古代王者恐竜キング ジュラシック・エイジ 作:バックベアード
横浜中華街の『汁辣担』へ黄金のカニ玉炒飯を食べに来たDキッズ一行。入店前にトラブルがあったものの、ようやくカニ玉炒飯にありつける…というところで、マプサウルスが乱入してくる。
この事態にDキッズは対応にあたろうとするが、彼らの恐竜は空腹のため周囲の食べ物に気を取られたり、どこかへ姿を消していたりと散々な始まり方だった。
リュウタ達がマプサウルスを追って中華街中を駆け巡っている間、オウガとミサはアメジストを探して戻ってきた『汁辣担』で、汁辣参大人とタルボーンヌのカニ玉炒飯対決に付き合うことになる。
軍配はタルボーンヌに上がったが、オウガはその理由が愛情にあるのではないかと汁辣参に説明したところ、彼はどこか納得したようで2人にお礼を言い、更に三不粘まで振る舞ってくれた。
一方でようやくマプサウルスを鎮めて店へ戻ってきたリュウタは、汁辣参が旅に出た旨の貼り紙を見て絶望の叫びを上げる。そんな彼らの後ろで、オウガとミサは今日の出来事を2人だけの秘密にすることにしたのだった…。
前編
アクト団アジト アジ島
「あ〜〜っ! 何でこうなっちゃうさ〜っ!」
そんな嘆きの声を上げるウサラパの前には、山のように積まれたゴミが鎮座している。あの横浜の1件でタルボーンヌがいなくなって以来、アジ島はどこもこんな酷い有様であった。
「タルボーンヌがいなくなっただけで、どこも滅茶苦茶じゃないかぁ…」
「とにかくおれ達の部屋だけでも片付けるッス」
「ザンスねぇ…」
しかし嘆いていても始まらない。3人は渋々割烹着に着替え、部屋の掃除を始めたのだった。
それから1時間が過ぎた頃、彼らの部屋はようやく綺麗に片付いた。
「はぁ〜…何とか片付いたッス」
「まったく…朝から晩まで掃除・洗濯・炊事、掃除・洗濯・炊事の繰り返し…もうやんなっちゃうよお…」
「これでドクターがリハビリを始めてくれてなかったら、もっと酷いことになってたザンスよねぇ」
背中を寄せ合ってそう愚痴る3人の前に、ティラノ達アクト恐竜が姿を現す。暇つぶしの追いかけっこをしているらしい。彼らは手当たり次第に暴れまわり、せっかく3人が片付けたものをまた散らかしてからどこかに去っていった。
「また掃除のやり直し…」
「もう嫌こんな生活ぅ〜!」
アジ島 勉強部屋
一方、こちらではロトとロアが勉強に励んでいた。実は彼らがまともに顔を合わせるのは随分久々である。
「ねぇ、おにい様」
「…何さ」
「タルボーンヌさんがいなくなってもう1週間よ。わたしもできる範囲で片付けはしてるけど、それでも全然追いつかないし…勉強部屋ですらこの有様なのよ」
彼らの周囲にはお菓子の空き袋やら何やらが大量に散らばっており、殆ど足の踏み場もない状態だ。ロアの周りは少しだけ片付いているが、それが彼女の精一杯であった。
「…汚くなってきたなら別の部屋でやればいいだろ。ボクはそうするよ」
しかしロトは冷たくそう言い放つと、学習用タブレットを抱えて部屋から出ていってしまう。ロアはそんな彼を、悲しみと呆れが混じった表情で見送るしかなかった。
ロトが廊下を移動していると、左の部屋からウサラパ達がヨロヨロと出てくる。先ほどの部屋をようやく片付けたらしい。
「やっと終わったよぉ…」
「あ、そこの部屋掃除終わったんだ。じゃあ使わせてもらうねー」
「「「えーっ!?」」」
ロトが素早く綺麗になった部屋へ駆け込んだ…と思うと、すぐ顔を出して3人に言い放つ。
「それじゃ、今度はさっき使ってた方の部屋の掃除、よろしくね。
ロア1人じゃ荷が重いだろうからさ」
