深海提督雪風が目を覚ますと、身体が飛行場姫となっていた。
夢だからか思考が深海棲艦の物へと変性していく。
この世界で出会った艦娘は、どうやら仮面ライダーに変身するようで。

深海提督雪風改め、飛行場姫は一億倍にまで跳ね上がったステータスで艦娘を沈める……はずだった。


この小説は雪風に転生しました。これより深海棲艦の指揮に入ります! ……どうして? のエイプリルフール企画です。
IF世界なので本編とは一切関係ありません。

考えついたものの、物語上でこれは手に余ると判断したとも言う。
精神汚染を受けているため、本編の雪風と性格が違います。

本編はこちら↓
https://syosetu.org/novel/339415/



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ア艦これ×仮面ライダー

 

「酷い夢でした……」

 

 全身びしょびしょ。

 起きた後は罪悪感で胸が潰れそう。

 夢の中とはいえ、わたしは艦娘に何をしてたのだろう。

 

 深海棲艦の提督をしているわたしは、壁に手を付いて扉を開けた。

 

「大丈夫、雪?」

 

 不意に掛けられる言葉。

 制服を着た黒髪の三つ編みをした女の子。

 わたしはその姿に飛び上がって腰を抜かす。

 

「ひぃ、艦娘!?」

 

「本当にどうしたの? 深海棲艦の提督でも、雪は艦娘でしょ?」

 

「雪……、だよね。わたしは雪風。そう、陽炎型駆逐艦の雪風」

 

 荒い呼吸を抑えるのために、わたしは自分の胸に手を置く。

 深呼吸すると段々落ち着いてきた。

 そう、わたしは雪風。決して深海棲艦じゃない。

 深海提督だけど深海棲艦じゃない。

 わたしはほっと息を吐いて、時雨を見上げた。

 そんなわたしに時雨が聞いてくる。

 

「悪い夢でも見たの?」

 

 時雨の言葉にどう返そうかと悩む。

 あれをどう言えばいいだろうか。

 はっきりとした答えを返すため、夢の内容を思い出してく。

 

 *  *  *

 

 気が付くと広大な陸地が広がっていた。

 視線がいつもより高い。

 手を見てみれば白い。真っ白な死人の色。

 

 頭にノイズが走る。

 艦娘を滅ぼせ。人間を滅ぼせ。世界を我が手に抑えろと。

 わたしは頭を抑えて異変に気付く。

 なんだ、このゴツゴツした感触は。

 先が尖っていて、触られていると実感できる。これじゃまるで。

 

「ドウカシマシタカ、飛行場姫様」

 

「飛行場姫、ダト?」

 

 声を聞かれた場所に目をやると、ヲ級が顔を覗き込んできていた。

 飛行場姫。

 飛行場姫といえば、多くのMMDでは深海棲艦のボスとして扱われているキャラ。

 違う、わたしは。

 わたしに……名は……。

 わたしの……やるべきことは。

 

 ブラック鎮守府を潰して……。

 違ウ。

 

 人間たちの野望を潰して……。

 違ウ。

 

 危険因子を排除して……。

 ソウダ、危険因子ヲ。

 

「オ忘レデスカ? 我々ハ人間ヲ滅ボスノデス」

 

 ヲ級の言葉に頭がすっきりとしてくる。

 ソウダ、ワタシノ目的ハ人間ヲ……滅ボスコト!

 ソノタメニ、深海棲艦ヲ率イテイル。

 

 周囲を見てみれば数えるのも馬鹿らしくなる深海棲艦の数。

 その誰もがフラグシップ、黄金の炎を漲らせている。

 まるで光り輝くススキの高原だ。

 先ほどわたしに話しかけてきたヲ級もそうだ。

 全身から黄金の炎をはためかせ、目から青い炎を燃焼させている。

 

「人間ヲ根絶ヤシニシ、我々ガ世界ヲ取ル」

 

「ソウデス飛行場姫様! 我ラハ数億モノ、万夫不当ノ豪傑タチ。ソシテソレヲ率イル貴女様ハ通常ノ姫ニ比ベ、ソノ力ハ約一億倍以上。我々ガ勝テヌ道理ハアリマセヌ」

 

「フフフッ」

 

 わたしの口はわたしの意思で笑う。

 そう、いつもの声で。いつもの調子で。

 いつものような笑い方でわたしは笑う。

 

