古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
これまで長い間お休みを貰っていた分、できる限りどんどん投稿していきたいと考えております。
戻って横浜中華街
「そこだっ! カスモサウルス! 『
「チッ! 随分生き急いでるような戦い方だな」
ロトとジェイソンの突発的な恐竜バトルは1つの区切りを迎えていた。超アクトフュージョンしたカスモサウルスとステゴケラトプスの『
ステゴケラトプスの体が背後のビルに叩きつけられてカードに変わり、ジェイソンの手元へと戻っていく。
「『
だがてめぇがステゴケラトプスに集中してる間に、他の2体は片付いたみたいだぜ?」
ジェイソンの言葉と共にロトの前へ2つの巨体が投げ出される。それは、力尽きたティラノとサイカであった。
そしてその後を追いかけるようにインドミナス・レックスとクレバーガールズが現れ、彼の両脇に控えた。
「問題ないさ。所詮そいつらは1対3の状況を避けるために出したデコイみたいなもんだよ。むしろまともに相手してエネルギーを消費させたのなら十分だね」
「ほう…まさかてめぇ、この状況からひっくり返せるとでも思ってんのか?」
「勿論さ。イーブンどころか、ハンデをかけてあげてるようなものさ」
「そいつぁおもしれぇ。なら、精々足掻いてみせろよ!」
その言葉と共にジェイソンが指を鳴らすと、インドミナスが攻撃姿勢を取って突進していく。それを受けて立つと言わんばかりに、カスモサウルスも突撃姿勢を取った。
そんなさなか、空の彼方がキラリと光ると…1機の飛行機が弾丸のようなスピードで迫り、1棟のビルに突き刺さったのだった。
ビル内の一室
大破した飛行機の中から這い出してきたのは、ウサラパ達アクト団工作員達だった。今回も五体満足で現地入りできたようである。
「な、何とか着いたッス…」
「死ぬかと思ったザンス…」
「…ん? あらっ! ここって…!」
徐に顔をあげたウサラパが、その目を輝かせる。なんとそこには、中華料理店が使っているのであろう業務用冷蔵庫がずらりと並んでいたのだった。
「ここならフカヒレがあるはず! ほらお前達! フカヒレ探しを手伝うんだよ!」
「恐竜の回収に来たザンスのに…」
「自分勝手すぎるッス…」
文句を垂れる2人だが、どちらもウサラパの命令とあっては逆らえない小心者である。渋々彼女のフカヒレ探しに付き合うことになったのだった。
「いいかい、フカヒレだよ。それ以外のものはいらないからね」
「う〜ん…そもそもフカヒレってどんな形してたザンスかねぇ?」
「食ったことないから分かんないッス」
そんな話をしながらそれぞれ冷蔵庫を探っていると、ウサラパが歓声と共に三日月型の何かを掴みだす。どうやらお目当てのものを見つけたようだ。
「あった〜! これがフカヒレよぉ〜ッ!」
「でも、それカッピカピに乾燥してるじゃないスか。調理しないと食べられないと思うッス」
「仕方ないねぇ…。じゃあ、持って帰ってタルボーンヌに…」
ウサラパがそう言いかけた時だった。背後の壁を突き破ってマプサウルスが顔を出し、彼女の持っていたフカヒレを一口で食べてしまったのである。
突然のことにビビってうずくまる彼女をよそにマプサウルスは顔を引っ込め、いずこかへと去っていく。
「今のって…!」
「今回の獲物に間違いないザンス!」
ノラッティ〜とエドが揃って壁の穴から外を窺うと、ちょうどマプサウルスを追ってきたリュウタ達の姿が目に入った。
「待てぇっ! カニ玉炒飯!」
「だから落ち着けって!」
「頭冷やしなさいよ! このままじゃまたオバさん達やロトに横取りされちゃうわよ!」
「ムッキー! 誰がオバさんじゃゴルルァ!」