それだけ言うとまた部屋へと引っ込む。どこかソーノイダに似てきたその横暴さには、ウサラパ達も怒りが抑えきれない様子だった。
が、その時。ナースコールと共にスピーカーからソーノイダの声が基地中に響く。
『おーい、そろそろ飯の時間じゃぞい。飯を持ってくるぞーい!』
ソーノイダの食事の催促であった。いつもならば渋々対応する3人だが、今日ばかりは疲れからか面倒くさい気持ちが勝る。その上ロトから別の部屋の掃除まで言いつけられているのだ。
「なんか聞こえるッスよ…」
「…きっと気のせいよ」
「そうザンス。気のせい気のせい…」
結局無視することに決めた3人は、ひとまず食事を摂りに部屋へ戻っていったのだった。
アジ島 厨房
「あいつらめ…ワシの命令を無視しおって。前より幾分楽にはなったものの、まだ腰は治りきっておらんというのに…」
ウサラパ達に指示を無視されたソーノイダは、渋々自分で厨房に食事を取りに来ていたのだった。リハビリ中とはいえまだ自由に歩けないので、移動は彼お手製の電動歩行機に頼り切りである。
電子レンジで温めたパックご飯にサバ缶とインスタントのお吸い物を添え、その場でモソモソと食べ始める。
「のほほ…泣く子も黙るアクト団のボスたるワシが、なんと惨めな姿ぞい…。
まったくあ奴らめ…腰が本調子に戻った暁には覚えていろぞい…」
そうぼやきながら食事を続けるソーノイダなのであった。
一方、そのウサラパ達も遅めの朝ごはんとしてカップラーメンを食べていた。興奮したティラノ達が乱入してくる…なんてこともなく、静かかつ穏やかに完食できたのだった。
このようにタルボーンヌ1人がいなくなるだけで、アジ島の生活環境は加速度的に悪化の一途を辿っていたのだった…。
一方その頃 日本国三畳市 古代家
「もーっ! 何でこうなるのー!?」
リュウタの目の前には、散らかり放題のリビングが広がっている。アジ島より幾分マシとはいえ、こちらも酷い有様だった。
「ママさんがいないだけで家の中が滅茶苦茶だ…」
「何で急に旅行なんて行っちゃうんだよ…」
2人の脳裏に、数日前の朝の光景が甦る…。
『友達とスペインに本場のフラメンコを見に行くことにしたの。その間家のことはお願いね〜』
『『『えーっ!?』』』
そんな形で置いていかれた3人は、僅か数日で家の中を汚くしたようだ。以前も同じことがあってマルムに怒られたのに(マイアサウラの回)、彼女の怒りが全く響いていなかったのだろうか。
「はぁ…腹減った。なんか食べ物ないかな…」
そう呟き、リュウタが部屋の片隅の袋をゴソゴソと弄る。それで更に部屋を散らかす姿に、レックスが苦言を呈した。
「おいリュウタ! 散らかしてないで少しは片付けろ!」
「そういうレックスだって、自分の部屋ばっか綺麗にしてぇ! 少しはみんなの場所も片付けようって気にはならねぇのかよ!」
「何だって! 自分の部屋すら綺麗にできないお前に言われたくないよ」
突然言い争いになり、睨み合う2人。家の中が汚いと心も荒むというが、まさにその典型例であった。
「おーい、リュウタ! レックス!」
と、そこで庭にいた古代博士が2人に声をかける。見るとそこにはテントが張られており、焚き火の跡も残っていた。
「父さん、何やってんの?」
「都会のジャングルで迷ったら、こうしてサバイバルしてみるのもいいもんだぞ!」
「それは?」
レックスが指さした先には、上に石が乗った逆さまの飯盒があった。
「蒸らしてるんだ。そろそろいい頃だぞ」
それから古代博士は軍手を嵌めると飯盒を元に戻し、慎重に蓋を開ける…。
すると彼らの目の前に、艷やかに炊き上げられたご飯が姿を現した。
「すげぇ! ご飯ができてる!」
「料理は苦手だが、飯盒炊飯は大得意なんだ!
