杏陽についての説明を受け、栄薪支部長の勧めもあり九州統括支部を案内してもらったオレは現在、食堂で開かれた風見さんの新部隊への送別会に参加していた。
え? お前部外者なのになんで参加してるのかって? 流れだよ。
所詮人間は儚き存在、大いなる流れに逆らうことなどできはしないのだ。そう、昔の思想家も語っていたじゃないか。『人間は考える葦だ』、と。
私は葦、水辺から流された憐れな植物。
────ああ、そうか。人間とは植物だったんだ。
なぜ彼がこんなことに、こんな新興宗教でも掲げないような血迷った悟りを開く羽目になったのかというと、1時間ほど話を遡る必要がある。
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「ここが食堂ですね。たまに水炊きや鉄鍋餃子、もつ鍋みたいな明らかに一人用じゃないだろってメニューや、豚骨タケノコ焼き鳥ラーメンみたいな謎存在が提供される以外は普通なんじゃないですかね」
…………なんて? 豚骨タケノコ……筍!? メンマじゃなくて!? それをラーメンに? 旨いかどうか以前にそれ食べる人いるの!?
「驚いてますね。でも恐ろしいのはこのメニュー、二か月に一度くらいで出てくるそうなんでんですよ。先輩曰く、スルメみたいに噛めば噛むほど、食べれば食べるほど味が出る奇妙な料理らしいです」
いるんだ……食べる人。しかもその感じからして病みつきになるレベルで。気になるような、怖いような。いつか食べてみようかな。
なんていう風に案内してもらっていると、一人の男性が近付いてきた。歳は一回りも差が無いぐらいだろうか、至って普通の人のように見える。
「おや、風見さんじゃないですか。そちらも夕食ですか?」
「あ、冴霧さん。たしかにいい時間にはなってきてますけど、今はこの人の案内をしているんです。だからご飯はまだ食べれないのです」
「あなたが案内しているということはそちらの方が例の…………おっと、名前も名乗らずに失礼しました。私は冴霧、風見さんが所属していた部隊の隊長です」
そう言って手を差し出す冴霧さん。今のオレの立場が微妙なところや、風見さんが移籍する原因────すなわち杏陽が設立される原因になったところなどを考えると、あまり良い印象は持たれていないかと思っていたんだけど。
この感じだと少なくとも冴霧さんはそうでもないっぽい?
「えと、鬼一です。既にご存じみたいですけど京都から来ました。これからよろしくお願いします」
「ああ、そんなに硬くならないで結構ですよ。九州統括支部(ウチ)は億餧の中でも変わり者が多い所ですし。少なくとも旭君が普通に働けるぐらいには、ね」
どうやら気を使われてしまったようだ。査問会を経験した後だとあんな風に否定されないか心配になっていたんだが……杞憂だったかな。
そもそもここは栄薪さんが率いている支部なんだから、集まる職員も似たような気質になると言われればそれまでだけども。
とにかく、好意的に受け入れてもらえたようで良かった。
「そうだ、冴霧さん。今から晩ご飯ってことは今日はもうフリーですよね?」
「ええ、そうですが……風見さんのその表情には嫌な予感しかしないんですけど」
「嫌な予感だなんてそんなそんな…………ただ、先輩たちと私の送別会をしようという話になってまして」
「送別会って……いや、あなた所属部隊が変わるだけで他支部に行くわけでもないですよね? それに私の隊にいた期間も一か月無いぐらいじゃないですか。…………ん? てか今からですか!?」
これは、一か月無いぐらいの付き合いでも送別会を開くぐらい情に厚いということなのか? いや、冴霧さんの様子からして違いそうだな。
「善は急げ、です。先輩たちもかわいい後輩が旅立つのが寂しいんですよきっと。決して騒ぎたいとかじゃないですよ? それに、冴霧さんこの手の集まりの出席率かなり低いですし、たまには巻き込んだらおもしろ……盛り上がるんじゃないかなって」
「今本音漏れてましたよね!? 私お酒弱いからそういう席は得意じゃないんですよ。しかも彼ら悪ノリして度数強めの酒ばっかり注いでくるし、勘弁してください」
「まあまあ、ここは私の顔を立てるとでも思って。そうだ、鬼一くんも来ますか?」
「うぇっ!?」
思わず変な声が漏れてしまった。てかなんで今の流れでオレに話が来るの!? キラーパスすぎない?
