古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ   作:バックベアード

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前回の恐竜キング!

 ある日、Dキッズ(というよりリュウタ)が西部劇を楽しんでいたところ、アメリカ合衆国のオクラホマ州に恐竜が出現したとの一報を受ける。
 急ぎ現地へ駆けつけてみると、そこにいたのはサウロファガナクス(という名のアロサウルス・アナクス)と、2頭のベックレスピナクスだった。
 オウガとミサの奮戦によりベックレスピナクスの保護には成功したが、ロトの計略に乗っかったリュウタにより、ガブとサウロファガナクスで一騎討ちをすることになってしまう。
 辛くも一騎討ちを制したガブだったが、直後にロトがカスモサウルスを召喚し、騙し討ちを仕掛けてきた。
 そこへ何とかオウガとミサが駆けつけ、技カードを確保した上で集中攻撃を浴びせ、超アクトカスモサウルスを退けることに成功する。しかし肝心のサウロファガナクスは、ロトの手に落ちてしまった。
 ロトにまんまと乗せられた上、サウロファガナクスを保護できなかったリュウタは、仲間からの厳しい視線を受けながら帰路についたのだった…。




第38話:ウォーアイニー!中華街に響く大地の咆哮!
前編


日本国神奈川県 横浜市

 

 ここは、日本最大の中華街として名高い、横浜中華街。あちこちに中国風の建物が立ち並び、町中が料理の芳しい香りで包まれている。

 そんな街の中心部…一際立派な建物の前には長蛇の列ができており、その中にはDキッズや古代夫婦、それにリアスとミサの姿もあった。

 

「それにしてもすごいお客さんね〜」

 

「わたし達がここに並んだのは10数分くらい前なのに、もう後ろにすごい人が並んでいますしね」

 

「あら、本当だわ。あんなところまで行列が…」

 

「そりゃあ無理もない。何たって昨日、TVの特集で大々的に紹介されてたからな」

 

「確か…『さすらいの料理人 汁辣参(ジューラーサン) 横浜中華街に現る』でしたよね、パパさん」

 

「汁辣参自慢の逸品だっていう黄金のカニ玉炒飯…すごい美味しそうだったなぁ…。あれを見たら誰だって食べたくなっちゃうよ」

 

「黄金のようにキラキラ輝く卵の中に、宝石のようにちりばめられたプリップリのカニ! 

あ〜っ♡ もうたまんないわぁ〜っ♡」

 

「早く食いてぇーッ! もう待ちきれねぇよ!」

 

「もう、リュウタったら〜」

 

「お前らにも食わせてやるから、大人しく待っててくれよ! ガブ! イナズマ!」

 

 そうリュウタが足元に話しかけるが…そこにはレクシィとエンピロしかいなかった。

 

「ええっ!? あいつらがいない!」

 

『…奴らならついさっき逃げていったぞ。オマエ達の話にあてられたのだろうな』

 

「何だって!? ああもう、よりにもよってこんな時に…すみません、古代博士! みんなを連れ戻してくるまで、ここで少し待ってて下さい!」

 

「あ、あぁ、分かった。だがもう開店まで時間がない。早く見つけてくるんだぞ!」

 

 ということで、Dキッズは念願のカニ玉炒飯を前に、迷子の恐竜探しに繰り出す羽目になったのである。

 

「きゃあーっ!」

 

「うわぁっ! す、すみませーん!」

 

 レックスは他の店で客の北京ダックを横取りしようとしていたエースとアインを捕まえ…。

 

「あっ、かわいーい」

 

「ごめんなさーい! アタシのペットなのー!」

 

 マルムは観光案内所に迷い込んだパラパラとランランを確保し…。

 

『…いたぞ。あそこだ』

 

「本当だ!…アメジスト! ご飯はこれから食わせてやるって言ったろ!」

 

 オウガは胡麻団子の蒸籠の前で涎を垂らしていたアメジストを連れ戻し…。

 

「子豚、子豚っと…あれ? こんな食材あったっけな」

 

