古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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サウロファガナクス編の後編になります。
かれこれ5ヶ月以上も更新間隔が空いてしまい、大変申し訳ありませんでした。


後編

アジ島外周部 熱帯雨林地帯

 

 アジ島の森の奥底…ラプトル達の営巣地にロアの姿があった。いつも通り彼らへの給餌ついでに戯れているようだ。

 今は巣の塚に背を預けながら、タブレットで映像を視聴している。

 

『ロア、早くー!』

 

『うん! じゃあ、行ってくるね! パパ、ママ!』

 

『あんまりお爺ちゃんの邪魔をするんじゃないぞ!』

 

『今夜のご馳走、楽しみにしててね!』

 

『うん! すぐ帰ってくるからー!』

 

 それは、ロトとロアが両親の家から出発した時の記録映像だった。確かあの日はクリスマス・イブで、夜にはとびきりのご馳走が食べられるはずだった。

 それなのに、自分達はいつまでここにいなければいけないんだろう…そんな思いが、ロアの心を支配していた。

 

「…おうちに帰りたいな…」

 

 そう呟いて俯いた彼女の背に、白いラプトルが鼻面を擦り付けてきた。

 

「もしかして…慰めてくれてるの?」

 

 ロアの問いかけに、ラプトルは小さく喉を鳴らして答える。そして彼女の周りへ、他のラプトル達も集まってきた。

 

「ありがとう…。とってもあったかいわ…」

 

 ロアはそうお礼をいい、微笑んでみせたのだった。

 

 

戻ってアメリカ合衆国 オクラホマ州

 

 町を見下ろす岩山の上に、ノーピスの姿があった。彼の視線の先を見るに、オウガ達の戦いを観察しているようだ。

その口元に不敵な笑みを浮かべながら、ノーピスは先ほどまでの出来事を思い返す。

 

 それは、彼がロトを降ろしてしばらくした時だった。機内でコンソールを操作していた彼の視界の端に、1頭の牛が駆けていくところが目に入ったのだ。

 大方、近くの牧場から脱走したやつなのだろう…そう結論付けた彼の視界を、今度はとんでもなく大きな影が2つも横切っていく。これには流石のノーピスも驚かざるを得なかった。そのシルエットは、紛れもなく獣脚類のものだったのだ。

 すぐさまコンソールを操作し、アクトサーチの画面に切り替える。確かに反応はあるが、ここからかなり離れている。

 

(つまり、俺が今見た奴らはアクトサーチに反応しない恐竜ということか…)

 

 とにかく、実際に見て確かめなければ…そう考えたノーピスはすぐさま飛行機から降り、後をつけていく。やがて強い血の匂いと咀嚼音を感じ取り、岩陰から注意深く様子を窺うと…そこでは2頭の大型獣脚類が牛の死骸を荒々しく食べていた。

 

(体長は8メートル強、鼻面は少し長く、前腕の指は3本。そして背中が緩く盛り上がっているところを見るに、こいつらはベックレスピナクスか。

確か俺達が回収した恐竜にこいつらはいなかったはず。それがよりにもよって俺の目の前に姿を現すとは…面白いじゃないか)

 

 すかさず手元のコンソールを弄り、乗ってきた飛行機から何かを射出する。それはアクトボールであった。

 

「ならば精々、俺の役に立ってもらうぞ」

 

 さらにそれをベックレスピナクス達へと向かわせ、彼らの頭上で放電させた。突然電撃を受け、2頭が怒りの声を上げる。それから2頭は、相変わらず電撃を放ち続けるアクトボールを追いかける形でその場を離れていった。

 

 

 そういうわけで、ノーピスはここまであのベックレスピナクスをトレインしてきたのである。全ては目標の恐竜を確保するため、Dキッズの分断を狙った作戦であった。

 

「さて…カロリディーの奴があそこまで目の敵にしているそのティラノサウルスの力も、ついでに見せてもらうぞ」

 

 

その頃 町では…

 

 件の巨大獣脚類は、リュウタや町の人間には目もくれずに牛達を追いかけていってしまった。ようやく安全が確保されたところで、リュウタの尻に馬から振り落とされた時の痛みが走る。

 

「いっ!? いててて…」

 

「大丈夫だったか! リュウタ!」

 

