──……高等学校にて第一級事案発生。
──生存者一名。
──重要対象として収容する。
とある教室にてただ一人生き残った地球産強者(♀)の話です。
続きは期待しないでもらえると嬉しいです。
強い人間の前日譚です。
──………………なんだ ここは。
「対象の脳波に変化!意識を戻しつつあります!」
「麻酔の吸入を再開させろ!規定値の二倍、いや三倍で構わん!」
……どうなったんだ、私は。
「だ、駄目です!効果が認められません!」
「なら電流を流せ!拘束具到着までの時間稼ぎだ!」
「麻酔の吸入も規定値の十倍で再開します!」
……あの世で人体実験を受けてる、とかか?
……でもそれだったらもう少しは頑丈な拘束がされそうだな……
……なら生きてる、のか?
……いや、
「け、痙攣すらしません!どうなってるんですか!」
「……やむを得ん!戦闘部隊を呼べ!我々は退避だ!」
「了解しました!三十秒後に第一班が到着するそうです!」
……とりあえず鬱陶しいな
どの道人間に対する扱いなんてされなさそうだし、逃げるか。
「た、対象動き出しました!」
「研究員は全員退避だ!急げ!」
「第一班はもう来ます!邪魔しないように注意して退避して下さい!」
……よし、千切れた。手足に問題も無し、と。
それにしてもコレが
まぁ、
「両手を上げて膝をつけ!抵抗すれば射殺する!」
「……っ!」
「…………!」
こんな事なら
まぁとりあえず
「お前ら、邪魔だ」
全員ブッ飛ばす。
□
とある県のとある山裾。
ひっそりと佇む白を基調とした建物は表向きの登録は民間の研究所となっている。
──だが裏の顔は表沙汰にできない厄介事を管理する機密施設。その一つであり、小銃や携行式誘導弾で武装した戦闘部隊すら備えられていた。
「ぐわあぁぁー!」
その戦闘部隊の一人が吹き飛ばされる。
搬入路へと繋がる廊下に築かれたバリケードの頭上を飛び越え、ガラス窓を突き破り実験室の一つに叩き付けられた。
「撃て、撃てっ!」
短く、簡潔に命令が下されバリケードの陰に身を隠した隊員達が引金を引く。
引金は小銃の機構を動かし、銃口から人体を容易く破壊する速度で銃弾が吐き出される。
吐き出された銃弾は突き進み──、──目標が持ち上げるコンクリート壁を幾らか削ってその歩みを止めた。
「……クソッ!」
「(……
常識外れの
「(……
この世に生を受け十何年。
目標は自分が『普通』じゃない事は分かっていた。
──五歳の頃、帰省先で野犬を殴り殺した。
──小学生の時には、数十人の不良グループを纏めて病院送りにした。
──去年、サバイバルを習ったオーストラリアではイリエワニを追い払った。
文明の産物は割と頑丈だ。
コンクリートブロックですら素手で容易に破壊できるものではない。
「(……まぁ後だ後。全ては逃げてから、だ)」
そんな困惑を一旦心に押し留め、彼女は周囲を警戒しながら移動する。
「(……で、ここは……。……車両用燃料庫?)」
そうして周囲の様子を確認し、自らの現在地を確認した所で
『逃げ場所が欲しいですか?』
「──っ⁉︎」
「よせ!こんな所で撃つな⁉︎」
──突如脳裏に響く声、それとは別の焦る声、身体に迫る飛翔体──幾つかの事が同時に起こり、咄嗟に彼女はそれを手で払った。
瞬間、爆焔が一帯を舐め尽くした。
その山裾に白く無機的な姿が現れて何年経っただろうか。
コンクリートで形作られ白い塗装で覆われたその施設には表向きより遥かに多くの金・物・人が投入され、社会の為という題目を掲げて無かった事になってきたいくつもの闇を飲み込んでいた。
……そんな機密施設は今、夜闇に煙と炎を立ち上げて壊滅状態にあった。
盛大に炎を上げ人のもがきと足掻きが生んだ暗部が灰に還る、その様を山の木々から見下ろして楽しむ者が一人。
「おい」
「……あら?随分と遅かったですね?」
「逃げ遅れた奴助けてたら時間かかったんだ」
木の下から女に声を掛けられた。
その女の簡素な病院着のような服装も、力強さを感じさせる四肢も、整っているがやや表情の固い顔も煤で随分と汚れていた。
──そしてその半身、汚れの下にははっきりと火傷の跡があった。
その火傷を指差しながら女は問う。
「
「ええ、そうですよ?あなた以外のクラスメイトはそれで即死してますし、正直なところあなたが五体満足で生き延びてるのも驚くべき事柄ですね」