さぁ、海苔の佃煮もふりかけもあるぞ! 食え食え!」
「「うん!」」
彼のひと言を皮切りに、リュウタ達が茶碗にご飯を盛り付けていく。その姿を見ながら、古代博士はスペインにいるであろう妻アキに思いを馳せたのだった。
「炊きたてのご飯より美味いものはない。あぁ、母さんにも食べさせたいなぁ…」
「ところでパパさん、前に買ってきたビーム機能付き飯盒は使わなかったんですか?」
「だってそれを使うとサバイバル感がなくなるだろ?」
「じゃあ何で買ったんだよ…」
一方その頃 スペイン バルセロナ
男3人が飯盒のご飯を食べていた頃、アキは2人の友人と共にフラメンコのランチショーを楽しんでいた。
「素晴らしいわ〜! 流石本場ね」
「わざわざスペインまで来た甲斐があったわね〜」
「ほんと。料理も美味しいし言う事なしよ」
「この生ハムなんか最高ね。父さんやリュウタ達にも食べさせてあげたいくらい…」
「やだわアキさん。こんな時なんだから家のことはなしでしょ?」
「やだわ、ごめんなさい」
「いいのいいの。さっ、どんどん食べましょ!」
こちらも存分に食事を楽しんでいたのだった。
近くの放牧場
ここには、特徴的な黒い豚が放牧されている。スペインが誇る名豚・イベリコ豚だ。そんな彼らの頭上…空に一筋の亀裂が走ると、そこから2枚のカードが舞い落ちてきた。そこへ一陣の風が吹き抜けると、カードは灰色の光と共に膨れ上がっていく…。
やがてそこから姿を現したのは、1頭の大型獣脚類だった。その特徴的なトサカの下の瞳は、片方が白く澱んでおり、どこか不気味さを醸し出していた。
突然現れた恐竜に怯え、豚達が一斉に走り出す。野生の本能に従い、恐竜も彼らを追いかけていった。
「パエリアも良かったけど、やっぱりイベリコ豚の生ハムが1番美味しかったわね〜」
「本当ね。フフフ…」
アキ達を乗せたタクシーが店から離れていった直後、豚を追ってきた恐竜が店内へと押し入る。奴はしばらく周りの様子を探り、瓦礫の一部を退かし始めた。その下からはイベリコ豚の生ハムの原木が出てきた。
奴は一口でそれを頬張り、足りないと言わんばかりに唸り声を洩らす。その時、瓦礫の中から卵型カプセルが転がり落ちた。そして真っ二つに割れると中からカードが飛び出し、眩い光と共に空へ羽ばたいていく。それは小さな恐竜のようでありながら、鳥のようでもある不可思議な姿をしていた。
それを見た恐竜の口から涎が滴る…。どうやら、次のターゲットを定めたらしかった。
その頃 アジ島
当然ながらウサラパ達のアクトホルダーも恐竜出現を感知したようで、甲高い通知音が響き渡る。
「なぁんだ恐竜かぁ…」
「恐竜…ん? ウサラパ様。これってここから抜け出すチャンスなんじゃないスか?」
「言われてみれば…そうだね。掃除洗濯炊事なんかやってる場合じゃなーいっ!
何としても、恐竜を捕まえに行くのよっ!」
「「ヘイヘイホー!」」
この地獄から少しでも逃れるため、3人は出撃の準備を始めたのだった…。
一方で、ロトのもとにもノーピスによって恐竜出現の一報が伝えられていた。
「…え? 恐竜が?」
「そうだ。場所はスペインのバルセロナ。すぐに向かってくれ」
いつもの様子のノーピスを相手に、ロトは意を決してこれまで聞けていなかったことを口にする。
「ねぇ、ノーピス。確かこの前、タルボーンヌさんと最後に会ったのはノーピスだったよね? もしかして、タルボーンヌさんが今どこにいるか知ってるんじゃないの?」
「さぁな。何かやることがあると言って別れて、それっきりだ。俺が何かした訳じゃない」
「…本当に?」
「あぁ、本当だ」
表情を一切変えずにそう言ってのけるノーピスに対し、ロトは疑問を抱かざるを得なかった。彼が知るタルボーンヌは、無責任に自分の仕事を投げ出す人物ではないからだ。
そんな彼の視線に気づいたのか、ノーピスが煽るように言う。
「どうした、行かないのか? それなら今回はあの役立たず共に任せるか?」
「…分かった。行くよ。アクトホルダーを貸して」
「勿論だ。いい成果を期待しているよ」
にこやかに笑い、ノーピスはアクトホルダーを差し出す。ロトは彼の顔を見ずにそれを受け取り、部屋から駐機場へ向かったのだった。
それから幾ばくも経たないうちに、アジ島からロケットが打ち上がる。ロトが操るものだった。
「目的地を設定して自動操縦に切り替えて…よし、ゲームの続きでもやるか」
