都合が悪くば黙り込む、しょうもなくも愛おしい我が弟子へ   作:すかすかのタキ

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ゼンゼ様、滑稽にテンパっている時も無表情

 そんなこんなでゲナウの目がない時は、森の愛しい動物さんと思う存分戯れて───一級魔法使い第一次試験終了から四日後の朝。受験者達をオイサーストから引き連れて、野を超え山を超え飛行魔法で飛んでいき。

 

 わたしが降り立っているここは、一級魔法使い第二次試験会場にして難攻不落の未踏破ダンジョン『零落の王墓』への入り口だ。

 

 

 一次試験当初、ゲナウは受験者五十七名中、六チーム十八名が二次試験まで勝ち上がってくるだろうと予測した。

 

 尤も、性格が捻に捻くれまくっているやつのことだ。あんな物は、皮肉交じりのリップサービスに過ぎはしない。実際に勝ち上がるのは、精々九名程度だろうとわたしは思っていたのだが───その皮肉が、よもやよもやの大的中。本当に十八人もの受験者が、一気にここまで駆け上がってきてしまったのだ。

 

 いやはや、これは素直に感服してしまったよ。例年になき優秀さにして大豊作、拍手すらしてあげたい心境だ。キャラじゃないからしないけど。

 

 …とまあ、それはいいとして。

 

 ゲナウよ、君は何処に行ったんだい? 姿が見当たらないのだけれど?

 

 君さ、わたしと付き合い長いだろう? 自然や動物をこよなく愛し、逆に都会は苦手な人見知り。わたしがそういう人間だと、ぼにょぼにょ小声でしか喋りきれず、不特定多数の前で試験内容の説明なんて出来ないと。君は十分知り尽くしているだろう?

 

 なのにどうして君は今、ここにいてくれないというんだい!? 一次試験じゃずっと一緒にいてあげたのに、恩を忘れたというのかい!? 受験者十八名分の視線、三十六の瞳が全部! 全部がわたしに向けてまっすぐに、物理的重圧すら伴って集中しているのだけれども!? 

 

 怖い! 知らない人ばっかりで怖い! 最大限無理しても、精々五人がわたしの限界! 知ってる人が傍にいなきゃ、震えて何にも喋れない! 試験官失格って言うにゃ! うわああああセルフツッコミなんて寂しいことをした上に頭の中ですら噛んじゃった! 恥ずかしい! 死にたい!

 

 …あ、まさか。先日わたしが君のことを、うっかり似非エ●ヴィンて呼んじゃったのを気にしてる? つまり全部分かった上での嫌がらせ? 何て器の小さな男だい!

 

 ゲナウよ、再び前言を撤回しよう。君は最低なんかじゃない。魔法使いの歴史上、後にも先にも二度と現れることはない、最低最悪な悪魔そのものの男だよバーカバーカ!

 

 …ああいけない、少々取り乱してしまってた。平和主義者たるこのわたしが、同僚を悪魔呼ばわりはいけないね。落ち着くんだよゼンゼ、深呼吸だ深呼吸。すーはーすーはー。すーはーすーはー。

 

 ようし覚悟は決まったぞ! ゲナウよ、何処でわたしを嘲笑っているかは知らないが、そこでじっくり見てるといい! ちんまいなりに胸を張れ。自信がなくば形から入れ。試験官を過去四回も務め上げた、立派な大人の女として! 君が恥じ入り、一生全てを我が美髪に捧げたくなってしまう、エクセレントな説明をしきってみせようじゃあないか!

 

 ───ここまでに費やした思考時間、およそニ.七秒間。

 

 乱れ狂う脳内を一切表出することなく、ゼンゼは能面のままで淡々と、二次試験についての説明を始めた。          

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