 そう。

 これだけの数がいるのなら、人類を滅ぼすなど容易い。

 艦娘は人間に言いように使われている。

 だから、わたしが助けないと。

 みんなみんな沈めて、海に真の平和を、取り戻さないと。

 

 わたしには今、その力がある。

 一億倍に跳ね上がったわたしの力に、敵う人間など誰もいない。

 

 わたしは拳を握る。

 ヲ級の言葉にフラグシップの深海棲艦たちが雄たけびを上げた。

 

「そうはさせないわ!」

 

 陸地の向こう側。

 こちらへと歩いてくる、四つの小さな人影。

 

「誰ダ!」

 

 ヲ級の言葉に答えるかのように、影がその姿を現す。

 白いセーラー服に黒い帽子。

 彼女たちは全員、制服にⅢのバッジを付けていた。

 そしてなぜか、その内のひとりが見たことのあるベルトを付けている。

 あの艦娘たちは……そうだ。

 

「暁型1番艦、暁!」

 

「同じく、ヴェールヌイだよ」

 

「雷よ!」

 

「はわわ! 電なのです!」

 

 第六駆逐隊。

 ただの雑魚だ。

 ただの雑魚たちなのだが。

 しかしどうして雷は、仮面ライダーのベルトを付けている?

 変身でもするのか? 

 

「フッ、タダノ駆逐艦デハナイカ。貴様ラニ何ガデキル! 行クゾッ!」

 

 ヲ級の掛け声に深海棲艦たちが皆黄金の炎を噴き出し、突撃していった。

 そんな中、わたしは腕組みをしながら突っ立っていた。

 

「油断スルナ! 場合ニヨッテハ駆逐艦ノ方ガ厄介ダ!」

 

 わたしは知ってる。

 もしも艦娘が艦娘以外の力を使う場合。

 戦艦や空母なんかよりも駆逐艦の方が強くなる。

 

「来るわみんな! 変身よ!」

 

 暁はその手に持つ、ヘビの柄が付いた紫のカードホルダーを突き出す。

 空中から現れたベルトが暁の腰に装着された。

 あれは王蛇か?

 

 カメンライド! 

 ヴェールヌイはシアンの銃にバーコードのカードを差し込む。

 ディエンド。

 

 ドードー! 

 雷はゼツメライズキーをベルトに押し込む。

 仮面ライダー雷。

 こいつが一番弱いな。

 

 電はあわあわとしていて、何もしなかった。

 

「「「変身!!」」」

 

 暁は腰のバックルに紫のカードホルダーを挿入する。

 鏡の像が自身に投影される。

 

 ヴェールヌイは銃の引き金を空へ向けて放つ。

 混ざることのない複数の世界に存在する自分が、ひとつへと収束される。

 

 雷はベルトを叩いてキーを起動した。

 持ち上がったカマキリの赤い触脚が雷を覆う。

 

「気ヲツケロ。紫ガ毒、青ガ召喚、赤ガ電気ヲ放ツゾ!」

 

 わたしは全軍に命令を飛ばす。

 元ネタのままならばの話だけど。

 暁は王蛇に、ヴェールヌイはディエンドに、雷は雷に変身した。

 

「海の平和を守る! それがわたしたち艦娘よ! さぁ、祭りの始まり!」

 

 暁の掛け声に三人は深海棲艦の激流へと逆らっていく。

 電だけ変身してない。

 あいつ、もしや変身出来ないのか?

 なら、あいつは放っておいてもいいか。

 暁が叫ぶ。

 

「電も!」

 

「無理です! 電は強くないし、ベルトも自由に出せないのです!」

 

「沈んだ敵も助けたいんでしょ!」

 

 電は頭を抑えて悲鳴を上げている。

 よくよく見て見れば、電だけ普通の艤装を付けてきている。

 わたしは言う。

 

「無駄ダ! 絶望シテ沈ンデ行ケ! ソウスレバ、ソノ身ハ深海棲艦ヘト変ワルダロウ!」

 

 艦娘は人間を攻撃できない。

 ならばみんな深海棲艦になった方が良い。

 深海棲艦になれば、人間を攻撃できる。

 意味無く虐げられることもない。指示を聞くこともない。

 艦娘を助けるために、まずみんなを深海棲艦に墜とさないと。

 

「飛行場姫様! コノ程度ハ我ラニ任セテクダサイ!」

 

 ヲ級が杖を振るうと、頭の艤装から爆撃が飛んでいく。

 

 ソードベント! 

