古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

ある日、恐竜達の島が爆撃される夢を見たオウガ。その中で見たレクシィとしか思えないティラノサウルスの姿が、彼の中に強く残っていた。
そんな中小学校の社会見学で製鉄所を訪れたDキッズだったが、そこへアクト団が襲撃をかけてくる。彼らはアクトメタルを精錬できる場所を探していたのだ。
製鉄所内で彼らからアクトメタルを奪い、逃げ続けていたリュウタの前に、アクト団のノーピスが姿を現す。
ノーピスの技カードから召喚されたヴェロキラプトルにガブもイナズマも倒され、万事休すかと思われたリュウタだったが、アクトメタルを盾にすることでカードを返してもらおうとする。
それを何故かノーピスは快諾し、彼にアクトメタルを溶鉱炉へと投げ込ませた。
更に彼にすぐ製鉄所から立ち去るよう警告すると、ノーピスは溶鉱炉へディノモンドの粉末を投入して爆発的な反応を引き起こす。
すっかり更地となった製鉄所跡から飛び去っていくアクト団を見送りながら、Dキッズ達は改めて打倒アクト団を決意するのであった。




第37話:荒野の決闘!猛炎纏う幻の恐竜!
前編


アクト団基地 アジ島

 

 アクトメタルを巡る騒動から1週間弱が経過したこの日、ソーノイダは相変わらずベッドで横になっていた。まだぎっくり腰が治っていないのだ。

 しかし、このところ彼の思考の大半を占めているのはぎっくり腰などではなく、あの時ノーピスからかけられた言葉についてだった。

 

『一体いつから真人間になったつもりなのです? まさか恐竜達との交流でお優しい心を取り戻されたとでも?

そんなものはまやかしです。その程度であなたの性根が変わるはずがないでしょう。ご自身の野望…そのためならば養子やその家族に手をかけることすら辞さないのがドクター、あなただったはずです』

 

(ノーピスめ…知ったふうな口を聞きおって…!

ワシとてあそこまでやるつもりはなかったぞい。精々ワシの研究の価値をエンシェント達に分からせられれば十分だったのだぞい。

そうぞい…ワシは悪くないぞい…。あの土壇場でノーピスがあんな行動に出なければ…。

だが、そもそもワシがノーピスの誘いを拒否しておれば、こんなことにはならんかったのかぞい…)

 

 最近の彼の脳内を支配しているのは、このことばかりだった。彼はひたすら自己正当化と自己嫌悪を繰り返し続けていたのだ。そのせいか最近はめっきり口数も少なくなってしまっていた。

 

「ドクター♪ お粥が出来ましたわよ〜!」

 

 そんな彼の心理などいざ知らず、ウサラパ達工作員3人組が台車を押して彼の部屋へと入ってきた。何故かその顔には、わざとらしい笑顔が浮かんでいる。

 

「早く良くなって下さいねぇ〜」

 

「「「あ、フ〜、フ〜、フ〜…」」」

 

 挙句の果てには、3人揃ってお粥に息を吹きかけ、冷ましていますアピールをしている。このあまりにわざとらしい態度は、ピリピリしている今のソーノイダにとっては怒りを掻き立てるものにしかならなかった。

 

「…お前ら、ふざけておるのかぞい」

 

「ええっ? 何かお気に障ったッスか?」

 

「どうせワシに媚を売ってサボろうとしておるのじゃろう!? やり方がわざとらしすぎるぞい!」

 

「み、ミー達はそんなつもりじゃ…」

 

「そんなことをしとる暇があったら、とっととカードの回収に行ってこいぞーい!」

 

 そうがなり立てると、ソーノイダは近くにあった枕やらクッションやらを投げつけ始めた。これにはたまらず、ウサラパ達は急ぎ足で退散していく。

 ようやく部屋が静かになったところで、落ち着きを取り戻したソーノイダは再び自己嫌悪に陥った。

 

「はぁ…ワシは何をやっとるんじゃぞい…」

 

 そして彼はベッドの上を這うようにして台車まで辿り着くと、お粥を食べ始めた。

 

「のほほ…もうお粥も食べ飽きてきたぞい…。

何か別のもの…とは言ってもタルボーンヌは融通が効かんからのう…」

 

 

 一方、部屋から叩き出されたウサラパ達は、

 