そう呟いてゲームを始めるものの、全く手が進まない。
(ノーピスはああ言ってたけど、タルボーンヌさんの行方を知らない訳がない。
それに…あの時茫然自失だったからよく覚えてないけど…ノーピスに気をつけろってタルボーンヌさんが言ってた…。
ボクは、何か見逃してるんだろうか…)
ソーノイダの部屋
「…おい、これはどういうつもりぞい」
ソーノイダの部屋へせっせと缶詰やらスナック菓子やら生活必需品やらを積み上げているのは、ウサラパ達3人だった。
当然の疑問を呈する彼に対し、彼女達は猫撫で声で弁明する。
「スペインに恐竜が現れたようなので、今から出動するんですけど〜…」
「もしかしたら結構時間がかかるかもしれないザンスから…」
「その間、ドクターには自分のことは自分でやっておいてほしいッス」
「じゃ、行ってまいりま〜す!」
そう言い残し、3人は脱兎のごとくその場を後にする。
「まったく…呆れた奴らぞい」
ソーノイダはそう文句を言いつつも、目の前の物資を見てホッと一息つく。
「でもまあ、これで…しばらくはあちこち歩かなくて済みそうぞい」
その頃 三畳市 Dラボ
一方こちらでも、恐竜出現の一報を受けたDキッズが勢揃いしていた。彼らの目の前にある大型モニターには、スペインのバルセロナで光る赤とオレンジの光が映っている。
「バルセロナって…確か母さんが旅行に行ってるとこだろ?」
「アタシもそう聞いたけど…まさかリュウタ。またあなた達アキさんがいない間に家中散らかしてないでしょうね?」
「そ、そそそそそんな訳ないだろ!?」
マルムから睨まれたリュウタが、目線で古代博士へ助けを求める。それを察した博士が、芝居がかった口調で喋りだした。
「な、なんて偶然なんだ! 運命を感じるよ、母さん…!」
「と、とにかく行こうか。オーウェンさんのとこの恐竜も出てる以上、すぐにでも対応にあたらないと」
挙動不審な2人を見てオウガも察したのか、出発を急かす。マルムも一応この場は引き下がることにしたようで、いつも通り5人と9匹がテレポート台に上がる…と、そこで古代博士がこんなことを言い出した。
「あぁっ、待ってくれみんな! 私も連れて行ってくれ! 母さんに会いたいんだ〜…」
「んなこと言ってもムリだって〜」
「石板かアンバーがなければテレポートできないってパパさんが1番知ってるじゃないですか」
「じ、じゃあそれなら手紙を書く! 少し出発を待ってくれ!」
「え〜…」
「いいじゃない。素敵な夫婦愛だし♪」
「でも、早く現地に行かなきゃ被害が出るかも…」
「まあ、待ってあげましょうよオウガ君。わたしだって博士の立場だったら、オウガ君に同じことしてあげたいし…」
「ミサさん…そ、それなら仕方ないですかね」
「あー、なーんかすぐ出発したくなっちゃったわー」
「マルム…」
「女の心変わりは恐ろしいな…」
それから数分後、古代博士は1通の封筒を持って現れた。しかもご丁寧にハートのシールで封をしている。
「それじゃあ…くれぐれも頼むぞ」
「はいはい…」
「頼んだぞーみんな! きっと母さんに渡してくれよ!」
そんな博士の声に見送られ、5人はテレポートしていったのだった…。
スペイン マドリード
5人がテレポートで辿り着いたのは、街中の大通りだった。
「ここがスペインのマドリードか…」
「初めて来たけど、けっこう活気がある場所かもね」
「よーし、それじゃあ恐竜探しに行こうぜ!」
リュウタの一声で、5人は一斉に歩き出す。ちょうどその時彼らの後方をアキが横切っていっていたが、当然気づくはずもなかったのだった。
ラス・ベンタス闘牛場
歩いているうちに、彼らの目の前には立派な闘牛場が現れた。マドリード市内唯一の闘牛場であるラス・ベンタス闘牛場だ。
「ここが闘牛場かぁ…。でっけぇなぁ…」
「でも、バルセロナだともう闘牛って流行ってないらしいわよ」
「マジぃ? カッコいいのに…」
「カッコいいのは間違いないけど、昨今は色々動物愛護が叫ばれる時代だからね…。人気が落ちるのも仕方ないのかな」
サグラダ・ファミリア
次に彼らが来たのは、未だ完成していない大聖堂サグラダ・ファミリアだった。
「サグラダ・ファミリア?」
「そうよ、世界遺産! ガウディって人が作り始めたんだけど、100年以上経った今でもまだ完成してないんですって」
「確かこの前、メインタワーのイエスの塔が完成したとか言って生中継されてたよね」
