投影魔術はチートに入らない   作:水無月むに

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 まほよコラボが来たので初投稿です。

 書こう書こうと思ってたら前投稿から三週間近く経っていた件。
 原作五巻まで買ったので、そこまでは書きたいなー。



第4話「白い少年と(ベル・クラネル)」

 

 

 

第4話「白い少年と(ベル・クラネル)」

 

 

 

 

 翌日の早朝。

 俺は廃教会(ホーム)近くにある空き地で素振りをしていた。

 

 握るのは木刀ではなく鉄剣、ただし頑丈なだけで何も切れないなまくら。

 物を切るには達人級の腕前が必要で、素人では到底剣としては扱えず、鈍器と化す。

 俺が達人級の剣術の使い手だからこれを握っている──というワケではない。

 これは投影魔術の鍛錬も兼ねた修行。

 解析、補強、投影を滞りなくする為の練習、ルーティーンだ。

 

「────同調、開始(トレース・オン)」

 

 ────基本骨子、解明。

 

 ────構成材質、強化。

 

 ────蓄積年月、補強。

 

 投影を維持したまま、素振りを開始する。

 

 イメージの維持と魔力制御、体の制御を行うので僅かな時間でも、すぐに消耗してしまう。

 俺も最初の方は失敗して魔力暴発(イグニス・ファトゥス)したこともあった。

 幸いな事に師匠のおかげで最悪は免れたので被害は出していない。

 精々、投影していた武器が爆散したくらいだろう。

 

 一通りをこなし、ふと角を見るとぴょこりと跳ねた白髪が見える。

 

「────」

 

 頭隠して尻隠さずというか……顔こそ隠れているが、老人を思わせる特徴的な白髪頭が見えてしまっている。

 

「ベル? 何やってんだ?」

 

 声をかけると白髪頭、もといベルがぴくりと震え、ばつが悪そうに姿を現す。

 ……あれで隠れているつもりだったのだろうか?

 

「ええと、すみません。鍛錬の邪魔をする気はなかったんですけど」

 

 俺はコイツが鍛錬をずっと見ていたことを知っている──というか、あれだけ熱のある視線を見せられたら嫌だって気付く。

 

「あー、基礎くらいなら教えられるが……やるか?」

 

「良いんですか!?」

 

 思った以上に食い付きの良いベルに気圧されつつ、明朝の空き地に二人の鍛錬者の声が聞こえていた。

 

 

 

 汗を流し、朝食の準備をしているとヘスティアが起きてくる。

 

「おはよ〜、二人とも」

「おう、おはよう」

「おはようございます神様」

 

 ぱちぱちと眩しそうに目を瞬かせる。

 どうやらまだ寝ぼけていそうだ。

 相変わらずな神様に苦笑を溢しつつ、顔を洗うように促すと千鳥足で外に向かう。

 

 メニューは釜で炊いた白米、アオサと豆腐の味噌汁に鮭の塩焼き、ほうれん草のおひたし。

 如何にも和食と言ったラインナップである。

 

「これ、見慣れない料理ですけど何処の料理なんですか?」

「極東の国だな。ちょいと知り合いに伝てがあってな、食べさせてもらったことがあるんだよ。そのときにレシピを教えてもらったんだ」

 

 ほへー、と気の抜けた返事をするベル。

 やはり日本人たるもの米や味噌は必需品だろうよ。

 久しぶりに食べた時には懐かしさのあまり泣いてしまったほどだ。

 

「美味しそうな匂いがするぅ……」

 

 そんなことを考えているうちにヘスティアも戻ってきたようなので仕上げに入る。

 

「よし、出来た」

「僕、配膳しますね」

「頼んだぞ」

 

 テキパキとベルが動いてくれて、いつもよりスムーズに料理が終わったな。

 

「「「いただきます」」」

 

 白米を一口。

 うむ、我ながら上手い炊き具合だ。

 釜の白米って何でこんなに美味しいのだろう。

 

 次に味噌汁をすする。

 ……やっぱ赤味噌だよなあ。

 白味噌も嫌いじゃないんだけど、個人的には赤味噌の方が好きだ。

 

「美味しいですっ」

 

 最初に白米を食べて微妙な顔をしていたベルだったが、鮭と米の相性に気がついたのだろう。

 がつがつと食い出した。

 

「おいおい、ベル君。ご飯は逃げないんだからゆっくり食べないと」

「す、すみません」

 

 ベルを叱るヘスティアだって食べる速度は変わらない。

 

「白米のおかわりがあるけど、いるか?」

 

「いる!」「ほしいです!」

 

「はいよ」

 

 二人とも気持ちよく食ってくれて、嬉しい限りだ。

 

 その後は俺も含め、おかわりを繰り返して、多めに炊いたはずの米はあっという間になくなった。

 食べ盛り二人と神様には、ちと物足りなかったらしい。

 

 綺麗になくなった釜を見て、思わず笑みがこぼれた。

 

 

 

◇

 

 

 