 

 天空から暁の元へドリルのような剣が降ってくる。

 

 ヴェールヌイはドライバーにカードをスキャンさせた。

 

 カメンライド! 迅! 

 カメンライド! アビス! 

 

「ypaaaaaaa!!」

 

 ヴェールヌイの力でこの場にさらに二人のライダーが現れる。

 忌々しい。本気で忌々しい。

 アビスは確か、ディケイドに出てきたサメ。

 わたしたちにはおあつらえ向きの相手だ。

 

「ソイツラハ機動力ニ優レテイル! 特ニピンクノ奴ハ空ヲ飛ブゾ! サメハ二体、モンスターヲ召喚スル!」

 

 案の定、迅は空からの遊撃。

 アビスは二体のサメを呼び出し、深海棲艦を食らいだした。

 ネオディエンドの呼び出した仮面ライダーは必殺技を撃ってくる。厄介な点だ。

 

「雷の本気、いっくわよっ!」

 

 絶滅ディストピア!

 

 雷の拳から赤雷が迸る。

 突き出した拳は深海棲艦の群れに穴を穿つ。

 フラグシップ級の深海棲艦がポップコーンみたいにはじけ飛んでいる。

 

 雷は出番が少なかった。

 わたしの中では赤雷による攻撃しか記憶にない。

 

「ッチ、小癪ナ!」

 

 わたしは散り行く仲間に目を背ける。

 甲板に真っ赤なタコ焼きを乗せ飛ばす。

 飛ばしたタコ焼きが暁たちに降り注ぐ。

 味方の深海棲艦だけは絶対に巻き込まない。

 みんな元々は艦娘なのだから。

 艦娘は大切にする! 

 

 艦娘が大切だから、艦娘だけを沈めてやる!

 特撮特有の爆発と吹っ飛びを見せて、暁たちは変身解除に追い込まれた。

 

「所詮ハ無駄ナ足掻キ。大人シク沈ミナサイ」

 

 わたしは嘲笑う。

 絶望的な差を見せつければ、諦めてくれるかもしれない。

 だからわたしはいくらでも悪を演じよう。

 それが艦娘のためだ! 

 

「暁お姉ちゃん! 響お姉ちゃん! 雷お姉ちゃん!」

 

 ボロ雑巾のように転がる姉たちに、電は悲痛な叫びをあげる。

 その場で蹲っている。

 

「電には、やっぱり電には無理だったんです!」

 

「心配セズトモ、同ジ場所ニ送ッテアゲル。ドウセミンナ、海ノ底ヘト沈ムノ」

 

 わたしの言葉に頷き、戦艦たちが一斉に砲門を電へと向ける。

 電は放心していて動かない。

 ただ顔をボロボロにしながら、戦艦たちの砲を見ている。

 

 大丈夫、すぐに楽にしてあげる。

 艦娘にそんな顔は似合わない。

 わたしは腕を降ろす。

 

「「電!」」

 

「……」

 

 電が目を瞑る。

 そして爆炎の桜が咲き誇る。

 黒煙がもうもうと立ち昇る。

 

 言葉もないヴェールヌイと雷。

 ネ級とタ級がその頭を踏んづける。

 

「止メロ! 艦娘ヲ甚振ルナ! 痛クナイヨウ沈メテヤレ」

 

 わたしはヴェールヌイと雷の頭を踏むネ級とタ級に激を飛ばす。

 振り向いた二人は、わたしに嫌悪の顔を向けていた。

 別にいい。

 わたしにどんな感情を向けようと、ね。

 

 でも、拷問だけは絶対に許さない。

 仲間になる子を甚振るのは特に、ね。

 

 黒煙が晴れていく。わたしは目を見開く。

 その先で電を庇うようにして、レディがひとり倒れていた。

 

「暁!」

 

「暁姉!」

 

 響と雷の悲鳴が広がる。

 蹲っていた電は目の前の現実を否定するかのように身体を持ち上げた。

 口をパクパクとさせ、震えたままの手を伸ばす。

 暁はそんな電を優しく迎え入れた。

 弱々しくも意思の宿る小さな手で、電の頬を撫でていた。

 

「大丈夫? 電」

 

「暁お姉ちゃん! なんで電を!」

 

「妹を助けるのが、お姉ちゃんだもん。ごめんね、戦いが好きじゃない電を連れて来ちゃって」

 