「でも聖堂そのものはまだ未完成なんて…一体いつ完成するのか見当もつかないかもね」
グエル公園
続いて彼らは同じくガウディが手がけた庭園であるグエル公園に来たのだが…。
「って、リュウタもマルムも何やってるんだよ! 恐竜を探しに来たのに、観光してばかりじゃないか!」
記念の写真を撮ってばかりの2人に、とうとうオウガが怒り出した。レックスもそれを援護する。
「そうだぞリュウタ! ただでさえお前は最近失態続きなんだから少しは真面目にやれよ!」
「何だよ、せっかくスペインに来たってのに…」
その時だった。眼下の街の真ん中で突然巨大な土煙が立ったのだ。5人がそちらへと目線をやると、煙からオレンジ色の鳥のようなものが飛び出していき、それに続いてあの大型獣脚類が現れる。
「あれは…アロサウルス…だよな?」
「アインより体格が大きいけど、そうみたいだ!」
「オレンジの反応…間違いない! あれがオーウェンさんの世界の恐竜だよ!」
「えっ? じゃあ赤い反応はどこなの?」
「ディノラウザーを見るとアロサウルスとあまり距離は離れてないみたいだけど…それらしいものは見当たらないかもね…」
彼らが気づかないのも無理はない。それは今、サグラダ・ファミリアの屋根の上で羽を休めていたのだ。
鳩くらいの大きさしかないその体はオレンジの羽毛で覆われており、翼には虹色の風切羽が生えそろっている。
明らかに鳥のような見た目でありながら、口や脚は恐竜そのものの特徴を併せ持つ…。
その恐竜の名は、アーケオプテリクス。またの名を『始祖鳥』。かつて恐竜から鳥への進化の過程の姿とされていた小型獣脚類であった。
やがてアロサウルスが高く鼻面を突き上げ、大きく息を吸い込む。始祖鳥の匂いを嗅ぎ取ろうとしているのだ。そしてそれがサグラダ・ファミリアの方向にいることに気づいたようで、そちらへ疾走していく。
「なんてことだ、怪物がサグラダ・ファミリアに向かってるぞ!」
「そんな…私達の…スペインの宝が…」
「お願い! 誰か止めて!」
そんな叫びが周囲から次々に湧き起こる。そうとなれば、唯一戦えるDキッズがこれを見逃す訳にはいかないだろう。
「よーっし! そうと来ればオレ達の出番だぜ!
まずはお前から行くぞ、ガブ!」
「念のためだ! 俺達もやるぞ! レクシィ!」
『…いいだろう』
早速リュウタとオウガがそれぞれの恐竜をカードに戻し、ディノホルダーとディノラウザーにスキャンする。
「ディノスラーッシュ! 轟け! トリケラトプス!」
ゴオォォォォッ!!
「ディノスラーッシュ! 燃え上がれ! ティラノサウルス・レックス!」
ゴガアァァァァッ!!
ガブとレクシィが成体の姿になって降り立つと、すぐさまアロサウルスを先回りするルートで移動を始める。
「よし! 俺達も追いかけよう!」
「おう!」
そしてDキッズ達も、彼らの後をついていったのだった。
その頃 アジ島外周部 密林エリア
「やーっと今日のお勉強が終わったわ。早くご飯をあげに行かないと」
両手に豚肉の袋を抱えたロアが、ジャングルの中を進んでいく。と、少し前の草むらから黒いラプトル達が姿を現した。
「あら、お迎えに来てくれたの?」
少し驚いたロアだったが、彼らが彼女の背中を押すような仕草を見せる。彼らがこうして急かすのも久々であった。
「どうしたのかしら…分かったわ、すぐ行くから」
そしていつも通りジャングルを進み、空き地に出たところで…ロアは思わず息を呑んだ。
巣の中では、小さなラプトル達がキィキィと甲高く囀っていたのだ。そしてその側ではあの白いラプトルが愛おしげに彼らを眺めている。
彼女が抱卵していた卵が、遂に孵ったのだ。
「まぁ…遂に生まれたのね! 卵も可愛かったけど、こうなるともっと可愛いわ!
あ、待ってて。今ご飯をあげるわね」
優しく話しかけながら肉塊を1つ差し出すと、幼体達が我先にと群がっていく。そして肉を食い千切ろうと一生懸命引っ張るが、まだ生まれたばかりの身ではそれだけの力はないようだ。
それを見かねてか白ラプトルは肉を彼らから取り上げると、細かく引き裂いて少しずつ与え始める。
誰から教わったかは分からなかったが、その動きの細やかさと見事な気配りにロアは舌を巻く他なかったのだった…。
ということで、今回はここまでです。
最近は筆が乗っている方なので、このまま今年中にはDキッズアドベンチャー編を終わらせたいですね。
それでは、後編をお楽しみに。