進撃のサイヤ人   作:ただのトーリ

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壁|ョω・`)…居ないね?

壁|ョω・`)つ■ ソッ


壁|ミ



ヒーロー

 トロスト区を出立してからおよそ4時間後、俺たちは巨大樹の森入口に到着した。

 

 地上から巨人が襲って来れない高さの枝に着地すると、皆そろって休憩を始める。

 

「はぁ……はぁ……!」

 

 肩で息をするアルミンと、僅かに疲労を感じさせるミカサ。

 

 ナナバやゲルガーはさすがに慣れているだけあって、気の配分を上手く行い消耗を最小限に抑えている。

 

 

 

 ちなみに枝の一部を加工してキャンプ地として使うことにしている。

 

 巨大樹は枝ですら太いものだと直径2〜3メートルはある大木だ。

 少し削って平面にしてしまえば、あっという間に手頃な平地の出来上がりだ。やり過ぎると自重で折れるから加減は必要だが。

 

 キャンプ地として加工したその先を切り落とし、訓練期間中の薪などに再利用させてもらう。

 

 

 俺は気を刃のように研ぎ澄ませ、不要になった枝部分を切り落としているとエレンが呟いた。

 

「何度見ても気ってのは便利だよなぁ。俺も使えればなぁ……」

「まあ、こればかりは才能とか相性だからな。お前にはお前だけの力があるんだからそれを伸ばしていくことに集中しろ」

「ちぇ、わかってるよ」

 

 

 部隊としての上下関係はあっても、休憩の間はいつも通りでいいと伝えてあるのでエレンは今同期としての気安い態度だ。

 

 

「ところで、ここで俺たちは何をするんだ?」

 

「基本的には訓練だな。表向きは巨人殺傷事件の調査ってことになってるが、それはあくまでお前たちを集中強化するための口実だ。一応それぞれのメニューは考えてあるから期待しとけ」

 

「ふうん……でも他のみんなも連れてくればよかったんじゃねぇか?」

「まあ、それも考えたんだがお前の力の訓練もあるからあまり人を集めたくなかったんだ。

 まあ、他のメンツは別の任務だったり兵長直々の地獄の特訓をさせられてるから、まるで差別ってわけじゃないさ」

 

「そっか」

 

 

 エレンとのやり取りを終えると、ナナバがやってきた。

 

「設営完了しました」

「おつかれ、うん、結構いい感じだな」

「ええ、地面ではなく樹木そのものにテントを張るなんて経験初めてですよ」

 そう言いつつ、設営地点を見るとゲルガーが木槌をトンカンと打ち立てていた。

 

 切り落とした枝の一部を板状に切り分け、それを壁として組み立てている。

 コレは高所故の突発的な強風や落下防止を目的とした柵としての意味を持っている。

 

「俺ぁ、大工仕事はあまり得意じゃないんですがねぇ!」

 

 言いつつも手を止めずに作業を行う。

 アルミンは俺が教えた気のブレードを手に纏っての木材切り出しだ。気のコントロールがやたらと上手いのでちょっと見本を見せつつ、気の流れを教えてやったら拙いながらも模倣して見せた。

 

 これには俺を含めた全メンバーびっくりだ。

 

 ミカサも気弾程度なら何とか放てるようになってはいるが、正直威力はそれほど高くない上に速度や精度も微妙だ。

 兵長との弾幕戦では攻撃と言うより、回避練習のためにやってる感じだ。

 

 

 肉体を使うことに慣れすぎたせいで、気という新しい概念をイマイチ理解しきれていないのが原因だろう。

 舞空術も運動の延長線に考えてる節があるように思える。

 たまに力の配分をミスっているが、その内ちゃんとした技を身につける日も近いかもしれない。

 

 そう考えると、もしかすると気をマスターするのは同期ではアルミンが一番最初かもしれないな?

