*2025年9月17日21:48:後半部分を修正
*2025年9月18日;鏡をG.Bibleに訂正。プロットとメインストーリーの設定を混ぜこぜにしてしまいました。混乱を招く表現で誠に申し訳ありません。
『―――へぇ~そうだったんだ、アンドロイドちゃんはミレニアムに入ることになったんだ。あ、今はアリスちゃんだっけ』
「ああ、素直でタフな奴だ。アビドスの新入生に欲しかったか」
『いやいや、本人が行きたいところに行くのが一番だよぉ。でも大丈夫なの?ミレニアムの編入試験って難しいんでしょ?』
「ネストに戻って猛勉強だな。中々苦戦しているらしいとあいつが溢していたぞ」
夜、生徒たちの寝静まったシャーレ。明らかに生徒が起きている時間帯にも関わらず、待ち受けていたようにミシガンは電話に出た。
電話越しから聞こえるホシノの声は相変わらず眠そうで、以前より余裕のある声になった。
『……ねぇ、先生。レイヴンは本当に大丈夫なの?』
「今のところは、な。あいつの仕事を受けるのかまだ悩んでいるのか」
『うん』
未だ火の車の財政のアビドスへ、レイヴンズ・ネストからの
ホシノからのメールに後で電話すると答え、いろいろ後処理の時間を取っているうちにこんな時間になってしまったのだ。最も、それはホシノにとっては好都合だったのかもしれないが。
対策委員会での会議では、シロコとノノミは受ける方向だが、セリカは反対。アヤネもどちらかといえば反対であり、ホシノはまだ保留だった。その相談が、今夜の会話と言うわけだ。
「前に言ったことは覚えているか?」
『“自分の価値を見誤るな”、だっけ。覚えているけど』
「今のあいつには種々の組織の依頼が届いている。それだけ信用という枷があるということだ、そう好き勝手な真似はできないだろう」
『確信は出来ないんだね?』
俺は占い師じゃないからな、ミシガンはそう言いながら椅子に深く体を預け、かつての会話を思い出す。
『目的は、明かせません』
今レイヴンの動きを予測出来ているのは、その立ち回りがかつての腐れ縁と酷似しているからだ。G13自身が何を考え、目的としているのか。恐らく知っているのはゲマトリアのみ。それも含めてホシノは警戒しているのだろう。
その危機感はミシガンも共有するものだ。現状レイヴンが敵対した学園はアビドスのみ。最終的には味方についたとはいえ、金さえ払えばどこにでも味方し、そして敵対するのが独立傭兵という人種。力を持ち過ぎた独立傭兵がなぜ周囲から殊更に警戒されるのか、誰がどう見てもその理由は明らかだろう。
ましてやそのバックにマッドな学者集団がついているとなれば警戒度は跳ねあがる。
こんな状況に人生で
「情が無いわけではないが……自分の任務の優先順位をそれで変えないのが俺の立てているあいつの行動指針だ。お前の懸念は間違っちゃいない」
『うん』
「だからこそ相手のことを知れ、相手の動きを予測で決めつけるのは一緒に酒を飲んでからだ」
『うへ~私お酒飲めないよ?』
「安心しろ、G13の奴も飲めん」
『それ安心できる要素かなぁ?
