の雷がカスモサウルスへと落ちたのだ。その雷はゆっくりとカスモサウルスの体全体へと行き渡り、活力を漲らせていく…。

 

「これがノーピスがボクのために開発してくれた『電圧充填(マックスボルテージ)』さ。巨大な雷を降らせてエネルギーを吸収し、これから繰り出す超技の威力を飛躍的に高める…。

超アクト恐竜の利点である属性強化をこれでもかというほど活かせる、理論上は最高相性のカードだよ!」

 

 ロトの説明が終わったところで、カスモサウルスはその血走った目をイグアノドンへ向け、突進の予備動作のように右前脚で大地を蹴る。

 

「よし、行け! カスモサウルス!」

 

 ロトの掛け声と共にカスモサウルスは稲妻のような速さでイグアノドンへと突進していく。

 

「てぃ、ティラノちゃん! イグアノドンのカバーに回るザンス!」

 

 ノラッティ〜の叫びに応じ、ティラノはイグアノドンの前へ立つと頭を低くして攻撃姿勢を取る。

 だが、それは無駄なことだとすぐに知ることになるのだった。

 

「邪魔をっ、するなぁぁっ! 『閃光落雷(ブリッツカウンター)』!」

 

 ロトが再び技カードをアクトホルダーに通すと、カスモサウルスは走りながら雄叫びを上げる。すると天から一筋の雷が落ち、ティラノの体を打ち据えたのである。強烈な電撃を受けてティラノは倒れ、カードへと戻ってしまう。本来牽制のための技であるはずが、超アクト化と『電圧充填(マックスボルテージ)』の影響で絶大な威力になっていたようだ。

 そしてカスモサウルスはそんなティラノのカードを踏み散らし、まっすぐにイグアノドンへと迫る。

 

「これでトドメだ! 『瞬雷千烈(ガトリングスパーク)』!」

 

 立て続けにロトは技カードを発動し、カスモサウルスは全身に電撃を滾らせる。そのままの勢いでイグアノドンを薙ぎ払うと、その土手っ腹に電撃を纏った百裂拳…ならぬ千烈突きを繰り出した。

 次々に襲いかかる強烈な連撃に、イグアノドンは悲鳴すら上げることを許されない。そしてがくりと膝をついたイグアノドンに、カスモサウルスがトドメの一撃を加えようと大きく勢いをつける…。

 

「もう…もうたくさんだよ! やめとくれーっ!」

 

 我慢の限界に達したウサラパがイグアノドンへ走り寄り、彼を庇うようにして立ったのである。

 

「なっ…!」

 

「ウサラパ様!」

 

「危ないザンスー!」

 

 しかし、勢いまでつけたカスモサウルスは最早止まらない。そのまま鋭い角がウサラパの体を貫こうとした…その時だった。

 

 カスモサウルスの体を、2体の恐竜が突き飛ばしたのである。

 

 

その頃 オウガ達の戦線

 

 オウガとミサもまた、苦しい戦いを強いられていた。アパトサウルスが周囲を気にせず暴れ回るせいでアメジストは勿論、強力な獣脚類のレクシィとエンピロですら迂闊に近寄れない状況になっていたのである。鞭のように音速で振るわれる尻尾の攻撃を何とか避けながら、レクシィがオウガに話しかけてくる。

 

『…こいつ、やはり前とは様子が違うな。怒りなどというよりは、まるで錯乱しているかのようだ』

 

「錯乱…? ということは、誰かがこのアパトサウルスを操って暴れさせている可能性もあるってこと?」

 

『何も証拠はないがな。だがこの暴れようは普通ではないことは確かだ。速やかに鎮めた方がいいだろう』

 

「よし、それなら…アメジスト! 君の遠隔攻撃でアパトサウルスを確実に倒すんだ! 『放射棘槍(ラッシュスパイン)』!」

 

 オウガが技カードをディノラウザーから射出してスキャンすると、アメジストの体が紫の光と細かな紫結晶に包まれる。そしてアメジストは体に土エネルギーを十分に溜め込み、勢いよく踏ん張って体外へと放出した。放出されたエネルギーは無数の棘槍となってアパトサウルスへと降り注いでいく…。

 だがそこでアパトサウルスが高らかに咆哮を上げ、その身を青い光と水流で包み込む…対抗して技を発動したのだ!