「そんなのは良いのです! ダメです暁お姉ちゃん! もう喋らないで!」

 

 泣き出す電の頭を暁が優しく梳いている。

 

 美しい姉妹仲だ。

 感動的だ。

 だが、安心してほしい。

 みんな深海棲艦にしてあげる。

 そうすればまたみんなで会えるから。

 暗い暗い海の底。

 苦しくない楽園にすぐにでも。

 

 わたしはヲ級を見る。

 ヲ級はわたしに「タダチニ」と恭しく畏まる。

 そして、ヲ級は杖を振りかざした。

 

「鬱陶シイ。者共、早ク終ワラセロ。飛行場姫様ガ機嫌ヲ悪クサレテオラレル」

 

 もう一度戦艦たちの砲門が電へと向く。

 今度は空母ヲ級たちも一緒。

 頭の艤装から天を覆い尽くすほどの艦載機が電へと迫る。

 

「電! くっ、邪魔!」

 

「そこをどいて! 電のとこにいけない!」

 

 ヴェールヌイは引き金を引いてもう一度ディエンドへと変身する。

 雷に群がる深海棲艦たちに発砲。

 助けられた雷も同じく変身して電へ駆け寄る。

 

 でも、もう遅い。

 

 世界がゆっくりになる。

 暁は自分の胸をドンと叩いた。

 その手で注射でもするかのように、電の胸に軽く拳を突き立てる。

 

「でもね、電。本気になったあなたは誰よりも強くて優しいの。沈んだ敵も助けるんでしょ。だったら、躓いてる暇ないじゃない」

 

「暁お姉ちゃん!」

 

「深海棲艦から海を取り戻すの。私たちが、平和な世界を取り戻すの。お願い電。この海に……へい……わ……を……」

 

 その言葉を最後に、暁の手がだらりと力なく垂れさがる。

 見て分かる。

 あれはまだ死んではいない。

 ただ気絶をしているだけ。

 

 往生際が悪い。

 

 砲撃が鼓膜を叩く。爆撃機が爆弾を落とす。

 まだ、まだこの攻撃が残っている。

 ヴェールヌイと雷じゃ間に合わない。

 深海棲艦の攻撃から電と暁を守るには遠すぎる。

 

 着弾の刹那。

 電の表情が変わるのをわたしは見た。

 暁を掴み、艦娘の力で遠くへ投げる。

 巻き添えを受けないよう遠くへ。

 

 何かを決意して立ち上がった。

 

 でももう着弾する。

 それは正しく雷迎の轟き。

 爆発の衝撃が大地を揺らす。

 白い雲は吹き飛ばし、黒いキノコ雲が天へと昇る。

 わたしは口に入った砂利を吐き出す。

 

 その中から電が姿を現す。

 服は見る影もなくボロボロで。その立ち姿はもう立っているのもやっとに見えた。

 付けていた艤装はところどころ融解している。

 頬を何度も涙が伝っている。

 だがその瞳に宿る闘志は、今までの数万倍にも膨れ上がっていた。

 

 わたしは自分でも驚きなくらい、険悪な顔が出てくる。

 

「マズハ褒メテアゲル。ケド、姉ヲ犠牲ニシテマデ生キ残ッテ何ニナル。海ノ平和ヲ守レタトシテ、オ前タチハ人間タチニ迫害サレル。人間ノタメニ戦ッツテモ、ソノ先ニオ前タチ艦娘ノ未来ハナイ!」

 

 そうだ。お前たちは歴史から迫害を受ける。

 小学生のころ、小学校で教えられたのはお前たちが兵器だということのみだ。

 戦争を引き起こす、人間たちの忌々しい負の遺産。

 わたしはそうやって教えられてきた。

 

 実際終戦後、お前たちに待っていたのはなんだ?

 名誉か? それとも記念物か?

