心にデュエリスト魂を持って転スラ世界に・・・   作:風月八泉

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175話 国の分断と篩

 

 

 

 

 

 

 

  △▲△▲ 視点:ダルク △▲△▲

 

 

 重鎮達は席に座り会議という形を取りながらも、周りには大勢の貴族達が所狭しと集まっている。

 一人の貴族と入れ替わって、会議を盗み聞きしながら……王様に仕込んだモノで心の中を覗く。

 

 

 テンペストで箱詰め状態の中からみた街の景色が見える。

 

【属国も或いはわるくないのかもしれぬ、だが――】

 

 町並みを見て、自国よりも豊かで綺麗な作りだったから魅了されたか。

 

「属国などあり得ませんぞ‼ 事実上、ファルムスの消滅ではないか‼」

「我らの立場も保証されぬ上、魔物に従うなど‼」

 

【無理だろうな】

 

 貴族達は好き勝手に言っているが、頭の良い者は口を噤み、王の様子やラーゼンの出方を窺っている様子が分かる。

 

 市民や国を思う者は声を潜めながら、会議の行方を仲間達と見守っている感じの者が多い……混乱している者も多いが、考えなく自身の利益だけを考えて居る者は分かり易く騒ぎ立てている者が殆どだ。

 

「では賠償に応じると? 星金貨一万枚じゃぞ⁉」

「金貨にして百万枚相当、我が国の税収の20%に相当しますな……」

 

 さて、ディアブロの支配下にあるが……無能を晒すか、腐っていても王と呼ばれるだけの行動を起こせるか……どっちかな。

 

「良いか、皆の者。余の考えを聞いて欲しい。此度の戦は失敗であった、余は民の為ではなく己の欲望のために進軍を決めた。賢く、先を見据えた者達からの助言もあったというのに」

 

 エドマリス王はミュラー卿の方をチラ見して、反省するように落ち込んだ声で言う。

 

「兄上、いや王よ。誇り高き王が負けを認めるのですか?」

 

 エドマリス王の実弟である、エドワルド公爵が透かさず責めるように言う。

 

 国を二分割にする重要人物の一人だ……まぁ、こちら側ではないが、上手く乗ってくれて助かるね。

 下手に精神操作をしなくて済むっていうのは、有り難いことだ。

 筋書きはディアブロの考えた通りに進んで行く。

 この場に居る、貴族主義な連中には少しだけ煽るように精神に語り掛けたけど、俺が居なくっても勝手に国が割れてくれそうだ。

 

「フッくくくく……誇りだと? エドワルド……そんなもの、暴風竜の前では塵芥に等しいわ⁉ 居合わせなかった者も聞いたであろう? 余がどのような姿になって帰還したか。同じ目に遭いたいのか?」

 

 肉片のように箱詰めにされた姿を、人の状態と言えない程に異様な状態だった為か、未だに信じられない者が多い中で、実際にエドマリス王の姿を見た者達は軒並み口を噤んだ。

 

 青い顔をして唾を呑み込む音を近くで聞いていた者達も、何も言えなくなる。

 

「誇りも名誉も、幾らあったところで民の盾にはならぬ。だが卿ら全員に貴族としての誇りを捨てよというのは無理な話……魔国の属国に下るという選択肢は選べぬだろう。であるならば我らに残された道は二つ、賠償に応じるか、戦争の継続だ」

 

 そろそろ頃合いだな……。

 

 分身体の兵士に扮した俺を、ワザとらしく場内を慌ただしく走らせる。

 鎧をガシャガシャと鳴らして、異様に焦っている様子を演出しながら。

 

「余が言うのもなんだが……願わくば民のための選択をして欲しい」

 

 エドマリス王が欲深い王だと知っている貴族達がどよめいている。

 

 よし、このタイミング。

 

『申し上げます‼』

 

「なんじゃ‼ 今は大事な……」

 

 席に座っている入り口近くの貴族が声を上げて兵士に扮している俺の分身体を叱る。

 

『お、お許しを‼ ギルドより、最重要緊急伝達書でございます。魔王の勢力圏に大きな変動があったと……』

 

 兵士の俺が声を大にして言うと、誰もが固まったように驚いた表情で俺の話に耳を傾けてくれる。

 

『“人形傀儡師”が死に、“獅子王”と“天空女王”は魔王位を返上の上“破壊の暴君”の傘下へ。十大魔王は八柱となり、これ以降“八星魔王”を称するとのこと⁉』

「オクタグラム……⁉」

「八柱……」

「数が合わぬようだが、あと一人は?」

 

 ミュラー卿が兵士の俺に聞く。

 

『は……傾向が確立していないため、仮の二つ名だと思われますが……“新星”リムル=テンペスト。ジュラの大森林の盟主が“人形傀儡師”を打ち破り、魔王となったとのことです……‼」

 

「「「「「何いいぃぃぃい⁉」」」」」

 

 兵士の俺は思わず吹き出しそうになる笑いを堪えながら、下を向いて部屋を後にする。

 

「……決まりだな、暴風竜以前に魔王リムルもまた、けして侮れぬ脅威」

 

 エドマリス王はそう言いながら、頭に乗っている王冠を外す。

 

「取れる選択肢は、もはや一つしかあるまい。賠償に応じ、余は退位する」

 

 コトンと王冠を机に置いて、近くに座っている実弟を見る。

 

「そして後継者にはエドワルドを推す。この先ファルムスには困難な時代が訪れよう、頼んだぞ我が弟よ」

 

 エドワルドは口角がヒクついて笑うのを必死に我慢している様子だ。

 

「……は、まずは皆の意見を聞かねばなりませんが……異論がなければ、謹んでお受けいたします。兄上」

 

 ここまでは……予定通り進んでいる。

 

 後はアホな貴族主義共を炙り出して、考えの足りないエドワルドと氷漬けにされたカルロス卿を筆頭にしながら、国を真っ二つにするように仕向けていくだけだな。

 

 民の方はヨウム達が居るから良いが、貴族達には上手いこと動いてもらわないと困るからな。ラーゼンやエドマリス王にレイヒムが上手く動いてくれる。

 

 俺は俺で使えそうな貴族や、問題が多そうな貴族主義の選別をしっかりと見極めていかないとだな。

 

 辺境に住む貴族と誤認識させながら、周り居る者達の会話に参加したり、話しかけたりして人となりを見ながら、篩にかけていく。

 しっかりと先見が出来るのか、民の為に動くことが出来る人物か、現状の把握と民を守る為に考えを巡らせられる頭があるか……少なくとも、金儲けや自身の地位しか見ていない者は、即座にエドワルドの陣営に行ってもらうように動く。

 

 

 ミュラー卿やその補佐をしている者達は、エドマリス元王の陣営で決まりだ。彼等はヨウム達との協力に動いてくれるだろう。

 少なくとも、ヨウムとリムル、ウィンの繋がりには気付くぐらいの頭はあるだろうから、心配は要らないだろうがな。

 

 

 

 

 

 

 

 

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