Fate/stay alive   作:伊良部修平

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2日目 第3戦 2ndウェーブ③

 

ジョエルはボイジャーを待機させたまま、攻勢に出ることを決めた。

幽鬼の男から伝わる敵意を読み取り、次の攻撃へ移ろうとした瞬間、ジョエルは自身のコートに魔力を送り込んで放り投げた。

宙に舞ったコートは幽鬼の男の眼前で大きく広がり、ジョエルの姿を完全に覆い隠した。

「むっ――」

何を仕掛けてくるのかと警戒する幽鬼の男だったが、広がったコートの中央が不自然に盛り上がったのを見て目を細める。

次の瞬間、コートを貫き、刀剣のように鋭い尻尾の先が突き出てきた。

「小賢しい!」

サーヴァント相手に、この程度の小細工が通じるものかと言わんばかりに吐き捨てた。

己の身体に更なる負荷をかけて、一気に三倍の速度で接敵する。

「なにっ!?」

ジョエルの背後に回り込んだところで、幽鬼の男は驚愕した。

止めの一撃を与えんと振り上げた手の先で、すでにジョエルが待ち構えていた。

重量感のある無骨な火器を片手で持ちながら、銃口がまっすぐこちらへ向けられている。

狙いは自身の胸部――つまりサーヴァントの急所ともいえる霊核が収められている場所である。

もちろん現代兵器がサーヴァントに通用しないのは百も承知だが、銃を握るジョエルの手には、あの尻尾と同じサーヴァントをも殺しうる呪いが帯びていた。

その力が込められた弾丸で、霊核を撃ち抜かれれば消滅は免れない。

ドパン――という銃声とともに放たれた弾丸は、音速を超える勢いで迫る。

対して幽鬼の男は、止めの一撃を繰り出そうとしていた手で、やむを得ず弾丸を弾いた。

「んっ?!」

防いだ手には、想定していたはずの呪いが伝わってこない。

この認識の齟齬が、肉体を持つ者なら人間であろうとサーヴァントであろうと避けられない身体硬直を生んだ。

加えて、無理やり攻撃を防御へ転じたために、態勢を大きく崩してしまった。

「こいつ……!」

あの目くらましも、この銃弾も全てブラフか!!

幽鬼の男が忌々しげに睨むと、すでにジョエルは銃を手放していて、その背後にはこちらを貫かんと狙いを定めた――あの尻尾が見えた。

「――取った」

 

「がっ!??」

渾身の一撃を放ったはずのジョエルは、次の瞬間には地面へ転がっていた。

――何が起きた? いや、何をされた?

視界は乱れ、思考が上手く定まらず、手足が痺れて起き上がれない。

遅れて、側頭部を貫くような痛みに気付き、今の状態が典型的な脳震盪だと察する。

頭の中からボイジャーの呼ぶ声が響くが、何を言っているのか分からない。

「俺に、ここまでさせるとはな……」

殺気を帯びた声に視線を向けると、幽鬼の男が怒りを露わにしながら、こちらへ近づいてくる。

「認めよう、ジョエル・フリードキン――もう貴様を見誤らない! さあ、死にたくなければサーヴァントを呼ぶがいい!!」

勝利を確信し、高らかに宣言する。

ジョエルは、震える身体を無理やり起こそうとするも、骨折している左腕では身体を支えられず、そのまま顔から地面へ崩れ落ちた。

――動け動け動け動け動け動け……動けなければ、死ぬっ!!!

しかし、いくら身体に訴えかけても、思うように動かない。

生存本能がそうさせているのか、他の音は遠のき、地面を蹴る音が鮮明に耳へ届く。

「……なんだと?」

訝しげな声が聞こえ、重い顔を上げると、幽鬼の男が足を止めていた。

しかもその視線は、自分ではなく遥か上空へと向けられていた。

敵意が自分から逸れたのを感じ、つられてジョエルも見上げる。

「なん……だ、あれ……は……」

上空には、人影がひとつ――。

それは金色の風が吹き荒れる中心で浮遊している。

「サーヴァント……なのか?」

徐々に焦点が合い始め、視界が明瞭になってくる。

ボイジャーではない。

セイバーでもない。

あの長物使いの女でもない。

――新たなサーヴァント。

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