「うわあっ! そいつらは食べ物じゃありませーん!」

 

 リュウタは食料室を物色しようとしていたガブとイナズマをひっ捕らえ、何とか開店寸前に列へ戻ることができたのだった。

 

 

大飯店『汁辣担(ジューラータン)

 

 その頃、厨房は開店準備で大忙しであった。既に先頭の客の注文した品を作っているようで、料理人が忙しく働いている。その一角で幾人もの料理人から視線を注がれながら調理しているのは、今話題の流浪の料理人…汁辣参(ジューラーサン)大人であった。というかこの人物、禿頭に立派な顎髭とどこからどう見てもいつもの神出鬼没な老人である。

 しかし料理の腕は確かなようで、慣れた手つきであっという間に黄金色に輝くカニ玉炒飯を作り上げた。これには周囲からも拍手が巻き起こる。

 そんな彼の傍らには卵が山と積まれた籠があり、その頂上にはあの卵型カプセルが鎮座していたのだった…。

 

 

『汁辣担』店内 客席

 

 ようやく店内へと案内されたDキッズ一行は席につき、料理が来るのを待ちわびていた。その一方で、パートナー恐竜達に釘を刺すのも忘れない。

 

「もう勝手に出てったらダメだぞ。ガブ、イナズマ」

 

「そうだぞ。みんなに迷惑がかかるんだからな」

 

「パラパラとランランもよ」

 

「料理が来たらアメジスト達の分も取り分けるから、ちゃんといい子で待っててくれよ」

 

『『『『グゥ…』』』』

 

『まったく手のかかる子どもらだな』

 

 オウガ達から怒られてガブ達はしょげ返っており、それをレクシィとエンピロが呆れ顔で眺めていた。

 と、そこへ店員が料理の並んだ台車を押してくる。

 

「お待たせ致しました! 汁辣担特製・黄金のカニ玉炒飯8人前でございます!」

 

「おっ、来たぁ!」

 

「こらこら、はしゃぐんじゃない。みっともないぞ」

 

「あっ…うん」

 

 彼らの前に念願のカニ玉炒飯と、その他様々な料理の乗った大皿が続々と並べられた。どれも見た目だけで美味しさが伝わってくる。

 勿論、彼らのパートナー恐竜のために料理を一匙ずつ取り分けてあげることも忘れていない。

 

「ほら、エース達もたっぷり食べるんだぞ!」

 

「あれ? リュウタのお母さんとリアスさんは?」

 

「さっきお手洗いに立ったみたいよ」

 

「なぁに、すぐ戻るだろうし先に食べてしまおう!」

 

「そうそう! せっかく目の前にあるのに待ってられないよ!」

 

 

その時 厨房

 

 厨房はますます忙しくなり、汁辣参は黙々と炒飯を作り続けていた。そしてノールックで脇の籠から卵を取り、片手で器用に割る。

 

「んっ?」

 

 しかし卵の中から出てきたのは、2枚のカードだった。カードはコンロの火にあたると、赤い光を放ちながら膨れ上がっていく…。

 

 

戻って客席

 

「それじゃ、いっただっきまーす!」

 

 そう言うが早いか、リュウタがカニ玉炒飯をレンゲで掬い、口へ運ぼうとした…その時だった。

 

グウゥゥゥゥ…!!

 

 轟音と共に厨房から超大型獣脚類が姿を現したのである。そして恐竜はまっすぐ…Dキッズ達の座っている席へと歩みを進めていく。

 咄嗟に古代博士やミサが彼らを引っ張って飛び退いた直後、彼らが座っていた場所は恐竜の巨大な足で踏みにじられていた。そのまま恐竜は店の壁を突き破り、外へ出ていってしまう。

 

「あれは! マプサウルス…か?」

 

「既にギガノトやカルカロは確認されてますし、エオカルカリアよりは明らかに大きいですから、それしかないと思います!」

 

「あーっ!? オレのカニ玉炒飯がーっ!!」

 

「とにかくすぐに追いかけるぞ! 街に出たら大変なことになる!」

 