マルムのオバさん発言でウサラパが再起動し、ノラッティ〜達を押しのけて壁の穴から顔を出す。
「ウサラパ様!」
「そんなこと言ってる場合じゃないッスよ!」
「…それもそうだねぇ」
一気に冷静になったウサラパを見て、2人は一息つく。しかし…。
「もっと大きいフカヒレを探すよーッ!」
「「えーっ!?」」
新たなフカヒレを求めてウサラパが駆け出していく。肝心の恐竜が二の次三の次になってしまった3人なのであった…。
大飯店『汁辣担』
店の厨房に侵入したオウガとミサが見たのは、すっかり廃墟のような風景と化した場所で鍋を振り続ける汁辣参大人の姿だった。
「オウガ君、あの人ってテレビで紹介されてた汁辣参かもね」
「そうみたいです。でも…お客さんも他の料理人も逃げ出したのに、何であの人はまだ調理を続けてるんでしょうか…」
『…やはりあの老人か』
オウガ達はヒソヒソとそんな会話をしていると、すぐそばの壁をぶち抜いて何かが猛スピードで通過し…急ブレーキをかけた。
それは、アジ島からここまで走ってきたタルボーンヌであった。
「おや、あなたはいつぞやの…」
「あ、あなたは…えっと…タルボ…タルボ…
タルボ…バタールさんでしたっけ?」
「タルボーンヌです。
すみませんがロトを見ていませんか。今すぐお勉強に連れ戻さなければいけないのです」
「ロト? えっと…今日はまだ見てませんけど…」
「そうですか…ん? これはカニ玉炒飯ですか?」
匂いで気づいたのか、タルボーンヌが汁辣参の鍋を覗き込み…眉をひそめた。
「まだまだですね。そんな鍋の振り方では美味しい炒飯にはなりませんよ」
「ムッ! その言葉、聞き捨てなりませんな!
これでも私は中華の鉄人と呼ばれている身だ! もし私のカニ玉炒飯より美味しいものを作れるというのなら、今ここで私と勝負していただきたい!」
「今から? 私はすぐロトを探しに行かねばならないのですが」
「おや、臆したのですか? それとも、ただ口だけよく回る名人様というやつですかな?」
「…取り消しなさい。今の言葉。私にもドクターに仕える家政婦としての矜持があります。
いいでしょう。その勝負、受けて立ちます」
「よろしい。…ならばそこのご両人。あなた方は審査員として、どちらのカニ玉炒飯が優れているか見極めていただこう」
「えぇ…?」
「よく分からないうちに巻き込まれちゃったかもね…」
かくして、オウガとミサはなし崩し的にカニ玉炒飯対決の審査員を務めることになったのだった。
その頃 『汁辣担』近くの大通り
相変わらずマプサウルスとガブ達の追いかけっこは続いていたようで、街を一周回って今はここまで戻ってきていた。
空腹でガブ達のペースが落ちているとはいえ、ここまで追いつけないのを見るとなかなかタフな奴である。
「このままじゃ逃げ切られるかも…リュウタ! マルム! こうなったら3方から挟み撃ちにしよう!」
「おう!」
「分かったわ!」
そこでレックスの策により、3人は十字路でそれぞれ3方向に分かれ、マプサウルスを包囲することにした。その上で最も足の速いエースとアインにマプサウルスを追わせ、見失わないようにする。
やがて、マプサウルスの前方にパラパラとランランが現れた。うまく回り込めたらしい。
逃げ道を塞がれたと悟ったマプサウルスは急ブレーキをかけて止まると、その身に炎を纏う…超技で無理矢理活路を拓こうとしているようだ。
マプサウルスは前後に素早く視線を配ると、口に溜めた業火を吐き出したのだった。
その頃 『汁辣担』厨房
具材の仕込みを終えたタルボーンヌと汁辣参はそれぞれコンロの前に立ち、炒めの作業に入った。
凄まじい気迫と頻度で鍋を振るうタルボーンヌの姿に、思わず汁辣参は気圧される。
(この鮮やかな中華鍋捌き…一体どこで身に付けたのだ…?
