古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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今回は後編になります。
多忙のせいもありましたが、またしても更新間隔が空いてしまい、大変申し訳ありませんでした。


後編

製鉄所 内部

 

 製鉄所へと戻ってきたDキッズは、早速アクト団の捜索を始めていた。

 

「アクト団の奴ら、どこに行ったんだ?」

 

「確かこっちの方へ降りていったはずなんだけど…」

 

「向こうは溶鉱炉だったわよね。そっちに行ってみましょう!」

 

 マルムの提案で、Dキッズは溶鉱炉の方向へ向かうことにしたようだ。そして物陰からこっそりと様子を伺うと…やはりそこにはウサラパ達3人組と大量のアクトロイド達が屯していた。傍らにはあの大きな飛行物体…アクトクラフトもある。

 

「いたぞ…!」

 

「あんなにロボットを連れてきて…何を始めるつもりなんだ」

 

「ひとまず、様子を見てみよう」

 

 Dキッズ達に覗き見られていることも知らないまま、ウサラパ達はこれからについて相談し始めた。

 

「さてと、どうやってこれを精錬すればいいんだい?」

 

「ミーは知らないザンスよ」

 

「おれもッス。テラエネルギーが何とかって言ってたのは覚えてるッスけど…なにぶん難しい言葉ばっかりだったから…」

 

「あんだってー!? それじゃあどうすればいいのか分からないじゃないのさー!」

 

「そんなことミー達に言われても困るザンス…」

 

 どうやら誰一人アクトメタルの精錬方法を理解している者がいなかったようで、3人は口論を始めてしまう。そんな中、Dキッズはウサラパの手の中で輝くアクトメタルに目をつけた。

 

「何だ…? あいつらが持ってるあれ…」

 

「ここからだとよく見えないけど…何かの金属球みたいに見えるぜ」

 

「なんかあの独特の光沢…どこかで見たような気が…。

そうだ。ペルーの月の神殿で見た…あいつらがアクトメタルとか呼んでた金属なんじゃないかな」

 

「ってことは、きっとオバさん達にとって重要なものなのよね」

 

 マルムがついそう口にした時だった。それまで口論していたはずのウサラパがDキッズが潜んでいる方へぐりんと顔を向けたのである。

 

「んっ!? 誰っ!? 今オバさんって言ったの!?」

 

 ドスの効いた声でそう叫ぶと、ウサラパが早足でそちらへと駆けつけてくる。もしDキッズが素早く隠れ場所を移していなければ、敢え無く見つかっていただろう。

 

「あれ…? おかしいわね」

 

「ウサラパ様〜、どうしたザンスか?」

 

「誰かがここでオバさんって言ったのよ!」

 

「空耳じゃないッスか?」

 

「空耳ぃ〜? そんな訳ないわよ…」

 

 エドとノラッティ〜の訝しげな視線すらものともせず、ウサラパは屈み込んでまで声の主を探そうとする。そしてふと顔を上げると…そこにはガブの姿があった。

 

「おっ?」

 

『ガブ! ガァブッ!』

 

「んぎゃーっ! 何すんのよこいつー!」

 

 一瞬ウサラパの脳の理解が追いつかなかった隙に、ガブは彼女の鼻に噛み付いた。痛みに悶えながらガブを振りほどこうと暴れるうちに、ついその手に持ったアクトメタルを取り落としてしまう。アクトメタルはコロコロと転がっていき…リュウタによって拾い上げられてしまった。

 

「やーい! いっただきー!」

 

「「あーっ! ガキンチョ!」」

 

「ガブ! もういいぞ!」

 

 リュウタの指示に応じ、ガブが素早く彼のもとへ駆け戻っていく。だがそのまま無様に見送るアクト団ではなかった。

 

「こら! 待てぇ!」

 

「アクトロイド! 何してるッスか!」

 

「不届きなガキンチョ共を捕まえるザーンス!」

 

『ガキンチョ? ガキンチョガキンチョガッキンチョ! ガキンチョガキンチョガッキンチョ!』

 

 3人の指示を受け、その場にいたアクトロイド達が一斉にDキッズへ向かっていく。

 

「いっぱい来たわ!」

 

「とにかく逃げよう! 一刻も早く製鉄所から脱出しないと!」

 

「やーい! ここまでおいでー!」

 

 かくして、製鉄所を舞台にDキッズとアクト団の追いかけっこが始まったのだった…。

 

 

その頃 製鉄所の外

 

「えーっ!? 古代君とオーエン君と竜野さんと覇轟君がいないですってー!?」

 

 その頃、バス内で点呼を行なっていたみっちぇる先生は、ようやくここでDキッズがいないことに気がついたようだった。暫く考え込んだ後、彼女は躊躇うことなくバスから降りる。

 

「みっちぇるが探してくるから、みんなは絶対にバスから降りないでね!