 無惨な有様となってしまったカニ玉炒飯を惜しみつつ、彼らはマプサウルスの追跡を開始した。

 

「あら? 一体何事なの?」

 

 それから間もなくしてお手洗いから戻ってきたリアスとアキは、目の前の惨状に呆然とするしかなかったのだった。

 

 一方、中華街のどまんなかに出たマプサウルスは、特徴的な咆哮と共にその身に炎を纏った。技を発動したのだ。

 やがてその口に業火が溜まりきったところで、マプサウルスはとある1軒の建物に狙いを定めたのだった。

 

 

その店の客席

 

 今まさに攻撃を受けようとしているその店内で、食事にありつこうとしている男がいた。ジェイソンである。こんなところへ何をしに来たのだろうか。

 

「お待たせ致しました。東坡肉(トンポーロー)でございます」

 

「ありがとよ」

 

 どこか渋い顔で、彼は注文した一皿を受け取る。

 

(ったく…最近ついてねぇぜ。

アンバーを盗ませる隠密部隊を育成するための資料探しにイシドーラを付き合わせたら、何を勘違いしたのか日本のニンジャムラだかに行きやがって…。

しかもそこで恐竜をロストしたとかで、何故か調査を依頼した俺までボスに怒られる羽目になっちまった。

こんな最悪な気分の時は、肉の塊でもかっ喰らわねぇとやってられねぇよ)

 

 心の中でそんな愚痴を呟きながら、大胆にカットした東坡肉を口の中へと突っ込む。

 

「なんだよ…結構うめぇじゃねぇか…」

 

 よほど口に合ったのか、先ほどまで渋かった彼の口が綻んだ。そして次をカットしようとナイフに手を伸ばした時…店の壁が吹き飛び、炎の波が押し寄せてきたのだった。

 

 

 戻って外では、マプサウルスが炎を吐き散らし、建物をぶち破るなど破壊の限りを尽くしていた。そこへDキッズとミサが駆けつける。

 

「尋常じゃない暴れようね…。このままじゃ街が更地になっちゃうかもね」

 

「突然見知らぬ場所に召喚されたから錯乱してるのかもしれません! 何とか鎮めないと!」

 

「そうね! 早くカードに戻さなくちゃ!」

 

「あぁ! リュウタも戦闘の準備…を…」

 

 レックスがリュウタにかけようとした言葉が途中で尻すぼみに消える。何故なら、リュウタが凄まじく怒っていることに気づいたからだった。

 

「くっそ〜! よくもオレのカニ玉炒飯を台無しにしやがって! 行くぞガブ! イナズマ!」

 

 怒りのままにリュウタは2匹をカードに戻し、ディノホルダーにスキャンする。

 

「ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス! スティラコサウルス!」

 

ゴオォォォォッ!!

 

ギュオォォォォッ!!

 

 電撃を迸らせながら2頭が成体化すると、周囲にバトルゾーンが展開されていった。

 

「よし、行ってこい! ガブ! イナズマ!」

 

 リュウタの指示を受け、2頭は勇ましく駆け出していく…が、マプサウルスの目前で右に曲がっていく。彼らの目線を独占していたのは相手の恐竜ではなく、山盛りのキャベツだったのだ。

 

「…って、2頭揃って何やってんだよー!」

 

「お腹が空きすぎて、食べ物の誘惑に勝てなかったんだ! それなら僕達が行くぞ! エース! アイン!」

 

 今度はレックスがエースとアインを召喚し、向かわせるが…彼らもマプサウルスを前にして左に曲がっていく。その先には様々な肉が吊るして保管されている区画があった。

 腹が減っているのはガブとイナズマだけではないようだ。

 

「お前達もか…。まあそりゃそうだよな…」

 

「もう、みんな頼りにならないんだから!

行くわよ、パラパラ! ランラン!

ディノスラーッシュ! 芽生えよ! パラサウロロフス! ランベオサウルス!」

 

キュオォォォォン!!

 

プオォォプォォォォッ!!