……まぁでも、分かったよ。今までちょっと警戒しすぎてたかもしれないね。先生もいるんだし』
とはいえ、今ここにいない人の心など分かるはずがない。これ以上は悩んでも無駄、結局ホシノはそう判断したようだ。ミシガンもその結論に異論は出さない、そこらの治安維持組織の100倍強い対策委員会の面々ならば、不測の事態にも対応できるだろうという信頼あってこそだ。
今度G13対策のマニュアルでも送るか、と考えるミシガンの耳に電話越しに伸びをする声とふにゃふにゃしたあくびが聞こえた。
『ありがと、先生。アリスちゃんにもよろしくね』
「おう」
切れた電話をポケットにしまい、処理済みの書類に埋もれて寝ている生徒たちをベットに運びミシガンは外へ出る。温かくなってきた夜風が心地よいと感じた。
「さて、明日から忙しくなるな」
向こう二日分の仕事は終わらせてある。多少延びても当番や常駐生徒で何とかなるだろう。
明日以降にあの問題児だらけのゲーム開発部へどう指導するか考えながら、夜のD.Uへと走り出した。
そして翌日、
「お、おしまいだぁー!!」
狭い部室に少女の叫びが木霊した。
「皆なんなのさ!あっちを見てもこっちを見てもACばっかじゃん!一番先にACを取材したのは私たちなのにぃー!」「不法侵入だがな」
「『ぷぷっ、今時レトロゲームなんて。時代はAC、人型ロボットなんだよ』って、馬鹿にしてさぁ!こっちが予算獲得で四苦八苦してるのにー!」「まずちゃんとゲームを作るべきだな」
「こんなんじゃミレニアムプライス受賞なんて出来ないよぉーーー!」
「いいから喋るより手を動かせ!」「ぎゃーーー!」
俺の拳骨を受けてのたうち回るモモイに、ミドリは同情ではなく呆れの意を込めた言葉を吐いた。
可哀そうなモモイ、ひとえにてめぇがシナリオを思いつけねぇせいだが。
「お姉ちゃん、ここは勢いに乗ってロボットもので行こうよ。お姉ちゃんがアイデア出せないとこれ以上先に進めないよ」
「プ、プログラムの基礎は出来たからあとはモモイのシナリオに合わせて作るだけ、なんだけど……」
「駄目だよ!それじゃダメ!ゲーム開発部はいつからそんな流行りに乗っかる浅い部活になったのさ!」
「まず真っ先にACを見に行ったのはお姉ちゃんでしょ」「ユウカに頭を下げさせてな」
「うぐ……で、でも!ゲームを世に出す以上は、その動きを知るのも重要でしょ!?」
「でも、アポを取らずに不法侵入はダメだよ」
「ユズも!?私に味方はいないのかぁっ!」
「レイヴンさん、凄く怖かった」
「この度は本当に申し訳ありませんでした」
シームレスに土下座に移行するモモイにため息を吐きつつ、壁に貼られたカレンダーを見る。
<二週間後、ミレニアムプライス!!>
ミレニアムサイエンススクールで行われる、いわば開発品の品評会。
ミレニアムで造られたもの全てが審査されるその大会で入賞すれば、ゲーム開発部の廃部は撤回する。それが会計のユウカから提示された最後通牒だ。正確にはAC技術導入により多くの部がプライスの延期を要望したこと、またゲーム開発部には既に
……後者に関しては会計担当の慈悲(曇り一つないG14の泣き落としによるものであることは黙っておく)が多分に含まれているが、彼女の名誉のため黙っておく。
とはいえせっかく得た二週間の命を実に勿体ない使い方をしているのが、目下のモモイである。本当にどうしようもねぇなこいつ。ミシガン直伝不良更生講習を体験させても治らなかったあたり、もうこれは生まれついたものなのだろう。ミドリもいつもの事というような対応であるし。
ゲームに限った話ではないが、物を作るには相応のバックボーンが必要不可欠。今回制作に取り掛かろうとしているテイルズ・サガ・クロニクル2の土台は、何よりもストーリーなのだ。ゲーム性やら何やらを議論する前に、まずはストーリーが無ければ進まないのだ。
前作は世界を邪悪に包み込もうとする魔王を、選ばれた勇者が仲間と共に立ち向かうという遺伝子に刻まれたお手本のようなストーリー構成(大分不純物まみれではあるが)。2もそれが基盤だろうが、何かが足りないらしい。
「……でも、モモイの言う事も分かる気がする」
「先生が手伝ってくれたおかげで全体はまとまったけど、何か一押し足りない気がします……先生には申し訳ないですけど、このままやっても入賞なんて、一ミリも想像できない」
「世間はもっぱらACの話題ばかり、ゲーム業界でも波に乗ってロボットものがこぞって発売中だ。プライス受賞が目的とはいえ、この時勢で王道のゲームを出してもな」
厳しいことは分かる。とはいえゲーム開発素人のミシガンにはこれ以上助けてやれることがない。あとは三人の頑張り次第だ。それでアリスがミレニアムに来れるかどうかが決まる。
「……やっぱり
「
何か思いついてしまったのかモモイ、やるんだな、今ここで!