最早人間業とは思えぬ。口だけではなかったッ…! こやつ…できるッ!)
と、その時両者のコンロの火が小さくなってしまう。すかさず火力調節のノブを捻るが、火の勢いは変わらない。不具合を起こしたようだ。
「いかん、火が!」
「この程度の火力では美味しい炒飯にはなりません!」
「もっと、もっと火をくれーッ!」
その時、厨房に炎の波が押し寄せてきた。マプサウルスの『
「おお…これだ! この火だ!」
「この火力なら!」
「「おおおおおお!!」」
全身火だるまになりながら鍋を振り続ける2人。その炎は、彼らの料理にかける情熱が形となって現れたようだった。
やがて、オウガとミサが座る席の前へタルボーンヌが台車を押してやってきた。その上には、彼らが作ったカニ玉炒飯が2皿置かれている。
「できました。おあがりなさい」
「完璧な一皿だ。さあ、食べてくれ」
オウガとミサにとっては巻き込まれた形ではあったものの、タルボーンヌと汁辣参渾身のカニ玉炒飯は凄まじい存在感と輝きを放っている。これは食べねば損だろう。
「すごい…料理が輝いて見えるなんて初めてだ!」
「本当に美味しそうね…それじゃ、いただきましょうか」
「「いただきます!」」
オウガとミサはそれぞれを半分に分けてから取り皿に移し、食べ比べを始めたのだった…。
その頃店の反対側の通りでは、マプサウルスがT字路に追い込まれたところだった。
今が絶好のチャンス…そう感じたリュウタ達は、一斉にディノホルダーを構える。
「いくぞ! エース、アイン!」
「お願いね! パラパラ、ランラン!」
「よーし、さっさと終わらせてもう一度カニ玉炒飯を…どわぁっ!?」
だが、よりによってこの大事な局面でリュウタのディノホルダーが暴発し、辺りに技カードが飛び散ってしまう。
「もーっ! 何やってんのよ!」
「あぁ、いっけねぇ…」
悪態をつきつつちまちまリュウタがカードを拾い集めているうちに、マプサウルスはガブとイナズマを押し退けて包囲網から脱出してしまった。
前回に引き続きまたしてもリュウタの失敗である。
「あっ、待て! カニ玉…じゃなくて、マプサウルス!」
こうして、リュウタの凡ミスにより再び追いかけっこが始まったのであった。
その少し後 『汁辣担』
「「ごちそうさまでした!」」
リュウタ達がマプサウルスと追いかけっこをしている間に、オウガとミサはカニ玉炒飯を食べ終わっていた。
「どっちもすごく美味しかったです!」
「今までこんな美味しいもの食べたことなかったかもね!」
「それで、どっちのカニ玉炒飯が美味しかったかね!?」
口を紙ナプキンで拭きながら感想を述べる2人に、汁辣参が判定を迫る。
「うーん…どっちも本当に美味しかったのは本当なんですけど…」
「ほんの少しだけ違いがあって…それを考えると」
オウガとミサの様子を、タルボーンヌと汁辣参は固唾を飲んで見守る。しばらく考えてのち、2人は一斉に左の皿を指さした。
「こっちの方が美味しかったです」
「わたしもこっちの方が好きだったかもね」
その言葉を聞くなり、タルボーンヌが満足そうに頷く。どうやら2人が選んだのは彼女の1品だったようだ。
その一方で、汁辣参は愕然とした様子で立ち尽くしている。
「そんな…バカな…。今回は私にとっても珠玉の逸品だったはず…。何がダメだったのだ…」
「納得できないのなら、これを食べてみなさい」
いつの間にもう一皿作ったのか、タルボーンヌが汁辣参に出来立てのカニ玉炒飯を差し出す。彼は一瞬面食らった様子を見せつつも、レンゲで一匙掬って口に入れた。
「!! な、何だ!? この暖かみは!?」
自分のカニ玉炒飯にはない確かな違いを感じ取ったようで、がくりと膝をつく。
「私の…完敗だ」