 すると水流がアパトサウルスの体へと収束していき、それを示しているのであろう青い光が体から首へ、更に首から頭へと移っていく。そしていよいよ棘槍が目前まで迫ってきたというところで、アパトサウルスは大きく仰け反りつつ口から水の塊を発射した。撃ち出された水塊はあっさりと棘槍を弾き飛ばしながら一直線にアメジストへと迫り…着弾と同時に盛大な爆裂を見せた。水でありながらその様はまるで砲弾が炸裂したような衝撃であった。

 そしてその爆発に吹き飛ばされたアメジストは大地をもんどり打ちながら転がって大岩へとぶつかり…その身をカードへと戻していった。

 

「アメジスト! そんな…一撃で…?」

 

「あのアパトサウルス…暴れ方もそうだけど、強さも只者じゃないのかもね…」

 

 愕然とするオウガとミサの前で、アパトサウルスはギロリとレクシィとエンピロを睨みつけると…再び体へ水流を集め始めた。どうやら一気に片付けようという魂胆らしい。

 

「来ます! ミサさん、ここは合体技で対抗しましょう!」

 

「それしか勝てる道はないのかもね…。分かったわ! やりましょう!」

 

 オウガとミサは示し合わせてから、ほぼ同時に技カードをディノラウザーから射出し、スキャンした。

 

「『大炎爆発(ビッグファイアボム)』!」

 

「『暫流剣(ウォーターソード)』!」

 

 技カードが読み込まれ、レクシィが口から炎を、エンピロも口から高圧水流を吐き出す。そして互いに頷き合うと、レクシィがその水流の根元に噛み付いたのだ。するとみるみるうちに水流は煮え滾る熱湯へと変わっていき、リーチも倍近く伸びていくではないか。

 そこで用意が整ったアパトサウルスが水の砲弾を放ったのと同時に、エンピロが熱湯の剣を振りかぶる。そして両者の攻撃はぶつかり合い、激しい水と熱湯の飛沫を周りへ撒き散らした。

 

「エンピロちゃん…! あともう少し…何とか持ち堪えて…!」

 

「レクシィ…! 君ならやれる! 負けるなー!」

 

 暫くこの鍔迫り合いが続いたのち…遂にレクシィとエンピロの合体技『暫熱霧剣(ミストソード)』が水の砲弾を切り裂いた。圧縮されていた水が盛大に飛び散り、辺りが水煙と湯気で覆われる。

 

「ぐっ…これじゃ見えない…」

 

「アパトサウルスは? どうなったの…?」

 

 ややあってから視界を遮るものはなくなったが、その時にはアパトサウルスの姿はどこにもなくなっていた。すかさずディノラウザーのサーチ機能を使ってみるものの、再び反応は消失している。

 おまけにもし倒せたのならカードくらい落ちていてもいいはずなのに、それすら見当たらなかったのである。

 まるで狐につままれた様子で、オウガとミサは頭を捻る。

 

「ねぇ、オウガ君…。わたし達、幻か何かでも見てたのかしら…」

 

「俺にも何が何だか…。でもアメジストはこうしてカードに戻されちゃってるし、間違いなく俺達戦ってたはずなんですよ」

 

『…私もアパトサウルスがどうなったのか目で追うことはできなかった。あの巨体を隠せる場所など、この荒野にはあると思えないのだが…』

 

 と、そこまで話したところでふとオウガが気づく。周囲のバトルフィールドがまだ解除されていないのである。

 

「バトルフィールドが…! ミサさん! まだリュウタ達への加勢は間に合いそうです! サーチ対象を切り替えて、すぐにでも駆けつけましょう!」

 

「そ、そうね! そっちの恐竜だけは保護してあげないと…」

 

 それから駆け出そうとした2人を…やんわりと引き留める者がいた。レクシィとエンピロである。

 

『オウガ。オマエ達ニンゲンの足では間に合わんだろう。私の背に乗せてやる』

 

「えっ…いいの!?」

 

『やけに嬉しそうだな…。今は緊急を要する時だ。手段は選んでいられないだろう。…さあ、早くしろ』

 

「分かった! 行こう、レクシィ!」

 

 そしてレクシィとエンピロはその背にそれぞれオウガとミサを乗せると、力強く大地を踏みしめながら走り出したのであった…。

 

 

その頃 ウサラパ達の戦線

 

「なっ…あいつらは…」

 

 戻ってこちらの戦線でカスモサウルスをイグアノドンから遠ざけたのは、パラサウロロフスとランベオサウルスの2体だった。

 そしてその背後にはリュウタ達がいる…。どうやらマルムが咄嗟にパラパラとランランを召喚して窮地を救ったようだった。

 