 

 三度目の正直とばかりにパラパラとランランが成体の姿となって投入され、今度はまっすぐマプサウルスへ向かっていく。だが流石にここまで大騒ぎされて気づかない相手ではなかった。

 すぐさまその口に炎を溜めると、それを火炎放射として吐き出す技『爆炎壁攻(ボルケーノバースト)』を発動する。パラパラとランランは建物の壁を盾にすることで直撃を免れたが、ガブ達の目を釘付けにしていた食料が飛び火した炎で焼き払われてしまった。

 

「よし、俺達もやるぞ!」

 

 友人達の恐竜が戦いの場に赴いたのに見ているだけでいるわけにはいかない。そう感じたオウガが後ろを振り返ると、そこにはレクシィしかいなかった。

 

「あ…あれ? アメジスト! アメジストー!」

 

 大声で呼びかけるものの、どこからも返事は返ってこない。

 

「レクシィ! アメジストがどこに行ったか知らないか!?」

 

『す、すまないオウガ。私も気づかぬうちに消えていたのだ。一体どこではぐれたものか…』

 

「ああもう、こんな時に…! ごめんみんな! 俺はアメジストを探してくるから、その間ここを任せてもいいかな?」

 

「分かったわ! 念のためわたしもオウガ君についていくけど、みんなは大丈夫?」

 

「大丈夫だぜ! オレ達がマプサウルスに、しっかり落とし前つけさせてやるからさ!」

 

 こうして、オウガとミサは来た道を辿りながらアメジストを探すことにしたのだった…。

 

 

 そのアメジストが一体どこで何をしていたのかというと…。

 

『ガツガツガツ…』

 

 汁辣担の店内で、あちこちに散乱した酢豚やあんかけ焼きそばから肉を器用に放り捨て、野菜や麺を貪り食っていた。

 次は近くに落ちていた蒸籠の蓋を乱雑に取り外し…瞳を輝かせる。その中には、念願の胡麻団子が入っていたのだった。

 

 

その頃 アクト団基地 アジ島

 

 一方こちらでも、巨大モニターで恐竜の出現が観測されていた。その場にいたのは、ノーピスとロトの2人である。

 

「恐竜が出たぞ。どうやら場所は、日本国神奈川県の横浜中華街のようだ」

 

「それじゃ、今回もボクが出ていいんだよね?」

 

「勿論だ。存分に暴れてくるといい」

 

「やったぁ! それなら今日はボク1人に行かせてよ!

再調整したカスモサウルスの出来栄えを、実地試験で試してきたいんだ!」

 

「…分かった。行ってくるといい」

 

 ということで、ロトは早速マシンの駐機場に向かおうとした…が、その前に立ちはだかる者が現れた。

 

「お待ちなさい、ロト。そろそろお勉強の時間ですよ。一体どこへ行こうとしているのです?」

 

「た、タルボーンヌさん…」

 

 そう、家政婦のタルボーンヌであった。

 

「タルボーンヌさん…これは…えっと…」

 

「ロト。君は駐機場へ行って出発の準備を進めておくといい」

 

「え? う、うん」

 

 ノーピスの言葉に素直に従い、ロトがその場から離れていく。

 

「お待ちなさい! まだ話は…」

 

「これはドクターからの極秘指令だ」

 

 ロトを引き留めようとしたタルボーンヌを、ノーピスがその言葉で制止させた。

 

「ドクターの?」

 

「ああ。世界には子供達にとって色々と学べることが多い。今日出かける先の横浜中華街も、歴史的背景を見るとかなり特殊な地域だと言える。

ドクターはそういった場所へ、恐竜の回収ついでに子供達を課外学習に出してほしいと俺に指令を下さったのだ」

 

「ですが、それなら何故ロアは…」

 

「ロアはまだ幼く、出かけた先でどのような危険な目に遭うか分からない。その上本人からも参加を拒否するとの言葉を貰っている。

…納得できたか? それとも、よもやドクターのご意思にはむかうつもりか?」

 

「…分かりました。ドクター直々の指令であれば仕方ありませんね」

 

