チャンピオンのハルウララが勝負をしかけてきた!!   作:菊池 徳野

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(和装マンハッタンカフェ)


コーヒーの香り、或いは

コーヒーの薫りと小さな爆発が同居する、ここは理科室。アグネスタキオンのラボ兼トレーナー室である。

 

「温度も時間も合わせたつもりだけど、どうにもカフェの味とは程遠いな」

「豆の挽き方だけでも違いは出ますから、味の違いは出て当然ですよ」

「ふむ。電動でなく僕も自分のミルを買うべきかな。折角淹れ方の師匠もいることだし」

「このままでも十分美味しいと思いますよ」

 

朗らかに笑うロマンスグレーに歳頃の少女のように微笑みを返すマンハッタンカフェの姿は長閑を絵に描いた様であった。

その背景で普段より若干必死さを滲ませて実験を繰り返しているアグネスタキオンの姿がなければ、だが。

 

「カフェ〜、もういいだろう?後4時間もすれば元に戻るはずだから」

「ダメです。ちゃんと反省してください」

「君のコーヒーをダメにしたのは悪かったと思っているともさ。けど君のトレーナー君のそれも似合っていると思うなー、私は」

 

それ、と言われてついトレーナーの髪に目が行ってしまう。いつもと違う白髪混じりのアッシュグレーは確かに今の彼には似合っているだろう。しゃんと伸びた背筋と柔和な雰囲気、穏やかな話し方から滲み出る人あたりの良さは実に紳士的でその壮年然とした見た目も相まって、どこかのカフェのマスターでもやっていそうな貫禄すら感じてしまう。

 

「僕は別に構わないけれど、モルモットくんはそのままだとマズイから頑張ってくれ」

「トレーナー君なら大丈夫だよ!乳首が光るようになるくらい毛ほども気にしないとも」

 

被害者の1人から恩赦を得た事で勢いを取り戻したタキオンは自信満々にそう言い放つ。自分のトレーナーはタキオンの被害に慣れているため余程の事じゃなければ、なあなあの内に許されることが多い。

皆の視線が部屋の壁に向かって佇む光源の方に集まる。視線の内訳は期待が1、憐れみが2である。

 

「いや、流石に無理。しかもこれ結構布貫通するからずっと手ブラ状態は辛い」

「ほら、早く治療薬を作ってください」

「何故!?暗いところでも便利だぞトレーナー君!」

 

まるで飼い犬、ならぬ飼いモルモットに手を噛まれたとでも言いたげに抗議の視線を送っているタキオンには悪いがあと4時間しか効果がないのであれば夜には使えないだろうというツッコミを入れず、胡乱げな視線ひとつを送って黙って手元のコーヒーを口に運ぶ。自分が入れるものよりも薫りが少し弱いが淹れた人間の気質がよく出ている雑味の少ない丁寧な味のコーヒーである。

 

マンハッタンカフェのトレーナー室はアグネスタキオンのトレーナー室同様、理科室となっている。

それは趣味のコーヒーのために火を使用するからという事になっているが、実の所それは個室であるトレーナー室のミニキッチンで事足りるものであった。それを何故わざわざ他のウマ娘と共用のスペースにしているのかと言えば、それはひとえに"安全の為"である。

 

元よりあまり動じない性質であるカフェのトレーナーとタキオンのストッパーになれるマンハッタンカフェという、もしもの時に頼りになる2人を危険物処理班にするという条件が無いとタキオンラボは許容されなかった。そういう話である。

 

「そういえばトレーナーさん」

「ん?」

「ポケモンに出てくるライバル、貴方ですよね?」

「おや、気づいてくれたのか。バレない内は黙っていようと思っていたんだけど」

 

参ったなぁと困った様子のトレーナーは表情やセリフとは違い、その声はどこか嬉しそうで、悪戯がバレた子供のようだった。

 

「今のお姿が以前見せていただいたお父様の姿とよく似て居たので。隣に映っていた子供の時のトレーナーさんの姿を思い出しました」

「なるほど。ちなみにもう1人のライバルは誰か分かるかい?」

「……モルモットさん?」

「正解」

 

普段から何となく自身がタキオンとニコイチの扱いにされている節はあったが、まさかトレーナーの方もそうなるとは思っていなかった。まさか冗談とは思っていないが、こちらに向かってピースしているタキオンのトレーナーを見るにライバルというのは本当のことらしい。

 

「タキオンってば酷いんだよ?せっかく私も出ているって言うのに全然ストーリー進めないでポケモン捕まえてばかりでさ」

「モルモット君は私があの世界に行って研究心が疼かないとでも思ってたのかい?」

「まるで心外。みたいな顔してるけど最初ゲームなんて子供騙しって言ってスカーレットに話振られるまで触ろうともしなかったの忘れてないからね」

 