「ガキンチョ…」

 

「勘違いしないでよね、オバさん。アタシ達はオバさん達じゃなく、イグアノドンを助けに来たんだから」

 

「だーれがオバさんじゃゴルァァァァッ!」

 

 マルムの口から出てきたいつもの文句に、ウサラパはいつも通りの反応を返した。

 その一方で、素早く起き上がったカスモサウルスを横目で眺めながらロトが口を開く。

 

「誰かと思ったらまた君達か。いい加減邪魔しないでくれないかな? 前にも言ったけどボク達はお爺ちゃんのために…」

 

「だからって恐竜をそうやって痛めつけていいわけないだろ!」

 

「君のカスモサウルスだってとても苦しそうにしてるじゃないか! それを放っておくことなんて僕達にはできない!」

 

「あなただって恐竜が好きなんでしょ! それならもっと恐竜を大事にして、愛する心を持ってよ!」

 

「黙っていれば言いたい放題言ってくれるな…! そんなに恐竜が好きなら、その愚鈍な愛と共に消し炭にしてやるよ! やれ! カスモサウルス! 『激力雷電(ギガライディーン)』!」

 

 ロトが技カードを発動すると、カスモサウルスも再び電撃を身に纏い、その紫電を2本の角の間へ収束し始めた。その電撃は、かつてアフリカでガブ達が発動した『四位激力雷電(フォースギガライディーン)』にも引けを取らないほど大きい。

 この規模では、パラパラやランランはおろか、背後のリュウタ達にも被害が及びかねない。

 

「イグアノちゃん…? 無理しちゃダメよ。今は安静にしてないと…」

 

 その時、イグアノドンがゆっくりと起き上がった。もう体中傷だらけであるにも関わらず立とうとする彼をウサラパは引き留めようとした…が、彼はその手を振り払う。そして静かに、だがまっすぐにウサラパの瞳を見据えてきた。

 

「あんた…もしかして…」

 

 その瞳からイグアノドンの覚悟を感じ取ったのか、ウサラパはその場から動けなくなってしまう。それを見たイグアノドンは微笑みを浮かべると、未だ痺れる体を引き摺りながら目前のカスモサウルスを見つめる。そして身構えると、最後の力を振り絞り…カスモサウルスへ突進を仕掛けたのだ。

 

「そんなにカードに戻りたいなら…お前から先にやってやるよ!」

 

 だが、ロトはそれを見逃してはくれなかった。すかさずカスモサウルスに向きを変えさせ、極太の電撃を放射させたのである。最後の一撃すら叶わずイグアノドンの体は電撃の中へ飲み込まれ、そのままカードへと変わってウサラパのもとへ落ちていく…。

 

「イグアノちゃん…」

 

「…はっ、他愛ないね!」

 

 しかし、イグアノドンの特攻は無駄ではなかった。カスモサウルスが標的を変えたことで、Dキッズの恐竜に技を使える余地が生まれたのである。

 

「今しかないわ! パラパラ! ランラン! 力を合わせて決めるわよ! 『超竜合体(ツープラトンクラッシュ)』!」

 

 マルムがディノホルダーから技カードを射出し、素早くスキャンする。するとパラパラとランランはその身に緑の光と草吹雪を纏わせ、高く嘶きを上げた。

 するとディプロドクス・ハロルムとスーパーサウルスが現れ、轟音と共に大地へと降り立つ。

 ロトがイグアノドンの真の目的に気づいた時には、既にカスモサウルスは2体の巨大竜脚類に包囲される形となっていた。

 

「まずい! このままじゃっ…」

 

 慌ててロトが技カードを通そうとしたが、もう遅い。巨大竜脚類達は示し合わせたかのように頷き合うと、勢いよく大地を両前脚で踏みしめ、その衝撃波でカスモサウルスを空高く吹き飛ばしたのである。そして落下してきたカスモサウルスをスナップを利かせた長い首で挟み込み、トドメを刺したのであった。

 

「やったぜ!」

 

「さすがアタシ達の恐竜ね!」

 

「…いや! まだだ! あのカスモサウルス、まだカードに戻ってないぞ!」

 

 レックスが指差した先では、確かにまだカスモサウルスはカードに戻っていなかった。しかし、その様子はとても戦闘を続けられるようには見えない。

 目はかっと大きく見開かれており、四肢だけではなく体全体が小刻みに痙攣している。そしてその体を染める濃い紫色にはあちこちノイズのようなものが走り、元の色である緑が現れたり消えたりしている。明らかに普通の状態ではなかった。