「そう。マキのハッキ……独自調査により分かったの。全てのゲームクリエイターが夢見る、ゲーム開発における聖典!それがついに見つかったって!」
「そ、それって……」
「そう―――」
「G.Bibleを取りに行こう!!」「どこにだ?」「セミナーの保管庫だけど?」
ドゴン!!!
部室に雷が落ちた。
―――
ミレニアムの部室棟に雷が落ちた事件を、クロノスハイスクールが真相を報じていた頃。
ブラックマーケットから外れた、とある学校の自治区内のビルの一角。
爆発や発砲騒ぎも少なく、キヴォトスではそう多くはない清閑な地区に建つその小綺麗なビルの一室には、どっさりと積まれた赤本の山に一人の少女が埋もれかけていた。
買われたばかりで付箋も少ないその赤本の山は、全て合わせればミレニアムの編入試験問題の過去10年に出た試験問題を全て網羅している。
「お疲れ、アリスちゃん。ミルクティー買ってきたよ」
「カヨコ……せんぱい!ありがとうございま、あれ?」
ビル一階のコーヒー専門店から紙袋を携えたカヨコ
「なんだか足音が多いです」
「せいかーい!くふふ、久しぶりアンドロイドちゃん!」
「わっ、ムツキがポップしました!」
「あれ、先輩は?私先輩なんだけど?ていうかポップ?」
「社長とハルカもお久しぶりです!」「おーい?」
「元気そうで何よりだわ、アリス」
そしてアリスの視界には、カヨコに続いてムツキ、アル、ハルカが歩いてきているのが見えたのだ。
「どうして皆さんがここに?アリスはカヨコさん以外は来ないと聞いています」
「それがさー、アルちゃん予約してた依頼を知らないうちに別の依頼とブッキングしててー」「ムツキ!!」
「ご、ごほん。そういうわけだから、私たちもあなたの試験勉強を手伝えるようになったのよ」
「パンパカパーン!便利屋の皆さんが仲間になりました!」
ここはレイヴンズ・ネストが買い上げたビルの一室。既に大きくなったネストは、こうして建物を借りたり、土地を買ってそこに建造物を造ったりなどの不動産を増やしている。ミレニアムとの契約により卸す商品や事業規模が大きくなった為、工場などを増設している方針を立てた。
今回アリスの勉強部屋として使っているここは、将来傭兵たちの駐屯所として使用する予定の空き部屋だ。
「それにしても、流石ミレニアムの試験だね。見てるだけで頭が痛くなってくるよ」
「カヨコちゃんがそうまで言うの~?……ってうわ、なにこれ、『特殊相対性理論と一般相対性理論の基礎』……これホントに高校生のやる授業なの?」
「あ、アリスさんは、これ、どこまで覚えるんですか」
「出題範囲は明記されないので、ここにあるものを全部が目標です」
聞いた四人は唖然として赤本の山を見る。彼女らにはその赤色が、今までこの試験を突破できなかった者たちの無駄に流れた血と汗の滝のように見えた。
ゲヘナって割と優しいボーダーラインだったんだなと、四人はなぜかここで母校の懐の深さを覚えた。でも万魔殿の議長の顔は思い出せなかった、仕方ないね。
「ミレニアムって理系のイメージが強いけど、こう見ると文系科目も多いのね」
「元々、『千年難題』という難問を解き明かすために集まった先輩たちが、ミレニアムの始まりだそうです。千年難題は古語による問でもあるので、文系科目も軽視しないのがテストの傾向だそうです」
「アリスちゃん、頭痛くならない?大丈夫?」
「テイルズ・サガ・クロニクルに比べたら論理的なので問題無いです」