「では、これでよろしいですね。
私はロトを迎えに行ってきます。ごきげんよう」
オウガ達にそう言い残すと、タルボーンヌはまた風のように走り去っていったのだった。
後には、膝をついたまま動けない汁辣参だけが残されている。
あまりにいたたまれなかったのか、オウガが彼に声をかけようとする。
「あの…」
「やめてくれ。敗者に慰めの言葉は要らん」
「いえ、そうじゃなくて…汁辣参のカニ玉炒飯も、本当に美味しかったんです。
でも、タルボーンヌさんの方が、暖かみを感じたというか…」
「暖かみ…それは私も確かに感じた。一体あれは何なんだ? どうすれば出せるのだろうか?」
「多分…愛情なんじゃないですか?」
「愛情…とな?」
「そうです。美味しくもありながら、まるで自分の家で食べているかのような安心感と暖かさを感じたんです。
前俺がタルボーンヌさんに会った時、あの人はアクト団の人達に過剰なほど気を配っていました。
まるで使用人というより肝っ玉なお母さんのようで…そんな家族を愛する心のようなものが、料理にも違いとして現れたんじゃないでしょうか?」
「家族…愛情…」
その時、汁辣参の脳裏にとある風景が過る。そこでは、一組の夫婦が笑い合っていた。そしてその妻の方の腕には、まだ生まれて間もない赤ん坊が抱かれている…。
(誰だ…この人達は…? 知らないはずなのに、彼らを見ていると不思議と暖かな感覚で全身が満たされていく…。
そうか…。これが、愛情なのか…)
『おい、オウガ。そろそろ行くぞ。いつまでもアヤツらを放っておくわけにもいくまい』
「そ、そうだよね。ごめん。
あ、汁辣参さん。ごちそうさまでした。お代は後でお支払いしますから…」
「…いや、待ってくれ」
すると、キリリとした表情で汁辣参が立ち上がった。
「ご両人。あなた方は大切なことを気付かせてくれた。心から礼を言わせてもらう」
「そ、そんな…。俺はなんとなく感じたことを口に出しただけで」
「わたしも、ただ感想を正直に言っただけかもね…」
「…もし、良ければだが…私にこの地での最後の一品を、作らせてもらえないかね?」
どこか吹っ切れたかのような彼の提案に、オウガとミサは素直に首を縦に振るしかできなかった。
そんな2人を見た汁辣参は微笑むと厨房へ入っていき…しばらくすると、ガンガンと鍋を激しく叩く音が響き始めたのだった…。
その頃 アジ島
アジ島中に響き渡らんばかりの腹の音が響く。その音の主はソーノイダであった。
「ウサラパー、エドー、ノラッティ〜! 何か食べるものを持ってくるぞーい」
枕元のナースコールを押しながらそう叫ぶが、誰も来ない。
「タルボーンヌ〜。何か食べさせてくれぞーい」
今度はタルボーンヌを呼ぶが、またしても反応はない。
「ノーピス! ロト! ロアー! 誰でもいいから返事するぞーい!」
そう叫びながらナースコールを連打するものの、誰かが来るような気配もない。
「おかしいぞい…。みんなワシを置いてどこに行ったんだぞい…」
その時、プシュッという音と共に部屋のドアが開き、ロアが入ってきた。その手には皿に盛られた炒飯がある。
「どうしたの、おじい様。基地中にナースコールが響いてうるさくって来ちゃったわ」
「おおっ、ロア! 来てくれたぞいか!
ウサラパ達はおらんぞいか? タルボーンヌはどうしたんだぞい?」
「ウサラパ達はまだ帰ってきてないわよ。
それにタルボーンヌさん、お昼前のお勉強の時間になっても来なかったの」
「…なぬ? あの時間厳守のタルボーンヌがぞいか?」
「そうなのよ。一体どこに行ったのやら…。
あと、おにい様とノーピスもどこかへ出かけていったわよ」
「くぅーッ! どいつもこいつもワシのことを置き去りにしていきおってー!