「あ、あぁ…何とかな」

 

「今のってアロサウルスかしら…」

 

「確かにどこからどう見てもアロサウルスだったけど…僕のアインと比べても尋常じゃない大きさだった。

あれは明らかに普通じゃないぞ」

 

「その通り。あいつはアロサウルス・アナクス。

昔昔のそのまた昔、サウロファガナクスって呼ばれてた恐竜さ」

 

 その言葉の出た方へ3人が振り向くと、そこにはいつの間にかロトの姿があった。

 

「やぁ、いいもの見せてもらったよ。あんな暴れ馬に振り落とされて尻を痛めたくらいなんてラッキーじゃないか」

 

「何がいいもの見せてもらっただ! お前のせいでオレは…」

 

 抗議の声を上げようとしたところで、リュウタが尻を押さえて悶絶する。

 

「…それより、今あの恐竜がアロサウルスだって言ったわよね。どういうことなの?」

 

「本当ならあいつはアロサウルス・アナクス…そこのレックスが持ってるやつの同属亜種なんだけどね。

お爺ちゃんがそいつの旧名:サウロファガナクスをすごく気に入っててさ、カードにする時にわざわざその名前を付けたんだよ」

 

「敢えて失われた名前をつけたっていうのか…」

 

「ま、ニックネームみたいなもんだよ。そもそも恐竜の学名自体、ボク達人間が勝手に決めたもんなんだから別にいいだろ?

それじゃ、ボクはあいつを回収してくるよ。あいつを含めてあと7種類で全てのカードをコンプリートできるところまで来てるんだからさ」

 

「7種類? それじゃあ世界に残っている恐竜カードはそれだけってことなの?」

 

「そんなことも知らないで今まで恐竜カードを集めてたのかい? 呆れたもんだな。じゃ、またね」

 

 そう言い残すと、ロトはあの恐竜…サウロファガナクスが走り去った方向へ消えていった。

 

「あっ…おいコラーッ!」

 

「早く追いかけましょう! ロトより先にアタシ達が保護しないと!」

 

「おう! 行くぞガブ! イナズ…マ?」

 

 気合いを入れ直し、早速サウロファガナクスの保護に向かおうとしたリュウタ一行だったが、そこでガブとイナズマの姿がないことに気がついた。マルム達と一緒にリュウタを追っていたはずが、どこかではぐれてしまったらしい。

 

「あれ? いないわ!」

 

「まぁたあいつら迷子になりやがって…おーい! ガーブー! イナズマー!」

 

 

その頃 町の他の区画

 

 その区画では、サウロファガナクスが満足げな様子で牛の肉を食らっていた。ようやく1頭を仕留められたようだ。その様子を、近くの建物の屋上から窺っている者がいる…。

 

『ガァブ…』

 

『ゴロロ…』

 

 ガブとイナズマだ。どういうわけかここに辿り着いたらしい。やがて2頭は示し合わせたように頷くと、揃ってサウロファガナクスの背中に飛び乗り、食らいついた。

 突然背中に走った痛みにサウロファガナクスは訝しげに身を捩るが、腹を満たすことが先だと判断したのが食事を再開したのであった…。

 

 

「はぁ〜…今回ばかりは死ぬかと思ったよ〜…」

 

「あぁ…腹減ったッス…」

 

 その頃、サウロファガナクスに尻尾で空高く跳ね飛ばされたウサラパ達もようやく町へと入っていた。そんな彼らを出迎えたのは、恐竜…ではなく、フォークダンスの会場だった。

 

「んお? お祭りザンスかね?」

 

「あっ! そっか! オクラホマといえば、オクラホマミキサー…つまりフォークダンスだよ! 懐かしいねぇ〜!」

 

 逸る気持ちを抑えきれなくなったのか、ウサラパが音楽に合わせてステップを踏み始める。そんな彼女に目をつけたのは、現地の若い男性だった。それも、ウサラパ好みのイケメンである。

 

「Hi,レディ。私と踊っていただけませんか?」

 

「へっ? あっ、はい、喜んで♡」

 

 すっかりしおらしい様子で男と連れ立ってダンス会場へと入っていくウサラパを、ノラッティ〜達は送り出した。

 

