高校3年生の三学期最後の特別試験が終了し、卒業式の前日、試験の結果が発表される。森寧々はDクラスがAクラスに上がれない場合を想定し、綾小路清隆ととある契約を交わしていた。しかし、契約には穴があり、森寧々は退学に追い込まれてしまう。彼女は全てから逃げようと階段を駆け下りるが、足を踏み外して転げ落ちてしまう。激痛、かすれる視界、もうダメだと思いながら意識を手放すと……
なんと、10歳の頃に時が巻き戻っていたのである。

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森寧々主人公のタイムリープものです。
綾小路に嵌められて退学になってしまった森寧々が階段から落ち、過去に戻り色々奮闘しますが、入学するとその学校の組み分けは回帰前と全く異なっており、色々苦労する事になります。


森寧々は階段から転落して過去に戻り、綾小路清隆に復讐を誓う。

私は森寧々。

高度育成高等学校の3年生だ。

 

 

三学期最後の試験が終了し、卒業式の前日がやって来た。今日は先日行ったクラス対抗学級投票試験の結果発表が行われる。

 

 

私は2月頃、担任の茶柱先生の勧めもあり、Aクラスに上がれない場合に備えて幾つかの大学を受験しており、そのうちの2校から合格を頂いている。難関大学では無いが、都心にあって、駅から近くて有名人を多く排出しているそこそこ名の知れた私立大学。そこに入学してしまえば、順風満帆とは言えずとも、平凡で普通の人生を歩めるはずだ。もしかしたら有名人と知り合って、電撃結婚をしてしまう事だって有り得る。玉の輿だって夢じゃない。

 

 

「おはよう、軽井沢さん。」

 

 

「……あ、おはよう森さん。」

 

 

生徒玄関に着くと、そこには軽井沢恵の姿があった。

 

 

「今日は遂に試験結果の発表日だね。絶対に勝って、Aクラスで卒業しようね。」

 

 

私がそう言うと彼女はバツが悪そうな顔で私から目を逸らし、小さく頷いた。そして足早に下駄箱を去り、階段を駆け上がって行った。

 

 

(どうしたんだろう?なんだか様子がおかしかったけど。)

 

 

私は疑問に思いながらも、靴を履き替えて教室へと向かった。

 

 

「おはよう、皆。」

 

 

私が教室の扉を開けると、既に大半の生徒は登校しており、思い思いに試験に関しての雑談をしていた。しかし、その空気は普段よりもどこか重いように感じた。

 

 

それから数分後、教室の扉が勢いよく開けられ、担任の茶柱先生が教室にやって来た。

 

 

「……全員揃っているな。今日は最後の授業日だ。お前達はAクラスとして卒業出来るのかどうか、気になっているのだろうな。」

 

 

「そんなの当たり前じゃないですか。これから発表ですよね?早く教えてくださいよ。」

 

 

「慌てるな池。今説明する。」

 

 

茶柱先生はそう答えると黒板に白いチョークで結果を書き始めた。

 

 

Aクラス 1860CP

Bクラス 1870CP

Cクラス 1790CP

Dクラス 1770CP

 

 

「……え?Bクラスに負けた、の?」

 

 

黒板に次々と書き出されるCP単位の数字を見て、私は唖然とした。今まで幾度となくクラス対決で競って来たBクラスに敗北を喫してしまったのだ。

 

 

「ど、どういう事だよ!俺達は退学者を決められなくて、くじ引きで決めたはずだ!3人の退学者が出る変わり、300CPが入ってくる。そうすれば、俺達はAクラスで卒業出来る計算だったじゃねぇかよ!…ハッ!そうだ、退学者は?くじ引きの結果はどうなったんだ?退学者は誰になったんだよ!なぁ、早く教えてくれよ!」

 

 

「静かにしろ池。驚くのも無理はないが、これは紛れもない事実だ。今から退学者を発表する。」

 

 

そんな私達を茶柱先生は冷静に諫めた。そして、黒板に退学者の名前を書いていく。

 

 

そして、黒板に書かれている名前を見て、私は思わず目をを疑った。

 