…って、ロア。その炒飯はどうしたぞい」
「タルボーンヌさんがいないからお昼ご飯も食べられなくて、我慢できなかったから冷凍庫に入ってたこれをチンして食べてたの。
もしかして、おじい様も欲しい?」
「そうなんじゃぞい…。腹が減って仕方なくて…」
「分かったわ。それじゃあこれを食べ終わったらおじい様の分もチンしてきてあげる」
「すまんのう…頼むぞーい…」
ロアが部屋から出ていき、会話は途切れる。ソーノイダは空腹を誤魔化すつもりなのかテリジノを抱き寄せ、撫でながら食事の到着を待ったのだった…。
戻って中華街
その頃、ロトとジェイソンの対決はいよいよ佳境に入っていた。目の前で激しい鍔迫り合いを繰り広げるカスモサウルスとインドミナス・レックスを凝視し、ロトが歯軋りを洩らす。
(あれだけ攻撃して…毒も入ってるはずなのに、インドミナスは全然弱らない…。
何でだ? こっちだってカスモサウルスのエネルギーをかなり温存した上でステゴケラトプスを倒したのに…何でここまで戦ってて耐えきれてるんだよ…)
そんな彼の心理状況を知ってか知らずか、ジェイソンが口端を吊り上げる。
「てめぇは随分とこのカスモサウルスに手を加えたみてぇが…何か勘違いしてねぇか?
てめぇですらやってるような恐竜の強化を、おれ達がやってないとでも思ったのか?」
その言葉に、ロトは愕然とする。しかし、よく考えれば分かることだった。彼らは恐竜を兵器や商売道具にしようとしている人間だ。そしてそうであるならば、強化や改良を施さないはずがない。
「分かったみてぇだな? そんな少し手を加えた程度のカスモサウルス1頭で、おれに吠え面かかせられると思ったら大間違いってことだよ!
さぁ、インドミナス! そろそろ終わらせるぞ! 『
ジェイソンがそう呼びかけると、インドミナスの体が虹色の光に包まれる…。
バカな。あれはボク達アクト団が開発した、恐竜と技カードを一体化させる技術のはず。そんなものまで盗み出していたのか…!
怒りで目の前が真っ赤になりながら、ロトはノーピスから貰ったトリプルスラッシュカードを手に取る。
「そうはさせない! 『必殺封じ』!」
「そんならおれも使わせてもらうぜぇ? 『必殺封じ』返しだ!」
ロトのカードが発動し、白い光と共に飛び出したヴェロキラプトル達がインドミナスに迫っていく…が、それをクレバーガールズが食い止めた。
ヴェロキラプトル達は何とか逃れようと暴れるものの、体格差のせいで振りほどくことすらできない。
(そんな…『必殺封じ』まで…あれはノーピスが新開発した技のはずなのに…どうして…!?)