…生徒のみんなの安全は、このアイドル・みっちぇるが守るわよーっ!」

 

 見た目や普段の振る舞いはともかく、今の彼女はまさに教師と呼ぶに相応しい姿であった…。

 

 

同時刻 アクト団基地 アジ島

 

 その頃こちらでは、ノーピスがソーノイダへ研究成果の報告にやって来ていた。

 

「ふむ…なるほどのう。これ1枚に3枚分の技効果が搭載されているというわけぞいか」

 

「その通りです。発動できる技は、相手の技発動を妨害する『必殺封じ』、恐竜の残り体力が少ないほど威力が上がる『最後の力』、力尽きるほどの一撃を受けても一度だけ耐え切れる『根性の鼓舞』となっています」

 

「なかなかにえげつない技ばかりぞいな」

 

「ええ。言わばこのカードは、ドクターのこれまでの研究を更に押し進めた成果と言えるものです」

 

「…そうぞいか」

 

 思ったよりソーノイダからの反応が芳しくないことに、ノーピスは内心首を傾げる。以前の彼ならばこうおだててやればすぐ調子に乗ったはずだと思い込んでいたのだ。

 実のところテリジノ達のことからも分かる通り、ソーノイダは既にそういった研究からは手を引いている。しかしそれをノーピスは分かっていなかったのである。

 

「画期的な発明であることは認めるぞいが…かと言って勝手な行動をしたことを、組織の長として咎めぬ訳にはいかぬぞい」

 

 その時、ソーノイダの背後のモニターに通信が入った。相手はエドである。

 

『ドクター。その…』

 

「ん?…おおエド。アクトメタルを精錬できそうな場所は見つかったぞいか?」

 

『それが…ッスね…』

 

 口籠りながらもエドはここまでの経緯を説明していく。だがその話を半分も聞かない内に、ソーノイダの怒りが爆発した。

 

「何ーっ!? ガキンチョ共にアクトメタルを奪われたじゃとーっ!?」

 

『め、面目ないッス…』

 

「大体、何をどう考えたら製鉄所如きでアクトメタルを精錬できると思ったのだぞい! この時代の製鉄所でテラエネルギーに耐えられる設備などあるはずがないじゃろうが!」

 

『えっ? そうなんスか?』

 

 エドからの気の抜けた返事を聞き、ようやくソーノイダは彼らが自分の話を殆ど理解していないことに気づいたようだ。怒りに任せ、モニターに掴みかかりながら声を張り上げる。

 

「えーい! お前達はどうしてこうもバカたれな…」

 

 その時、またソーノイダの腰に激痛が走った。これには耐えられず、腰を押さえてうずくまってしまう。

 

「ぐぅ…いててて…」

 

『と、とにかく、何としてもアクトメタルは取り返すッスから…』

 

「ぬぐぐ…もし取り戻せなかったら、お前ら全員ディーノ達の餌にしてやるぞい!」

 

『…また連絡するッス…』

 

 顔面蒼白になったエドが通話を切ったところで、すかさずノーピスがソーノイダに提案を持ちかけてきた。

 

「ドクター。製鉄所程度の設備でもアクトメタルを精錬することは可能ですよ」

 

「…何じゃと? じゃがあんなもんではテラエネルギーの奔流に耐えられるはずが…」

 

「私に秘策があります。どうか出撃の許可を」

 

 ソーノイダは暫し考え込んだが、自信満々といった様子のノーピスに任せることにしたようだ。

 

「…分かったぞい。出撃を許可するぞい。

どのみちあ奴らではどうしようもできなさそうぞいからな」

 

「ありがとうございます。では早速」

 

 そう言うが早いか、ノーピスは足早に退室していく。そんな彼を、ソーノイダはどこか訝しげな目で見送ったのだった…。

 

 

その後 製鉄所

 

 エドはあの後どうしていたかというと、ウサラパとノラッティ〜にソーノイダとの通話の内容を共有していた。

 

「えーっ!? ドクターに報告したのかい!?」

 

「えらい怒ってたッスよ」

 

「当たり前だろぉ? 怒らない方がどうかしてるよ」

 

「このままじゃおれ達、ディーノ達の餌にされちゃうッスよ」

 

 エドの心配げな声を振り払うように、ウサラパは手に持っていたシェイクを啜り上げてから怒声を上げる。

 

「んぬーっ…要はあのガキンチョを捕まえればいいんだろ!? 何としても探し出すんだよ!」

 