 僕──ベル・クラネルはダンジョンに来ていた。

 オラリオに来てから、三日……いや四日が過ぎてダンジョンに入ったのは一度きり。

 それもゴブリンに泣かされて逃げ帰ったという情け無い結果だった。

 けど、今回は大丈夫。だって頼りになる先輩が付いてきてくれるから。

 

 美味しい朝御飯の後、シェロさんに指導をしてくれないかと頼んでみたのだ。

 いくら講習を受けたところでダンジョンは怖いし、先輩に教えて貰いたかった。

 断られるかと思ったけど、意外にも二つ返事で請け負ってくれた。

 

 先頭を歩く先輩──シェロさんに目が行く。

 身長は僕と変わらないくらい。歳も同じ十四歳。

 童顔なところも一緒、だけど女顔の僕と違って、あっちの方がカッコいい。

 

 経歴はまったく違う。

 たった一年で鍛治師と冒険者として大成したシェロさんと、一階層で躓いている僕。

 

 すごいなあ、と思う。

 なんでそこまで頑張れるのだろうとも。

 僕はハーレムを作りたいという動機だけれど、彼は一体どんな思いを抱いてダンジョンへ潜っているのだろう?

 

「────ベル」

 

 シェロさんに呼ばれて思考が現実に帰ってくる。

 目線の先には一匹のゴブリンがいた。

 

 僕の装備はギルド支給の短刀と安いプロテクターのみ。駆け出し冒険者って感じの出で立ち。

 対するシェロさんは腰には打刀を帯び、黒いプロテクターと赤い外套を組み合わせた極東風の装備。

 

 もしも僕が命の危機、具体的には死ぬレベルの事態には対応するけど、基本は無干渉らしい。

 アドバイスはくれるみたいだけどね。

 ちょっとスパルタ気味だけど『いきなりモンスターの群れに蹴飛ばされるよりマシだろ』と笑っているようで笑っていなかったシェロさんが怖かったので文句は無し。

 

 短刀を握り締め、ゴブリンを見据える。

 相手はこちらを発見しておらず、無防備な状態で周りに仲間はいない。

 

「わああああああ!!!!!」

 

 震える足を叱咤するように大声を出し、突進する。

 ゴブリンはびくりと震え、動揺している。

 なんとか対応しようとしているようだけど────

 

 ────遅い!

 

 短刀を突進の勢いのまま、胸に突き刺し、素早く抜いて首を切り裂く。

 吹き出した血がびちゃりとかかって気持ち悪い。

 

「はぁ……はぁ……倒し、た?」

 

 ゴブリンは倒れ伏し、起き上がる気配はない。

 僕のトラウマはいとも容易く屠れてしまった。

 ファルナを授かり、やっと倒せるだなんて、なんだかなぁ、という気持ちになる。

 

「よくやった、ベル」

 

 けれどもシェロさんは褒めてくれた。

 それがどうも気恥ずかしくて、えへへと声をこぼす。

 とりあえず魔石を剥ごうと言われて、ゴブリンから魔石──正確には『魔石の欠片』を取り出す。

 するとゴブリンの死体はたちまち色彩を失い、灰となって崩れ去ってしまう。

 

「反省会は後でにしよう」

 

 水を被り、血を洗い流す僕にそう告げて、シェロさんは目を瞑る。

 ……やっぱり反省点はあるよね。

 少しうなだれそうになるも気合いで補い、次の獲物を探す。

 

 

 

 

 一時間ほどが経過して、僕はゴブリンを九匹とコボルトを七匹ほど倒していた。

 ダンジョン二回目にしては良い成果といえる。

 

 だけど、息も絶え絶えで足が疲労でガクガク震えている。

 戦えなくはないけど、もし今襲われたら大きな怪我をしかねない危険な状態だ。

 先輩の安心感でついついペースを上げてしまったのが原因。

 自分への不甲斐なさでいっぱいになる。

 これでは出会いを求めるのなんて夢のまた夢だろう。

 

 吐きそうになる溜息をすんでの所で止めた。

 これではただでさえ格好悪いところを見せているというのに、先輩への心象は更に悪くなってしまう。

 

「大丈夫か、ベル?」

「だ、だい、大丈夫、ですっ」

「…………ダメそうだな」

 

 取り敢えず水を飲めと水筒を手渡される。

 熱(ほて)った体にキンキンに冷えた水は格別で、グビグビと一気に飲んでしまう。

 

「ぷはぁっ!」

「良い飲みっぷりだな」

 

 くくく、と笑うシェロさんに羞恥で顔が赤くなる。

 は、恥ずかしすぎる。

 

 水を飲んだ後、体力が少し回復していた。

 水に回復薬(ポーション)でも混ぜているのかな?