いやアレか? 社交辞令とかそういう……あんまり風見さんは得意そうじゃなかったけど。
そう思いながら顔を見ると────あ、これマジなやつだ。本気と書いてマジと読むタイプのやつだ。どうして『いいこと思いつきました!!』みたいな表情をしているのか、コレガワカラナイ。
くそっ、こうなったら! 一縷の望みを懸けて冴霧さんに助けを求めようとそちらへ目線を向ければ……そこにはニッコニコな笑顔が。
あれー? さっきまで乗り気じゃなかったですよね、なんでそんな『愉しそうなこと思いついた!!』みたいな表情してるんです? なんでそんな力を込めてオレの肩に手を置くんです?
「突然ですが鬼一さん、死なば諸共って言葉知ってます?」
「HA☆NA☆SE!!」
「長い物には巻かれろ、ですよ鬼一くん」
やめっ、ヤメロー! シニタクナーイ! シニタクナーーッイ!!
そうして話は冒頭へと至るのであった。
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そんなこんなで巻き込まれてしまった送別会だったが、予想していたよりも遥かに居心地は良かった。参加している先輩方はみな良い人ばかりで、気さくに話しかけてくれたり軽く謝られたり憐れまれたり…………。
彼ら曰く「冴霧隊長は普通の常識人だけど、楽しそうなことがあるとたまにはっちゃけちゃう」人らしい。
あの表情は楽しそうじゃなくて愉しそうって思ってそうだったけどな。
そうして一通り先輩方と談笑したため、こうして隅の方でひっそりとしているわけだ。
別に酒が嫌いだとか、人付き合いが苦手だとかいう訳ではない…………いやもしかしたら人付き合いは得意ではないかもしれないが。ただ、自分は本来部外者なのに参加しているのだ、と考えるとどうしても一歩引いてしまうのだ。
それにあの中に居ると飲み過ぎてしまいそうな気もするし。アルコールには強い方だと自負しているし、日本酒みたいな度数やクセの強い酒もいける。飲み過ぎて吐いたことも無いし。
ただなあ……あのノリに合わせたらとんでもないペースで飲みそうだし、部外者がそんなに飲むのもなぁ。
ちなみにこの場にいる全員が「なぜ食堂に酒類がこんなに豊富に置かれているのか?」という疑問は無視している。鬼一以外のメンバーにとっては既に通り過ぎた悩みであり、そして鬼一は考えることをやめていた。もっとも、冴霧だけは過去に栄薪に質問した事があるため答えを知っているのだが。
なお、答えは「私が好きだから」だったそうだ。とんでもない職権乱用である。
閑話休題。
というわけで一歩引いた位置から賑やかに騒ぐ風見たちを眺める鬼一。そんな彼に近付く影が一つあった。
「楽しんで……ウップ、ますか? 鬼一さん」
「冴霧さ────大丈夫ですか!?」
そう、送別会に巻き込まれることとなった元凶の片割れ、冴霧である。とはいえその姿は満身創痍なものであり、顔は青に染まりつつある。軽く揺らせば今にも吐き出しそうだ。ちなみにその原因は全て彼の部下である。
「これ、水です」と手渡された日本酒、それもとびっきり度数の高いものを一息に呷ってしまったのだ。事前にチューハイのような飲みやすい酒で酔わせ、判断力を削いだタイミングでの犯行である。
一部始終を見ていた鬼一は『あれはかなり計画的な犯行だった』と思ったが、自分がここにいる理由を考えるとあまり心配する気にはならなかったらしい。更に言えば下手人たちも『言い出したのは風見ちゃんとはいえ、部外者を巻き込むのはやり過ぎだろ』との思いで行ったため、この場に冴霧の味方はいなかったのである。
合掌。
なお、いくらその場のノリであったとしても酒に弱い人にこうして無理に強い酒を飲ませるのは普通に危険なので皆さんは真似しないようにしよう。相手によっては喧嘩になるぞ!!