「「ヘイヘイホー!」」

 

 

製鉄所 別の区画

 

『ガキンチョガキンチョガッキンチョ! ガキンチョガキンチョガッキンチョ! ガキンチョガキンチョ…』

 

 既に製鉄所内部では大量のアクトロイド達がDキッズを探して走り回っていた。それらから逃れるように設備によじ登っているのは、標的たるDキッズ達である。

 

「はぁ〜…ほんとしつこい連中だな」

 

「これからどうするの? このままじゃ脱出なんかてきっこないわ」

 

「それに、確かその金属ってアクトメタル?とかいうやつだよね。

アクト団はそれがどうしても必要だって言ってなかったっけ」

 

「…確かに。だとすればそれを手放さないと、あいつらは地の果てまでも追ってくるぞ。

リュウタ。どこかでそれを囮にして、ここから脱出しよう」

 

「何言ってんだよ。アクトメタルだか何だか知らないけど、これを使ってあいつらが何か悪いことをするのは目に見えてるんだ。

脱出するにしても、これを手放す訳には…」

 

「古代くーん! オーエンくーん! 竜野さーん! 覇轟くーん!」

 

 その時、すぐ近くから彼らを呼ぶ声が聞こえてくる。言うまでもないが、その声の主はみっちぇる先生だった。Dキッズを探してここまで入り込んできたようだ。

 しかし何とも間の悪いことに、そこでみっちぇる先生はアクト団と鉢合わせしてしまったのである。

 

「あっ! あんたは!」

 

「「あの時の!」」

 

「弁当泥棒のオバさん!」

 

「何ですって!? オバさんはアンタだって言ってるでしょお!?」

 

「ウサラパ様、オバさんは相手にしなくても…」

 

「オバさん言うなっ!」

 

 顔を合わせるなり、ウサラパとみっちぇる先生は互いをオバさん呼ばわりし始めた。不毛な争いではあるものの、自分たちの教師をアクト団の近くに置いておくのはあまりに危険である。そう判断したDキッズはやむなく彼女へ呼びかけた。

 

「先生!」

 

「危険です!」

 

「その人達から離れて下さい!」

 

「早く逃げて!」

 

 しかし、彼らがそれまで息を潜めて隠れていたのはアクト団の目から逃れるためである。声を出したからには、見つかるのは当然だった。

 

「あーっ! ガキンチョザンス!」

 

「あんなところに隠れてたんスね!」

 

「さっきはよくも舐め腐ったことしてくれたね! 覚悟しな! アクトスラーッシュ!」

 

ガアァァァァッ!!

 

 すぐさまウサラパがアクトホルダーにカードを通し、ティラノを召喚する。しかしティラノは頭を高くもたげようとして、天井に頭をぶつけてしまった。そのまま地面へと倒れ込み…ちょうどみっちぇる先生の目の前にその巨大な頭が現れたのである。

 

「おっ…大っきなカメレオンん…?」

 

 ティラノに驚いたのか、それとも目の前の現実を受け入れられなかったのかは定かではないが、みっちぇるはそう一言呟いてから気を失ってしまった。

 倒れ込む彼女をオウガとレックス、マルムの3人がかりで抱き止め、リュウタはティラノを前にディノホルダーを構える。

 

「行くぞガブ! イナズマも頼むぜ!

ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」

 

ゴオォォォォッ!!

 

ギュオォォォォッ!!

 

 そしてガブとイナズマのカードをディノホルダーにスキャンし、召喚した。

 

「ガブ! イナズマ! ティラノをもっと広い場所へ誘導するんだ!

レックス達は先生を安全なところへ!」

 

 リュウタの言葉に3人は頷き、みっちぇる先生を抱えてその場から離れていく。一方でガブとイナズマも、挑発するかのような動きで注意を引き始めた。それにまんまと釣られたティラノは、2体の後を追いかけ始める…。

 

 やがて3体は追いかけっこの末、製鉄所の特に広い区画…アクト団がアクトクラフトを降下させた場所だ…で戦闘を開始した。

 だが、戦況はガブとイナズマが主導権を握っていた。やはり数の利は簡単には突き崩せないようだ。

 

「いいぞー! その調子だ! いけーっ! ガブ! イナズマ!」

 

「何やってんだいティラノー! もっとやる気出すんだよー!」

 

「流石に2対1は分が悪いッスよ」

 

「とは言え、スピノとサイカは休養期間ザンスからねぇ…。今日はティラノに頑張ってもらうしかないザンス」

 

 ティラノは懸命に応戦するものの、数の不利を覆せず防戦一方の状況が続く。このままいつも通りやられてしまうのだろうか。

 

 と、その時だった。アクトクラフトに着陸する形で、1機の小型飛行機が降り立ったのである。

 

 

その頃 製鉄所の外 駐車場

 

 製鉄所内部で恐竜バトルが始まった頃、オウガ達3人はようやくみっちぇる先生をバスへ連れ帰ったところだった。

 

「それじゃ、みっちぇる先生のことお願いね!