「でも、あの恐竜を探さなくていいんスかね?」

 

「まあそれは後でも大丈夫ザンしょ。それより見るザンス。ウサラパ様、珍しくあんなイケメンと踊れて幸せそうザンスよ」

 

「ほんと。いっつもウサラパ様に迫ってくるのはあのジイさん博士だけッスもんねぇ」

 

 フォークダンスに興じるウサラパを眺めながら、ノラッティ〜とエドがそんな会話を交わす。

 しかしその会場へ、とんでもない乱入者が近づいていることを彼らはまだ知らないのであった。

 

 

 それから少し経って、ガブとイナズマを探していたDキッズは…。

 

「ガブとイナズマのやつ、本当にどこ行っちゃったんだよ…」

 

「思い返してみれば、あの子たちいつも迷子になってる気がするわよね」

 

「それは言えてる。…あっ、あれ!」

 

 と、そこで突然レックスが前を指差す。リュウタとマルムもそちらへ視線を向けると…体を大きく揺するサウロファガナクスと、その背に食らいついているガブとイナズマの姿があった。傍らに食べかけの牛の遺体が放置されているところを見ると、食事中に我慢の限界に達したらしい。

 

「ガブ! それにイナズマも! お前ら何やってんだよー!」

 

「もしかして…さっきのリュウタの真似をしてるんじゃないかしら?」

 

「さっきの? まさかあいつら、サウロファガナクスでロデオしようってのか!?」

 

 そんな彼らの目の前で、遂に限界を迎えたガブとイナズマが振り落とされてしまう。大きく宙を舞った2匹を、リュウタはしっかりと受け止めた。

 

「ガブ! イナズマ! もー…心配させんなよ」

 

 再会の喜びを分かち合うリュウタ達には目もくれず、ようやく自由になったサウロファガナクスは通りの奥へと走り出した。その先には、ウサラパ達がいるフォークダンス会場があったのである。

 衝撃震動と共に近づいてくるその姿には誰もが恐れ慄いたようで、会場から次々に人が逃げ出していく。その中からサウロファガナクスを見据える形で立ちはだかったのは、当然ウサラパ達3人組だった。

 

「にゅやっ! 奴が来たザンス!」

 

「今度こそ捕まえるんだよ! さっ、スピノをお出し!」

 

「スピノはまだ無理ザンス! さっきの戦闘で受けたダメージが回復しきってないザンス…」

 

「ティラノが入ったアクトホルダーは行方不明だし、どういうわけかおれのサイカのカードもないし…戦える恐竜がいない以上どうしようもないッス」

 

「ぬぬぬぅ〜っ! せっかく獲物がすぐ目の前にいるってのに、情けないったらありゃしないわ!」

 

「あーあ。お前達は相変わらず役立たずだな」

 

 その声に3人が振り向くと、そこにはロトが立っていた。しかもその手には、これ見よがしにアクトホルダーとティラノの恐竜カードを握っている。

 

「あーっ! アタシのアクトホルダー! 盗んだのはアンタだったのね!」

 

「てことは、サイカのカードを抜いていったのも…」

 

「そ。ボクの仕業さ。いつもまともに成果も上げられないお前達には勿体ないから、これからはボクが有効活用してあげるよ」

 

「ぐぬぅ〜っ! ガキンチョが大人の仕事に首突っ込むんじゃないよ!

こうなりゃ、縛り上げてでも…!」

 

 そう口走るが早いか、ウサラパは懐から投げ縄を取り出し、ロトに向けて投擲した。しかし投げ縄はロトの頭上を大きく飛び越え…いまだ暴走している牛達の1頭に引っかかった。

 

「およ?」

 

「「「ひゃあ〜〜っ!?」」」

 

 ウサラパが間抜けな声を出したのも束の間、あっという間に彼ら3人は縄に巻き込まれ、牛達に引きずられていってしまった。

 土煙の中へ彼らの姿が消えていったところで、ようやくその場にリュウタ達が到着した。

 

「サウロファガナクスが…! アクト団に奪われる訳にはいかない! いくぞガ…」

 

「ちょ〜っと待った」

 

 威勢良くガブとイナズマを繰り出そうとしたリュウタを、何故かロトが呼びとめる。

 

