この"沢山の歌声"で、"曲"で、ヒーローを目指します   作:伽華 竜魅

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お待たせしましたァ~!!




私は一緒に歌いたい!

 

 

 

 

補習を無事に終えた私たちインターン組は、今日から本格的に文化祭準備に参加できる。

それで文化祭で何をやるのかを聞けば、音楽をやるとのこと。

 

音楽はニューレイヴ系のクラブロック。

んで、耳郎さんがベースの八百万さんがキーボード。そして――

 

「――爆豪くんがドラム!? な、何かの聞き間違い!?」

 

「ンだとゴラ!! ぶっ殺すぞ歌女テメェ!!」

 

思わず口に出してしまっていた。

そして怒鳴る爆豪くんに謝った。

 

「それで、肝心のボーカルは誰が担当なのかしら?」

 

「そりゃあもう、ここに常日頃から歌ってる人がいるじゃん」

 

そう言った耳郎さんに続き他の皆も一斉に私へと視線を向けて来た。

え?文化祭でも私?え??いや待てェい!!!

 

「なんで!? 私だともうほぼ定番みたいになって面白みも楽しさも欠けるじゃん!!!」

 

「いや、天堕の歌凄いし…普通に天堕にボーカルやってもらってウチはベースをやろうと」

 

勝手は許さないわよ響香ァ!!

 

「何故口調変えた!?」

 

だって!だって!!ねぇ!?

 

「天堕がやらないならオイラがやる! モテる!!」

 

「ミラーボール兼ボーカルはそう! この僕!!」

 

「俺も! 楽器はからっきしだけど歌なら自信あるぜ!」

 

そう言って三人が歌いだしたけど……うん、なしだな。

 

「とにかく! 天堕は声も変えられるから、この中の誰よりも適任なの!!」

 

そう言われると……うぅ。

はぁ……しかたない。

 

「あまり言いたくないけど…私はほら、神野区とこの間の『並行世界』の件もあって、周りから見たらあれなの。わかる?」

 

申し訳なさと気まずさを含めながら言えば、全員があっとばかりに困った顔になった。

ゴメン……でも、これも事実なんだよ。

 

「あのさ! 二人で歌えばいいじゃないかな? 『並行世界』の時の幻神、ミネさんとイヴさんの三人で一緒に歌ってたから、出来るんじゃない?」

 

「おぉ! ダブルボーカルってか!?」

 

出久くんからのカミングアウトが来て思わず硬直し、ギギギッとゆっくりと出久君へ向いた。

 

「――何で知ってるの!?」

 

「えっ!? だって一緒に戦ってたし、傍にいたじゃん!?」

 

そうですけど、そうですけどぉ!!

 

「どうかな耳郎ちゃん!?」

 

「確かに、天堕だけだともうお決まりみたいになってインパクトが足りねぇからな。ありかも!」

 

皆もなんかダブルボーカルでいいのではッて感じの雰囲気になってる。

 

「どうかな、幻神」

 

「……出久くんがそこまで言うなら」

 

あぁクッソ。

惚れた相手に弱すぎでしょ私……美音がいたら絶対からかわれてる。

まぁ普通の歌でのデュエットはしてこなかったし、いいかも。

 

そう思いながら、私が耳郎さんを見れば、耳郎さんも私を一度見てから俯いた。

すると――

 

「――無理!!」

 

「あっ、おい耳郎!?」

 

突然として真夜中の外に飛び出してしまった。

余りにも突然すぎて全員がしばらく驚いていると、何人かが連れ戻そうと動こうとした。

けど、あの顔の感じを見た私は分かる。

 

だから大きく手を叩いて、皆を止めた。

 

「私が連れ戻してくるよ。その間にみんなは楽器担当を決めておいて?」

 

「え、でも…」

 

「大丈夫だから!」

 

皆を制止して、出久くんにしばらくお願い!とグットを送る。

出久くんもわかってくれたのか頷いてくれた。

そして私は急いで外靴に履き直して、耳郎さんを追いかけた。

 

 

——◆——

 

 

各クラスの寮と雄英高校から少し離れた敷地内のベンチ。

そこに耳郎は電柱に照らされながら座り俯いていた。

 