…オウガ! レックス! こっちは大丈夫そうよ!」

 

「よし、それじゃあ早く製鉄所の中に戻ろう。孤軍奮闘してるリュウタの援護に入らないとね」

 

「ああ。あいつだけにカッコいい思いはさせられないからな」

 

 そう軽口を叩き、3人がエントランスへと目を向けると…。

 

『ガキンチョガキンチョガッキンチョ! ガキンチョガキンチョガッキンチョ!!』

 

 なんと、そこから無数のアクトロイド達が湧き出し、こちらへ殺到してきたのである。しかも3人の後ろにはクラスメイト達が乗ったバスがあり、このままでは彼らが危険に晒されることは明白であった。

 

「嘘でしょ!? あんなに沢山いたの!?」

 

「このままじゃ皆が危ない! リュウタの助太刀に行く前にあのロボット達を片付けないと!」

 

「…リュウタにはもう少し頑張ってもらうしかなさそうだな。オウガ、マルム。まずあのロボット達を撃退しよう!」

 

「了解!」

 

「言われなくても!」

 

 そして3人はそれぞれのディノホルダーやディノラウザーを取り出すと、恐竜カードをスキャンした。

 

「ディノスラーッシュ! 吹き抜けろ! カルノタウルス! アロサウルス!」

 

グォォォォン!!

 

グゥガアァァァァッ!!

 

「ディノスラーッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス! ランベオサウルス!」

 

キュオォォォォン!!

 

プォォプオォォォォ!!

 

「ディノスラーッシュ!

燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!

揺るがせ! ステゴサウルス!」

 

ゴガアァァァァッ!!

 

ケエェェェェ…!!

 

 計6体の恐竜が呼び出されて降り立つと、彼らはすぐさま殺到してくるアクトロイド達を迎え撃ったのだった…。

 

 

戻って製鉄所内部

 

 リュウタとアクト団の3人が固唾をのんで見守る中、小型飛行機から降りてきたのは…ノーピスだった。

 

「あらま、ノーピスじゃないの」

 

「ドクターがいないのは当たり前ッスけど…1人で出撃してくるなんて珍しいッスね」

 

「でも何しに来たんザンしょ」

 

 どこか呑気な3人に対し、リュウタは見慣れない新手が出てきたことに警戒心を抱いたようだ。

 

「新手か…それなら変なことをされる前にさっさと勝負を決めるまでだぜ!

いくぜガブ! 『激力雷電(ギガライディーン)』!」

 

 ディノホルダーに技カードが読み込まれ、ガブが2本の角の間に電気エネルギーを溜め込み始める。このまま『激力雷電(ギガライディーン)』が発射されればいつものパターンなのだが…ノーピスは不敵に笑うとウサラパに向かって叫んだ。

 

「ウサラパ! アクトホルダーをよこせ!」

 

「え? あぁはい…それーっ」

 

 何が何だか分からなかったものの、ウサラパは取り敢えずアクトホルダーを投げ渡した。それが自らの手に渡るや否や、ノーピスはスキャン口にあの三角形のカードを通す。

 

「ヴェロキラプトル! お前達の力を見せてみろ! 『必殺封じ』!」

 

 するとアクトホルダーから3つの光が飛び出し、それがヴェロキラプトルへと変化する。彼らは凄まじいスピードで『激力雷電(ギガライディーン)』を発射する寸前のガブへと肉薄し、踏みつけや蹴りつけで妨害を加えたのだ。

 耐えきれなかったガブが膝をつき、溜め込んだ電撃が霧散したのを確認すると、ヴェロキラプトル達は再び光となってアクトホルダーへと戻っていく。

 

「あれは…前にジェイソンが使ってきたやつだ…!」

 

「ほう…ジェイソンめ。プロトタイプのカードは渡していたが、既に使っていたのか。

ならば知っているだろうが…この技はヴェロキラプトルの生体エネルギーとDNAを変換し、全属性に通じるように改造したものだ。

…いや、『進化させた』というべきかな?」

 

「お前…! 恐竜を何だと思ってるんだ! 何が進化だ!」

 

「君はどうやら、進化というものを理解していないようだな。

もし、恐竜が6600万年前に滅びず、進化を続けていたとしたらどうだ? 恐竜は更に進化を重ね、我々人類に匹敵する文明を持っていたかもしれない。または既存の枠には収まらない、とんでもなく強い恐竜が誕生していたかもしれないだろう?