お助け恐竜が封じられたのを確認したインドミナスはニヤリと笑みを浮かべ、血まで凍りつきそうなほどの悍ましい雄叫びをカスモサウルスに浴びせる。するとカスモサウルスは凍りついたように固まり、その場に倒れてしまった。
動けないカスモサウルスにインドミナスがゆっくり近づくと、爪や牙で執拗に痛めつけ続ける。そのまま切り刻まれ、カードに戻されていくカスモサウルスの姿を、ロトは呆然と見守ることしかできなかったのだった。
「ふぅ〜、スッとしたぜ。東坡肉は食いっぱぐれちまったが、ナマイキなクソガキを叩きのめしたお陰でスッキリいい気分だ。
そんじゃ、おれは別の店で食い直してから帰るぜ。あばよ」
そう言い残すと、ジェイソンはインドミナスとクレバーガールズをカードに戻し、その場を後にしていく。その後ろ姿を、ロトは見送ることしかできなかったのだった。
と、そこへ汁辣参との料理対決を制したばかりのタルボーンヌが駆けつける。
「ようやく見つけましたよ、ロト。さぁ、アジ島に帰ってお勉強なさい」
「あ…タルボーンヌ…。ボク…」
「言い訳は要りません。それよりも、これからはノーピスに気を付けて…」
「おい、タルボーンヌ。ロトをどこへ連れて行くつもりだ」
その声に振り返ると、そこにはノーピスが立っていた。タルボーンヌはロトを庇うように立つと、飛行機に戻るよう促す。
「飛行機に乗ってアジ島へ帰りなさい。分かりましたね?」
「う…うん。分かった…」
ヨロヨロと、足元が覚束ない様子でロトが歩き去っていく。タルボーンヌはそれを見送ってから、ノーピスに厳しい視線を向けた。
「ノーピス。お話があります」
「…いいだろう。だがここでは何だ。少し離れたところで話すとしよう」
その頃 『汁辣担』
「できたぞ。さぁ、食べてくれ」
汁辣参が台車を押してくると、オウガとミサ、そしてレクシィ達にも皿を配る。皿の上には、黄色いスライムのような物体が乗っていた。
「「い、いただきます」」
作ってくれたからには食べなければ失礼というもの。オウガとミサは皿の上のものを一匙掬い、口に入れた。
「「!?」」
すると、なんということだろうか。少し気味悪い見た目からは想像がつかないプニプニとした食感で、口いっぱいに卵の甘みとラードの風味が広がっていく。
しかも、こんな見た目と食感でありながら舌や歯にこびりつくことなく食べられる。
2人は、こんな食べ物を今まで食べたことがなかった。
『これは…見た目からは想像もつかん。なんと不可思議な食い物だ…』
『キュキュッ! キュ〜ッ♪』
『ゴルルルゥ…♪』
「うむ。どうやら恐竜達も気に入ってくれたようだな。良かった良かった」
「あ、あの汁辣参さん。これは一体…」
「これは『
「サンプーチャン…?」
「そうじゃ。まずは澱粉と砂糖を水に入れて馴染ませる。この段階でも4、5時間は必要となるのじゃが、そこへ濾した卵黄を入れて火にかけ、粘り気が出てきたら油を少しずつ加えてからお玉で叩き続ける。
何度も何度も繰り返し叩いては油を入れ…ようやく出来上がるものなのだ。
この火のかけ方や叩き方により、まるで違う出来上がりになってしまうから、難しい一品だと言われておるそうじゃ」
「そうなんですね…」
汁辣参の解説を聞きながら、オウガはまた一匙口に入れる。三不粘の味と共に、先ほどのカニ玉炒飯にはいまいち欠けていた暖かみが感じられる。そして、どこか懐かしい味わいも…。
「あの、汁辣参さん。この料理で何か拘っているところはあるんですか?」
「拘り、か。実はそれに使う卵は、ワシが日本全国を回って目利きをした中で至高と言えるものを使っておってな。北海道の真布井農場というところの卵を直送してもらって、使っておるのじゃよ…と、どうしたのかね」
「オウガ君…その涙、どうしたの?」
「そっか…真布井農場の…卵だったんだ…」
卵の出処を知った時、オウガの脳裏に朧気だった記憶がはっきりと蘇った。
かつて北海道に暮らしていた時、真布井農場の中で玲葛や丁睦と遊んだ思い出。
採れたての卵や野菜を一緒に食べて、笑い合った思い出。
そして、引っ越しの前日。彼らの家で開いてもらったお別れ会のことを…。
ここ三畳市に引っ越してきてから新鮮で刺激的な出来事ばかり起き、風化しかけていた記憶が、この三不粘を食べるごとに鮮明に蘇ってきたのだ。
やがてオウガは匙を置き、綺麗に完食した皿を前に「ごちそうさま」とひと言呟いた。
「汁辣参さん、ありがとうございました。
あなたのお陰で俺、忘れかけてた大切な思い出を思い出せました」
「そう言ってくれたのなら、料理人冥利に尽きるというものじゃ。
では、ワシはもう一度修行の旅に出るとしよう」
そう言うと、汁辣参はどこからともなく取り出した旅行鞄を持ち、店の玄関から去っていく。その後ろ姿を、オウガ達は感慨深げに見送ったのだった…。
横浜港 埠頭
「…さて、ここでいいだろう。
それにしてもどういうつもりだ、タルボーンヌ?