赤本をペラペラと捲るアルの疑問につらつらと答えるアリス。入試ではこういったことも前提に問題が組まれることが多いため、アリスは既に記憶している。それにアリスはアンドロイド、人では覚えるのが難しい範囲でも何とか解けるのだ。
まぁ、クソゲーを煮詰めに煮詰めたTSCとかいう外れ値には滅法弱かったが。
プルプルプル
「あ、私のだわ。……レイヴンからじゃない」
「レイヴンからですか!?」
着信音に反応してアリスが勢いよく立ち上がる。
『陸八魔アル、か?』
「レイヴンですか!もうお仕事は終わったんですか!?」
『AL-1S?なぜ、そこにいる?』
「ああいや、私たちがアリスの方にいるのよ。ほら、もし仕事の余裕が出来たらアリスの勉強を見てほしいって言ってたでしょ?今ちょうど余裕が出来たから、アリスの方へ来たところなのよ」
『そう、か。協力感謝、する』
パタパタと腕を動かすアリスに微笑む便利屋68。これアルちゃんの時によく見たな。
「レイヴン、もうお仕事は終わったんですか?また会えるのはいつになりますか!」
『いや、まだ終わる、目途は、ない』
「そう、ですか……」
が、打って変わって沈んでしまうアリス。これは依頼を失敗した社長と同じだな。
「ねぇレイヴン。ミレニアムと契約して忙しいのは分かるし羨ましいけど、今受けてる仕事ってそんなに長期の依頼なの?あなたの体調もあるし、一旦休むついでに戻ってきたら?」
『依頼は、途中で、投げれ、ない。信用に、関わる。お前なら、分かる筈、だ』
「それはそうだけど……」
隣で萎むアリスを見て、アルは悩む。
この子にとってレイヴンの存在は大きい。ゲーム開発部や先生がいるとはいえども、それは信頼できる存在。文字を教え言葉を教え、社会的なことを教えたのは全てレイヴンだ。
何でもないようにこなしているが、きっと内心は辛いことだろう。先の見えない不安と今まで自分を見てくれた人がいない孤独に耐えるのは、例えアンドロイドであろうと容易くはない。
「ねぇーえレイヴンくん。アリスちゃんだって頑張ってるのに、仕事が仕事がって言うのはダメな夫の典型だよ~?仕事だけ出来る人間なんて、ムツキちゃんつまらないと思うな~?」
『……俺は、夫では』
「ど、ドラマで見たことあります。子どもの誕生日に、し、仕事で祝えなかった父親が、子どもだけじゃなく周りからも人が離れていくという……あ、いえレイヴンさんの事を馬鹿にしたわけではなく!」
『……』
予想外の方向からダメ出しを受け、口が固まるレイヴン。おかしい、自分はただアルに経営の練習になるような仕事(本人の希望による)をやってもらいたかっただけなのに。
「落ち着いてハルカ。……私も十日以上も投げやりなのはナシだと思うよ。アリスだって私が帰った後も勉強してたんでしょ?レイヴンがいつ帰ってくるかも分からないのに、たった一人で」
こくり、とアリスが頷く。
「受験勉強なんだから、遊ぶ余地を残さないのは分かる。
けど、これじゃアリスが不安に押しつぶされるだけ。ここまで頑張ってるんだから、相応の報酬を渡すべきなんじゃないの」
カヨコの鋭い言葉が受話器を刺す。ここまでアリスが頑張ってきた様子を一番間近で見ていた彼女の言葉は、相応の重さを伴って吐かれていた。
それに対するレイヴンの返答は。
『……これは、俺の、古い、恩人の依頼、なんだ』
「恩人?」
『ああ。AL-1Sには、悪いが、これだけは、譲れない』
だが。言葉が続く。
『だが、AL-1S。お前が、無事に、試験に合格、したら、その時は』