「ウチにボーカルなんて出来っこない…天堕の方がよっぽどいいに決まってる……ウチは、天堕と比べたら……」

 

耳郎がここまで落ち込んでる理由…それは実力の差だ。耳郎は自身も楽器や歌など音楽関係は、自分で言うのもあれだがやりこんでる方だと思っている。

何より両親は共に音楽に関する仕事をしており、そこで知り合い結ばれ、自身が生まれた。

 

そんな両親の影響もあり、幼少期から音楽を嗜んでいた。

しかしその道を捨て、ヒーローの道を歩んだ。

その道を両親は認めてくれたから今こうしている。

 

だが入学して早々、自分と似た存在がいた。

自分よりも"個性"が派手で、それでいて歌いながら戦う姿は、既に注目の的にもなっていた。

体育祭でもオープニングセレモニーを担当していたりも。

 

音楽好きだから、実は休みの日などは結構話したりしている。

自分と違って聞いたこともない曲を多く持っているその作曲のレベルも相まって、尊敬と同時にその差による嫉妬も少なからず抱いていた。

そして今、文化祭でボーカル担当と言われた時は耳を疑い、周りなど気にせず逃げ出すという何とも哀れな姿をさらけ出してしまった。

 

耳郎はどうすればいいか悩み、仮に音楽関係をやるにしても自分はやはり楽器などを担当すべきだと思い込む。

そんな耳郎の傍に一人の影が歩み寄った。

 

「――見~っけ!」

 

「ッ! あ、天堕!?」

 

聞き覚えのある声にバッ!と顔を上げれば、すぐに追いかけたのか制服姿のままの幻神が立っていた。

こうしてみても改めて、差は感じられると耳郎は秘かに思いこむ。

 

似た髪色だが幻神はインナーカラーに加え、自分よりもスタイルは良い方。

胸は同じか自分より一回りぐらい大きいぐらいでも、それが逆にいい味を出している。

何より入学当初は長かった髪が半分ぐらいまで切られていながら何ら違和感がない。

 

そして髪色とは異なりつつじ色の瞳はどこか惹かれそうなほどに綺麗だ。

 

「急に飛び出しちゃってみんな心配してるよ。今は楽器の担当を決めてもらってるから来てるのは私だけだけどね」

 

「……それは、ごめん。でもウチはボーカルやらない」

 

「……理由を聞いてもいい?」

 

「そんなの、天堕が一番分かってるんじゃないの?」

 

耳郎の言葉に幻神は黙り込む。

そして少しため息を吐いて、腰に両手をついて夜空を見上げる。

 

「自分よりも私が歌った方がいい。そんなところでしょ?」

 

「わかってんならいいよ……ウチも音楽は好きだけど、天堕と違って人前で歌うとか恥ずいし、天堕より下手だし……」

 

それを聞いた幻神はしばらく黙り込み、耳郎も何も言わない。

そんな沈黙を、幻神は両手を下ろして耳郎の隣に座り、静かに語りだした。

 

「私さ……()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ?」

 

「家が音楽家とかそういうのじゃないし、歌詞だって作れなかった。ただ好きな歌を真似て歌う…子供の頃よくやる、音楽に合わせて踊るみたいなあれかな。それに幼少期から音楽が大好きだったわけじゃないし」

 

だけど…と幻神は続ける。

 

「ある人たちの歌を聴いてね、とても心が躍って高鳴ったの。その人たちの在り方に心を打たれて強く憧れて、素人でもこれだけは分かった。()()()()()()()()()()()()()()()()()……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。それこそ、その歌に生涯を賭けているように」

 

フィクションでありながらもその在り方は凄まじく、素晴らしく、強く憧れ、今の自分になるきっかけになった存在。

空想人物…キャラクターである歌姫たち。

戦場で戦いながら歌う者や戦場に立つ者たちへ送る歌を歌う者、そしてその命と引き換えに最後にして最高の歌を歌う者。

 

幻神にとって彼女たちの在り方は、今も追い続ける目標であり夢だ。

 