「せっかく西部の町に来たんだ。ここは恐竜同士、1vs1の決闘形式で勝負をつけるってのはどうだい?」

 

「「「決闘〜!?」」」

 

 ロトからの思わぬ提案に、Dキッズが驚きの声を上げる…が、すぐに抗議の声が上がった。

 

「…って、もうその手には乗らないわよ! どうせアタシ達を戦わせてカードだけ持って帰ろうって算段でしょ!」

 

「なぁんだ。真剣勝負を受けないなんて、漢らしくないなぁ」

 

「漢らしいとかそんなことは今関係ないだろ。

リュウタ。ここは僕とマルムでロトが乱入できないようにブロックする。その間にガブとイナズマでサウロファガナクスを…」

 

「待て!」

 

 突然リュウタが声を張り上げる。それからテンガロンハットを目深に被り直すと、こんなことを言い始めた。

 

「分かった。その勝負受けて立つぜ!

…くぅ〜っ! 決まった!」

 

「おお、流石はリュウタ君。漢らしいじゃないか。

それじゃ、恐竜を1体だけ出して位置についてくれ」

 

「よーっし! やるぞガブ!」

 

 まんまとロトの挑発に乗り、リュウタは意気揚々と踏み出す。その後ろ姿を、レックスとマルムは呆れ顔で見送る他なかったのであった…。

 

 

その頃 町の郊外

 

 こちらでの恐竜バトルは、いよいよ佳境を迎えようとしていた。抜群のコンビネーションでレクシィ達を翻弄していたベックレスピナクス達だったが、3体からの猛攻を捌ききれず、遂に色の濃い方の個体が膝をついたのである。

 その隙を逃さず、オウガとミサが技カードをディノラウザーにスキャンする。

 

「行くぞアメジスト! 『大地激怒(ヘルアースクエイク)』!」

 

「お願いねエンピロちゃん! 『双葉大砲(フタバメガキャノン)』!」

 

 技カードが発動し、アメジストとエンピロの体にそれぞれの属性の力が漲る。

 その力の赴くままに、まずアメジストが大地を前脚で力強く叩き、巨大な地割れを発生させる。続けてエンピロが高らかに咆哮を上げると、彼の傍らに突如出現した水溜りからフタバサウルスが姿を現し、口から高圧水流のビームを吐き出す。

 発動された技はまっすぐベックレスピナクス達へ向かい、1頭を地割れの中へと落とし、もう片方を水流で押し流す。何とか這い上がろうと藻掻く姿を目にしながら、続けてアメジストが尻尾で地面を打ち鳴らした。すると地割れは瞬く間に閉じ、ベックレスピナクスを挟み込んだ。そして断末魔の叫びと共に、2頭は仲良くカードへと戻っていったのだった。

 すかさずオウガが駆け寄っていき、カードを2枚とも回収する。

 

「よし! ベックレスピナクス保護完了!」

 

「やったわねオウガ君! これでマルムちゃん達の方に合流できるわ!」

 

「そうですね。早いところ向かわないと…」

 

 と、そこでオウガは気づいた。もう既にベックレスピナクスを倒したのに、バトルフィールドが解除されていない。ということはつまり…。

 

「これは…! もうリュウタ達が戦ってるんだ! 急がないと!」

 

 そう言うが早いか駆け出しかけた…が、その前にレクシィが立ち塞がった。

 

『オマエの足では遅い。乗れ』

 

「レクシィ…ありがとう! 今度こそは間に合わせよう!」

 

「エンピロちゃん! あなたもお願い!」

 

 そしてオウガとミサは、それぞれレクシィとエンピロに乗って町へ戻っていったのだった…。

 

 

その頃 町の中心区画

 

 オウガ達がベックレスピナクスを討伐し終えたまさにその時、リュウタはガブを成体形態にして召喚し、サウロファガナクスの前に立ちはだかっていた。

 

「サウロファガナクス! お前に決闘を申し込む! 受けてもらうぜ!」

 

 リュウタからの決闘の申し出に、サウロファガナクスは襲いかかるような素振りもなく、低い唸り声で返した。どういうわけかこちらも乗り気らしい。

 それから両者はほぼ同時に背を向け、ゆっくりと距離を取る。その光景はまさに西部劇のクライマックスそのものだ。

 