「ドクターったら、随分不機嫌だったねぇ」

 

「仕方ないッスよ。ぎっくり腰になってからずっとベッドの上ッスから、ストレスも相当なもんッス」

 

「まあ、サボりたかったのは嘘じゃないザンスけどねぇ〜」

 

「やーっぱりそううまくはいかないよねぇ。

取り敢えず出撃の用意だけでもやっておこっか」

 

 そんなことを喋りながら自室へと戻ってきた3人だったが、そこでふとあることに気がつく。

 

「…あら? アタシのアクトホルダーは?」

 

「見当たらないんザンスか? ミーのはほら、ここにあるザンスけど…」

 

「おれのもないッス!」

 

 なんと、ウサラパとエドが使っているアクトホルダーがティラノとサイカのカードごとなくなっていたのだ。慌てて部屋中を探し回った3人だったが、アクトホルダーもカードも見つからなかったのであった…。

 

 

その頃 ノーピスの研究室

 

「ノーピス。これ、手に入れてきたよ」

 

「なかなかの手際の良さだな。流石だよ」

 

 ロトの手には、2台のアクトホルダーがある。それは言うまでもなく、ウサラパ達が今探しているものだった。

 

「オレ達が早く帰るためには、残りの恐竜カードを全て回収することが必須事項だ。

つまりは君の働き次第ということだな」

 

「分かってるって。リストを見るに、残りの所在不明の恐竜は7体なんだろ? それくらいボクとカスモサウルスなら簡単さ。

それに、勉強なんかよりこっちの方が楽しそうだしね」

 

「それは心強い。頼りにしているよ。

もしピンチの時はこのカードを使うといい。きっと役に立つはずだ」

 

 その言葉と共に、ノーピスが三角形のカードを差し出した。前回製鉄所で活躍した、ヴェロキラプトルのカードだ。

 

「ヴェロキラプトル…もしかしてこれが、ノーピスが新開発したっていうトリプルスラッシュカード!?」

 

「君の実力に期待していることの証明だと思ってくれていい。恐竜カードを全て回収し、アクト団から『Sin-D』の影響力を取り除けるのは君しかいないんだ。よろしく頼んだぞ」

 

「…っ、ありがとう! ボク、絶対ノーピスの期待に応えてみせるよ! それじゃあロアも呼んでくる!」

 

 そう言うや否やロトはロアを呼びに向かった。

 しかし…

 

「行かなーい」

 

「…は?」

 

「あ〜らお兄さま。聞こえなかったの?

行・か・な・い・って言ったの」

 

「なっ、何言ってるんだよロア! ウサラパ達が頼りにならないのは知ってるだろ! ボク達が早くカードを集めないと、いつになっても家に帰れないんだぞ!」

 

「パパとママに会いたいのはわたしだって同じよ。でも散らばった恐竜カードの殆どはDキッズが持ってるんだし、安否不明のカードだけ集めても帰れないじゃない」

 

「それは…」

 

「大体、何でお兄さまは今更わたしに声をかけたの?

いつも通り仲良しのノーピスと2人で行ってくればいいじゃない」

 

 そんなロアの言葉を聞いているうちに、ロトは言いようのない感情を覚え始めていた。それはいつも自分の後ろをついて歩いていたはずの妹が反抗的な態度を見せたことに対する困惑なのか、はたまたそんな妹に言い負かされていることに対する苛立ちなのか…。

 

「…あぁ、そうかよ。なら勝手にしろ!」

 

 自分の抱く感情の正体は分からなかったものの、激情の赴くままにロトはそう言い捨てると、部屋から飛び出していった。

 ロアはそんな兄の姿をため息交じりに見送ると、手元のタブレットを操作…しかけたところでハッとなって立ち上がった。

 

「いけない! そろそろあの子たちにご飯持っていかないと!」

 

 そして彼女はタブレットを小脇に抱えて部屋から出ると、ロトが向かったのとは反対方向の通路をまっすぐ走っていったのだった…。

 

 

その頃 日本国三畳市 リュウタ宅

 

 この日もDキッズで集合することになっていたため、オウガとマルムは連れ立ってリュウタの家へとやって来た。

 しかし出迎えたのがレックスだけだったので訝しんでいたところ、リュウタはリビングで西部劇に熱中していたのである。

 