これはDr.ソーノイダからの極秘指令だと言ったはずだ。それとも、まさか本当にドクターのご意思に逆らうつもりか?」
「逆らっているのはあなたですよノーピス。
私が直接伺いましたが、ドクターはそんな指示は出していないとおっしゃっておりました。
つまり、あなたがロトを連れ回しているのはあなた自身の独断だと言う他ありません」
タルボーンヌの言葉に、ノーピスの表情が僅かに歪む。
「ドクターのご意思を無視するような方には、ロトもロアも任せることはできません。
これからは、ドクターの許可を得た上で私がお二人の面倒を見させていただきます。では」
反論の余地もない勢いで喋ると、タルボーンヌは背を向けてその場から離れていく。その背中を、ノーピスは強い感情の籠もった目で見つめていた。
「…タルボーンヌ。悪いがこれ以上、私の邪魔をさせる訳にはいかない」
「何ですって?」
タルボーンヌが振り向こうとしたその瞬間、すぐ横の倉庫から極太の電撃が飛び出し、彼女に直撃した。
凄まじい電撃に全身を激しく震わせ…煙を噴き出しながらその場にガシャンと倒れる。
「よう。手筈通り、うまくいったみてぇだな」
その言葉と共に姿を現したのは、ジェイソンとステゴケラトプスだった。先ほど力尽きたばかりだったが、何らかの手段で回復させてから『
「あぁ。邪魔者には消えてもらわねばならないのでな」
「おー、怖いねぇ。そんで、こいつはどうする?
海にでも沈めるか?」
「いや。間もなくアメリカ行きの貨物船が出るはずだ。その中へでも放り込んでおいてくれ」
「りょーかい。任せとけよ」
戻って中華街
「さぁ、鬼ごっこは終わりだ!」
リュウタ達の目の前には、袋小路に追い詰められたマプサウルスの姿がある。進退窮まったマプサウルスは全身に炎を纏い、『
「やるぜ!」
「了解!」
「今度こそやりましょ!」
3人が一斉にディノホルダーから技カードを射出し、スキャンする。
「『
「『
「『
技カードが発動し、6体がそれぞれの属性の色に包まれる。まずガブとイナズマが『
3属性の合体技は『
「よっしゃあ! マプサウルスと技カード、いっただきぃ!」
「おーい、リュウター!」
そこへ、古代夫婦とリアス、それにオウガとミサが駆けつけてくる。
「あっ、父さん! それにオウガとミサさんも!