 そうだとしたらスッゴイ贅沢な事をしているけれど……。

 ぶんぶんぶんと首を降り、考えを捨てる。

 

「ベルも疲れてるみたいだし、そろそろ帰還するか」

 

 その言葉に否を唱えようとして、自分の状態を考える。

 肉体は疲労状態、いくら水で回復しようと長く戦闘は行えない。

 精神的にも疲労しているし、グッドパフォーマンスではない。

 武器はと言えば度々拭ってはいるものの血糊が付き、切れ味も落ちている。

 うん、これは帰った方が良い。

 まだ行けるはもう危ない、なんて聞いた事があるし、これ以上は辞めておこう。

 

「はい、そうしましょう」

 

 そうして僕とシェロさんは帰路に着いた────

 

 

 

 

 

 ────のだが、現在僕たちはモンスターたちに囲まれていた。

 

 ゴブリンゴブリンゴブリンコボルトコボルトコボルト。

 何処を見回してもモンスターだらけ、軽く数えただけでも数十匹は余裕でいる。

 この状況、いわゆるイレギュラーという奴だろう。

 普通はこんなにもモンスターが生まれることはない。

 

 いくつもの目がこちらを殺すと告げている。

 相手は雑魚モンスター、だけどルーキーの僕にとっては致命的なまでの数の暴力。

 僕一人ではこの窮地を脱する事は出来ない。

 

 そう僕一人では、の話だ。

 

「ベル、近くの岩に隠れていろ」

「は、はい!」

 

 先輩の言葉に従い、岩場に隠れる。

 

「後輩に先輩の力を見せるには良い機会だな。よく見ておけ、ベル」

 

 そういうと先輩は、吊るした刀の鯉口を弾く。

 しゃん、と澄んだ鈴の音色と共に刀が引き抜かれる。

 

 美しい。

 

 ダンジョンが発する光を跳ね返す刀身。

 独特の刃文が浮かび上がる暴力的な芸術。

 武器と言うには余りにも美しい魔性の刃に僕は魅せられる。

 

「後輩の前だ。カッコつけないとな」

 

 不敵に笑う先輩は僕の視界から消え去った。

 

 瞬間、またたく無数の閃光。

 それは一つ一つが必殺の威力を持つであろう斬撃であることを遅れて察した。

 大群が一瞬にして瓦解する。

 雑魚相手に第二級冒険者(レベル4)とは言え、この数に無双出来るのは一握りではないだろうか。

 

「────同調、開始(トレース・オン)」

 

 おまけに先輩はまだ本気ではなかったらしい。

 打刀から稲妻が発せられる。

 

「纏わる幻想(グラデーション・ファンタズム)」

 

 魔法の名を告げた途端、打刀は変貌を遂げる。

 

 それは刀ではなかった。

 柄には青い宝石が埋まっていて、単純(シンプル)ながらもカッコいい長剣(ロングソード)。

 けれど、その威圧感は半端な物ではない。

 

「仮想宝具再現展開──邪悪なる竜は失墜し、世界は今、落陽に至る!」

 

 モンスターたちは剣から発せられる威圧に足を止めてしまう。

 

「薙ぎ払え────」

 

 先輩は大剣を構え、振るった。

 

 

 

「幻想大剣・天魔失墜(バルムンク)!!!」

 

 

 

 ────瞬間、眩い光と焼き尽くす熱が爆ぜた。

 洞窟内に暴風が吹き荒び、衝撃が僕を襲う。

 

「ぐっ!」

 

 岩場に頭を抱えて伏せる事で何とか場を凌ぐ。

 数瞬して光と風が止んだ。

 

 恐る恐る岩から顔を覗き出し、絶句した。

 

 居なかった(・・・・・)。

 先程まで僕らを襲わんとした百を超えるモンスターの軍勢が跡形もなく、消えていた。

 文字通り何の痕跡も残さずに、だ。

 まるで幻のようだと感想を抱く。

 

 戦場に立つのは彼ただ独り。

 凄まじい力を見せた大剣は解けて光となり、跡には何も残らなかった。

 

 あれほどの魔法を行使出来るからこその第二級冒険者(レベル4)、そして彼の二つ名────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────【贋作者(フェイカー)】の由来だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






【纏わる幻想】
 グラデーション・ファンタズム。
 武器に解析、強化、変化を施し、投影を被せて補強することにより、擬似的な宝具を再現する技術。
 本物の贋作ではなく、シェロのイメージと収集した情報を骨子に構築した幻想の贋作。
 要はそれっぽい見た目をしただけのパチモンであり、実際の宝具とは関係がない。
 そのため、元ネタとなった宝具とは比べ、良くて5%再現出来ているかどうか。
 あくまで再現率で威力や効果は本来とは異なる。
 真名解放じみたことも可能ではあるが、投影のコストに追加のコストを要求してくる為、コスパが悪い。
 おまけに武器にかかる負荷が凄まじく、使用できるのは極短時間が限度。
 真名解放を行うか、制限時間を超過すると光となって霧散する。
 制限時間は武器の耐久力、宝具との類似性によって変化する。
 
【擬似宝具『バルムンク』】
 纏わる幻想により再現された竜殺しの大剣。
 担い手の膨大な魔力消費と武器が消滅する代わりに、火柱が立ち昇って敵を焼却する。
 竜特攻もあるが、酷く劣化した状態であり、無いよりマシ程度の効果しかない。

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