※セナの視点
セナは白い髑髏面の怪人に跪いているジョエルを何とかして助けようとするも、オルハンに羽交い絞めにされ身動きが取れない状態のまま、その光景を見つめることしかできなかった。
「……なに、あれ」
一瞬の出来事にまだ理解が追い付いていないが、突然ジョエルと黒いボロ布を纏った怪人の間に『何か』が割って入ったことで、とりあえずジョエルが無事であることは分かった。
だが、その『何か』をどう表現していいか分からなかった。
「……しっぽ?」
初めに浮かんだのはそれだったが、続けて連想されたのが『蛇(ヘビ)』であり、あまりにも歪な形をしていることから『蜈蚣(ムカデ)』がしっくりきた。
今セナが見ているモノが正しければ、その『何か』がジョエルの背中から生えていて、それが怪人からジョエルを守っているように見えた。
※アサシンの視点
静まり返った店内で、金属音が無機質に鳴り響く。
アサシンは投擲した短刀を全てはじき落とした『モノ』に、尋常ではない気配を感じ全身に怖気が走った。この感覚が人類史に刻まれた英霊としての刷り込みか、はたまた純粋に生命体としての生存本能かはアサシン自身も測りかねた。
「何だ、それは……いや待て、貴様――」
何故それで生きていられる、とサーヴァントでさえ忌避する程の瘴気を放つモノを、背中から生やしているジョエルに対して強い警戒を示した。
一見、禍々しく蠢く尻尾のようにも見えるが、歪に捻じれた刃が無数に接ぎ足された奇怪な武器にも見えた。全体が血を煮詰めたように赤黒く、さらにその上から黒い入れ墨ような紋様が波打つように動いている。
ジョエルは閉じていた目を開け、ゆっくりと立ち上がる。
「そうでもない、もうじき死ぬ」
その言葉が伊達や酔狂ではないことを、アサシンはジョエルの目を見て察する。
「――ならば今ここで果てるがいい」
懐から新たに短刀を取り出し再度放つ。
今度は複数ではなく一本に絞り、より速度が乗った短刀がジョエルへ向かっていく。
しかし、それも先程同様に難なく尻尾によって払われてしまうが、アサシンの意図は他にあった。
持ち前の敏捷性を活かして、尻尾が振り払った方向とは反対側に一瞬で回り込み、直接ジョエルの首を狙いにかかる。
――獲った。
「っん!!?」
だが、振り下ろされた短刀は、一般の生物が有している尻尾とは似ても似つかない俊敏な動きによって、またしても防がれてしまう。
まるで本人の意思から外れて、それ自体が独自に動いているような奇妙な存在に、ただただ驚愕するアサシン。
「……それが、サーヴァントを呼ばない理由か?」
「だったら、どうする?」
鋭い尾先がこちらへ向いたところで、アサシンは即座に距離を取る。
――如何なサーヴァントといえど、あれに触れればどうなるか知れたものではない。
接近戦は愚策だと判断し、異形の尻尾による攻撃を躱せる範囲で距離を保ちつつ、短刀を投擲しアウトレンジに攻めていく。
そうしている間も、脳裏にマスターの罵声が絶えず飛んでくることに、いい加減嫌気がさしていた。
「見たところ多少頑丈そうに見える。丁度良い、少しばかり憂さ晴らしに付き合ってもらうぞ」