「では」

 

 ようやくタルボーンヌを言いくるめたところで、ノーピスはまた先ほどの部屋へと戻り、モニターへ視線をやったのだった。

 

 

 さて、そのソーノイダは今何をしていたのかというと…。

 

「『さようなら、うまそう…』 ティラノサウルスはそう呟き、赤い木の実を一粒、口に入れたのでした。

おしまい」

 

「ぬうう…やはりこの本はいいぞい! こんな素晴らしい本を書いた作者はノーベル賞ものぞい!」

 

「ほんと…昔から何度も読んでるザンスけど、いつ読んでもいいものザンス…」

 

『キュウウン…』

 

 ちょうどエドに絵本の読み聞かせをしてもらっているところであった。ソーノイダのみならず彼の脇にちょこんと座るテリジノ、それに彼の足を揉みほぐしていたノラッティ〜まで号泣している。

 ちなみにディーノ達は興味がないようで、部屋の反対側でロープを引っ張り合っていた。

 

「それにしても、途中で出てきた『キランタイサウルス』って実在する恐竜なんスか?

この本以外だと一度も聞いたことないんスけど」

 

「見つかっとる化石はかなり少ないが、ちゃんと実在する肉食恐竜ぞい。発掘されたのも白亜紀後期の北アメリカじゃから、ティラノやアンキロとはかなり近い時代に生きていた奴ぞい」

 

「けっこうちゃんと考慮されてたザンスね…」

 

「ドクター、失礼します〜。お粥ができましたわよ〜」

 

 読後の雑談をしている彼らのもとへ、ウサラパがやってくる。彼女が持ってきたものを見て、ソーノイダの表情は途端に嫌そうなものに変わった。

 

「…もういらんぞい」

 

「へえっ?」

 

「来る日も来る日も朝昼晩お粥ばかり! もういい加減にしろぞい! もっと別のもの…例えば関サバの味噌煮なんかが食べたいぞい!」

 

「そんなことアタシに言われても…」

 

「我儘を言うんじゃありませんっ!」

 

 今度はその場にタルボーンヌが現れ、ソーノイダを激しく叱責する。しかし今日ばかりは、彼も簡単には引き下がれないようだ。

 

「だってだってぇ…病は気からというし、こう味気ないものばかりだと腰も良くなる気がしないぞい。

せめて…味変! 味変をさせてほしいぞい!」

 

 ソーノイダの嘆願に、タルボーンヌは暫し考え込んだ末、ゆっくり口を開いた。

 

「…分かりました」

 

 その言葉と共に一瞬で彼女が姿を消し、また一瞬でその場へ戻ってくる。戻ってきた彼女の手には、古めかしい壺が抱えられていた。

 

「では本日は特別に、梅干しを入れて差し上げます」

 

「おおっ! 梅干し! こいつはいいぞい! これがあるだけでキリリと引き締まるぞい!」

 

「1日の塩分摂取を考えると、梅干しは2つまでですからね。はい、あーん」

 

「あーん…ムグムグ…美味いのう…」

 

 梅干し入りのお粥を嬉々として頬張るソーノイダに、ウサラパ達がゲテモノを見るような視線を向ける。どうやら彼らは梅干しが嫌いなようだった。

 

 その時、エドとノラッティ〜の懐から電子音が響き渡る。この時、彼らのアクトホルダーも恐竜の出現を検知したのである。

 

「あっ、恐竜が出たみたいッス!」

 

「なにィ!? ならばお前達! 場所を確認して今すぐ回収に行ってくるぞーいっ!」

 

「「「ヘイヘイホー!」」」

 

 ソーノイダの指令を受け、3人は揃って部屋の外へと駆け出していく。それを見送ったところで、彼はふと思い出したようにタルボーンヌに話しかけた。

 

「そういえばタルボーンヌ。ワシの孫たちはしっかり勉強しておるぞいか?」

 