後ろの方から聞こえてくる痴話喧嘩を無視してトレーナーと2人コーヒーを楽しむ。そういえばタキオンといえばもう1人相方とでも言うべき相手がいる訳だが、もしかして彼女のトレーナーも出ているのだろうか。

 

「タニノギムレットのトレーナーかい?出てると言えば出てるね。どこで出てくるかはストーリーを進めてカフェ自身の目で見て欲しいな」

「そうですか」

 

 

 

 

「そうですか、とは言いましたが」

「ブレイカーズの言ってたトレーナーはお前たちだな?悪いがこちらにも事情がある。逃がすつもりは無い」

「ごめんカフェ、ジーク!この人ブレイカーズの用心棒だって」

 

次の街へと移動する道中に出くわしたイベントはちょうど昼に話していたトレーナーの登場シーンであった。ポケモンバトルに負けるシアンさんとその現場に居合わせた私とジークさん、改め若い頃のトレーナーさん達。

 

相手はどこかキザな雰囲気の青年。パンキッシュな出で立ちで誤魔化そうとしているものの、お昼の会話があったせいで私にはタニノギムレットのトレーナーの若い頃にしか見えなくなっていた。

 

ライバルイベントというやつだろうか。これまでの道中ちょっとしたイベントや腕試しのバトルはしてきたが、今回はどうも毛色が違いそうだ。

 

「逃げないさ。元よりブレイカーズに負けるつもりもないよ」

「いい目をしてる。まとめて相手をしよう!」

「カフェもいい?手強そうだけど、俺たちなら勝てるはず」

 

ブレイーカーズとは、確かポケモンを利用した犯罪を繰り返す組織だっただろうか。ノーマシティでの一悶着もあり相手の出してくるポケモンの傾向は記憶に新しい。

そしてダブルバトルは道中で何度かこなしてきた。何より数的有利はこちらにあるのだ。ジークではないが私だって負ける気はしない。

 

「行くぞクロバット!ペンドラー!」

「任せましたヤミラミ」

「バッチリ決めろハリボーグ!」

 

クロバット。恐らくはこれまで戦ってきた下っ端達の使っていたズバットやゴルバットの進化系だろう。であれば恐らくタイプはどく/ひこうの物理系。

ペンドラーはむし/どくのポケモンであり、どちらも速さでヤミラミが勝てるポケモンではない。

 

「ヤミラミ、リフレクターです」

 

指示に従って動き出したヤミラミは相手より素早く動き、透明なシールドを展開した。彼のとくせい『いたずらごころ』によるものだ。

 

明らかに素早い、速度で劣る相手との戦闘で意識しなければならないのは耐久力である。

 

「クロバット、クロスポイズン!ペンドラー、いやなおと!」

「ハリボーグ、がんせきふうじだ!」

 

リフレクターの防御上昇を無効化し、さらに弱点を突いてくる相手の行動にトレ……ジークさんのハリボーグは満身創痍に陥るも、踏ん張って倒れる事なく相手の素早さを下げる技を繰り出した。

 

「ダメージが大きい?」

「ポケモンのとくせいはひとつじゃないってことさ。俺のクロバットに小細工は効かねぇ!」

 

ふむ。これも所謂『初見殺し』というやつでしょうか。ジムバトルだけに飽き足らず道中の戦闘も難易度を上げてきたというところでしょう。恐らく相手のクロバットはリフレクターを無効化するとくせい持ち。

 

このまま次のターンにハリボーグは落ちるでしょう。と言うことは逆に言えば私のヤミラミは問題なく戦えるという訳ですか。

 

「なら、ここは私がやるしかないですね」

 

どちらかと言えば守りやサポートに向いているヤミラミでは瞬間火力は期待出来ないが、それでも相手の手持ちを見るにタイプ相性は有利である。

 

「行きますよヤミラミ。『メガシンカ』!」

 

腕に着けたバングルが怪しく光り、ヤミラミに力を与えていく。

レースの時のように心臓が高鳴る。これがウマ娘としての本能によるものなのか、或いはこれが私の本質なのか。

 

「勝ちますよ、ジーク」

 

落ち着いた時間を過ごすのも、苛烈な時間を乗り越えるのも貴方と一緒に。




カフェと言えば幽霊。ゴースト。ってことでゴーストタイプのトレーナーになって欲しいなぁという。

辛気臭くなっちゃうかなと思ったので、ポケモンタワーやおくりびやまなんかの霊園施設は今話は触れないことにしました。
今回は出てきませんでしたがカフェは御三家にはホゲータを選んでおります。2進化がゴーストタイプだしね。エルと被ってるね!考えなしだったから仕方ないね!

Z-Aまだ触れてないのですがすげー楽しそうなので続きを書きました。
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