 と、そこでロトのアクトホルダーに通信が入った。相手はノーピスのようだ。

 

『ロト。カスモサウルスだが、どうやらエネルギーを与えすぎた副作用が出てしまったようだ。ここはカードに戻して退却した方が良いかもしれん』

 

「ノーピス!…くっ、ここまでか…」

 

 ロトは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも、素直にカスモサウルスをカードへと戻してホルダーへとしまう。それを見届けたかのように飛行機が着陸すると、彼は素早く機内へと乗り込んだ。

 

「イグアノちゃん…」

 

 一方、ウサラパはイグアノドンのカードを静かに見つめているところだった。そこへティラノのカードを回収したエドとノラッティ〜が歩み寄る。

 

「さ、ウサラパ様」

 

「アジ島に帰るザンス」

 

「でも…」

 

 ウサラパが言葉を紡ごうとした時だった。今にも飛び立とうとする飛行機から3本のマジックアームが伸び、3人の体をガッチリと捕まえたのである。

 

「「「あららーっ!?」」」

 

 そのままウサラパ達の体と共に飛行機は急速に上昇すると…あっという間に空の果てへと消えてしまったのだった。

 

「…行っちゃったよ」

 

「なんか…すごく慌ただしかったな」

 

「そうね…」

 

 ぼんやりと見送るリュウタ達のもとへ、大きな足音を響かせながらレクシィとエンピロが走り寄ってくる。その背にはオウガとミサが乗っていた。

 

「リュウタくん! レックスくん! マルムちゃん! 無事なの!?」

 

「さっきこの辺りですごい電撃が走ったのを見たんだけど、大丈夫だったか!?」

 

「あっ、オウガ! オレ達は大丈夫だけど…アクト団のやつら仲間割れ始めたかと思ったら、あっという間に帰って行っちゃったんだよ」

 

「イグアノドンがいたんだけど、多分アクト団に持っていかれちゃったし…」

 

「その様子だと、オウガ達も戦果はなかったみたいだな…」

 

「そうだな…。ごめん」

 

「謝らなくていいよ! こういう日もあるって…」

 

 その時だった。ウサラパが滞在していたあの村の村長が、Dキッズに声をかけてきたのだ。

 

「もし、そこの少年少女よ。大トカゲ使いの女を見なかったかね?」

 

「大トカゲ使い…?」

 

「よく分かりませんが…どういうことですか?」

 

「いや、知らないならよいのじゃ…。

残念じゃなぁ。せっかく村に頼れる一員が増えたと思ったのに…」

 

 そう呟きながら、村長は夕焼けに浮かぶエアーズロックへと悲しげな目線を向けたのであった…。

 

 

ウサラパ達が帰って来る少し前 アジ島

 

「一体ロアとラプトルはどこまで行ったのだぞい…。もう大分ジャングルの深いところまで来た気がするぞい…」

 

 ロアとラプトル達を追ってジャングルの中へと入り込んだソーノイダは、辛うじて残っている痕跡を追いながら歩き続けていた。

 すると、どこからか鼻につく刺激臭が漂ってきたのだ。普通の人間ならば何かが腐った臭いだとしか思わないが、経験のあるソーノイダにはその正体が分かった。

 

(これは…肉食動物特有の匂いだぞい。ということは、近くにあのラプトルの縄張りか、営巣地があるということぞいか…)

 

 その匂いの方向へ足を進めていたソーノイダは、何かに気づいた様子で屈み込むと、茂みの中へと潜り込む。そして…目の前の小さな空き地へと目線を向けた。

 そこには、ロアと先程の黒いラプトル達、そして…土を盛り上げて作った塚に座り込む白いラプトルがいたのだった。

 

(あの白いラプトル…さっきはおらんかったはずぞい。それにあの塚は…もしや…)

 

 と、そこでロアの声が聞こえてきたので、ソーノイダは注意をそちらへと向ける。

 

「…それにしてもすごいのね! わたし、恐竜の巣と卵を見たの初めて! 丸くて温かくて、とってもかわいいわ!」

 

 ロアが無邪気にそう口にすると、ラプトル達も満足そうに唸り声を上げる。やはりあの塚は巣で、今白いラプトルが抱卵しているところらしい。

 

(まさかワシの島で恐竜が営巣しているところを見られるとは…。ワシも卵から恐竜を育てたことは何度かあるぞいが、こうして実際に恐竜が抱卵しているのをこの距離から見るのは初めてだからのう…)