「あら、西部劇?」

 

「リュウタがこういうのを観てるなんて珍しいね」

 

「パパさんのライブラリから見つけてきたんだよ。そしたらリュウタのやつ、すっかりハマっちゃって…」

 

「しーッ!」

 

 3人の会話を遮るようにリュウタが静かにするよう促すと、すぐに画面へと目を戻す。今から1番いい場面…決闘のシーンに入るらしい。

 レックスが小声で補足した内容によると、赤いマフラーを巻いている方が保安官にして主人公のワット、焦げ茶色のポンチョを着ている方が今回の悪役で、化石荒らしのホリデーという設定らしい。

 

『先に吠えた奴が負け…。それがこの世の定めだ』

 

『抜かせ!』

 

 両者は定位置に着くのとほぼ同時に銃を抜き、引き金を引く…。

 辺りに銃声がこだまし、ホリデーが勝ち誇った笑みを浮かべる…が、それはすぐに苦悶の表情へと変わり、前のめりに倒れた。ワットは見事に決闘を制したのだ。

 

「すっげぇーっ! カッコいいーッ!

『先に吠えた奴が負け…それが…』」

 

 興奮冷めやらぬリュウタが腰からディノホルダーを引き抜いて構え、ワットの真似をしようとする。

 

『ガァブッ!』

 

『ゴロロロッ!』

 

 しかし、ガブとイナズマに食らいつかれたせいで台詞は途中で途切れてしまう。しかも、ガブは彼の手からディノホルダーを奪い取ると、イナズマと追いかけっこを始めてしまった。

 

「うわっ! 何すんだよガブ! こら! イナズマもやめろって!」

 

 更にそこへレクシィ以外のチビ恐竜達も交ざり、リビングの中を縦横無尽に走り回り始める。

 

「先に咥えた方が勝ちみたいだな」

 

「ほんとね、荒野のガンマンは」

 

 喧しく駆け回るリュウタ達を見ながら、ふとレクシィが口を開いた。

 

『先に吠えた奴が負け、か。決闘というのが1対1の勝負のことなら、私も何度か経験したことはある』

 

「そう言えばレクシィはそうだったよね。その体の傷は、これまでの戦いの証みたいなものだし」

 

『そうだな。その中でも負けかけた相手は2体だけ…。

あのインドミナスとかいう白い奴と、ギガノトサウルスだけだ』

 

「でも、それは仕方ないんじゃない?

インドミナスは君たちティラノサウルスの上位互換みたいな存在だし、ギガノトと戦った時、君はもう老い衰えていたんじゃなかったっけ」

 

『それを理由にするのは簡単だが、仕方ないと諦めるのは愚の骨頂だぞ、オウガ。

我々の決闘とはパフォーマンスではない。命の取り合いだ。勝った方は生き残り、負けた方は滅びる。それが自然の摂理というものだ。

私は過去の敗北では幸いにも命を拾えたが…次はないかもしれない』

 

 もっとも…と前置きした上でレクシィが言葉を続ける。

 

『本来自然界に再び現れるべきではなかった私が自然を語るのもおかしな話だがな』

 

「レクシィ、そんなこと言わないでよ…」

 

 

その頃 アメリカ合衆国 オクラホマ州

 

「あ〜あ。今頃町は祭りで盛り上がってるだろうな〜…」

 

「だってのに俺たちゃ留守番で牛の世話かよ。ケッ、面白くねぇ!」

 

 とある牧場で、焚き火を前に2人の若い男が愚痴を零している。どうやら牛の番のせいで祭りに参加できなくなったらしい。

 不満を吐き捨てながらピッチフォークで焚き火を掻き混ぜていると、何やら金属音が響いた。何事かと引き抜いてみると、フォークの先にいつもの卵型カプセルが挟まっていたのである。

 

「なんだこりゃ?」

 

「卵みてぇな奇妙な形だが…少なくとも金目のもんには見えねぇな」

 

「チェッ! ますます面白くねぇや!」

 

 男が苛立った様子でカプセルを再び焚き火の中へと投げ込む。すると炎の中でカプセルは2つに割れ、中から2枚のカードを排出した。

 すると、赤い光と共にカードが変化していく…。

 