「だから必死に音楽を勉強した。一人でずっと歌って独学で学び続けた。血反吐を吐いちゃうぐらいに喉を傷めたし、肺活量とかを鍛えるためにも必死に身体を鍛えたりもした。ただ歌うだけじゃない……何を持って歌うか、私はずっとそれを自問自答を繰り返して、必死に歌えるように頑張った。息をするだけで喉や肺が痛くなっても歌い続けた…血反吐を吐いても歌い続けた……あの人たちのようになりたいから。私はヒーローじゃなくて、命を懸けて歌う人達に憧れたの。あっ、血反吐は嘘だと思うけど本当だからね?」

 

語っていくそれは、幻神が歌を好きになり、歌えるようになるまでの、幻神にとって苦難の日々だった頃の人生。

しかしその全ては今世での話ではない。

確かに今世でも同じようにしたが、基本的に歌えるようになるためにそこまでやったのは前世……そう、ただ平凡でオタクな人生を暮らしてた頃の話だ。

 

それを耳郎は静かに聞いていたが、信じられないとばかりに幻神を見ていた。

 

「この"個性"だからそうあるべきとかじゃない……それに元々はただ自分の身体的体力や生命力のエネルギーを変化させて、変換させたエネルギーをいろんな形に変えるだけのものだった。でも、ある事件……まぁ神野の事件で放送された記者会見の時にちょっとだけ明かされたんだけどね、私が行方不明になってる時期に"個性"は変化して、救出される頃には今の、それこそみんながよく知ってる方になった。んで、今ではその全てを受け入れて、繋いで、今に至って"個性"が…うんん、『紡心(アクシア)』がたまに私の心臓の鼓動を通して伝えてくるの。「もっといろんな歌を聞かせてくれ」って、歌ってくれって」

 

"個性"とは身体の一部。

だが緑谷の『OFA』や幻神の『紡心(アクシア)』のように特別、特殊過ぎるものも存在する。

そして『紡心(アクシア)』は、理屈もその理由も、真実も不明だが『紡心(アクシア)』自身が幻神に心臓の鼓動として伝える時がある。

 

それを幻神は不思議に思いながらも、嫌なものではないと本能的に分かっていた。

何より自身の歌に応えてくれている『紡心(アクシア)』を、疑うなんて全くない。

すると幻神は立ち上がり、少しばかり離れるように歩き出す。

 

「『紡心(アクシア)』は美音と私、2人のそれぞれが抱く意思を、その想いを、ただ見届けただけ。自分はどんな道に、運命に、結末になろうと君と共に居続けるって言ってるような気がした。そのおかげもあって、私も『紡心(アクシア)』を信じて使ってる……だから私は、心の底から歌える」

 

瞬間、月が雲から姿を現し星々が一際輝く。

そんな夜空の輝きがスポットライトのように幻神を照らす

そして彼女は――歌いだした。

 

 

♪【♪HiBiKi Au Uta♪ ~Solo Arrange Ver.~】♫

 

 

♪ 瞳にはStar 願い星がある ♫

♪ 目を伏せたってもれる光 ♫

 

その声を『咲良うた』に変換させながら歌う。

ただ歌うだけでなく、ゆっくりと身体を動かし、歌声だけでなく身体全体を使って、その歌を伝わせるように。

 

♪ いまここで キミが背中を向けても ♫

♪ 何度も何度でも 笑いかける ♫

 

それを見た耳郎は、目の錯覚かと思うように一度目をこすり再度幻神を見る。

それは歌っている幻神に共鳴するように、彼女の身体から輝きが溢れており、同時に星々がさらに輝き始め、流れ星まで出ていたから。

まるで世界が彼女の歌に呼応しているように。

 

♪ 大好きとか 大切とか キミに届けたい ♫

♪ 世界はほら こんなに今「キラッキランラン」輝き始めてる ♫

 

当の本人はそれに気づいていないのか、ただ笑顔を表しながら歌う。

 

♪ 歌って 踊って あふれる想い ♫ 

♪ 喜ぶキミを見ると 嬉しくなる ♫

 

その笑顔に迷いなどはない、純粋に心からの笑顔に、気が付けば耳郎は目が離せずにいた。

 