「提案しておいて何だけど…本当に西部劇のワンシーンみたいだな…。ゾクゾクしてきたよ」

 

 珍しく興奮を隠していないロトや、固唾を飲んで見守るレックスとマルムの視線の中、両者は更に距離を取る。

 そんな時リュウタの脳裏に過ったのは、出発前まで見ていた西部劇の主人公・保安官ワットの台詞だった。

 

「『先に吠えた奴が負け』…それが荒野の運命だ!」

 

 その言葉と共に、ディノホルダーに『激力雷電(ギガライディーン)』のカードをスキャンする。技カードが読み込まれ、ガブが全身に電撃エネルギーを滾らせながら雄叫びを上げた。

 

「あぁ…だから先に吠えんなって…」

 

 それを受けてか、ほぼ同時にサウロファガナクスも超技を発動し、口に『猛炎奔流(マグマブラスター)』の炎を滾らせていく。

 それから、ほんの数秒…両者にとっては限りなく長い時間のように感じられたかもしれないが…経った時、両者は一斉に向き直り、相手に向けて技を放った。

 電撃と猛炎のビームがすれ違い、互いの姿が土煙に包まれる…。

 やがて土煙が晴れて両者が姿を見せた…が、ガブががくりと膝をついた。

 

「あぁっ! ガブ!」

 

 それを見届けたサウロファガナクスがニヤリと口角を上げかけた…瞬間、その巨体がぐらりと揺れ、地面に倒れ伏すと同時に2枚のカードへ戻っていく。僅かな差ではあったが、ガブが決闘を制したのだ。

 

「や…やったぁ! やったなガブ!」

 

「いいもの見せてもらったよ。ごくろうさん。

それじゃ…サウロファガナクスのカードをいただこうか!」

 

 その言葉と共にロトがアクトホルダーを構え、カードをスキャン口に通す。

 

「アクトスラーッシュ! 轟け! カスモサウルス!」

 

グォォォォ…!!

 

 黄色い光と共にカスモサウルスが現れ、まだ立ち上がれないガブへ容赦ない突進を加えてくる。

 心の何処かでそうなるだろうと分かっていたとはいえ、これにはレックスとマルムも怒り心頭だ。

 

「やっぱり! 最初からそうするつもりだったのね!」

 

「助太刀に入るんだ! ディノスラーッシュ!

吹き抜けろ! カルノタウルス! アロサウルス!」

 

グォォォォン!!

 

グゥガアァァァァッ!!

 

 すかさずレックスが手に隠し持っていたカードをディノホルダーにスキャンし、エースとアインを召喚する。そして2頭が揃ってガブの援護に入ろうとした…その時、両脇の建物から2つの巨大な影が現れ、行く手を阻んだ。アクト団のティラノとサイカだ!

 

「ボクが君たちの乱入を予想していないとでも思ったかい? 君たちは実にバカだな」

 

「ぐっ…これじゃ近づけない…。マルム! 援護を」

 

「そうはさせないよ。『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』!」

 

「きゃあぁぁっ!?」

 

 ロトの指示に従い、ティラノは口に炎を溜め込むと…あろうことかそれをマルムに向けて放ったのだ。直撃こそ免れたものの、すぐそばにあった建物が炎と共に倒壊し、彼女を戦いの場から完全に隔離してしまった。

 

「くっそぉ…卑怯なことばっかりしやがって!」

 

「勝手に吠えてな。どちらにせよこれでもうボクの邪魔はできない…。

それじゃ、そろそろ本気でも出そうか。『(スーパー)アクトフュージョン』!」

 

ゴオォォグォォォォッ!!