「…………私にも火傷が残ってるんだが」
「治りますよね?」
「
不機嫌そうな顔でペリペリと
「
「ええ。いわゆる神様って奴です」
「……神様と来たか。なら
「そうなりますね?呼び名に困ってるなら『D』──『邪神D』とでも呼んでください。」
なら『D』、と女は口に出す。
「随分前から『私の味方になりませんか?』なんて声掛けて来たのはあれ撃ってきた奴と戦う為か?」
「いえ、あなたは面白そうだから唾付けとこうと思っただけです」
「……つまりあれを撃ってきた奴らは敵にもならないと?」
「まぁそうですね?」
そうか、と口にして女は不機嫌そうな顔のまま腕を組む。
「それでここへ来た、という事は提案に乗ると考えて良いんですね?」
「……説明は欲しい所だな。ミサイル向けられてる時にいきなり『逃げ場所が欲しいですか?』なんて提案が来たもんだから弾き損ねた」
「
「
「『追われ続けるあなたを見るのが忍びない』……では満足しませんよね?」
当たり前だ、と口にして女は『D』を睨む。
『D』は小揺るぎもせずにその視線を受け止める。
ひしひしと山裾を満たす圧力に負けたかのようにはらり、と木の葉が落ちた。
□
ぐい、と腕を上げてマンホールの蓋を持ち上げる。
人目が無い事を確認して外に出れば十数年間馴染んできた住宅街が広がっている。
このまま進めば辿り着けるはずだ。
──『まぁ一言で言えば面白くないから、ですよ』
──『今回の攻撃で五体満足だったあなたを殺す手段がこの地球にはありませんからね?』
──『あとは皆が諦めるまでの延々とした無駄遣いを見せられるだけ。そんなの退屈ですよね?』
あの施設からの追手でもいるかと思ったが人っ子一人いない。
あっさりと着いてしまった。
…………我が家に。
私はここに別れを告げに来た。
──『私の話に乗るのなら深夜3時に教室へ。人目を気にする必要はありませんよ?』
──『……あぁ、私がするのは送り出すだけなのでご注意を』
──『それはそうでしょう?こちらに帰って来るにしても足掻いてもらわなきゃ面白くありませんからね?』
「……ただいま」
……玄関のドアには鍵が掛かっていなかった。
……持ち物一つ残さず消えたのなら、鍵も無くしたのだろうと考えたのだろうか。
──『行き先は地球とは異なる惑星、異世界と言ってもいいかもしれませんね?』
──『クラスメイトの皆さんの魂もそこに送っておいたので孤独に震える事はありませんよ?』
……アイツは突然子供が死んで孤独に震える家族が居るとは思わないんだろうか。
……それとも神様と言うからには混沌の渦とか原初の光とか神話的なものから生まれて親も家族も居ないのだろうか。
私には分からない。
「お帰り」
「……おかえりなさい」
リビングでは父さんと母さんが『感情の無い親子』なんて陰口叩かれる無表情で待っていた。
……父さんは何を考えてるか分からないけど、母さんは少し驚いて返事を返したのが分かる。
分かって、しまう。
……ダメだ。
アイツの誘いを断るとして私じゃ守りきれない。
あの施設に居た部隊と同じくらいの部隊が襲って来た時に、うっかりミサイル弾き損ねても私は死なないだろうがこの二人は確実に死ぬ。
担いで逃げるとしても全力で動いたら潰れる。
そもそもこの世界で逃げるとしたら……
「逃げなくて良いのか。行方不明ではなく死亡という扱いである以上何かに巻き込まれたのだろう」
「……当てはある。二人連れて行っても大丈夫か確かめて」
「
「…………」
「お前が乗る以上、国からも隠蔽できるような手段なのだろう。なら消えたお前を追うのは僅かな勢力で済む。証拠の無い御伽噺は本気にはされない。……だがお前という証拠が居るのならやがて多くが動く」
「…………ごめん」
「大丈夫だ、気にするな。
「……ご飯、温めてくるわ」
ごめんなさい。
アイツに出せる手札が何も無くて。
私は強い
結局釣り竿のケースと釣り糸と釣り針だけを持って行く事にした。
仮に向こうに行く時に取り上げられてもがっかりしなくて済む。
「それじゃあ、行って来るよ」
「……気をつけて、ね」
「しっかり、な」
「……うん、分かった」
ドアを出て、敷地を後にする。
……集中して周囲を探れば何十という人員が家の周りにいるのが分かった。
きっと私がここを立ち去った後、
『両親がどんな目に遭っているかも知らずに向こうに逃げるなんて面白いでしょう?』だろうか?