 

 

 ミカサは切り出された木材の運搬を任せている。

 気の訓練を兼ねた指示をしたかったが、今は設営が優先なのでその鍛え上げられた力を存分に振るって貰う。エレンも一緒にやっているが……明らかに量が違う。

 

 男としちゃ辛いだろうなぁ。

 

 

 

 アニには立体機動を使って周囲の偵察。

 巨大樹の森周辺にも巨人の姿はあったが、内部にもいないとは限らない。

 跳躍が得意な巨人が居たように、木登りを行う巨人がいてもおかしくない。

 

 それらが近くにいないかを確認するための偵察は必須だ。

 なによりいざって時は巨人化を許可しているので、ほかのメンバーに比べて「万が一」が起こりにくいのが心強い。

 

 

 それに皆、装備一式を身に着けた状態でやってきたが、舞空術のおかげでガスの消耗は全くない。

 予備も一人あたり二本、合計三本持っているので、相当保つはずだ。

 

 なんなら俺の分は誰かにあげてもいいしな。

 

 

 

 ーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「さて、とりあえず準備は終わった。これから5日間、ここでサバイバル演習を行う」

「はぁ!?」

「サバイバル!? ここは巨人の活動領域なのに!?」

「無茶すぎる」

 

 エレンたち三人から驚きの声が上がるが、それを軽く手を振って静まらせる。

 

「危険のない訓練なんて今まであったか?」

 

 俺の言葉に彼らは黙り込む。

 

 

「訓練兵時代だって慣れない立体機動の事故で命を落とした奴が何人もいる。

 調査兵団になれば壁外調査に出て野宿して、襲撃を受けて死ぬことは有り得る話だ。ならそれの予行練習と思えば十分やる価値はあるだろう?」

「それはそうだけど……なにも少人数で」

 

 アルミンの弱気な言葉に首を振って遮る。

 

「常に多くの味方が近くにいる状況なんてそれこそ有り得ない。以前森の中で見つけたイルゼ・ラングナーの手記も、壁外調査中にはぐれて馬も失った果てのものだ。

 お前たちが今後似たような状況にならないとなぜ言い切れる?」

 

 その言葉に三人は反論することが出来ずに黙り込む。

 

「それにお前たちには極秘で伝えなきゃならない情報がある、それを話すためにここへ連れてきたという目的もある」

 

「極秘……?」

 

「そうだエレン。お前の巨人化能力についてだ」

 

「ちょ、バルト!? いいのかよ二人にも聞かせて!!」

 

 慌てるエレンと、突然の暴露に固まるミカサとアルミン。

 

 本来の歴史だとトロスト区防衛戦でエレンが巨人になれる事が露呈するが、この世界では違う。

 俺が早期に巨人からエレンを回収した事で知るものは少ない。

 

 

「エレン! 巨人化ってどういうこと!?」

「ば、バルト? なにかの冗談だよね? エレンが巨人だなんて……」

「あ、いや、その」

 

 

 エレンはミカサに詰め寄られてタジタジになっている。しかしアルミンだけは冷静で俺たちの顔を見て少しの沈黙の後、質問をしてきた。

 

 

「ゲルガーさんたちはバルト班だから事前に聞かされていたって可能性は分かるけど……なんでアニも冷静なの?」

 

 先程から黙って話を聞いていたアニにアルミンが問いかけると、彼女は肩を竦める。

 

「本当にバルトの言う通り頭がいいんだねアルミンは」

 

 アニの言葉にエレンやミカサも黙って視線を向ける。

 

「……やっぱり何か知ってるんだね?」

「うん……バルト、本当に話していいんだね」

 

 視線をむけられ、頷いて答えると彼女は意を決したように口を開く。

 

 

「エレン、私も巨人化能力を持った人間なんだよ。しかも、この国を襲った超大型巨人と鎧の巨人と一緒に壁内人類を滅亡させに来た、マーレの戦士」

 

 

 その言葉を告げると、彼らは言葉を失い耳鳴りがするほどの沈黙が訪れた。

 

「……はぁ? お前が、あの巨人どもの仲間? 壁内人類を滅亡させに来た? おい、冗談にしちゃ笑えねぇぞ」

 

 エレンが呟くように聞き直す。

 困惑、驚き、そうであって欲しくないという願い、そして……燃え上がろうとしている怒りの炎。

 

「まあ、直接手を下してはいないけど、仲間だってことは変わらない。言ってしまえばあんたらの家族の仇だよ」

 

 

 その言葉の直後、エレンが動くよりもミカサが爆発した。

 足跡が残るんじゃないかってくらいに力を込めた踏み込みの直後、目にも止まらぬ速度でアニへと接近する。

 

 二人の距離はせいぜい2mも無い。ミカサの前ではないにも等しい。

 

「ーーっ!」

「お前がっ、私の家族を!!」

 

 振り抜かれた拳を頬に受けたアニが後ろに大きく下がる。

 

 さらに追撃を仕掛けるミカサだが、アニも構えを取って二撃目を受け流しミカサを空中に投げ飛ばす。

 

「っ、まだだ!」

 空中で姿勢を立て直し、舞空術で再びアニへと迫るミカサ。

「最初は甘んじて受けたけど、そう何度も殴られてはやらないよ!