「ロアは時々遅刻もありますが、毎日しっかりとお勉強を受けていらっしゃいます。

問題なのはロトの方です。近頃、ノーピスと恐竜を捕まえに行っているせいで全くお勉強できておりません」

 

「ロトがじゃと? 恐竜の回収なぞウサラパ達に任せておけばいいぞい。

確かに前オーストラリアにロトを送った時はあったが、それはウサラパ達と連絡が取れなかったからで…」

 

 ソーノイダの言葉に、彼女の表情が露骨に変化した。ノーピスから聞いていた話と違うからだ。

 

「なっ…! ドクターのご指示ではないのですか?」

 

「ワシゃそんなの知らんぞい」

 

「…そうだったのですか…」

 

「ムグムグ…うーん、やはり梅干しが入るだけでも違うぞい。

のう、タルボーンヌ。後生じゃからあと1つだけ梅干しを追加しても…」

 

 そう言いながら顔を上げ…彼は唖然とした。タルボーンヌの姿はとうにその場から消えており、梅干しの壺だけが残されていたのである。

 

「何じゃ、一体どこへ行ってしまったんじゃぞい。

…にしても、やっぱりもっと梅干しが欲しいぞい…。1つくらい、食べてもバレんじゃろ」

 

 小さく呟き、ソーノイダは躊躇いもなく壺から梅干しを取り出したのだった…。

 

 

それから少し後 横浜中華街

 

 戻ってこちらでは、オウガとミサが古代博士と合流したところだった。

 

「古代博士! いったいここで何してるんです?」

 

「ああオウガ君! それにミサさんも! すまないがアキちゃんを見なかったか!?

マプサウルスが出る前にトイレに行ってたことを思い出して慌てて戻って探してたんだが…」

 

「わたし達は見てないですけど…それなら一度お店に戻りませんか? オウガ君も今、アメジストを探してたところだったんです」

 

「そうだったのか…。それなら、すぐに向かおう!」

 

 ということで、3人と2匹は連れ立って汁辣担へと戻っていく。そしてその先でようやくアメジストを見つけたのだが…

 

「おお…これは…」

 

「アメジスト…お前さぁ…」

 

「あらら…」

 

『…呆れたものだな』

 

 そこにいたのは、腹がパンパンに膨れるまで食べ物を食い尽くしたアメジストの姿だった。これでは大体消化しきるまで一歩も動けないだろう。ましてやバトルなど以ての外だ。

 

「仕方ないな…。これじゃあカードにも戻らなさそうだし、少しここで待つしかないか…。

博士はこれからどうします?」

 

「私はアキちゃんを探しに行く。あんなことがあったんだ。きっと心細い思いをしているに違いない!」

 

 古代博士は自信満々にそう言ってのける。

 実はマプサウルスが暴れていることなど知らないアキは、別の店でリアスと共にタピオカに舌鼓を打っていた。しかし、そんなことを彼が知っているはずもなかったのだった。

 

「わ、分かりました。それじゃあまた後で」

 

「うむ!」

 

 短く返事をし、古代博士が駆け出していく。残されたオウガとミサは、すっかり荒れ放題となった店内を見回していたが…。

 

「…あれ? なんかいい匂いがする」

 

「ほんとだわ。とっても美味しそうで…お腹が空いてきちゃう」

 

『妙だな。もう客はおろか料理人も逃げたはずではないのか』

 

「そのはずなんだけど…こっちだ」

 

 そして匂いにつられるように、オウガ達は厨房へ足を進めていく。その後ろからアメジストも、コロコロ転がりながらついていったのだった。

 

 

 その頃、中華街の別の区画ではリュウタ達の恐竜とマプサウルスが戦闘を繰り広げていた。計6頭の恐竜から代わる代わる攻撃が繰り出されるが、その中でもガブとイナズマが殺意すら感じさせるほどの猛攻を続けている。

 

「ガブとイナズマ、なんだかすごい怒ってるわね」

 

「仕方ないさ。やっとありつけると思った食べ物を目の前で踏み躙られ、焼き尽くされちゃあ…」

 