私は少しばかり時計の針を進め、こいつらに秘められた可能性を開花させてやっただけだ。何も咎められる筋合いはない!」

 

「そんなことしていいわけないだろ! 人間が恐竜を好きに弄くり回していい権利なんかない!」

 

「命を与えられた恐竜にこそ、何の権利もない。こうしてカードという形で作り出した我々に、全ての権利がある。

それに、オレはあくまで純粋に科学の限界を追求しているだけだ。君たちの理解を得る必要はない」

 

 そう言い捨て、ノーピスは口角を鋭く上げる。それがリュウタの怒りを更に掻き立てたようだった。

 

「…許せない! お前だけは絶対に許さないぜ!

イナズマ! ガブの敵を取るんだ! 『雷撃一閃(バスタードスピア)』!」

 

 今度はイナズマを対象に技カードが発動され、自慢の1本角が雷の鞘で覆われていく。その雷槍を自慢気に掲げると、イナズマはティラノへ向かってまっすぐに走り出した。

 

「ならば、ヴェロキラプトルの次なる力を見せてやろう。…『根性の鼓舞』!」

 

 アクトホルダーから再びヴェロキラプトルが召喚されると、今度はティラノの側へと降り立つ。そして、応援するかのように甲高い声で鳴き始めたのだ。

 声援を受けたティラノの体を赤いオーラが取り巻くのと、イナズマが突っ込んできたのはほぼ同時だった。そのままイナズマは直進を続け、壁へティラノ諸共突っ込む。

 いつもならばこれで撃破できるはずなのだが…ティラノは倒れなかった。最早残されている力は僅かなようだが、それでも『雷撃一閃(バスタードスピア)』を耐えきったのである。

 

「ウソだろ…!? あれでカードに戻らないなんて…」

 

「そして…これが最後にして1番の大技だ! オレが切り拓いた進化の可能性を、その身でとくと味わえ! 『最後の力』!」

 

 三度ノーピスによってヴェロキラプトルが呼び出されたかと思うと、彼らの体が激しい光に包まれる。そしてヴェロキラプトル達はガブとイナズマへ殺到すると、ティラノの敵討ちのように徹底的かつ目にも止まらぬ連撃を繰り出したのだ。

 その威力は見かけ倒しではないようで、瞬く間にガブもイナズマも力尽き、カードへと戻されてしまう。

 それを見届けたところでヴェロキラプトルと…同じく力を使い果たしたティラノもカードへと戻ったのだった。

 

「あ…あぁっ! ガブ! イナズマ!」

 

 すかさずリュウタは2体のカードを回収しようと駆け出したものの…彼の横をマジックハンドがすり抜け、カードを掴み取っていく。

 ここまですっかり空気になっていたウサラパ達の仕業だった。

 

「取ったどー! ザンス!」

 

「オーッホッホッホッホ! どうだい、ガキンチョ。ここから生きて帰りたかったら、アクトメタルをこっちに返しな! それとも…」

 

『ガキンチョガキンチョガッキンチョ! ガキンチョガキンチョガッキンチョ!』

 

 エドとノラッティ〜の目配せに応じ、周囲で待機していたアクトロイド達がリュウタを取り囲む。

 

「…このアクトロイド達に死にたくなるほど痛めつけられるかぁい? さぁ、どうする?」

 

「…ぐっ…」

 

 しかしウサラパ達にとって想定外だったのは、この期に及んでまだリュウタが一矢報いようとしていたことだった。普段あれだけ舐めている彼らに負けた気になるのは、彼のプライドが許さなかったのだろうか。

 とにかく、リュウタは調子に乗りに乗ったウサラパ達の油断を突き、アクトロイド達の包囲から抜け出したのである。

 

「ぅえっ!?」

 

「待ちなガキンチョ! ここから逃げられると思って…」

 

 そこでウサラパの声が尻すぼみに消える。なんとリュウタはキャットウォークへと駆け上がると、煮え滾る溶鉱炉の上にアクトメタルを翳したのだ。

 

「おいアクト団! 今奪ったガブとイナズマのカードを返せ! でないと…これを溶鉱炉に投げ込むぞ!」

 

「なっ…なんですって!」

 

「奪ったものを盾にするなんてどういう教育を受けてるザンスか!」

 

「まあ、それはおれ達も同じようなもんスけどね」

 