アメジストは見つかったのか?」
「うん。こっちも大変だったよ。見つけた時は壊れた店で料理を食べ漁っててさ…」
「ウフフ、アメジストったら、ガブより食い意地張ってるのね」
「よーし、これで全部終わったことだし…黄金のカニ玉炒飯、食べられっぞ〜!」
蕩けた顔でそう口にするリュウタ。そんな彼をレックスとマルムは呆れ顔で、オウガとミサは意味ありげな顔で見つめるのだった…。
中華街 上空
ちょうどその時、上空を飛んでいたのはノーピスの操る飛行機だった。機体下部からは三本のマジックアームが伸びており、それらはウサラパ達アクト団工作員の面々をしっかりと掴んでいる。
「はぁ…恐竜も回収できなかった上、せっかくの中華街で何も食べられなかったッスね…」
「フッフッフ…これを見るザンスーッ!」
その言葉と共にノラッティ〜が懐から取り出したのは、フカヒレ!…ではなく、小さな箱だった。
「何だいそれは…。フカヒレじゃないのかい」
「確かにフカヒレじゃないザンスけど、いいものザンスよ!」
そう言いながらノラッティ〜が箱を開くと、中には肉まんが3つ並んでいた。
「ちょうどいい感じの店があったから、フカヒレ探しのついでに買ってたザンス」
「そうだったのかい…。フカヒレが手に入らなかったのは残念だったけど…せめてこれでお腹を満たそっか」
「賛成ッス!」
それから3人は肉まんを1つずつ手に取って頬張る。
何一つ成し遂げられなかった彼らだったが、その顔は喜びに満ちていたのだった…。
「…これでもうロトを止められる者はいない。あとは恐竜カードを全て集め…最終研究の準備を進めるだけだ」
誰一人いない機内でノーピスはそう呟き、堪えきれずに笑い声を洩らす。
その彼の眼下では、ちょうど件のアメリカ行きの貨物船が太平洋に向けて出航している。その甲板には、あの汁辣参大人が乗っていたのだった…。
『汁辣担』店頭
喜び勇んで汁辣担へと戻ってきたDキッズ一行だったが、店のドアに1枚の張り紙を見つけた。
「えっ? 何だよこれ」
「えーっとなになに…『しばらく修行の旅に出ます 探さないでください 汁辣参』…らしい」
その瞬間、リュウタの表情が一気に絶望に変わる。ここまで黄金のカニ玉炒飯だけを心の頼りに頑張ってきたのに、最後の最後で梯子を外されてはそんな顔にもなろう。
絶望と怨嗟の雄叫びを上げるリュウタを苦笑いで見つめるオウガだったが、誰かが肩に触れている感触で振り向くと、口に人さし指を当てるミサの姿があった。
(今日のことは、2人だけの秘密にしましょ)
(そうですね。俺達だけいい思いしたことを言う必要なんかないですもんね)
そう小声で言い交わすと、2人はコッソリ笑い合ったのだった…。
恐竜図鑑コーナー!
「今回紹介する恐竜は、大地の咆哮『マプサウルス』!」
「名前の意味は『大地のトカゲ』。体長10〜12メートルの、アルゼンチンで発掘された超大型獣脚類だ」
「口を見ると、ナイフみたいな薄くて鋭い歯が並んでるのね〜」
「これはマプサウルスの近縁種にあたるギガノトサウルスやカルカロドントサウルスにも共通する特徴だよ。彼らはこの歯を使って獲物となる巨大竜脚類に繰り返し裂傷を与え、失血死させる狩りをしていたと考えられているんだ」
「あとは…確か、この子は色んな大きさの化石が一箇所から見つかってるのよね」
「そうだね。だから親子で狩りをしたんじゃないか?という仮説もあるらしいよ」
「こいつらがデカい恐竜を協力して狩るところ…一度でいいから見てみたいなぁ〜!」
「…ちなみにだけど、よくギガノトサウルスと一緒に描かれがちなアルゼンチノサウルスは、実際はマプサウルスと同時代同地域に生息していたと化石の発掘時代から判明してるんだよ」
ということで、今回はここまでです。
今回の話では読者の方から寄せていただいた提案を採用し、一部原作から改変させていただきました。いかがでしたでしょうか。
もしこの改変についてご意見等ございましたら、是非感想等で書いていただけるとありがたいです。
では次回第39話『愛と情熱の街に降り立つ奇跡の翼!』スペインのバルセロナに降り立った、極上の癒しを与える奇跡の翼。そしてそれを狙う隻眼の捕食者も…?
次回をお楽しみに!
※追記:レクシィが『猛炎奔流』『爆炎壁攻』を使えるようになりました
また、インドミナス・レックスの新規技『凶乱大咆哮』の説明を設定集に追記しました