「はい」
『……俺が、出せる、最高の報酬を、お前に渡そう』
「最高の、報酬?」
『それまで、頑張れるか』
数瞬の黙考。そうして、アリスは電話に答えた。
「――分かりました。AL-1S、全力で任務を遂行します!」
「くふふっ」「あ、あう。その……」「……問題無さそうだね」
『お前たちも、アリスを頼む』
「ええ任せなさい!背中を押すのも、アウトローの流儀よ!」
切れた電話をしまい、陸八魔アルはアリスに向き直る。
「さぁアリス、編入試験まではあと1週間。ここからは便利屋68総員で、貴方の面倒を見てあげるわ!」
「ありがとうございます、アル社長!」
「それじゃ、社長も一般相対性理論の勉強しようか」
「へ?」
そうして追加メンバーも交えた便利屋一同とアリスは、来たる編入試験へ最後の追い込みを行うのだった。
キヴォトスでも最も難しい編入試験とされる、ミレニアムの編入試験。果たしてアリスは合格できるのだろうか。
(そういえば、レイヴンの用件ってなんだったのかしら?)
―――
同時刻、ミレニアムプライスまで一週間と一日になろうとしていたところ。
ミレニアムサイエンススクール、ミレニアムタワー最上階。
セミナー、保安室。
「どうしたんだいユウカ。そっちから呼び出して来るなんて、珍しいじゃないか」
「お疲れ様です。ウタハ先輩。いつも呼び出してますが?作業中スマホを見てないから毎回こっちから行ってるんですよ!?」
全く、とため息をつくユウカ。AC技術導入によりいつも以上に忙殺されているが、相応の利益を期待以上に出しているため、肌艶は良くなっている。
ふと、隣に見慣れた姿を見たため向き直った。
「うん?チーちゃん?」
「ウタハも呼び出されたのね。まぁ、予想はしてたけど」
各務チヒロ。ミレニアムにおけるハッカー集団「ヴェリタス」の副部長。今は部長不在のために部長を兼任している苦労人だ。
情報開示と閲覧の自由を掲げているヴェリタスは、情報統制を主軸に置くセミナーとは水と油。だというのに実質的なその部長が、どうしてお騒がせ者の自分と一緒に保安室まで呼ばれているのか。
その答えは扉の向こうからやってきた。
コツコツと、苛立つような間隔の短い足音。合わせて鳴る、
「ああ?なんだ、もう全員揃ってたのかよ」
美甘ネル。
スカジャンを羽織ったメイド服という奇妙極まる出で立ちを、しかし馬鹿にする生徒はいない。
C&Cという表向きはメイド部を装った、真実はセミナーの特殊エージェント部隊。ネルはそのリーダー、コールサイン00を背負うトップクラスの存在なのだ。
「ちょ!ど、どうしたんですかネル先輩」
「どっかであたしの悪口が聞こえたんだよ、文句あっか」
「やっぱり気にしてるんだね」「だから牛乳飲めばって言ってるのに」
「聞こえてんぞ!!」
失礼。突然暴れたネルに早速肝を冷やしたユウカだったが。頭もまた冷えたままに説明を続けた。
「手っ取り早く説明しますよ。
ミレニアムタワーにゲーム開発部が襲撃を仕掛けて来ると情報がありました」
「マキのPCをのぞき見したら、デスクトップに『セミナー襲撃計画』って書かれてたから、私がセミナーに密告したわけ。大方、
「まさかあんな急にねじ込まれるとは思いませんでした……まぁ、リオ会長ですし……」
「?ていうか、なんでヴェリタスのお前がセミナーに加担すんだ?」
「あの子たち、こともあろうにACを使って襲撃に参加するつもりだったのよ。これでタワー破壊なんてことになったら、ミレニアム全体に無視できない損害が出る」