「少し無理があったかとは……ウップ、思ったんですがね」
「まず落ち着いてから話しましょうよ、じゃないとオレが落ち着けません。ほら、水どうぞ」
先の件があったせいで軽く警戒しながら水を口に含む冴霧。どうやら今回はちゃんと水だったようで、おいしそうに飲んでいく。
「ふう、すいません。もう大丈夫です。それで……そうそう、送別会に呼ぶのは少し無理があるかとは思ったんですけどね。でも、いい光景でしょう?」
そう言って部下の面々を眺める目付きはとても柔らかく、そして緩んでいた。
「貴方もこうして受け入れられますよ。なんたって、ウチのトップは栄薪さんなんですから」
「……っ! そんなに分かりやすかったですかね」
「いえ、うまく隠せていたと思いますよ。私は随分昔に似た目を見たことがあったからですね」
まいったな。まさか来て初日にバレるとは。
「自分は人間じゃないのかもしれない。自分を受け入れてくれる場所は無いのかもしれない。そんな眼でしたね、懐かしい。そんな彼も10年以上ここにいるんです、貴方も大丈夫ですよ」
彼……思い当たるのは艶やかな黒髪の青年。きっとアイツもいろいろ悩んで、それでもここに残っているのだろう。なら、オレもびくびくして怯えている暇はないな。
「ありがとうございます。でも、どうしてここまで? 初対面ですよね」
「ただの老婆心ですよ。知り合いが最近になってようやく前向きになりまして。少しづつではありますが、それでも大きな変化です。それを齎してくれた貴方とあの子に勝手に恩を感じて、勝手にそれを返そうとした。それだけです」
「…………ありがとうございます、本当に」
この支部に来れて良かった。これまで住んできた京都に未練が無いというわけじゃないけど、それでもこの人たちに会えて本当に良かった。
「いえ。しんみりした感じはあまりこの場に似つかわしくないですね、行きましょうか」
そう言って再び風見さんたちの方へ向かう冴霧さん。
「あ、隊長だ~。もっと飲みましょうよ~」
「ちょっ、ちょっと待ってください!? それ度数いくつでした!? 待っ、アッ」
あ、ダウンした。
…………大丈夫かな?