 途端に慌て始めたウサラパ達だったが、ノーピスは不適な笑みを崩さずにこんなことを言い出した。

 

「なるほど、いいだろう。できると言うのならそのまま投げ込みたまえ」

 

「「「えぇ?」」」

 

「そうしてくれれば、トリケラトプスとスティラコサウルスのカードは君に返そうじゃないか」

 

「えっ…? ホントか?」

 

「あぁ。神に誓ってもいい」

 

 流石のリュウタも、これには少し考えるところがあったようでじっとノーピスの顔色を伺い…口を開いた。

 

「…そもそも、このアクトメタルとかいうやつは何なんだ? まさか、これも恐竜を苦しめるためのものじゃないだろうな!」

 

「それに関しては心配せずともいい。アクトメタルは我々にとって重要なあるマシンの動力部をコーティングするのに必要不可欠なものだ。

恐竜とは何ら関係ない。安心して放り込むといい」

 

「…分かった。言われた通りにしてやる! それーっ!」

 

 ノーピスの返答で一応納得したのか、リュウタは大きく振りかぶってアクトメタルを溶鉱炉へと投げ込んだ。灼熱の炉の中にあるというのに、アクトメタルの形は少しも崩れていないのがまた不気味であった。

 

「あ〜…アクトメタルが…。アタシ達の血と汗と涙の結晶が…」

 

「ホントに投げ込んじゃったッス…」

 

「ノラッティ〜。あの少年にトリケラトプスとスティラコサウルスのカードを返してやれ」

 

「えーっ!? せっかくの収穫をみすみす逃すなんて本気で言ってるザンスか!?」

 

「あぁ。大人として、約束は守らねばな。

それと、急ぎアクトロイドを回収し、お前達もアクトクラフトに乗り込め」

 

 ノーピスの言葉に、思わず3人は顔を見合わせる。

 

「…いいんスかね?」

 

「まあ…いいでしょ。もしドクターに咎められてもノーピスのせいにすればいいんだし。

カードを返して撤収するよ。ほらほら」

 

「わ、分かったザンス。…ほれ、受け取るザンス」

 

 渋々といった表情でノラッティ〜がリュウタへカードを返すと、そのまま他の2人に続いてアクトクラフトへと乗り込んでいく。

 

「良かった…。ガブ、イナズマ…」

 

 リュウタは何とか取り返したガブとイナズマのカードを胸に抱き、暫く感慨に耽る。

 そんな彼の頭上から、ノーピスの声が降ってきた。

 

「君も友達と共に速やかにここから立ち去れ。でないと…どうなっても知らないぞ?」

 

「立ち去れ…だって…?」

 

 言葉の意味が分からず、呆然とアクト団を見送ったリュウタだったが、やがて異変に気づいた。

 溶鉱炉の中がざわめき始めたのだ。どう考えても、原因はアクトメタルにあるとしか思えなかった。

 

「なんかやばいぞ…! 早くレックス達にも知らせないと…!」

 

 人知れずそう呟くと、リュウタは出口へ全速力で走り出したのであった。

 

 

少し前 製鉄所外部

 

 それまでずっと恐竜達と共にアクトロイドと戦っていたオウガ達だったが、状況は突然変化した。

 アクトロイド達は波が引くように製鉄所の中へ退却していったのである。

 脅威が去ったことで安心した3人は、ひとまずそれぞれの恐竜をカードへと戻す。

 

「何だ…? アクトロイド達が戻っていくぞ…」

 

「中で何かあったのかしら?」

 

「まさかリュウタの身に何かあったのか…?」

 

 アクトロイド達がいなくなってから間もなく、彼らはアクト団の飛行物体が2つ飛び立つのを目撃した。

 

「見ろ。あいつら退却するみたいだぞ」

 

「てことは…リュウタがアクト団を撃退したってことなのかな? それなら一安心だよ」

 

「あーあ…。結局今回はアタシ達、いいとこなかったわね…」

 

 そんな会話をしている内に、今度は製鉄所からリュウタが駆け出てくる様子が目に入ってきた。しかも、随分と慌てている。

 

「やぁ、リュウタ。うまくアクト団を退けられたみたいだね。みっちぇる先生は俺達がバスまで送り届けたから…」

 

 オウガがそう声をかけたものの、すべて言い切らない内にリュウタが叫んだ。

 

「みんな! 早く製鉄所から離れるんだ! やばいことが起こるみたいなんだよ!」

 

「え? やばいことって何なのさ?」

 

 オウガが聞くが、リュウタは脇目も振らずにバスへ走っていく。

 

「どういうことなのかしら…」

 

「良くは分からないけど…あんな必死なリュウタは見たことがない。これは…僕たちもバスに避難した方が良さそうだね」

 

