「良いことを思いついたわ! お金持ちが貧しい人にお金を渡せば、みんな幸せになるわよね!」

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幼馴染の聖女は思想が強い

 俺は転生して、聖女の幼馴染になった。その縁で、様々な話をすることが多い。

 

 彼女は慈愛の聖女として人気だ。回復魔法を使って、多くの人を癒やしてきた結果だ。下手に彼女の不興を買えば、聖女様に嫌われた人間になる。そして、周囲が排斥するようになる程度には、慕われている。

 

 そのため、うかつに愚痴も言えないのだという。だから、俺は何でも聞くことになった。嫌いな人、やりたいこと、好きな食事。それこそ、どんなことでも。

 

 今も、聖女は俺の部屋に入ってきて、勢いよく話し始めた。

 

「ねえ、ルーク。私、みんなが幸せになる手段を思いついたの!」

 

 本気でみんなを幸福にしたいと考える人だから、慈愛の聖女などと呼ばれるのだろうな。まあ、人の幸福を喜べる姿は、俺も好ましいと思う。実際、みんなが幸せになれるとは思わないが。

 

「ミリア、どんな考えなんだ?」

「えっとね、今は全員が幸せとは言えないわよね。富める人もいれば、貧しい人も居る」

 

 そうだな。当たり前のことだ。誰もが平等になることも、公平になることも、人類が人類である限り、難しいだろう。

 

「ただね、みんなが平等に幸せになる方法はあるわ。みんなが同じことで喜んで、楽しい時間を過ごせる方法は」

 

 そんなもの、無いとは思うが。まあ、頭から否定するのは良くない。少なくとも、俺を信用して話してくれているのだろうから。その分、しっかりと話を聞かないとな。

 

「問題なのは、お金持ちと、そうじゃない人が居ること。だからね、解決する手段があるの!」

 

 ……うん?

 

「それはね、お金持ちの人が、貧しい人にお金を配ることよ!」

 

 共産主義じゃねーか!

 

 まずいまずいまずい。この世界は、あまり法律に対する考えが進んでいるとは言い難い。王族が、単なる思いつきで法律を作れる程度には。

 

 だから、ミリアがその気になれば、今の考えを実行する法律が作られかねない。聖女として、王族にも気に入られているのだから。

 

 そうなると、優秀な人も、そうでない人も、同じ給料で働くことになる。つまり、優秀な人の意欲を削ぐ。

 

 というか、現実的に実現は難しいだろう。どうやって、金持ちに富を吐き出させるつもりなのだろうか。そもそも、同じ給料を実現したとして、給料は誰が決めるんだよ。

 

 仮に金銭を自由にできる人間が居たとして、自分だけこっそり金を手に入れる行動をするなんて、簡単に想像できるぞ。

 

 それに、実現しなくても、考えが広がるだけでもまずい。民衆がミリアの思想を知れば、賛成しない金持ちに対して、暴動が起きかねない。

 

 つまりだ。なんとしても、ここでミリアの考え方を変えないといけないんだ。これは難題だぞ。

 

「ミリア、何もしなくても金がもらえるとなれば、働かなくなる人も出てくるんじゃないか? その対策は、どうするんだ?」

「確かに、それは気になるわね。でも、頑張ればもっとお金がもらえるのなら、良いんじゃないかしら!」

「それでは、今と変わらないだろ。正確に言えば、富を持つ人が変わるだけだ」

「だったら、みんな同じ仕事にすれば良いんじゃないかしら。それなら、平等よね?」

「人によって、得意不得意は違うぞ。苦手な仕事をする人と、得意な仕事をする人は平等ではないだろうさ」

「確かにそうね。うーん、きっと成功すると思ったんだけどな」

 

 よし、考えを改めてくれそうだ! これならきっと、大きな問題は起こらないはずだ!

 

「あ、良い考えが思い浮かんだわ! 私だけで最高の意見が出ないなら、みんなで決めれば良いじゃない! そうすれば、きっと良い案もでてくるはずよ!」

 

 民主主義っぽい流れになったな。この国は専制君主制だから、時期尚早だとは思うが。そもそも、民衆がみんな文字を読める国でもない。みんなの意見を集めるのは、難しいだろう。

 

 だから、たぶん実現はされないだろうが。でも、さっきよりは前に進んだと信じたい。

 

「みんなで決めたことなんだから、みんなで従うべきよね。それが、きっと一番よ!」

 

 ……うん?

 

「みんなが国のために全力で頑張れば、きっとみんなで幸せになれるわよね! そこまでしても頑張らない人は、みんなじゃないわ!」

 

 ファシズムじゃねーか!


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