 

退学者リスト

 

Aクラス

・軽井沢恵

・山本太郎

・森寧々

 

獲得ポイント 200CP

 

Bクラス

退学者無し

 

獲得ポイント 100CP

 

Cクラス

・橋本正義

・町田浩二

・矢野小春

 

獲得ポイント 200CP

 

Dクラス

・龍園翔

・時任裕也

 

獲得ポイント 200CP

 

 

「ど、どういう事なの?」

 

 

「そんな、退学なんて嫌だよ!」

 

 

私が退学者に選ばれたという事が信じられなかった。だが、それでも私は退学する事は無い。何故なら、私はBクラスの綾小路と取引し、Bクラスに迎え入れて貰う約束をしているからだ。だから大丈夫な筈なのに、何故か無性に心配になる。

 

 

綾小路にクラスの情報を流し、今回の退学者を決めるくじ引きにも細工をし、綾小路に情報を流した。その代わりに、私をAクラスに迎え入れる、そういう契約だ。

 

 

だからきっと、この後茶柱先生は私のBクラスへの移籍について話すはず。クラスを裏切った事は申し訳無いが、Aクラスに上がって望む進路を叶える方が今後の人生において重要だ。

 

 

「静かにしろ。まだ説明は終わっていない。」

 

 

茶柱先生の言葉に、騒いでいた生徒は静かになるが、動揺は隠しきれていない。

 

 

 

「今回の特別試験では、厳正なるくじ引きの結果、Bクラス以外の全クラスから退学者が出ている。このクラスからは3人が退学する事になるが、Aクラスの温情により、このクラスから試験前にBクラスへ移籍した者がいる。該当生徒の名前は────」

 

 

茶柱先生はそこで一度区切り、ニヤリと笑い私の方を見てからこう言った。

 

 

「軽井沢恵。」

 

 

 

「……え?」

 

 

(どうして?)

 

 

「お前はBクラスの生徒となったので、Aクラスとして卒業する事が決定している。おめでとう。ホームルームが終了次第、荷物を持って星之宮のところへ向かうように。進路相談を行う事になっている。」

 

 

その後、私は茶柱先生から退学通知の紙を渡され、呆然としたままそれを受け取った。

 

 

「な、なんで?え?」

 

 

「軽井沢さん、どういう事なの?」

 

 

そんな私の混乱を他所にホームルームは終了してしまった。

 

 

私は教室を飛び出し、Bクラスの教室に向かった。

 

 

「綾小路君!」

 

 

「……どうした森?」

 

 

私は息を切らしながら、Bクラスの中にいる綾小路君の元へ向かった。そして、茶柱先生に渡された紙を彼に見せる。

 

 

「ねぇ、どういう事なの?私をBクラスに迎えてくれるって、そう言っていたよね?どうして裏切ったの?契約書も交したじゃない!私は約束を守った。だから貴方も約束を果たしてよ。」

 

 

私がそう言うと、彼は冷ややかな視線を向け、こう言った。

 

 

「何を言っているんだ?約束は守っただろ。現に森は俺達に負けて、Bクラスに在籍している。退学になってしまった事については、くじ引きを選択したお前達のクラスの奴らを恨むんだな。俺は契約書にも書いている。お前がBクラスに迎え入れられるように支援する、と。現にお前はBクラスにいるから、これ以上の支援は不可能だ。」

 

 

「え……何言ってるの?綾小路君達のクラスに迎えてくれるって言ってたじゃない!!」

 

 

「契約の中にAクラスに上がる事が含まれていない。それに、俺達のクラスに迎えるという契約も交していない。契約書をしっかり確認しろ。そんな契約は交わしていないぞ。」

 

 

 

「そ、そんな……」

 

 

私は膝から崩れ落ちた。そして絶望するしかなかった。

 

 

Aクラスに上がる事は勿論、くじ引きいう運ゲーに負け、退学する羽目になり、綾小路にも嵌められた。私は彼の言葉に騙されてクラスを裏切り、最低の末路を辿る事になった。

 