 

 そして再び空き地へと目を向けた時、ソーノイダはふと気づいた。先程まで白い個体を除くと3体ラプトルがいたはずなのに、1体減っているのである。

 はて、どこへ行ったのか…そう考える間もなく、彼の体は空き地へと蹴り出された。咄嗟に振り向くと、先程まで彼が隠れていた茂みにいなくなった個体が仁王立ちになっている。どうやらソーノイダの接近に気が付き、密かに彼の後ろへ回り込んでいたようだ。

 

「おっ、おじい様!? どうしてここに…」

 

 ロアがそう口にするよりも早く、白い個体が威嚇の咆哮を上げる。それに黒い個体達も応じ、素早くソーノイダを囲い込んだ。

 ソーノイダが自身の迂闊さを後悔した…その時だった。

 

「待って! お願いだからやめて! その人は…その人はわたしのおじい様なの!」

 

 ロアが危険を省みず、その中へ割って入ったのだ。彼女が庇いに入ったせいか、ラプトル達は渋々ながらも包囲を解く。しかしその代わりに、白い個体を守るように塚の周りに陣取った。

 

「怖がらせちゃって、本当にごめんなさい。今日はもう帰るわね。…ほらおじい様、帰りましょ?」

 

「あ、あぁ…そうぞいな…」

 

 それからソーノイダとロアはお互いに無言のままジャングルを抜け、基地への帰路についた。

 

「…ねぇ、おじい様。お願いがあるの」

 

 長い沈黙の後、ロアが重い口を開く。彼女の言わんとしていることを暗に理解したソーノイダだが、念の為に聞き返した。

 

「どうしたぞいか? お爺ちゃんに言ってみるぞい」

 

「あのね…あの子達のこと、そっとしておいて欲しいの。おじい様が恐竜キングになりたいことはわたしも知ってるし、心から応援してるわ。でも、あの子達の…平穏な生活を奪ってほしくないの。

だからあの子達を捕まえようとか、そういう酷いことはしないで…お願い…」

 

 瞳を潤ませながら、ロアは必死にソーノイダへ訴える。そんな彼女の願いを無碍にできるほどソーノイダは非情ではなかったし、そもそもそうするつもりもなかった。

 

「…心配せんでもいいぞい。ワシはあの子達に手を出すつもりなどないし、何なら今日のことは誰にも話さないと誓ってもよいぞい。

じゃから…ほれ、もう泣くのはやめるぞい」

 

「おじい様…! ありがとう!」

 

「いやぁ、それにしても…ワシの島に野生の恐竜が住んでおるとは思いもせんかったぞい。しかもアクトサーチにも引っかからんかったし…。

ロアはいつ頃、あのラプトル達と会ったのだぞい?」

 

「えーっと…夏の終わり頃だったかしら? その頃にジャングルの中の空き地で倒れてたのを助けてあげたのよ」

 

(夏の終わり頃…ということは、恐竜ランドで儲けるために日本に着岸した辺りぞいか?

そのくらいしか、島の外から入り込めるタイミングはないぞいからな…)

 

「なるほどのう…。何にせよ、ロアからあのラプトル達のことを聞けて良かったぞい。

…これからもあの子達に餌を持っていくのじゃろう? その時はワシも手を貸してあげるぞい」

 

「えへへ…おじい様にはそこまで見抜かれちゃってたのね。それじゃあこれからはお願いしちゃおうかな…あっ」

 

 そこでロアはピタリと立ち止まった。何故なら基地の入り口ではタルボーンヌが仁王立ちしていたからである。

 

「ううむ…タルボーンヌのやつ、どうやら時間になっても帰ってこなかったから怒っておるようぞいな…。

こうなった責任の一端はワシにもあることだし、一緒に怒られるぞいか」

 

「…ウフフ、仕方ないわよね」

 

 それから揃ってタルボーンヌの前に姿を現した2人はお小言を貰ったものの、ソーノイダのとりなしもあって何とかタルボーンヌを諌めることに成功したのだった…。

 

 

 その頃、ウサラパ達は飛行機のアームに拘束される形で運ばれている最中だった。

 イグアノドンのカードを手にしたまま、ウサラパはじっと考えている。このままこの子をアジ島に連れ帰っても大丈夫なものだろうか。もしかしたら、ソーノイダに酷い目に遭わされるのではないだろうか。それならばいっそここで手を離してしまった方が…。

