C:creature-生物型 (何らかの生物として有機的な体を持ち動き回るヤツら。物体型と並んで一番ベーシックなタイプ)
O:object-物体型 (生物型みたいに自分の意思で動いたりしないけど周りに被害は出してくるヤツら。収容自体は楽)
I:incorporeal-非実体型 (実体は持ってないけど攻撃したりしてくるヤツら。一人だけ無敵モード使ってる陰キャ)
A:area-空間型 (場所そのものとして鎮座してるヤツら。収容不可だから一番困る)
としています。
お察しの通り、ロボトミから着想をえています。これだけで雰囲気出るし判別しやすくなるんでやっぱプロムンは偉大やなって。
それと、キリの良いところで止めたら今話はかなり短くなってしまいました。いつか加筆したいなぁ……
栄薪から呼び出されたあの日から2日後、俺は宛がわれたホテルの一室で脱走する奇心体の最終確認を行っていた。
何度か目を通したが、やはりアイツが言っていた通り危険度4以上の奇心体は一体もリストに載っておらず、それどころか危険度3の奇心体ですら数体程度しかいないという…………まあ、言ってしまえば小物しかいないというような雰囲気だ。
この程度なら────全力を出せるという条件下ならば、だが────俺一人でも全て鎮圧してしまえると言えば、その程度が伝わるだろうか。
確かに、このレベルのテロで京都本部が陥落するとは思えない。
……が、ならどんな規模なら本部を落とせるのかと聞かれても答えに詰まるのもまた事実。
そもそも“本部”と名にある通り、ここの規模は他とは比べ物にならない程大きい。国内で二番目に大きい
ここを落とすならばそれこそ危険度4の奇心体を複数体収容違反させるか、国内でも数件しか確認されていない危険度5の奇心体を暴れさせるぐらいでもしないとビクともしないだろう。そして、たとえそこまでしたとしても《門》が解禁されれば時空間移動で対処することができる。
もっとも、コレに関しては九州支部も似たような状態なのだが。
……やはり、これは
そう、既に収容違反が起こると目されている日は明日にまで差し迫っている。
なら何故ここまで落ち着いているのかと言えば、億餧から《教会》に送っているスパイが実行日やその下手人をある程度調べたからだ。
ただし、実行犯の全てを割り出すことはできなかったそうだ。どうやら計画ではどさくさに紛れていくつかの奇心体を本部から持ち出そうとしているらしく、それもあってか作戦の規模もそこそこ大きなものらしい。
こっちに潜り込んでいるスパイの数も両手の指では足りないぐらいなんだとか。
今頃本部の
普段凶暴な奇心体を鎮圧している身からすれば、これ以上ないくらいに不毛な合戦だとしか思えん。
そんな中、なんで俺はホテルに居るのかといえば…………こっちに来たその日に『お前がいなくとも私たちだけで対応できるんだ。保険で呼ばれた分際のくせに出しゃばって余計な事をしようとせずに大人くしてろ、ハイエナ野郎が(意訳)』と言われたからである。ファ○ク。
どうやら俺の扱いは多少どころが全く変わっていなかったようだ。
せめて地形ぐらいは実際に確認しておきたかったが、あそこまで露骨に煙たがられては仕方ない。腐ったミカンみたいな老害どもに目を付けられるのは俺も御免だ。
ということで、脱走する奇心体の情報ぐらいは抜けないよう頭に入れているのである。
パッと見たところだと……厄介そうなのは生物型のC-579と非実体型のI-671だろうか。
C-579 《酸蛙》
危険度 3
収容難易度 2
研究難易度 2
有用度 2
蛙の姿をした奇心体。あらゆる体液が強力な酸でできており、その威力は鉄を容易く溶かし銅や銀でさえも溶かすほどである。また、四肢の筋肉が発達しており、目視が困難なほどの速度で移動することができる。さらに────
I-251 《電霊》
危険度 3
収容難易度 3
研究難易度 3
有用度 2
半透明の姿を取る非実体型の奇心体。周囲から奪い取った電荷を蓄え、それを放つことで超高圧の電流を発生させることができる。放たれた電気は落雷と同様真空下でなくとも肉眼で視認できるほどであり、生物に対して非常に高い殺傷性を有していることが確認されている。また────
C-579は蛙ならではの筋力で高速移動が可能であり、その最中に体表から分泌した酸を撒き散らすことで広範囲に攻撃をしかけてくる。
I-251はそこそこ珍しい実体を持たないタイプの奇心体。よって、銃火器を代表とする普段の鎮圧に使用している装備の効果が薄く、そこに加えて非常に殺傷性の高い攻撃手段を有している。
それぞれ事前知識なしだと確実に負傷者が出るレベルの厄介な奇心体だ。できればどちらかでも俺が相手することで被害を抑えられればいいんだが……