 

 ロトがアクトホルダーを操作し、カスモサウルスを超アクト化させる。そしてリュウタに見せつけるように、技カードを手に取った。

 

「これでトリケラトプスには退場してもらうよ! 『瞬雷千烈(ガトリングスパーク)』!」

 

 技カードがアクトホルダーに読み込まれ、カスモサウルスに天から特大の雷が降り注ぐ。カスモサウルスは全身に紫電を滾らせながらガブへと肉薄し、まずは角で薙ぎ払って腹を露出させた。それからその無防備な腹へ電撃を纏った角で目にも止まらぬ連撃を加え、更にトドメの一突きを食らわせてガブをカードへ戻してしまった。

 

「さぁて…これでサウロファガナクスはボクのものだ」

 

 サウロファガナクスのカードを拾い上げ、ロトがほくそ笑む。しかし、もう1枚あったはずの技カードが消えていた。

 周囲を見渡すと、少し離れたところに落ちている。何かの衝撃で吹き飛んでしまったのだろう。

 

「これも持って帰ろうかな。技カードはあればあるだけいいしね」

 

 そして技カードへ手を伸ばそうとした。が、頭上から凄まじい殺気を感じて素早く飛び退いた直後、カードがあった場所を巨大な足が踏み躙った。

 弾けるように顔を上げると、そこには牙を剥き出しにして威嚇する、灰褐色のティラノサウルスがいた。

 レクシィだ。その後ろにはエンピロもいる。どうやらオウガとミサがすんでのところで駆けつけたらしい。

 

「良かった…。今回はギリギリ間に合った…」

 

「くっ、まだいたのか…!」

 

「すまねぇオウガ! あいつにサウロファガナクスのカードを奪われちまった! レックスとマルムは手が出せないから…お前とミサさんだけが頼りだ! カスモサウルスを倒して、カードを取り返してくれ!」

 

「了解! それじゃあ頼んだよ! レクシィ!」

 

「エンピロちゃんもお願いね!」

 

 2頭の巨大獣脚類に追い立てられる形でロトが離れた隙に、オウガが技カードを回収した。

 そして、レクシィがカスモサウルスと相対する形となる。

 

「カスモサウルスは俺とレクシィが受け持ちます!

ミサさんはレックスの方に加勢して下さい!」

 

「分かったわ!」

 

 ミサの指示に従い、エンピロは方向転換し、エースを追い詰めていたティラノへと襲いかかる。完全に虚を突かれたティラノが地面に転がされたところで、ミサがレックスに向けて呼びかけた。

 

「レックス君! 『激流旋風(ウォーターサイクロン)』で一掃しましょう!」

 

「そうか…それなら! 分かりました!」

 

 例え一時でもこちらが優勢になった今が好機。そう判断したレックスは素早く1枚の技カードを射出した。

 

「いくぞ! エース! 『疾風無敵(サイクロン)』!」

 

「いくわよエンピロちゃん! 『龍渦旋乱(アクアボルテックス)』!」

 

 技が発動し、エースが天から降りてきた赤黒い竜巻をその身に纏う。そこへエンピロが『龍渦旋乱(アクアボルテックス)』の激流を絡ませると、竜巻は巨大な渦潮へと姿を変えた。

 

「くっ、それならこれだ! 『必殺封じ』!」

 

 そうはさせないとばかりにロトが『必殺封じ』を発動し、ヴェロキラプトル達を妨害に向かわせる。しかし既に発動されている技を阻止することはできないのか、彼らはティラノやサイカと共に渦潮の中へと吸い込まれてしまった。

 やがて技が解かれ、激流の中で揉まれていた5頭の恐竜達が地へと投げ出されてカードに戻っていく。

 その光景を、ロトは歯噛みしながら見ることしかできなかった。

 

「ぐううっ、あともう少しで全部うまくいくはずだったのに…。

こうなったら…あのティラノだけでも倒してやる! 『激力雷電(ギガライディーン)』!」

 

 技カードの発動を受け、カスモサウルスがその両角に電撃エネルギーを蓄積し始める…が、オウガとてこれを黙って見ているほど愚かではなかった。

 

「そっちがそう来るなら…レクシィ! この新技カードを試してみる時だ! 『猛炎奔流(マグマブラスター)』!」

 

 先ほど拾った技カードをディノラウザーにスキャンし、レクシィに技を発動させる。レクシィは大地を力強く踏みしめながら、口に燃え滾る炎を蓄えていく。

 奇しくもこれは、先ほどのガブvsサウロファガナクスの一騎討ちと同じ構図であった。

 

「君も漢なら…逃げずにこの攻撃を受けてみろーッ!」

 

 ロトの叫びと共に、カスモサウルスが電撃のビームを放つ。迎え撃つようにレクシィも猛炎のビームを放ち、2つのエネルギーは真っ向からぶつかり合った。

 