「もーっ、ガブもイナズマもちょっとは冷静になれよ! オレなんかカニ玉炒飯ダメにされちゃったんだぞ!」

 

「そういう問題じゃないでしょ…」

 

「リュウタも落ち着けよ…」

 

 なんだかんだ、ペットは飼い主に似るというのは間違いなさそうであった。

 その間もガブ達はマプサウルスへ猛攻を加えようとするが、相手も器用に後退しながらその殆どをいなしている。そしてガブが大振りの攻撃で踏み込んできた隙を見計らい、尻尾で強烈な打撃を加えた。

 ガブの巨体が吹き飛び、かの有名な善隣門を巻き込みながら地面に転がされてしまった。

 

 そんな彼らの戦闘を見つめている者がいる。アクト団のロトだ。もう現地入りしたらしい。

 

「あいつら、もうやり合ってるな。

ちょうどいいや。カスモサウルスの活動時間は限られてるし、少しでもエネルギーを温存できるようにもっと消耗するまで待ってようっと」

 

 ニヤニヤしながら傍観に徹していたロトだったが、その笑みが一瞬で消え去る。

 何故なら、自分と同じようにその戦いの場を観察している者を見つけたからだった。

 

「遂に追いついたぜ…なんだ? あのガキ共、ここにも来てやがったのか。

まあ何人いようが構わねぇさ。オレ様の東坡肉を台無しにしやがったあのクソ恐竜は、ただじゃ済まさねぇぞ…」

 

 それはジェイソンだった。しかもその手にはインドミナス・レックスのカードが握られており、今にも召喚しそうな状態だ。

 

 それを目にした瞬間、ロトの視界は真っ赤になった。

 

「『Sin-D』…! ここで会ったが百年目! 強くなったボクの力であいつを叩き潰してやる!」

 

 激情のあまり合理的な判断をかなぐり捨ててしまったロトは、迷わずカスモサウルスのカードをアクトホルダーに通したのだった。

 

 

その時 太平洋のど真ん中

 

「あと10数分もすれば目的地に着くッスよ、ウサラパ様」

 

「うっふふ〜ん…フカヒレちゃん、待っててねぇ〜ん」

 

「全く話を聞いてないザンス」

 

 ロトから大幅に遅れる形で出撃したウサラパ達3人組は、ちょうど太平洋の上を飛行していた。しかしウサラパは今回の目的地が横浜中華街と知ってからずっと、フカヒレのことで頭がいっぱいのようである。

 

「もう、しっかりして下さいッスよウサラパ様。フカヒレどころか、今回も収穫をロトに取られたらまた飯抜きなんスよ」

 

「そうザンス。ただでさえ使える恐竜がスピノしかいないんだから、もっと任務に集中してほしいザンス」

 

「えーいうるさいねお前達! アタシにとっての最優先事項はフカヒレちゃんだけなんだよ!

もう我慢できないわ! ちょっと操縦を代わりなさい!」

 

「ちょ、ちょっとウサラパ様…これ以上加速すると…」

 

「機体が保たないザンス〜!」

 

 ウサラパが操縦を乗っ取り、飛行機を殺人的な速度にまで加速させる。彼女を制止しようにも、エドとノラッティ〜の体は加速によって座席に強く押し付けられ、身動きがとれなくなってしまっていた。

 

 そんな飛行機に遜色ない猛スピードで、水飛沫と共に駆け抜けていく者がいた。

 それは、タルボーンヌであった。水の上を走れるなどどんな造りをしているのであろうか。

 彼女はそのまま北へ…日本列島の神奈川県沿岸を目指して一直線に駆け抜けていったのであった…。

 

 

 




というわけで、今回はここまでです。
ソーノイダが読み聞かせさせていた絵本の文章に関しては、昔の記憶を頼りに書いたので多少異なっているかもしれません。
どうかその点はご容赦下さい。
あとは、マプサウルスの所持超技も変更を加えております。というか原作ではどうしてカルカロと超技被らせたんですかね…?
それでは、後編をお楽しみに!

※追記(6/7):最後の記述を改編しました
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