 

この3年間は無駄な時間となってしまった。私はどうして、こんな事になってしまったのだろうか。私は綾小路を睨みつける。彼はこちらに視線を向けながらも、決して私と目を合わせようとしない。その態度が余計に私を苛立たせた。

 

 

「裏切ったのね?」

 

 

「……勝手に勘違いしたのはお前の方だろ?俺は最初からBクラスに上がる手助けをするとは言ったが、俺達のクラスに迎えるとは一言も言っていないぞ?お前が勝手にそう解釈しただけだろ?」

 

 

確かにそうだ。けど、それで納得出来るものじゃない。私は全てに絶望し、退学から逃げるように走り出した。

 

 

廊下を走り、階段を駆け降りる。しかしその途中、私は階段を踏み外し、勢いよく踊り場まで転がり落ちてしまう。体に激痛が走り、頭を打ったのか、視界がぼやける。頬を涙が伝い、現実に絶望しながら私は意識を失った。

 

 

そして、気づいた時には見慣れたベッドの上にいた。子供の頃、クリスマスプレゼントで買って貰った大きなクマのぬいぐるみ、お気に入りの水色の枕、ベッド湧きには小学生の頃使っていた水玉模様の目覚まし時計が置かれていた。

 

 

「え、どういう事……?」

 

 

私は体を起こして、周囲を見渡す。

見間違えるわけが無い。ここは私の部屋だ。だけどおかしい。私は学校の踊り場で階段を駆け降りていたが、足を踏み外して転げ落ち、意識を失ってしまった。

 

 

なのにどうして自分の実家の自室にいるのだろうか。それも小学生の頃の内装の部屋に。

 

 

「あ、目が覚めたんだね。」

 

 

ドアが開き、母親が部屋に入ってきた。そして私の顔を見るや安心したように胸を撫で下ろすと、優しく微笑んだ。だが、母は随分若く見える。どういう事なのだろうか。

 

 

「え、お母さんなんか若くない?そういうメイク?」

 

 

「何寝ぼけた事言ってるの。まだ熱が下がっていないのかしら?今日は転校して初めての登校日だって言うのに……」

 

 

転校?学校?一体何がどうなっているのだろうか。

 

 

「お母さん、私って今まで何してたっけ……?」

 

 

私がそう尋ねると、母は目を丸くし、それから戸惑いながらも私の質問に答える。

 

 

「お母さんの仕事の都合で東京から千葉に引っ越したでしょ?それで先月まで東京の小学校に通ってたけど……もしかして体調悪い?」

 

 

そんなのあり得ない。だって私はあの学校で3年間過ごしたのだ。それがたった数日で千葉に戻るなんて有り得ない話だ。それも小学校だなんて、一体私は何歳なの?

 

 

「ねぇ、お母さん。私って今何歳だっけ?」

 

 

「もう、何言ってるのよ。先月誕生日を迎えたばっかりの10歳じゃない。」

 

 

(頭が回らない。意味が分からない。)

 

 

だが、これが夢だとしても現実だとしても、私は過去に戻ってしまったらしい。それも小学四年生の秋まで。

 

 

だけど、本当に過去に戻っているのだとしたら、今から勉強を頑張れば、底辺のDクラスに組み分けられる事はない筈だ。

 

 

私はそう考え、必死に勉強をした。今度こそAクラスで卒業し、私を騙した綾小路を退学させる為、復讐する事を胸に誓った。

 

 

そして、高度育成高等学校を担任に勧められ、受験し、見事合格する事が出来た。私は高育近くの駅からバスに乗って高度育成高等学校に向かう。バスの中には見知った顔の生徒が数人乗っており、その中には葛城康平の姿もあった。

 

 

高度育成高等学校の前に到着すると、多くの新入生が生徒玄関で組み分け表を確認していた。私は人を掻き分け、組み分け表の前まで進んでいく。

 

 

(私のクラスは……やったあ!Aクラスに組み分けられた。あんなに勉強を頑張ったんだから、当然だよね。)

 

 