「……馬鹿にするのも大概にしろ」
□
「馬鹿になんてできませんよ?」
夜明けの近づく教室で邪神が一人ごちる。
見る者が見ればその周囲に
「あの攻撃で死ぬのなら『所詮そこまで』の生命。……しかしあなたは生き残った」
さらさらと吹き込む風が教室を巡る。
……窓ガラスは吹き飛び、床も天井も全て黒焦げ、ここで古文の授業に参加していた生徒も教師も痕跡すら残っていない。
とある組織の検証では『地球上のどのような兵器をも上回る熱量がここで炸裂した』と推測され、同時に『
そしてそんな熱量が炸裂したにも関わらず『
教室と女子生徒のどちらにも調査が入れられる事となり、テロの名目で教室は校舎周辺ごと封鎖され、女子生徒は死亡扱いの上で機密施設に送られたが施設を壊滅させ脱走。その行方は大勢の人員が捜索中である。
「あぁ、でも一つだけ嘘をつきましたね。──
天下を只人が右往左往する様など一顧だにせず、邪神は嘘か真か知れない言ノ葉を紡ぎ続ける。
「まぁせいぜい頑張ってくださいね?
「苦しんで……、星の一つでも救って来てくださいね?」
届くとも知れない言ノ葉は数多くの人生が失われた教室の中をただ渦巻いていた。
□
私の持ち物は着衣を除けばポケットに入れていた釣り糸だけになった。
釣り竿はケースごとへし折れ、釣り針は落下の衝撃でどこかに落ちた。
先が思いやられる。
「アイツに善意を期待するな、と……。さて」
「@qmgagw!#mgdpwad!」
「gdj m@g@…!ajwjjgpm!」
先が思いやられると言えばさっきから私を取り囲んで槍を突きつけてる衛兵……らしい奴らもなんとかしなきゃか。
姿形はそう変わらないからただの不審者──いや、不届き者か?──で済んでいるらしい。
地球人類とはまるでかけ離れた種族が支配している可能性もあったからそこは幸いだ。
とはいえ、言語がさっぱり分からないし大人しく着いて行ってどうなるかも分からない以上取れる手段は一つだけ、だな。
……まぁ屋敷ブチ壊して着地した私が一割くらいは悪いし、そんな奴に対処しなきゃいけない
「お前ら、邪魔だ」
押し通らせて貰おうか。
……腕っぷしだけでなく。
後の人類領域の大英雄『ミサ』の物語はとある領主邸の衛兵を全員ブチのめした事から始まるのであった、と……。
バイオレンスすぎやしませんかね⁉︎
(↑とある蜘蛛の叫び)
:武峰美紗(タケミネ ミサ)
…地球人類の中ではぶっちぎりで最強な主人公。
後に異世界の人類の中でもぶっちぎりになる。
とある教室の全てを消し飛ばした攻撃から生き延びはしたが、それによって裏組織に目を付けられた事で社会生活を営む事が難しくなり、攻撃が行われる原因となった邪神の手で異世界に転移し、割と上空からとある領主邸に突っ込んで屋根と部屋をぶち壊しながら着地した。
現時点でも小銃や携行式誘導弾で武装した小部隊を素手で壊滅させる実力がある。槍しか持ってない衛兵など敵ではない。
しかしとある理由で現時点では一切のサポートが無いので異世界の言語が分からない。分かったとしても力ずくで逃げ出す事になっただろうが。
苗字は最初某ゴンさんから取って『権藤(ごんどう)』だった。なんかすっきり決まらなかったので『武の頂点』的な意味で『武峰』になった。
:邪神『D』
…美沙のクラスメイトにして異世界に転移する事になった元凶。
高校では別の名前を名乗っていたそうな。
美沙には以前から声を掛けていたが警戒8割、何が目的なのか分からない疑問2割の内心でやんわり流されて来た。
脱走の際の呼び掛けが原因で火災が起こった事と底の知れない本性を目の当たりにした事で警戒10割に傾いた。
:
…父・
揃って表情が固く、声色の変化に乏しい為『感情が無い家族』とか言われるが表に出ないだけでちゃんと感情はある。
ただし父については妻と子にすら内心を察せられてないフシがある。悲しい。
一人娘を今までしっかり育んで来た。
:とある組織
…表沙汰に出来ない『変なもの』や『ヤバい人』に対処する政府直轄の秘密組織。
ただし対処能力は神一人にすら気付けず、隠蔽を掛けられている事にも気付けないくらい低い。
銃弾で○せない相手にはかなり分が悪くなる。
話が続くとしても表には出て来ない。
:ミサイル
…美沙は艦に載るくらいデカいものから一人で運べる小さいものまで十把一絡げに『ミサイル』と呼んでいる。
脱走する時何発か撃たれたものの、急加速して躱したり起爆しないように慎重かつ力強く弾いたりしてダメージは無かった。
が、一発邪神のせいで弾く方向を間違えて燃料タンクに直撃。連鎖的に火災を引き起こし一つの機密施設が壊滅する事となった。
……
:『蜘蛛ですが』を読んだのが大分前で記憶が薄れつつある。
:その上読了も出来てない。
:しかもこの話に必須そうな勇者側の大半はどうでも良くて読み飛ばしている。当時は『もっと蜘蛛子出せオラ』な心境だった。
……この状態で続き書くのはなんか嫌なので続きはあんま期待しないでいただけると幸いです。