Fate/stay alive   作:伊良部修平

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2日目 第3戦 1stウェーブ
ジョエルVS幽鬼の男の続きです。


2日目 第3戦 2ndウェーブ①

 

――幽鬼の男と交戦してから、一体どれくらい経っただろうか?

5分か10分か、あるいは15分を越えたかもしれない。

攻撃を『尻尾』で受け止めているとはいえ、サーヴァントの膂力は絶大で、殴り飛ばされたかと思えば、蹴り上げられ宙へと舞う――その繰り返し。

さながら洗濯機に放り込まれたかのように視界が乱回転し、自分が今どこにいるのかさえ把握できない。

いや、そんなことはどうでもいい。

今は目の前の攻撃を捌くことだけに集中しろ。

ただの五感で動くな。先にある悪意を読み取れ。

その対処を『これ』にさせればいい――。

「――っ!?」

空中で、もう何度目かもわからない蹴りを防いだ、その矢先だった。

ジョエルの頭が何かに触れた瞬間、突如として破砕音が鳴り響いた。

ガラスが割れたような音に、初めはどこかの建物の中に突っ込んだのかと思った。

だが、そうでない。

視界が捉えたそれは、空間そのものに走る無数の亀裂と、その中心に開いた黒い穴だった。

しかも己の身体は、なおも落下し続けている。

その時、ようやく自分がこの穴を突き破って中へ入ったのだと気付いた。

「ジョエル・フリードキン!?」

不意に聞こえた声に視線を向けると、昼間に協定を結んだセイバーのマスターが、遠方でこちらを見上げていた。

――なぜ、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトがいる?

さらに近くの屋上では、セイバーが剣を構え、長物を二本携えた女と対峙していた。

見る限り、セイバー陣営もどこぞの陣営と交戦中なのだろう。

『えすおーえすを、おくる?』

防戦一方の状況に見兼ねてか、ボイジャーが念話で話しかけてきた。

『……あいつらとは、停戦を結んだだけだ。手を貸す理由がない』

それに――、とジョエルは己へ注がれる視線から敵意の有無を探る。

『幸いにも両陣営とも、こちらと一戦交える気はないようだ』

『なら、にげる?』

『ここで背を向ければ、気が変わるかもしれない。助けを乞うより愚策だ』

逃げの一手しか取れない負傷した獲物を前に、三陣営が徒党を組む可能性もある。

そうか……。

ジョエルは、未だ攻撃の手を緩めない幽鬼の男へ舌を打った。

『こいつ、わざとここまで誘導したな』

『どういうこと?』

『このサーヴァントの目当てはお前だ』

『ぼく?』

霊体化しているとはいえ、首を傾げるボイジャーの様子が伝わってくるような反応だった。

ジョエルは、セナの家で幽鬼の男の接近に気付けなかった理由を話した。

気絶でもしない限り、ジョエルは常に外敵から向けられる悪意を感知し続けるため、満足に眠ることができない。

せいぜい、目を閉じて浅い眠りと覚醒を繰り返しながら休息を取るしかない。

しかし、奇襲の機会を窺っていた幽鬼の男を察知できず、代わりにサーヴァント同士の共感によって、ボイジャーだけがその接近に気付くことができた。

つまり悪意の矛先がボイジャーに向いていたので、自分が気付けなかったということになる。

だから、いつまでたってもサーヴァントを呼ばないジョエルに業を煮やした幽鬼の男は、他の陣営が戦闘していた区域へ追い込んで、ボイジャーを呼ばせようとしたのではないか。

『じゃあ、ぼくがでれば、かえってくれるのかしら?』

『どうだろうな。そもそも、なにが狙いなのか分からない』

単純にボイジャーを倒したいだけならば、それこそ自分を殺して芋づる式に消滅させればいい。

目的を予想するなら、マスター権を奪うことや、生前の怨恨などだろうか。

ボイジャー自身に生前というものがあるのかどうか分からないが、何らかの因縁があったのか――いずれにせよ情報が少なすぎる。

『じゃあ、どうするの?』

『――手の内を読まれる前に、こちらで仕留める』

どのみち、こんな四つ巴の状態では退路と呼べるものはなく、眼前のサーヴァントを殺さなければ先はないのだから。

 

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