******
さて、最終確認から一夜が明け、俺は新人連中と一緒に地下に降りるエレベーターの中にいる。中に居るのは新人5人と俺、指導員の職員────確か名前は
億餧の技術が使われていなければキャパオーバーの警告音がその存在を主張していただろう。確実に。
ちなみに俺の扱いは諸事情で今日まで出社できなかったということになっている。まだ新人が入社してから1週間程度しか経過していないため、多少違和感はあるかもしれないが無理のある設定ではないだろう。
「新しく同期の子も入ってきたし、改めて自己紹介でもしよっか! ウチは天野
どうやら天野は俺に対して特別敵意があるタイプではないようで、わざわざ自己紹介を始めた。
明るく染められた橙のショートヘアに陽気な声、作業服はスーツのようにカスタマイズしたうえで着崩している。一見して現場に慣れた明るく元気な先輩、という雰囲気だ。自己紹介の口ぶりを見ても、おそらくこの分析は間違っていないだろう。
…………4年勤めた上で、俺に対してこの態度ってのはかなり珍しいな。というか初めて見るぐらいだ。
現地入りした日に会ったような輩*1であれば仕事に支障が出るところだったのでそこは幸いではあるのだが、親しくされすぎても後のことを考えると若干憂鬱になってくる。
やはり信じられるのは苦手だ。
なんて益体も無い思考を巡らせていると。いつの間にか自己紹介は俺に番にまで回っていたらしく、周りから好奇の視線が寄せられていた。
どうやら1人1人趣味や目標など余計な情報を付けながら語っていたようだが……まあどうせ今回だけの関係だ、適当にあしらおうか。
────だから私にとって旭さんは、ぶっきらぼうだけれども根は優しい良い人なんです
「旭
気まぐれだ。これはただの、単なる気まぐれだ。
「旭君ね。これからよろしく!」
「すんごい綺麗な黒髪~。私よりも綺麗。ね、何か特別な手入れでもしてるの?」
「その腰に吊るしてる剣何? コスプレ? てか目付きわっる。もうちょっとにこやかにいこーぜ!」
「説明会では見かけなかったけど、出身は京都なの?」
多少ぶっきらぼうに感じられる程度に抑えたせいか、天野の返答をきっかけに他の新人から一気に絡まれた。やはり選択をしくじったかもかもしれない。
というか3番目の奴、白髪の。お前だお前、確か
「みんな、到着したよ。仲良くなりたいのは分かるけれど、旭君も困ってるしそれは一旦ここまで。ここからは仕事だよ!」
随分好奇心旺盛らしい新人たちの質問攻めを苦心してあしらっていると、エレベーターに僅かな衝撃が。
それに反応した天野が、手を叩いて注目を集め呼び掛ける。どうやらタイミングよく目的階に到着したため、質問攻めからは解放されたようだ。それとなくフォローを入れてくれた天野に軽く礼をしつつエレベーターから降りる。
どうやら今日の予定としては、収容されている奇心体と鎮圧部門の日常業務の見学を行うらしい。
なんでも、実際に見ることで奇心体への理解を深めさせたいんだと。密偵どもに怪しまれないためとはいえ、わざわざ今日見学を行うあたり上の連中はやはり螺子が外れている。
まあ当人たちは「すげー」とか「これが生の……」とか「あいつかわいくない?」とか能天気なものだが。
むしろ和気藹々とした雰囲気とぞろぞろと奇心体を見て回っている現状のせいか小学生の工場見学のようになってしまっている。
まあ俺は行ったことが無いから“おそらく”という枕詞を付けるべきなんだが。
どうでもいい戯言だ。
正直、こんな雰囲気だと問題がある。つか問題しかない。危機感が欠如すれば、そこから崩壊が始まるからだ。
実際に天野も奇心体の説明と共に「あまり騒がしくしないようにー!」と注意を飛ばしているが…………当人が新人よりも明るく、尚且つ優しい性格だからか効果が出ているようには見えない。ある意味新人に舐められているとも言える状態である。
もっとも天野本人は「しかたないなぁ。まあ怯えすぎてパニック起こすよりはいっか!」とか呟いているため同情などは一切しないが。
にしても“理解を深める”には危険性を実感するというニュアンスも含まれていると思うんだが……。
この調子だとダメそうだな。特に子犬のような姿に擬態している肉食の奇心体を「かわいくない?」とか言ってた白髪の。
かわいくない? って馬鹿か。見た目で油断したら次の瞬間には死んでるぞ。しかしまあこの調子なら新人の中にスパイが紛れ込んでる可能性は低いと見ていいだろう。
そんな風に見学を進めること数時間、突如施設中に警報音が鳴り響いた。
それと同時に、施設の各所から連続した爆発音が耳朶に叩き付けられる。
────ついに始まったか。