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草木も眠る丑三つ時。
日没直後に地を煌々と照らしていた満月は分厚い雲に覆われ姿を隠し、星々の明かりすら見えなくなってしまった午前二時ごろ。当然そんな天気の、そんな時間帯では辺りは真っ暗だ。街灯の1つでも無ければ出歩くのをためらうだろう。
そんな宵闇が支配するとある街の、建物の入り組んだ路地の奥にて。明らかに現代社会に似つかわしくない風貌の集団がいた。といっても、彼らは光の差さない路地裏という景観には実によく似合っていたが。
この暗がりの中でも目立つ白色のローブを一様に纏い、互いに顔を近づけ何やら小声で話している。もし、話がここで終わるようなら彼らはただの怪しい集団で済ませられた。
少なくともこうして私たち観測者からスポットライトを当てられることなど無かっただろう。
しかし、その集団の異様な点はそれだけではなかったのだ。まず、その場にいる全員が顔に形容しがたいナニカの刺青を入れていた。よく見て頑張って想像すれば、もしかしたらそれは右腕のようなものだと推測できるかもしれない。
とはいっても明らかに歪なデザインであるため、そこまで想像してしまった人間の正気が保たれるかは分からないが。
そして何よりも異様なのが、全員の右腕が無くなっていることだ。纏っているローブの右袖がだらしなく垂れさがっていたり風にたなびいていたりしていることから、少なくとも手首から先などではなく二の腕から先が全て欠けていることが分かる。
彼らは『腕の会』と呼ばれる団体だった。
道具を扱う手の平、そしてそれを繋げる腕こそが至高の器官であると信じ、それらを重ね合わせることでより崇高な存在を生み出そうとする狂った集団である。
しかし、『腕の会』は狂った集団ではあったが、実際に腕を切り落とすような真似をするほどではなかった。
言うは易く行うは難し。
思想を掲げることと実行に移すことの間には往々にして壁があるものである。そして彼らは壁を越えられなかった……はずだったのだ。それ故規模も小さく、政府や億餧の一部にマークされる程度で取り潰されたりもしていなかったのだ。
だというのに彼らは自らの腕を捧げ、さらには彼らの求める崇高な存在らしきモノを造りつつある。きっと何かが起こったのだろう。壁を越えて振り切れるほどの何かが。
「良質な腕を持っていたアレはどこへ逃げましたか?」
「分かりません。しかし、包囲網を抜けられはしていないかと」
集団の一人が近くにいた者に問いを放つ。答えた者が緊張した雰囲気であったことから、どうやら質問者は高い地位にいるようだ。こんなカルトじみた集団に慕われるのが“高い”地位なのかは甚だ疑問ではあるが。
「教祖様! 先行班からの報告です、どうやら対象を捕捉したと」
「そうですか、では我々も向かいましょう。ただし、何名かはここに残って警戒に当たるように。少年の姿を取っているからといって何をされるかは分かりません。油断せぬように」
手早く支持を出すと教祖と呼ばれた男は走り始め、それに合わせて周りの者たちも行動を開始する。大半は付き従って駆け出し、残った数名はビルの壁を足場に数度跳ねまわることで屋上へと移動し、周囲を警戒する。
観測者の諸君の中にはここで疑問に思った方もいるだろう。そう、壁を蹴って上へと移動したのだ。別に彼らが特殊部隊出身だとか、パルクールのプロだったとかいうわけではない。そもそもそういった経歴があっても片腕を失った状態でこんな動きはできないだろう。
ではなぜこんな動きができるのか。それは偏に彼らの生み出したナニカの加護によるものである。あるいは呪いかもしれないが。
なんにせよ、『腕の会』の構成員は常人離れした身体能力を有しているのだ。そして、そんな集団に追いかけられればどうなってしまうかは……想像に難くないだろう。
人の気配がない路地裏を少年は走っていた。いや、正確には逃げていたと表現する方が正しいか。
────くそっ、完全に囲まれてる。しくじったな。
目の覚めるような鮮やかなトルコブルーの髪色にさえ目を瞑れば、その容姿はいたって普通の少年のもの。しかし、彼が見た目通りの存在でないことは、その髪色や指先が透けている点などから見て取れる。
────億餧だったか。あの組織に潜り込んだのがマズかったな、確実にアレで足がついてしまった。けど千載一遇の好機だったのも事実だし……まあプラマイゼロってところか。