 やがて光の中から姿を現したのは、アロサウルスにそっくりな恐竜だった。しかしその体格は、レックスのアインとは比べ物にならない位大きい…。

 その恐竜が発したおぞましい雄叫びに怯えたのか、牧場の牛たちは一斉に駆け出し、柵を突き破って逃げていく。しかし逃げるものを追うのは生物の本能。恐竜もまたその後を追っていったのだった…。

 

 

その頃 Dラボ

 

 恐竜出現の通知を受けたDキッズは、急ぎDラボへと足を運んだ。

 

「リアスさん! 今回はどこ?」

 

「ここはアメリカ合衆国の…オクラホマ州ね」

 

「おっ! オクラホマと言えばカウボーイの街だな!

イィーハァーッ!」

 

「それに今の時期でしたら西部開拓時代に因んだ祭りも行われているはずです。

…では、私からも恐竜の情報を」

 

 続いてウー博士が自分のコンソールを操作する。すると巨大モニターの表示が切り替わり、オレンジの反応が2つ現れた。

 

「これが今回検出された反応です。しかし妙なことに…この恐竜達の反応はほぼ重なっているようですね」

 

「つまり…ナイアガラで出会ったバリオニクスみたいに徒党を組んで行動しているってことですか?」

 

「恐らくそうでしょう。我々のリストにある中だと…複数頭で行動する肉食恐竜も存在します。

どうか十分に気をつけて下さいね」

 

「分かった! 早速行ってくるよ…って、その前に…。

父さん! これ借りてくね!」

 

 一旦テレポーターに向かいかけたリュウタは引き返すと、古代博士のテンガロンハットを掠め取っていく。

 

「おっ…と。持っていくのは構わないが大事に使えよ!

そうだリュウタ! 西部は危険がいっぱいだ! くれぐれも牛の暴走には気をつけろよ!」

 

 そう言いながらリュウタへ愛用のカメレオン鞭も投げ渡す。

 

「へへっ、分かってるって! じゃ、行ってきまーす!」

 

 更にそこへ準備を整えたミサが合流したところで、5人はそれぞれのデバイスを操作してテレポートしていく。

 

「う〜む…しかしいいなぁ…。西部劇の世界!

牛とカウボーイ! そして見渡す限りの荒野!」

 

「あと、ガラガラヘビ」

 

「…あっ」

 

「確かにアメリカの荒野といえばガラガラヘビはつきものですね。昔あったカウボーイの人形にも、『俺のブーツにゃガラガラヘビ』なんて音声が入っていたくらいですし」

 

「まあ、そうなんですね」

 

 ウー博士とリアスが談笑する中、古代博士は心配からかすっかり青褪めていたのだった…。

 

 

アメリカ合衆国 オクラホマ州

 

 Dキッズ達が降り立ったのは、賑やかな町の真ん中だった。どうやらここでは、西部開拓時代を回顧する祭りが開かれているようである。

 そのせいもあってか、町中にはテンガロンハットやカウボーイブーツを身に着けた人々でごった返していた。

 

「すっげぇ〜! 本物のカウボーイだ!」

 

「お祭りかしら?」

 

「この様子を見るに、町の人はまだ恐竜が現れたことを知らないみたいだな」

 

 レックスの言う通り、町の人々から恐怖や怯えといったものは感じられなかった。まだターゲットの恐竜はここには来ていないらしい。

 

「よし、そうと決まれば恐竜を探しに行こう。みんな、ディノサーチは起動できる?」

 

「勿論!」

 

 なるべく無関係の人々は巻き込まずに恐竜を確保できる機会ということで、5人は顔を突き合わせて各々のデバイスを確認した。すると…。

 

「おっ、出たぜ!」

 

「赤の反応はまだこの町からは遠そうね…」

 

「それなら、町の外で進行方向を予測して、そこで張り込みしよう」

 

「えーっと俺達の方はっと…」

 

 サーチ画面を確認していたオウガとミサの動きが止まった。なんと2つのオレンジの反応は、急速に町の方へ接近してきていたのである。

 

「みんな、大変! オレンジの反応が両方とも、この町目指して一直線に向かってきてるわ!」

 

「えっ…!? それホントなの!」

 

「表示を見る限り、間違いない。これは今すぐ対処しないと…」

 

「お、おい! でも赤い方はどうするんだよ! このままじゃ通過していっちゃうぜ!」

 

「…仕方ない! 俺とミサさんでこの恐竜達は対処する! みんなはもう片方を頼む!」

 

「了解!」

 

「分かったわ!」

 

「おう! 任せたぜ!」

 

 ということで毎度恒例の役割分担をすることとなり、オウガとミサは連れ立ってオレンジの反応を迎え討つべく向かっていった。

 そして、リュウタ達も赤い反応が示す先へ向かおうとしたのだが…。

 

「イヤッホー! 祭りのメインイベント・ロデオグランプリもいよいよ最高潮だ!