「カスモサウルス! 超アクト化の力はこんなもんじゃないはずだ! 出し惜しみするなーッ!」

 

 ロトがそう叫び、アクトホルダーで何か操作する。するとカスモサウルスが苦悶のうめき声を上げたかと思えば、突然『激力雷電(ギガライディーン)』の出力が増した。

 一気に形勢は不利となり、レクシィの体が徐々に押し込まれる…。

 

『ぐっ…これは…まずい…!』

 

「レクシィ! 相手の技の出力が増したみたいだ…。

何とか…何とか踏ん張ってくれ! レクシィーッ!」

 

 オウガの声援も虚しく、レクシィは徐々に押し込まれていく。

 だが、オウガにはロトと違うところがあった。彼は1人ではないのである。

 

「アイン! レクシィを助けるんだ! 『幻舞連爪(カゲロウ)』!」

 

 レックスがディノホルダーに技カードをスキャンし、アインに技を使わせる。アインはその身に風を纏い、カスモサウルスに神速の連撃を叩き込んだ。

 だが、それでもカスモサウルスは揺らぎもしなかった。

 

「そんなバカな…。超技を食らってもダウンすらしないなんて」

 

「でも、さっきより電撃の威力が落ちてきてるみたい。全く効いてないわけじゃなさそうよ。

次はわたし達の番よ、エンピロちゃん! 『暫流剣(ウォーターソード)』!」

 

 今度はミサが技カードをディノラウザーにスキャンし、技を発動する。全身に水流を纏ったエンピロは、口から吐き出した高圧水流を剣のように振りかざし、カスモサウルスめがけて振り下ろした。

 まともに水の斬撃を食らい、今度はカスモサウルスがうめき声を上げ、姿勢が僅かに揺らぐ。

 それと同時に、ロトのアクトホルダーがけたたましく鳴りだした。被ダメージの増加により、エネルギー残量が危険な領域に達しているようだ。

 

「くそっ! あともう少し…あともう少しもってくれればティラノを押し切れるんだ! 根性見せろよ、カスモサウルス!」

 

 そう口走りながら更にアクトホルダーの操作を続ける。しかし既に活動限界が近いようで、画面にはいくつもの警告メッセージが積み重なっている。

 そして、終局は唐突に訪れた。

 

「あ…」

 

 遂に活動限界に達し、カスモサウルスの(スーパー)アクト化が強制解除される。超アクト化が解けたカスモサウルスには、最早レクシィの『猛炎奔流(マグマブラスター)』に抗うだけの力は残されていなかった。

 あっという間にその小柄な体が炎のビームに飲み込まれ、大通りの遥か奥へと押し流される。そして、力なく横たわったその体はピクリとも動かないまま、カードへと戻っていった。

 

「勝った…のか…?」

 

 呆然とした様子でオウガが呟く。いくら攻撃を食らっても倒れない相手など、シークレット恐竜相手ですら経験したことがなかったのだ。勝ったという実感がまだ得られていないのも無理のないことだろう。

 

「…あ、そうだ。サウロファガナクスを…」

 

 そう言いかけた彼の前を、砂煙と共に何かが通過していく。ロトが乗ったホバースクーターだった。スクーターはそのまま流れるように通りを走り抜けていく。

 

「恐竜バトルでは負けたけど、サウロファガナクスはボクが手に入れた! 今回はボクの戦略勝ちさ!」

 

 ロトは無理やり絞り出すような声で勝利宣言をすると、ティラノやサイカにヴェロキラプトル…そして最後にカスモサウルスのカードを回収し、素早く路地裏へと消えていったのだった。

 

「くっそ〜…サウロファガナクスのカード、奴らに取られちまった!」

 

 悔しそうにそう口にするリュウタに、レックスとマルムから厳しい視線が注がれた。

 

「リュウタがいけないんだぞ!」

 

「そうよ! ロトにまんまと乗せられて決闘なんかするから!」

 

「だっ、だけどさ…恐竜カードがあと7種類で全部揃うって分かったし、収穫が無かった訳じゃ…」

 

「あのなリュウタ! カードがアクト団の手に渡ったってことは、サウロファガナクスが奴らによってあのカスモサウルスみたいに改造されるかもしれないんだぞ!」

 