「何がどうなってるのかさっぱりだけど…そうしようか」

 

 

製鉄所 上空

 

「ノーピス。それでアクトメタルはどうするつもりなのさ?」

 

「あの溶鉱炉にディノモンドの粉を投入し、テラエネルギーを発生させる。そうすれば、純粋なアクトメタルを精錬することが可能になるのだ」

 

 そう説明し終わるや否や、ノーピスは手元のボタンを押す。すると機体下部からディノモンドの粉を詰めたカプセルが発射された。

 カプセルは溶鉱炉に着弾すると、想像を絶する大爆発を引き起こした。それに伴う爆風も凄まじく、6年D組が乗ったバスをあっという間に駐車場の片隅まで押しやってしまったのである。

 やがて爆発が止むと、先ほどまであったはずの製鉄所は跡形もなく吹き飛んでおり、大きなクレーターが形成されていた。その中心で妖しげな輝きを放つ金属塊を素早く掬い取ると、アクト団の飛行機とアクトクラフトは空の彼方へ消えていく。

 後に残されたあまりにも凄惨な光景を前に、Dキッズは呆然と立ち尽くした。

 

「そんな…製鉄所を丸ごと吹き飛ばすなんて…」

 

「アクト団の奴ら…なんてことをしやがるんだ…!」

 

「こんなの…酷い。酷すぎるわ…!」

 

「…止めなきゃ。僕たちで、奴らの野望を!」

 

「あぁ…! 絶対にな!」

 

 これ以上アクト団の思い通りにはさせない…4人は改めて決意を固めたのであった…。

 

 

その後 太平洋上空

 

 精錬したアクトメタルを手に帰路を急ぐノーピスであったが、その道中彼のもとへ通信が入ってきた。

 相手はソーノイダである。

 

「ドクター。お喜び下さい。ようやく純粋なアクトメタルの精錬に成功しました。

これで今日からでも動力部の修理に取り掛かることができます」

 

『…うむ。確かにそれは喜ばしいことぞい。

だが…ノーピス。これは一体どういうことぞい?』

 

「どういうこととは?」

 

『今日本の全国でとんでもないニュースが流れておるのだぞい。『三畳市郊外の製鉄所が謎の大爆発で跡形もなく吹き飛んだ』…とな。施設の外にいた人間にも大勢の重軽傷者が出ている上、施設から脱出していなかった複数人は行方不明のまま見つかっていないそうぞい』

 

「テラエネルギーの奔流に耐えられるはずがないでしょう。この時代の最先端とは言え、我々の持つ精錬炉よりはるかに劣る設備なのですから」

 

『やはりそうだったぞいか。お前が言っていた精錬方法とは、周囲の被害を考慮せずテラエネルギーの爆発を起こすものだったのぞいな…。

ノーピス。ワシらの目的はあくまで恐竜達の回収と、この時代からの脱出ぞい。だと言うのに、こんなテロ紛いの行動に走るなど…愚の骨頂と言う他ないぞい』

 

 ソーノイダのこの言葉に、一瞬ノーピスの顔が不快げに歪む…が、すぐにその表情はいつもの不敵な笑みに上書きされた。

 

「これはこれは…ご自身が育ての親を務められたエンシェント博士と、その妻…更にはその子供まで謀殺なされた方のお言葉とは思えませんな」

 

『…言葉を慎まんかノーピスっ!』

 

「いいえ。この際ですからはっきり言わせてもらいます。

一体いつから真人間になったつもりなのです? まさか恐竜達との交流でお優しい心を取り戻されたとでも?

そんなものはまやかしです。その程度であなたの性根が変わるはずなどないでしょう。ご自身の野望のため…そのためならば養子とその家族をも手にかけることを辞さないのがドクター、あなただったはずです」

 

『何を言うか! そもそもあれはお前が提案してきたことで…』

 

「ええそうですとも。しかしオレはあくまで提案をさせていただいただけ。それを実行に移すと決意なされたのは他でもないドクターだったでしょう、違いますか?」

 

『き、貴様っ! よくもぬけぬけと…いたっ! いたたたた…』

 

「あぁ、そう興奮なさらないで下さい。お体に障りますよ。

とにかく、結果的にアクトメタルは精錬できたのですから十分でしょう。すぐにでも動力部のコーティングを…」

 

 ノーピスがそう言いかけたところで、通信が途切れた。ソーノイダが通信を切ったようである。

 

「そうやって都合の悪い話は耳を塞いで聞こうともしない…。あなたは結局、何一つ変わってなどいないんですよ」

 

