※ジョエルの視点
そして裏手のドアが蹴破られ、新たに三人の兵士が店内へ入ってくる。
リーダーの男も、ようやく事態が好転すると安堵したが、肝心の別動隊が到着する前に、突然奥の方で銃撃が始まった。
ジョエルは、カウンター裏に隠れていたオルハンとセナが交戦に入ったと判断し、眼前の敵を仕留めにかかる。ワイヤーを伸ばしたまま、壁面に向かって直進していき、コートの襟に付いているフードを被った。
「消えた!?!」
直後、リーダーの男の目から、ジョエルの姿がまるで透過したかのように背景へ溶けて消えてしまった。
「魔術で姿をくらましているだけだ! 実体は存在している!」
背広姿の男が大声で助言をしたことで、リーダーの男も多少正気に戻り、耳を澄ませると確かに天井の骨組みから軋む音が不規則に聞こえてくる。
「天井から聞こえてくる音に向かって撃て!」
隣にいる残り一人となった部下に向けて、怒鳴るようにして命令を出す。
命令された兵士も、生き残るために無我夢中で撃ち続けるが、いくら撃っても弾が当たったような手ごたえはない。
すると周りから、またキュルキュルと金属が擦れる音が鳴り響く。
「後ろ!」
いち早く気付いた背広姿の男が声を上げると、リーダーの男と兵士は後ろへ振り返った。
そこには床の上を滑空するかのように、宙に浮きながらこちらへ急接近してくるジョエルの姿があった。
迫りくる死の恐怖を本能で感じ取り、一斉に銃を発砲する。
しかし先程同様、弾丸がジョエルの体を貫通することはなく、コートの表面に展開された『強化』の魔術によって守られる。
ジョエルは天井の骨組みに括りつけたワイヤーを使って、自身を振り子のように運動させ、浮いた駒に標的を合わせた。
懐から大型のサバイバルナイフを取り出し、兵士の喉笛に突き入れる。
血反吐をまき散らしながら兵士が倒れるよりも早くナイフを引き抜いて、すぐ傍にいたリーダーの男へ振り向き様にもう一太刀くわえる。
「んっ!?」
だが、振り上げたナイフからは肉を抉る手ごたえを感じられず、その代わりに何か重たくねっとりとした感触が伝わってきた。
見るとリーダーの男は背広姿の男を盾にしており、その当の本人は両手を前にかざし、不可視の壁でジョエルの攻撃を防いでいた。
――やはり、魔術師か。
今まで聞こえてきた会話や、こちらの攪乱を誰よりも早く見破っていたことから、おおよそ魔術に精通している者だとは把握していた。
さらにこの時期、このタイミングで魔術師に出くわす理由なんてひとつしかない。
ベルトからワイヤー機構を取り外し、ナイフと銃の両方が届く距離を見定めてから、改めて口火を切った。
「聖杯戦争の関係者だな?」