「アタシ達はあの子を助けられなかったのよ! 分かってるの!?」

 

「はい…弁解のしようもないです…」

 

 2人から猛烈な勢いで詰められ、すっかりしょげ返ってしまったリュウタ。事情がよく分かっていないオウガとミサはそんな彼を、呆気に取られた様子で見ていたのだった…。

 

 

その後 アクトクラフト機内

 

 あの後ロトは無事にノーピスと合流し、共にアジ島への帰路についていた。

 

「なるほど、サウロファガナクス…いい恐竜を回収できたな。喜ぶといい、ロト。これでまた帰れるまでの日が早くなりそうだぞ」

 

 ノーピスからの称賛の言葉をもらっても、ロトの表情は固いままだった。

 

「確かに恐竜は回収できたけど…また、カスモサウルスで勝てなかったんだ」

 

「ほう。前よりもかなり改良を加えたはずだが、それでも足りなかったのか?」

 

「確かに強くはなってたよ。あいつらのティラノを押し切れそうなところまではいったんだ。でも、袋叩きにされて…」

 

「…なるほど。それでダメージを受けただけ超アクト化の解除が早まってしまったわけか」

 

「これまではとにかく火力を出すことや活動時間を延ばすことだけを考えていたけど、耐久面にも強化が必要そうだ。

そうなれば、エネルギーを外皮に纏わせてダメージを減らせるようにできれば…」

 

 次の改造に向けて、ロトが色々と考えを練る一方、ノーピスは心の中でほくそ笑んでいた。

 

(そうだ…。そうやって色々と考え、試してみろ。

お前がカスモサウルスを完璧に近づければ近づけるほど、俺の研究目標の達成も近づくんだからな)

 

 思い悩むロトを心配することなどなく、ノーピスはそんな思考を巡らせていたのだった…。

 

 

 …ちなみに、ウサラパ達はあれから1日中牛に引きずり回された末ようやく帰還したが、成果なしということで食事抜きの刑に処せられたのだという。

 

「理不尽すぎるザンスぅ〜!」

 

 




恐竜図鑑コーナー!

「今回の恐竜は、暴君の刺客『サウロファガナクス』! 名前の意味は『トカゲを食う者の王』だぜ!」

「全長11〜12メートルほどの獣脚類で、ジュラ紀後期に生息していたと考えられていたよ」

「確かこの子って、部分的な骨しか見つかってなかったのよね」

「そうだね。その数少ない化石も、アロサウルスと極めて似ているものだったんだけど、胴椎の神経弓の違いが本種独自の特徴だとされていたんだ。
でもつい最近、その胴椎はアパトサウルスのものなんじゃないか?っていう話が出てきたことで種の独自性が失われた結果、サウロファガナクスは疑問名に…つまり幻の恐竜になってしまったんだ」

「普通間違えるかしら…とは思うけど、あれだけしか化石がないなら取り違えるのも無理ないかもしれないわね」

「それじゃあ、サウロファガナクスは完全にアロサウルスに吸収されちまったのか?」

「いや、そうでもないよ。かつてサウロファガナクスと呼ばれていた化石は、新しく『アロサウルス・アナクス』という学名を貰ったんだ」

「『アロサウルスの王』かぁ…。セイスモサウルスみたいに、名前はなくなってもかつて存在していた爪痕は残せたみたいだな! 良かったぜ!」


ということで、今回はここまでです。
まず、かれこれ5ヶ月以上も更新間隔が空いてしまい、読者の皆様には改めてお詫び申し上げます。私生活が忙しかったというのもありますが、それに加えて数少ない空き時間もZAやストーリーズ3に費やしていたので、余計に執筆が停滞してしまいました。
これからは定期的に投稿を…とはいかないかもしれませんが、必ず翼竜伝説編の最後まで書き切る覚悟でおりますので、期待していただけると嬉しいです。
さて次回は、第38話『ウォーアイニー!中華街に響く大地の咆哮!』 当初から説明しておりました通り、アメジスト加入によって『恐竜女神タルボーンヌ』にあたるエピソードはスキップさせていただきます。何卒ご理解の程よろしくお願い致します。


※追記:後半の一部記述を変更いたしました
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