 ノーピスはそう呟きながらオートパイロットをオンにし、座席に深く座り込む。

 

(…今や、あの少年達と我々のカードを合わせれば、残っている恐竜はあと僅か。もうすぐこの時代に留まる理由もなくなるというのに、周囲の影響など考えていられるか)

 

 心の中でそう呟きながら、ノーピスは頭を振る。

 

(そうだ。この時代から迅速かつ効率的に脱出するためには、いかなる手段も使うべきだ。

それに、必要なものはもうほぼ用意できたと言っていい。

動力部コーティング用のアクトメタル、戦力としては十分な外部の協力者、それと…)

 

 ずっと先…水平線の果てに見えてきたアジ島を視界に収め、ノーピスは口角を上げる。

 

「…オレの思い通りに動く…都合のいい戦士(コマ)もな」

 

 




恐竜図鑑コーナー!

「今回の恐竜は、リトル・ファイター『ヴェロキラプトル』!
名前の意味は『素早い泥棒』だぜ!」

「全長は約2メートル、体高は0.5メートルとかなり小型の肉食恐竜だよ。ちょうど七面鳥くらいの大きさだ。
化石の主な産地はモンゴルや中国、ロシア東部だね」

「この子の特徴は細長い頭もそうだけど、1番は両脚の第2指についてる大きな鉤爪よね。これはデイノニクスでも解説したけど、シックルクローっていうのよ」

「それと、ヴェロキラプトルは羽毛の痕跡が見つかっていることでも有名なんだ。ほら、前脚の化石に突起があるよね? ここに羽毛が生えていたのはほぼ確実とみられているよ。
それから…ヴェロキラプトルといえば、プロトケラトプスとの闘争化石が見つかっていることでも有名だね。
ほら、これ…右腕を噛まれながらも、もう片方の手はフリルに引っ掛けて、更に左脚を相手の腹部に食い込ませているのが分かるよね? こういう化石が見つかるのはとても珍しいことなんだよ」

「こんなに小さいのに、すごいガッツがある子よね…」

「それだけのハングリー精神がないと、厳しい恐竜時代は生き残れないだろうしね」

「それにしてもすっげえ鋭い爪だよなぁ…。もしこの爪で痒いところを掻いてもらえたら…」

「痛い思いするだけだと思うぞ…」


ジュラシック恐竜解説

「ヴェロキラプトルということで、オレからも解説をさせてもらおう。
これがオレ達の世界で広く知られている『ヴェロキラプトル』だ。体長は3〜5メートルで体高は2メートル。Dキッズ達の世界のそれと比べても、圧倒的なサイズ差だな。同じ恐竜のはずが何故ここまで違うのか…。種小名が『スピルバーグ』とかいう聞き慣れないものになっているのも気になるところだな。
また、この種族は極めて高度な知能を持っていることも明らかになっている。オレのブルーもそうだが、複雑な指示を理解する能力や、多角的な視点で状況を分析する能力が他の恐竜と比べて明らかに高いんだ。そしてその知性を活かした最大の特徴が、群れで連携して狩りを行うことだ。アルファの指示に従って配置を決めることは勿論、時には1頭が囮役を買って出て相手を油断させ、その隙に他のメンバーが背後に回り込んで仕留める…なんて芸当も見せるほどだから恐れ入るよ。
あと、これはグラント博士の研究成果なんだが…彼らは複数の鳴き声を使い分けることで仲間とコミュニケーションを取っていることも判明している。これも知性の成せる技だな。
その獰猛性と知性もあって、過去に起きたジュラシック・パーク及びワールドの関連事件では、必ず名前が上がる恐竜だ。中でも1997年…当時のInGen社社長ピーター・ラドロー氏が捕獲チームを率いてソルナ島を訪れた時は、数十人規模のハンター達がヴェロキラプトルの群れによって壊滅したという記録もあるくらいだ。
狡猾で残忍ではあるが、一方で高い知性や感情すら持ち合わせる稀代のハンター…オレはヴェロキラプトルのそんなところに惹かれたのかもしれないな」


ということで、今回はここまでです。
返す返すにはなりますが、またしても更新が遅れてしまって申し訳ありません。実は前編投稿の時点で半分は書き上がっていたのですが、それから暫く執筆の時間が取れず、かれこれ2ヶ月程も更新できませんでした。
最低でも1ヶ月に1話は更新できるよう努力してまいる所存ですが…勿論これは最低目標として、もう少し更新頻度を上げていきたいところです。
さて次回第37話『荒野の決闘!猛炎纏う幻の恐竜!』史実では存在を抹消されたあの恐竜の登場回です。是非ご期待下さい。
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