この町1番の暴れ馬を見事乗りこなせる、本物のカウボーイは現れるのかー!?」

 

 その道中、彼らはロデオ大会の会場前で足を止めた。ちょうど1人の男が挑戦していたようだが、敢え無く振り落とされてしまう。

 

「あーっと残念! 失敗だー!

さぁ、次の挑戦者は? 勇気のあるカウボーイ野郎はいないのかーっ!?」

 

 男が係の者に支えられながら退場したところで、司会者が次の挑戦者を募る。しかし先ほどの暴れぶりを見せつけられた後では、挑もうとする者は誰もいなかった。

 

 だが、その時…司会者のすぐそばでスッと手が挙げられた。

 

「んん? 君が挑戦するのかい? 勇気は買うがそんな小さな体で大丈夫かな?」

 

 手を挙げた当人に、会場中の視線が集まる。リュウタ達も釣られてそちらへと目を向け…思わず声を上げた。

 

「あっ! あいつは!」

 

「アクト団のロト!」

 

「もう来てたなんて!」

 

 なんと、手を挙げたのはロトだったのである。とっくに現地入りしていたようだ。しかしロトは司会者からの問いかけに首を振った。

 

「いやいや、そうじゃなくて…ボクはある人を推薦したくて名乗り出たんだ」

 

「なるほど、推薦人か! これは面白くなってきた!

では、君が推薦するのは誰かな?」

 

「それは…」

 

 ロトは一度言葉を切ってからゆっくりと指を向けた。その指先が指し示したのは…なんとリュウタだったのだ。

 

「あそこにいるツンツン頭のリュウタって奴さ」

 

 これには会場中からどよめきが上がる。当然リュウタ達も突然の話で呆気に取られてしまっていた。

 そんな彼らの隙につけ込むように、ロトは続ける。

 

「彼は日本のロデオチャンピオンなんだ。きっとカウボーイの本場のここでも立派な乗りこなしを見せてくれるはずだよ!」

 

 ロトの言葉でどよめきは歓声へと変わり、あちこちから指笛まで聞こえてくる。

 だが、当のリュウタ達にはたまったものではなかった。

 

「おいおい…やっべぇぞこれ…」

 

「ちょっと! 口からでまかせ言わないでよ!」

 

「何だぁい? 色々理由を並べて…本当は怖いんだろ?」

 

「何だとぉ…!」

 

「それとも…恐竜を飼ってるくせに馬にすら乗れないのかい? Dキッズともあろう者が情けないね」

 

「ぐぅぬぅぅぅぅ…! 言わせておけば…!」

 

 次々とロトが発する挑発の言葉でリュウタはすっかり頭に血が昇ってしまったらしく、怒りの感情の赴くまま会場の中へと躍り出た。

 

「よぉし! やってやろうじゃねぇかよこの野郎!

馬ぐらい乗りこなしてやるぜ!」

 

「り、リュウタ!」

 

「待てよ! そんなことやってる場合か! 今はやるべきことがあるだろ!

ったく…もういい! 行くぞエース! アイン!」

 

 しかし、頭に血が昇ったリュウタは歩みを止めず、手綱で抑えつけられた馬に跨り始める。これに呆れたレックスは、その場から立ち去ってしまった。

 マルムはレックスを引き止めようとしたものの、リュウタをここに1人残しておくわけにもいかないため、この場に残ることにしたようだ。

 

「さぁ、準備はいいかい? ボーイ!」

 

「いつでもいいぜ!」

 

「OK!」

 

「本当に大丈夫かしら…」

 

「ま、1秒保てばいい方だろうけどね」

 

 マルムやロトが見守る中、司会者が高らかに開始の合図をする。

 