少年に名は無かった。
そもそも目醒めた場所が生活感が残っているのに人っ子一人いない教会だったため、名前が付けられるはずがなかった。そのため、普段は目覚めたときに握っていた紙に記されていた言葉を借りて『
────仮拠点までのルートは……塞がれてそうか。あともう少しだったんだけどなあ。
c1cad4は人間ではなかった。いや、そもそも彼は生命体ですらなかった。誕生した瞬間から姿は変わらず、食事も睡眠も必要としない。この時点で生物ではないと断言できるのに、その上、彼は別の世界に行くことができたのだ。
これは文字通りの別世界である。彼はどういう理屈かは知らないが、電脳空間に────つまり、インターネットを介して無数の情報が行き交う世界に────入ることができるのだ。もっとも出入りには自分がゲートとして設定した端末が必要ではあるが。
それでもゲートを全国に散らしておけば疑似的なワープとして利用できるなど、その汎用性には目を見張るものがあった。
────もう追いつかれたか、随分早いことだ。こうなったら使うしかないか。
「ようやく追い詰められましたね。そんなに逃げ回らないでもいいでしょうに、私たちは貴方の手を借りたいだけなんですよ?」
白のローブを纏った集団が穏やかな物腰で語りかけているが、実態は少年の手を物理的に借りようとしている狂人の集まりである。まったくもって笑えない話だ。
追われている被害者も実は人間ではないというのが更に笑えない。京都本部の真面目な職員が聞けば卒倒するだろう。
「ミギウデサマに手を捧げられるのは非常に光栄なことなんですよ、もっと喜んだらどうなんですか? ほら、喜びなさい。喜べ、喜べ、喜べ喜べ」
「うっさいなあ、感性押し付けないでもらえる? そんなんじゃ頭の程度がバレちゃうよ?」
後ろ手にスマホを構えながら、c1cad4は集団のリーダー格と見られる男を挑発する。
「貴様っ、教祖様になんて口を!!」
「ミギウデサマに同化できる名誉を理解できないと言うかっ!?」
「……落ち着きなさい。この程度の挑発で取り乱してはなりません」
────もう少し時間を稼ぎたかったけど、教祖とやらは冷静か。
外郭だけを残して内部を転移させながら、c1cad4はどうやって残りの時間を稼ぐか考える。
これがスマホなどの携帯端末から電脳世界に出入りする際のデメリットである。
物理的な表面積が小さいため、どうしても移動に時間がかかってしまうのだ。もちろん無理矢理入れば短時間で済ませることもできるが、そうすると肉体を欠損することになってしまう。
動かなければ数日ほどで回復するのだが、逆に言えば数日は身動きが取れなくなるため、できるならそれは避けたい。特に今のような状況では。
その分場所を問わずに緊急脱出できるメリットはある。あるにはあるのだが……入り口として使用したスマホが取り残されるなど多くのデメリットが目立つため、c1cad4はなるべくこの方法は取らないようにしていた。
とはいえ今は贅沢を言っている場合ではないだろう。この体はお世辞にも丈夫とは言えず、更に一瞬だけ現れたミギウデサマとやらからはとんでもなく嫌な感覚がした。逃げられるならばそれに越したことはない。
「貴方、なにか薄くなっていませんか?」
「っ!?」
「急いで取り押さえなさい!! 何か企んでいます!」
────何でバレたんだよ!? くそッ! こうなったら無理にでも入るしかない!
四方から襲い掛かる信者たち。しかし、ここにきて右腕が欠けていることが災いした。元々教祖以外には5人しかこの場に信者はおらず、その上手数が半分に減っていたのだ。
その結果、タッチの差であるがc1cad4は取り押さえられる前に電脳世界に逃げ込めた。
右手の手首から先を欠損して。
「……逃げられましたか」
「申し訳ありません……今すぐに捜索に取り掛かりましょうか?」
「いえ、構いません。不完全とはいえ右手は確保できました。これでミギウデサマも許してくださるでしょう。それに、今目立ってしまうのは良くない」
「億餧、でしたか。探究会の方々は注意しろと仰っていましたが……そこまでの警戒に値するのでしょうか?」
「念のためですよ、念のため。今更ミギウデサマの顕現を止められるとは思いませんが……邪魔されるのも面倒でしょう?」
そう言って教祖は踵を返した。彼がそう言うならば付き従うのみと、信者たちも路地裏を立ち去っていく。
後に残されたのは、気付かれずに放置されたc1cad4のスマホのみであった。