あまりの嬉しさに弾む心を抑えながら、回帰前の主要生徒の所属クラスを確認する。

 

 

まず、前回Aクラスだった坂柳有栖と葛城康平は坂柳がBクラスで、葛城がAクラスだ。

 

 

次に前回Bクラスだった一之瀬帆波は今回何故かDクラスに選ばれている。回帰前と情報が違うが、一体どういう事なのだろうか。

 

 

他にもクラスが変わっている生徒が複数おり、どうやら回帰前の状況とガラリと変わっているらしい。

 

 

そして、私の復讐相手である綾小路清隆のクラスは……

 

 

Cクラスだ。

 

 

(なんで龍園と同じクラスなの?そんなの勝てる訳ないじゃない。クラス分けがめちゃくちゃよ。)

 

 

そう思い、私はもう一度自分のクラスの生徒の名前を確認していく。

 

 

Aクラスには他にも橋本正義、鬼頭隼、戸塚弥彦、真田康生、山村美紀、町田浩二、司城大我と回帰前もAクラスだった生徒の殆どが在籍している。そして、回帰前他クラスで参謀をしていた神崎隆二、金田悟も在籍しており、前回Dクラスだった王美雨……通称みーちゃんもの存在もある。

 

 

この事から、もしかしたらここは回帰前の世界とは別の並行世界……パラレルワールドの可能性がある。オカルト的な事は信じないタイプだが、流石にこの状況は人為的な力を超越した何かとしか考えられない。

 

 

 

正直、クラス分けはめちゃくちゃで、Aクラスの人選は間違っているとしか思えない。だが、それでも私の考えは変わらない。綾小路に復讐するという目的は変わっていない。私は心の中で決意を固め、教室に向かって歩き始めた。

 

 

「おはよう。」

 

 

そう言い教室に入ると、そこには一際眩しいオーラを放つ存在が机の上に足を乗せて優雅に髪を整えていた。

 

 

「うーん、眩しい朝日を浴びる私も美しい。」

 

 

(高円寺六助……お前もこのクラスなのかよ。すっかり忘れていたわ。でも、コイツが居るなら、もしかしたら綾小路と龍園の居るCクラスに対抗出来るかもしれない。)

 

 

そう淡い期待を胸に抱きながら、私は自分の席に着いた。

 

 

これから始まる少し変わった学校生活。

私は回帰前の知識がある分、有利に進められるはず。しかし、回帰前とはクラスメイトが少し変わっており、もしかしたら回帰前の知識が通用しない場面も出てくるかもしれない。それでも、私は必ず綾小路清隆を退学に追い込み、Aクラスで卒業してみせる。

 

 

そう心に誓った。

 

 

それから数分後、一人の男性が教室にやって来た。

 

 

「諸君、入学おめでとう。今から3年間、君たちの担任を務めさせてもらう真嶋智也だ。担当科目は国語だ。この学校にはクラス替えが存在しない。卒業までの3年間、俺が担任として君たち全員と学ぶことになる。これから3年間宜しく頼む。」

 

 

そう言って自己紹介を終えた真嶋先生は、学校説明のパンフレットと学生証、携帯端末を配り、それらについての説明を行っていく。入学前に学校説明のプリントで確認した情報とほぼ同じ事を話し、ホームルームは約15分で終了した。

 

 




氏名     森寧々

所属     1年Aクラス

学籍番号   S01T004733

誕生日    8月24日

【学力】   A-
【知力】   C
【判断能力】 C+
【身体能力】 C
【協調性】  B+


【面接官からのコメント】

中学受験をし、市内でも難関校と言われている中学に進学し、そこでの成績は中位とかなり優秀な生徒である。学校行事には積極的に参加していおり、友人も多い明るい生徒だ。
よってAクラス配属とする。


【担任からのコメント】

学力が高く、明るく努力家で優秀な生徒です。
真面目で大人しい生徒が多いAクラスでは珍しく、コミュニケーション能力がも高い為、クラス間との交渉役になってくれる事を望みます。
Aクラスで卒業できるよう、これからも努力を続けて欲しいと思います。

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