「では、ロデオチャレンジ、Ready…Goooo!」

 

 椅子から転げ落ちるほどの勢いで司会者が開始宣言をすると、拘束から解き放たれた馬がリュウタを乗せたまま激しく暴れ出した。リュウタは何とか手綱を握っているものの、掴まっているのがやっとの状態である。

 そんな必死な割には意外と堪えられているのが観衆には受けたようで、どんどん会場の空気はヒートアップしていった。

 

「も、もう無理だっ、と、止めてくれー!」

 

「もう…だから言ったのに」

 

「アハハ、けっこうやれてるじゃないか。もう少しくらい頑張れよー」

 

 リュウタの悲痛な声も歓声に掻き消され、ギブアップが承諾されることはなかった。

 と、そこでリュウタは腰に差していたカメレオン鞭のことを思い出した。確か競馬か何かで馬に鞭を入れている1幕があったはず。それならば…。

 

「そうだ! こいつで…えいっ!」

 

 閃きのままに、リュウタは勢いよく鞭を振るい、馬の尻を引っ叩いた。すると馬は悲鳴を上げて勢いよく駆け出すと…柵を飛び越えてどこかへ走り去ってしまったのだ…それもリュウタを乗せたままで。

 

「うわぁーっ! どこ行くんだよ〜…」

 

「うっ、馬が逃げた! みんな追うんだ!」

 

 司会者の指示に従い、係のカウボーイ達が投げ縄を手にリュウタの後を追いかけていく。そしてその後を、マルムやロトも追いかけていくのだった…。

 

 

その頃 町外れの荒野

 

 リュウタが馬に文字通り振り回されている頃、町から少し離れた荒野を歩く3人組の姿があった。

 言うまでもないが、アクト団工作員の3人である。どうやら現地人に不審がられないよう飛行機をどこかに隠し、カウボーイに扮して恐竜の出現場所に向かっているようだ。

 その彼らを乗せているのは、馬…ではなく、馬を模した段ボールを被ったアクトロイド達であった。

 

「ハイ・ヨーッ! どうだい? なかなか決まってるだろぉ?」

 

「さっすがウサラパ様! いかにも西部の札付き顔ザンス…もげーっ!?」

 

 褒めているのか貶しているのか分からない言葉を吐いたノラッティ〜の頭に、ウサラパの鉄拳が炸裂する。

 

「札付きは余計だよ!」

 

「にしても、おれの分のアクトホルダーだけでも見つかって良かったッスね」

 

「そうザンスねぇ。出撃前にもう一度部屋を探そうと思ったら、エドの机の上にあったなんて驚きザンス」

 

「でも、あんな目立つところにあったのに気づかないはずないと思うんスけど…」

 

「灯台下暗しって言葉もあるし、身近なところほど見落とすものだよ。…ま、相変わらずアタシのは見つからなかったけどさ」

 

「帰ってからまた探せばきっと見つかるッスよ…ん? 何スかねあれ?」

 

 その時、エドが遥か前方を指差した。そこでは何故か猛烈な土煙が上がっている。

 

「砂嵐ザンスかね?」

 

「砂嵐ならもっと範囲が大きいもんだろぉ? それに…何か聞こえないかい?」

 

 ウサラパの言葉を受けてエドとノラッティ〜も耳を澄ますと、モーモーという声が聞こえてくる。やがて土煙が近づいてくると、それらは大量の牛が立てているものだと分かった。

 

「ウワーッ! 牛があんなに!」

 

「すごい数ッスね。あれを全部ステーキにしたら、何食分になるんスかねぇ?」

 

「牛はいいんだよ! ほらよく見な! 後ろに恐竜がくっついてきてるじゃないか!」

 

 逃げる牛たちを猛追しているのは、先ほど牧場に現れた超大型獣脚類だった。あの牧場からここまでずっと追いかけっこをしてきたということなのだろう。

 

「あれは…多分アロサウルスザンスね!

出てくるザンス! スピノちゃーん!」

 

グァギュオォォォォッ!!