 厄介な舞空術も、なれないウチは踏ん張りが効かないんだろう!?」

 

 ミカサの拳に対してアニはハイキックで応じる。

 腕を横から蹴り飛ばされる形で姿勢を崩された所にアニのハイキックからの回転を生かした回し蹴りがミカサの腹部に突き刺さる。

 

「ぐっ」

 

 後方に突き飛ばされる形で下がったミカサは怒りの形相で睨みつけると、その両手を腰に下げられた硬質ブレードに伸ばしーー。

 

 

「そこまでだ」

 

 間合いを一瞬で詰めた俺はミカサの腕を掴み止める。

 

「何故!?」

「殴り合いまでなら黙って見ていたが、仲間にそれを抜くと言うのなら俺が相手になる」

「ーーっ、そいつはたくさんの人の命を奪った巨人たちの仲間。それを仲間と呼ぶの?」

「そうだ」

「あなたも巨人の仲間?」

「バカを言うな。巨人共は尽く俺の敵だ、それはこれからも変わらない」

「だったら……」

 

 

 俺の介入によって冷静さを取り戻し始めたミカサだが、それでもまだ怒りが収まらない様子だ。

 

 そこにアルミンが声を上げる。

 

「ミカサ、落ち着いて。気持ちは痛いほど分かるけどまずはバルトの話を聞こう。このタイミングで僕らに打ち明けるということはなにか事情があるんだと思う。

 仮に彼らが本当に人類を裏切った敵だと言うのなら、こうやって僕らに打ち明ける必要が無い。

 力も情報も上回ってるバルト達がこうやって話し合いの場を設けているということは、何か理由があるんだ。そうでしょ、バルト」

 

 その言葉に俺は手放しにアルミンを賞賛した。

 家族を失い、日常を奪われたアルミンだってミカサやエレンのように激情に駆られているはずだ。それを押し殺して対話という手段を迷わず選ぶ彼の知性に感謝した。

 

 

 アルミンの言葉にミカサは俺を見つめ直し、ミカサの激発によって怒りの矛先を失ったエレンも困惑しつつも「アルミンがそう言うなら」と頷いた。

 

 

 

 

 

 そこから俺は三人に調査兵団が持ち得る情報の全てをうちあけた。

 

 以前、アニの父エディを保護する引き換えに手に入れた情報、それらを簡潔にまとめた資料を三人へ手渡す。

 

 彼らは穴が空く程に資料を読み込み、進めるうちに顔色が目まぐるしく変わっていく。

 

 

 ・エレン以外の巨人化できる人間の存在

 ・壁の外の現実

 ・祖先がやらかした罪

 ・アニを含むマーレの戦士と呼ばれる洗脳教育を受けた3人の尖兵の存在。アニ・ライナー・ベルトルトの名前。

 ・マーレの戦士の目的である始祖の巨人の存在

 ・アニがあちらを裏切り、俺の保護下に入る事。

 ・形式上は人質という扱いになるエディというアニの父。

 ・そして今後訪れる可能性のある獣・車力の巨人の存在。ついでに敵国にいる戦鎚の存在。

 

 

 

「なんだよ……それ……!」

 

 困惑の声を上げるエレンに対してミカサは既にキャパシティを超えたのか静かになっている。

 

 対するアルミンは読み進めるうちに「そうか、だから……」と自分の中にあった矛盾の辻褄合わせをしていた。

 

 

「わかるか? 俺たちの敵は巨人だけじゃない、本当の敵は壁の外にいる全世界だ。しかもその原因が、はるか昔のご先祖さまがやらかした罪。つまり大義は向こうにある状態だ」

 

 その言葉に重い沈黙が流れる。

 

 アルミンでさえも、予想を超えた規模の話に付いてこれず言葉を失っている。

 

 だが止まらない奴がいた。

 力強い怒りの炎を翡翠の瞳に宿した男……エレン・イェーガーだ。

 

「それが、なんだってんだよ!! なんで俺たちがはるか昔の罪で苦しめられなきゃ行けねぇんだ! そんなことで俺たちは住む場所を、家を、家族を殺されても仕方ねぇってのかよ! これからも奴らの復讐に黙って耐えて死ねってのか!! ふざけるな!!