♪ 笑って 笑って 場所はどこでも ♫

♪ 心が動くとこに 笑顔はツナガルから ♫

 

そして歌い切った幻神は、肩の力を抜いて耳郎を見る。

 

「歌に正義も悪もない。歌は誰もが抱くもの…誰もが歌や演奏と言った音楽を耳にする。そう、生まれて親に送られる子守唄がその始まり。そして誰もがその胸に自分だけの歌を宿してる……その歌が人を、世界を繋ぎ繋いでいく…私は、そうなりたい」

 

幻神は耳郎へと歩み寄り、その手を差し伸ばした。

 

「私は、天堕幻神は他の誰でもない、耳郎響香と共に歌いたい……みんなを笑顔にする最高の歌を!」

 

「…ッ!」

 

あの日、気を失っていたことで当日は知ることがなく、回復してから知ったこと。

それは神野の悪夢などと名付けられた大きな事件。

そして家に帰ったとき、耳郎の父親である響徳に呼ばれ、今まで以上に真剣な表情と空気で娘に語った。

 

『あの子、響香の友達で同じ音楽好きの子だろ? あの子の歌声を聴いて思ったんだ。あの子は歌に懸ける想いが誰よりも強くて重いってよ。これでも音楽の道歩んでたからわかるんだ。カッコつけてると思うけどよ、なんとなくわかるんだよ。あの子の歌はいろいろと感情が入り混じってる……悲しいとか楽しいとか怒ってるとかいろいろな。んでよ、とても暖かい歌、俺たちも一緒に歌ってるような歌、そしてオールマイトを応援するような歌には真っ直ぐな想いがあった。けどきっとあぁいう子は無理して溜めこんで挫折するかもしれねぇ……あの子ほどでもないけどそういう経験は俺にだってある』

 

けどよ…と響徳は茶を一度飲んでから続けた。

 

『俺は美香のおかげで真っすぐ進めた。お前もいつか経験するし、あの子はきっと自分の意思で崩れようとも立ち上がって進むはずだ。音楽に関する悩みとかは、同じ音楽好きじゃないと分からないこともある……だから響香、そん時はお前が救ってやれよ。ヒーロー目指すなら、そういうのも大事だからな。んでいつか家に連れてきて、二人で楽しむ姿を見せてくれよ』

 

その父の言葉は、真剣なあまりしっかりと耳に残っていた。

何より液晶越しであったが、必死に歌う幻神の姿は誰よりも輝いていて、真っ直ぐだった。

でもそれは1人で掴み取ったものではない。

 

「(そうだ…天堕はあの日……)」

 

ニュースや切り取られたネット映像でしか見れなかったがしっかりと見た。

瓜二つの自分と戦う姿。

だけどそれは倒すためではなく、歌い伝え救うがため。

 

歌に正義も悪もない……ただその人の想いに応えるのが歌であり、その歌に応えるのも人。

歌う人によって、その歌の込められる想いと意味は変わる。

今の幻神は、平然と振舞っていようと心の底では違うと耳郎はなんとなくと感じた。

 

「(歌に罪はない…何よりウチも歌が、音楽が大好き……それは天堕も同じだ)」

 

ちっぽけなことでへこたれて、逃げ出す自分が恥ずかしくなった。

幻神は大きすぎることを多く経験してもなお、胸を張って歌っているのに。

そして今自分と歌いと手を差し伸ばして、繋いでくれたのに、振り払う理由があるのだろうか?そんなのないに決まっている。

 

「ウチも歌う……天堕と、最高の歌を歌いたい!」

 

耳郎は幻神の手を取り、立ち上がり、真っ直ぐと幻神の目を見て告げた。

 

「~ッ! ――響香ちゃ~ん!!!」

 

「おわっ! きゅ、急に抱き着くなァ!!」

 

耳郎の決意を秘めた返事が嬉しかったのか、幻神は満面の笑みを漏らしながら抱き着く。

耳郎も驚き思わずツッコむも、振りほどこうなどと思わなかった。

そして、改めて決意するのであった。

 

 

 

 





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