 そんな考えが頭を過り、カードから離しかけた手を…エドとノラッティ〜が止めた。

 

「そんなことしなくても大丈夫ザンスよ、ウサラパ様」

 

「ドクターも最近は恐竜に優しくしてるッス。だからそのイグアノドンも…きっと理不尽な目には遭わないッスよ」

 

「あんた達…まったく、大きなお世話だよ!」

 

 そう言うとウサラパはカードを持ち直し、そっぽを向いてしまう。だがその表情は、妙に晴れやかな様子であった。

 

 一方で機内では重苦しい空気が流れていた。ロトが先程の戦闘についてノーピスと話していたのである。

 

「エネルギー過多って…どういうことなのさ、ノーピス。超アクト恐竜と属性強化の超技の相性がいいって言ったのはノーピスだったじゃないか」

 

「そのカスモサウルスでは、そこまでの膨大な属性エネルギーに耐えられる体ではなかったということだ。こればかりはすぐに何とかできる問題じゃないからな。実戦で確かめられただけ良かったと思おうじゃないか」

 

「くっ、それじゃあ帰ったらまたカスモサウルスに調整を加えないと…。

こんなんじゃ…あいつらに負ける程度の力しか出せないなら『Sin-D』を放逐できる訳がない…」

 

 そうブツブツ呟きながら、ロトは理論を組み立て始める。その横でノーピスは、こっそりと胸ポケットへと目線を落とした。そこには、「ヴェロキラプトル」のカードが2枚入っている。先程の戦場でたまたま見つけたものを人知れず回収していたのだ。

 思わぬ収穫を得たノーピスは、人知れずひっそりと笑みを浮かべたのだった…。

 

 

その後 オーストラリア エアーズロック付近

 

 アクト団もDキッズも帰った後、夜の闇に浮かぶエアーズロックの頂で、2人の男がたむろしている。それは、この間ミサを誘拐しかけたあの異形の男達だった。

 

「フッフッフ…アパトサウルスの実地試験は大成功だったんだな。これならあのお方も喜んでくれるんだな」

 

「新開発の技カードがあったとはいえ、まさかティラノサウルスとスピノサウルス、ついでにステゴサウルスを相手取って尚引けを取らないなんて…正直俺も予想外の強さだったりして」

 

 そんなことを口にする男達の片割れの手には、「アパトサウルス・アジャクス」の恐竜カードが握られていたのだった…。

 

 




今回の恐竜解説コーナー!

「今回紹介する恐竜は、繁栄の象徴『イグアノドン』だぜ!」

「名前の意味は『イグアナの歯』。この歯の化石を見つけたイギリス人のギデオン・マンテル医師が、イグアナの歯にそっくりだと感じたことからこの名前が付けられたんだ」

「生きていた時代は白亜紀前期で、しかも化石は世界中の色んなところから見つかっているの! こんなに広い生息域を持ってたなんて、すごい恐竜よね〜!」

「『恐竜』として命名されたのはメガロサウルスだっていうことはよく知られている話だけど、化石として最初に見つかった記録は、マンテル医師が発見した本種の化石なんだ。だからこの恐竜は、恐竜研究の大元になったと言える重要な存在だと言えるよね。
ちなみに本種の最大の特徴はスパイク状になった親指なんだけど、これは発見当初鼻先の角だと考えられて、こんな風に復元されたんだ」(最初期の復元画を見せる)

「プッ、あっはっはっは! 何だこれ! これじゃあ恐竜ってよりは怪獣じゃん!」

「それが当時の常識から考えられる、想像力の限界ってことだろ。今の基準で比較できるものじゃないと思うぞ」

ということで、今回はここまでです。
今回は3ヶ月ほど更新できず、本当に申し訳ありません。忙しい中ではありますが、これからは少しでも早く更新していけるよう努力してまいります。
現在開催中のアンケートについては、次回の前編投稿後に締め切りたいと考えております。
それでは次回第36話「製鉄所での攻防!アクトメタルの秘密!」どうかご期待下さい。

※追記:新規超技『龍河砲弾』『電圧充填』『暫熱霧剣』の追記を行いました。

第37話の原作「恐竜!荒野の決闘!」に出演する恐竜について、皆様からのご意見を伺いたいと思います。以下の選択肢から1つを選んで回答して下さい。(選択肢3を選ばれた方は、具体的な恐竜を提案して下さると助かります)

  • 原作通りサウロファガナクスを出す
  • アロサウルス・A(風属性)を出す
  • 別の超大型肉食恐竜を出す
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