チヒロがセミナー側に付いたのはそうした訳で、ヴェリタス三馬鹿がハッキングしてくるAC軍団には、チヒロが当たるとのこと。ついでにセミナーのシステムも強化してくれるらしい。
「セミナーにとっては願ったり叶ったりだね。それで私が呼ばれたのは?」
「ウタハ先輩には、セミナーの使う防衛兵器のアップデートをして欲しいんです。チヒロ先輩だけでは手が足りないので、まとめてハッキングされない程度に改修をお願いしたいんです」
「ゲーム開発部の子たちが襲撃に来るのは?」
「今夜です」
「猶予は無いか……一つ質問をいいかい?」
「はい」
「ゲーム開発部には入部を希望している生徒……アリスというアンドロイドの子がいると聞いた。その子が来る可能性は?」
「それは、難しいと思います。アリスちゃんの受ける編入試験は明日ですから。ここで行動を起こすのは、あまりにもリスキーです。何よりレイヴンさんがそういった行動は許可しないでしょう」
「……分かった。依頼を受けるよ。面白い子たちだったんだが、仕方がない」
ウタハには防衛兵器の改修を依頼。個人的には気は進まないが、オーダーに応えるのもマイスターの仕事だ。
「で、あたしらはゲーム開発部の防衛ってことだよな。でもよぉユウカ、あたしの個人的な用事までキャンセルしてまで、あたしを呼び出すほどのことか?正直アスナたちだけでも十分だろ」
「さっきも言ったように、マキたちのハッキングしてくるであろうACへの対処もあります。万が一にもサーバーを破壊されるわけにはいきません。それと」
「「「それと?」」」
「……可能性は低いですが、先生があちらに着くかもしれないからです」
あぁ、とウタハは息を付いた。ゲーム開発部だけならひよこの突撃だが、後ろにライオンがいるかもしれないとなれば怖い。実際怖い。
「先生?噂のシャーレの大人だろ、なんでそんなにビビるんだよ?」
「ネル先輩は長期任務で知らないんでしたね……
着任早々に敵戦車へ乗り込んで運転手たちをいボコボコにしてそのままタンクジャック。その後もD.Uの不良を直々にぶちのめしてはシャーレへ強制収容、おまけにアビドスではカイザー理事を掴んで飛んでアスファルトへ叩きつける!」
「私も正気を疑ったよね、まさか榴弾を素手で投げれる大人が外にいるとは思わなかったよ」
「え、ウタハそれホントなの」
「事実だよ。私もこの目でしっかり見てしまったからね」
改めてあの人ホントに人間なのかと目を合わせてしまう三人。あれでもうすぐ古希って冗談でしょ、普通に力自慢の生徒のパワーを超えてるんだが?
「マジかよすげーな!!そんな先生が来るのか!?」
なお相手をすることになるであろうネルはこの反応である。さっきの気だるさはどこいったんだ。
「あ く ま で、可能性です!そもそも生徒会襲撃なんて、先生が許すはずはありませんし」
「ただ向こうも切羽詰まった状況ではあるから、見逃しが妥当なところだと見てる」
「例え先生の助けが無くても、あの子たちは来るよ。G.Bibleは彼女たちにとって、それほど重要なものだからね」
「なんだ来ねーのかよ。まぁ、それならそれでいいけどよ」
エンジニア部、ヴェリタス副部長、セミナー。そして、C&C。
対するはヴェリタスの部員たち。そしてお騒がせ者のゲーム開発部たち。
「来るなら来いよ、全力で叩き潰してやる」
約束された勝利が、不敵に頬を吊り上げた。
Q.何が始まるんです?
A.セミナー襲撃(難易度Torment)だ。