 

 すかさずノラッティ〜がスピノを召喚する。するとスピノは向かってくる牛たちを蹴散らしながらまっすぐアロサウルスと思しき恐竜へ突進していった。しかしその恐竜はあっさり突進を受け止めるとスピノの首筋に食らいつき、投げ飛ばしてしまったのだ。

 

「「えええっ!?」」

 

「な、何してんだいスピノ! 早く倒しておしまい!」

 

 ウサラパの声を受け、スピノは素早く立ち上がると再び突進攻撃を仕掛ける。だが今度は軽いステップで避けられた上、急制動の隙を突かれ頭突きで弾き飛ばされてしまった。

 更にダメ押しとばかりに、相手の恐竜の体が赤い光と業火で包まれる…技を使うつもりなのだ。

 それは口内に炎を溜めると大きく振り被り、大地をしっかりと踏みしめながら口から猛炎のビームを放った。炎は猛烈な勢いでスピノを押し流し、あっさりとカードへ戻してしまう。

 

「イヤーッ! あっという間にやられちゃったわ!」

 

「今の技は…」

 

「『猛炎奔流(マグマブラスター)』…炎属性だと最強クラスの超技ッス…」

 

 しかし驚いてばかりもいられない。ノラッティ〜は素早くマジックハンドを手に取り、スピノのカードを回収した。

 

「技以前にあいつ強すぎるザンス! スピノが手も足も出てなかったザンス!」

 

「エド! 今度はサイカでいくよ!」

 

「了解ッス!…あれぇ?」

 

 アクトホルダーのカード格納スペースを覗いたエドが素っ頓狂な声を上げる。なんと、そこにいつも仕舞っておいているサイカと土属性の技カードが全てなくなっていたのだ。

 

「ウサラパ様! カードが1枚も入ってないッス!」

 

「はあっ!? どういうことなんだい!?」

 

「分からないッス! ここからカードを抜いた記憶はないし…」

 

 エドがそう言いかけた時だった。彼らを巨大な影が覆ったのである。3人が揃って頭上を仰ぎ見ると、ちょうど彼らを覗き込むあの恐竜と目が合った。

 

「「「ひぇぇぇぇ…ズビズバ〜…!!」」」

 

 すぐさま彼らは踵を返して逃げようとしたが、そこへ長大な尻尾による一撃を貰い、アクトロイド諸共空の彼方へ吹き飛ばされてしまったのだった。

 

 

その頃 町の中

 

 相変わらずリュウタを乗せた馬は暴走していた。手練のカウボーイ達による投げ縄も全て避けきり、逃走を続けていたのである。

 …だが、突然馬が急停止したことで、リュウタの身体が前へと投げ出される。痛みを堪えながらもリュウタが前を見ると、前方から土煙と共に大量の牛たちが殺到してきていた。

 疲れと痛みを訴える体に鞭を打ち、彼は何とか間一髪路地に逃げ込んで事なきを得られた。

 

「大量の牛…父さんが言ってた通りだ…」

 

 すると、牛達がやって来た方向から大きな足音が聞こえてくる。そちらへ彼が目を向けると…あのアロサウルスそっくりの恐竜が町中へ足を踏み入れる光景が目に入ってきたのだった。

 

 

その頃 町の西側

 

 一方、リュウタが大変な目にあっているとは知りもしないオウガとミサは、オレンジの反応の恐竜を迎え討つべく荒野を進んでいた。

 

「ミサさん。恐竜まであと少しみたいですね」

 

「そうみたいね。ウー博士は2体組の恐竜だって言ってたけど…一体どんな相手なのかしら…」

 

 と、突然彼らのチビ恐竜達が足を止める。レクシィとエンピロは鼻をひくつかせながら低く唸り、アメジストは背中の板を怒らせて警戒感を顕にしていた。

 …と、レクシィがディノラウザーを通して話しかけてくる。

 

『オウガ…来たぞ。10時の方角だ』

 

「10時ってことは…こっち?」

 

 言われた方向へオウガが目を向けると、それらは確かにいた。

 岩山を背景に、2頭の大型獣脚類が彼らの方へ歩いてきている。どちらも長めの頭にしっかりとした三つ指の前脚、そして細めながらも大きな体格で、背中は大きく盛り上がっている。

 そして風上にいる2頭からは、強烈な血の匂いを含んだ風が吹き付けていたのだった…。




今回はここまでです。
年末で忙しい時期ではありましたが、何とか年明けまでに仕上げられて一安心です。
それでは皆様、残り僅かではありますがよいお年をお過ごし下さい。
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