都合が悪くば黙り込む、しょうもなくも愛おしい我が弟子へ   作:すかすかのタキ

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ゼンゼ様、全方位に毒を撒く

「───明日の夜明けには、自動で瓶が割れるようになっている。それが第二次試験の期限となる。

───それでは、試験開始だ」

 

 …ふはああ~緊張した~、どうにか一人でもやりきったあ~…。怒りの生み出す勢いとは、ものすごい物なんだね。無論、事前に考え抜いてたこともある。とはいえ、あんなに長い説明を、すらすら淀みなく言い切れたうえ質疑応答までもを完璧にこなせてしまうとは。

 

 わたし偉い。いい意味で想定外。ゲナウよ、跪いてペロペロ情けなく靴を舐めろ。

 

 一方受験者達はみな、王墓攻略に向けそれぞれ相談を始めている。

 

 あの様子であるのなら、説明中顔が真っ青になってたり奇妙に歪んでしまったり。

 ストレスが掛かった時の悪癖で、毛先をわさわさキモく動かしてしまってたこともなさそうだ。わたし最高。全員で協調してくれてないのは悲しいけども。

 

 ───さて、彼らの合否を見極めるべく、わたしもダンジョン最深部へと赴かなくてはならない訳だが。

 

 手出しは原則禁止といえ、果たしてどのチームに着いていくのが一番の正解だろうか?

 

 これがもし、森や草原を踏破せよという課題を下していたのなら、わたしは一人でまったり進む。動物さんと、戯れながらぬくぬく進む。

 

 けれど、地下深くへと潜っていく、ダンジョンだったらぼっちはねえ? 静かなのは悪くないが、潜っていけばいくほどに、湿っぽくて薄暗くなりそうだし。多分一人だと、寂しくて心細くて泣きたくなってくると思う。ゲナウよ、勘違いするな。君の手だけは借りないからな。

 

 とまあ、そんな人見知りのわたしだが。知らない人ばかりの状況だが。

 それでも時に、積極的妥協を選ぶこともあるのだよ。

 

 けれどさすがは一級試験の生き残り。クセ強そうなのが多いんだよな~。

 

 まずあのユーベルという、切り裂き魔法の使い手は論外。魔法の相性、わたしと最低最悪だし。薄ら笑いの下で一体何を思ってるか、ちっともさっぱり分からないし。怖い、わたしに興味を向けないでほしい。祝福してあげるから、あの金髪メガネ君と一生いちゃいちゃしててほしい。

 

 次。コートのファーが派手派手しい、若作りの銀髪ヤンキー。あれも無理。目つき悪すぎ。歯も尖りすぎ。路上でわんこを蹴っ飛ばしたり、お連れに暴言吐いてそう。平和主義というわたしの信条に、多分真っ向反してる。

 

 ───む? 隣にいるあの少女、もしやレルネン一級魔法使いのお孫さん、エーレ嬢ではあるまいか? なんと、■年前はわたしよりも小さかった子が、一次試験を勝ち上がるまで背も実力も大きくなって───ってうわわわわ、あのヤンキー、エーレ嬢をわしゃわしゃなでてニヤニヤ顔でからかい始めた!? いったい何を考えている!? それは間接的に、いや、最早ほぼ直接、彼女の祖父にして最強の武闘派であるレルネン一級魔法使いへ命の取り合い前提のガチ喧嘩を売る行為だぞ!? 見た目からして戦闘狂っぽいとは思っていたが、予想より遥かにずっと命知らず! 怖い、見て見ぬふりをしておこう…。

 

 切り替えて次。三級の、おへそとゴスロリのメスガキコンビ。

 

「だーかーらーよー? いっしょに行きたいなら行きたいって素直に言えばいいだけじゃねーかこのヘタレ!」

 

「言ーえーるーかー!『次からは敵同士』なんて啖呵切ったのに、こんなあっさり覆すなんてカッコ悪すぎるでしょー!?」

 

 無理。一次からずっとケンカしてたけど、ここでもまだ続いてるし。どうでもいいが、互いに小声で怒鳴り合うとは無駄に器用な真似をするものだ。あ。ゴスロリの子が、おへその子に関節技を掛け始めた。あそこだけ、一級魔法使い試験から一級武闘家試験会場になりつつある。ひええ痛い痛い。あの子達に、同期の情とかは存在しないのか? あまりに容赦がなさすぎる。骨が軋んで肉が千切れかけてる音さえする。グロいのとか無理。関わり合いになりたくない。

 

 ……………………………頭痛くなってきた。

 

 いやね、確かにね? 一級魔法使いという生き物は、現役の者も合格の見込みある者も、優秀な半面奇人率がすごく高いよ? 右を見ても左を見ても、奇人変人サイコパス、バトルマニアのバーゲンセール。さっき自分で言ったけど、それくらいでなきゃ一級としてはやってけない。穏健派にして常識人というレアキャラは、このわたしゼンゼくらいにすぎないね。えへん。

 

 でもさ、さすがにこれは酷すぎる。十八人中、既に四人が異常者だよ。ある程度まともな人による、コミュ障にも優しいある程度まともなパーティー? そんなの編成される余地なんてもうなくない?

 

 いやいやいやいや諦めが早すぎるのはよくないぞわたし。まだまだ未観察の受験者は残ってる。きっとわたしと相性のいい、常識的な組み合わせは成り立つ筈。

 

 …では観察を続けよう。白いマントを羽織った、おっぱいとか身長とか、色々すごいでか女さん。あ、早速ダメだ。あれはとてつもなくキモいやつだ。見た目だけは羨ましいが、ユーベル嬢に次いで無理。わたしも含め小柄で可愛い女の子に、ずっと妖しい視線を送ってる。クールを気取ってるようだけど、目力とか眼球の動きが半端ない。ギュンギュンギュンギュン動き回って、血走りながら美少女受験者を見つめてる。あのさあ、君は一体何をしに、神聖なる一級魔法使い試験に踏み込んだんだ。ナンパか。同性相手へのナンパなのか。実力は確かなようなのに、性癖を抑えきれていないのが残念すぎる。

 

 …うわ、目が合った。怖い怖い、微笑みかけないでくれたまえ! 背中に鳥肌走ってる! あらあらうふふとか言うなむかつく!

 

 ああもう、次だ次! 最初に『また合格者を出さないつもりか』って失礼な質問をしてきたハゲの人。

 

 ………………しまった、緊張で意識できてなかったけどハゲがいた! これまたユーベル嬢並みに、わたしと相性悪いのが!

 

 何度も同じことを言ってるが、魔法とはイメージこそが肝要な世界。そしてわたしは、自分自身の髪の毛を、強化伸縮して戦う魔法の使い手だ。そこにハゲの人が混ざっていたらどうなると思う? イメージ総崩れで、弱体どころか魔法が使用不可能になるに決まっているじゃないか! 下手したら抜ける! ハゲにイメージを引っ張られ、ばさばさーって一本残らず抜け落ちる! 最悪にも程があるよ! ゲナウよ、わたしが二次試験官と知っていながらどうしてこの男を間引いておかなかったんだい? レディに対する気遣いが、全くなっちゃいないんだから。

 

 ……………ねえ、いい加減まともな人も出てきてくれはしないかな? 心が折れてしまいそうなのだけど。ええと、あの髭が立派な片眼鏡のおじいさんは───

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