 なあ、それを知っていてバルトはなんで奴らと楽しそうに話なんて出来るんだよ!? あいつらは人殺しなんだぞ!!」

 

 

 資料を足元へ叩きつける。

 

 エレンの母親は巨人化したベルトルトが吹き飛ばした瓦礫によって押しつぶされ、逃げることが叶わなかったから巨人であるダイナ・フリッツに食われたのだから当然と言えば当然だ。

 

 

 ……しかし、それが未来の自分が招いたことだと知ったエレンの絶望はどれほどのものか。

 

 彼のライナーやベルトルトへ向ける怨嗟の言葉は、そのまま未来の彼自身へと向かっているのだから。

 

 

「お前の怒りは理解出来る。一方的に奪われる怒りは誰しもが感じるところだ」

「だったらーー」

「ならお前はどうやってこの話を解決する気だ?」

「え?」

「敵を皆殺しにして解決か? ライナーやベルトルト、その家族。まだ見ぬ老人から赤ん坊まで全部をすり潰して、この国に悪意という牙を研ぎ続ける敵を一匹残らず殲滅し、恨みも悲しみも夢も希望も、全てを真っ白な更地にしてお前は満足か? それがお前の言う解決か?」

 一呼吸おいて、続ける。

 

「なあ……それのどこがライナー達がやった事と違うってんだ?」

 

 俺の言葉にエレンは口をはくはくと開いては閉じて、しかし言葉にならず苦しみに喘ぐような表情になる。

 

 

 

「ーーーー」

 

 エレンの怒りが、憎しみが、行き場のない感情が涙となって零れた。

 

 膝から崩れ落ちて、拳を床へと叩きつける。

 

「だったら、どうしろってんだよ……。俺たちは一体なんのために戦ってきたんだよ……なぁ、教えてくれよバルトっ!」

 

 おそらく、この言葉は無限に繰り返されたエレンの疑問だっただろう。

 

 どうやればより良い未来を得られるのか?

 どうやれば誰も傷つけずに済むのか? 

 どうやれば戦争を回避できるのか?

 

 その答えを得られず、孤独に戦い続けたエレンの物語。

 

 だが、ここでようやく歴史は動き出すんだ。

 存在しなかったIFの物語へ続く道だ。

 

 エレンの涙は、その始まりだ。

 

 

 

 

「顔を上げろエレン」

「……」

 反応のないエレンの胸ぐらを掴み、無理やり俺と目を合わさせる。

 

 その目は涙で赤くなっている。

 

 怖くて、不安で、悔しくて、辛さに心が折れそうなエレンが必死に涙を流すという手段で堪えている。

 

 

 

 正直、エレンの抱えてる不安を解決出来るか分からなくて心底怖い。

 俺が世界を変えるなんてプランはどこにもない。

 

 戦争を止めるだけなら俺が世界に力で交渉の席につかせるだけでいい。

 だが、それじゃエレンやアニたちは13年というタイムリミットで死ぬことになる。それじゃ意味が無いんだ。

 

 なにより、最初のプランで俺が動いても俺が死んだ後に俺という抑止力が無くなった途端に戦争になって結局みんな殺し合いだ。

 

 どこかで、決定的な一手を打ち込まないとダメだ。

 

 原作を最後まで見れていないことが本当に悔やまれる。

 

 

「今はまだ、どうするべきかなんて分からねぇ。だけどな――」

 

 

 俺には途中までとはいえ、この先起こるはずだった未来の知識がある。この世界に居ない異分子であり、無茶を押し通せるサイヤ人がここにいる。

 

 未来のエレンには俺という存在はいなかった。それがどういった結果に繋がるかなんて分からないが、世界人口の7割を踏み潰すなんて地獄の未来は避けられるかもしれない。

 

 

 俺がこのクソッタレな世界をハッピーエンドに導くんだ。

 

 中身はどうしようもねぇ俺だけど、この身体は孫悟空なのだから。

 

 孫悟空は誰もが倒せない敵にだって、決して諦めはしなかった。

 

「やれるだけやろうぜ。それでもダメだってなったらその時改めて泣き喚こうぜ」

 

 

 それが、俺の大好きな孫悟空(ヒーロー)なのだから。

 

 

 

 

 

 

 

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