 違う。

 お前たちに待っていたのは解体か、地上の太陽だったはずだ。

 

 どれだけ人間のために戦おうと、お前たちに未来などない。

 そうだ、未来なんかない。

 

 電の歩みは止まらない。

 その目には、わたしの問いなど意にも返していなかった。

 

「確かに電は弱いです。艦娘としてダメダメで、なのに沈んでしまった敵も助けたくて。その結果がこれです。でも、電たちは人のためだけに戦っているんじゃありません。電を信じてくれる、暁お姉ちゃん、響お姉ちゃん、雷お姉ちゃん、みんなのために戦うのです!」

 

「世迷言ヲ。ソンナ未来ハ来ナイ。人間ガイル限リ、ソンナ未来ハ永遠ニ訪レナイ。ムシロ今、コウシテ深海棲艦ガ存在シテイル方ガ平和ナノダ」

 

「いいえ必ず、艦娘と人間、深海棲艦で手を取り合える未来が来るはずです!」

 

「アァソウダ。故ニ、共に深海ヘト身ヲ落トシ、人間ヲ滅ボソウ。争イノナイ深海棲艦ダケノ世界。ソレハ艦娘ノ幸セニモ繋ガル!」

 

「電たちの幸せは電たちが見つけます! あなたのその考えこそ、あなたが忌み嫌う人間そのものです! 艦娘の幸せを勝手に騙らないでください!」

 

 キノコ雲の中から何かが飛来する。

 あれは電の艤装の残骸? 

 その残骸は細かな粒子と化し、電の腰へと纏わりつく。

 

 粒子が再び形成されていく。

 マゼンタカラーベルトに。

 中央にある小窓を囲うようにライダーのクレストが描かれている。

 あれはまさか。

 

「暁お姉ちゃんの思いを無駄にはしません! 電が必ず海を平和にして見せます! 沈んでしまった敵を、電が、電たちが助け出すんです!」

 

 あぁ、何も知らない子どもだ。

 本気で世界が平和になると信じている。

 人間の愚かさを知らない。

 

 それゆえに眩しい。

 わたしが子どもの頃は……、なんて思ったものだ。

 当時の方々には申し訳ないのだけどな。

 

「聞コウ。貴様、イッタイ何者ダ」

 

「海の平和を守る艦娘です! 必ずまた、今度は友達として会いましょう!」

 

 カメンライド! 

 ディケイド! 

 

 複数の透明なフィルムが現れる。

 確かな形を作るかのように。

 溢れた涙を仮面で隠し、フィルムはひとりのライダーを現像する。

 ライダーベルトから現れた世界を結ぶプレートが、頭へと差し込まれる。

 腰のブックを剣に変形。

 マゼンタカラーのライダーは、その刀身を手で磨いた。

 

「私ハ争イヲ無クスタメ、艦娘ヲ仲間ニスルタメ! 私ハ艦娘ヲ沈メル!」

 

「電は沈んだ敵も助けたいです! だからあなたも助けます!」

 

「出来ルモノナラヤッテミロ! コノ数、オ前ヒトリデドウニカデキルワケガナイ!」

 

「数なら電も負けません!」

 

 カメンライド! オーズ! 

 フォームライド! ガタキリバ! 

 

 数千以上の軍勢。

 それにひとりで立ち向かくべく、電も50人まで分裂する。

 

「止メロ深海棲艦共! ソイツハ無限ニ増殖スル! 一匹タリト逃ガスナ!」

 

 これは……。

 まずい、嫌な予感が脳を焼き尽くす! 

 こいつだけはここで止めないとダメだ。

 じゃないと本気で全滅する! 

 

 ガタキリバ。

 それは田んぼを覆い尽くす蝗害。

 圧倒的数の暴力。

 どんな強敵でさえもその牙の前では骨と崩れる。

 

「これで決めます!」

 

 カメンライド! オーズ! 

 フォームライド! ガタキリバ! 

 

 増えた電たちが、さらにカードをスキャンする。

 

 カメンライド! クウガ! アルティメットフォーム! 

 カメンライド! アギト! シャイニング! 

 カメンライド! 龍騎! サバイブ! 

 カメンライド! ファイズ! ブラスターフォーム! 

 カメンライド! ブレイド! キングフォーム! 

 カメンライド! アームド響鬼! 

 カメンライド! カブト! ハイパー! 

 カメンライド! 電王! ライナーフォーム! 

 カメンライド! キバ! エンペラーフォーム! 

 カメンライド! ディケイド! コンプリート! 

 

 その後も続々と流れていくカメンライド音声。

 ゲームセンターを思わす爆音が戦場を支配する。

 

 なんだと?

 

「陣形変更! 奴ラトマトモニ戦オウトスルナ! 耐久戦ダ! 皆、何トシテデモ生キ残レ!」

 

 わたしは全力で号令を飛ばす。

 ヲ級がわたしを見る。

 その顔は何も分かっていない。頬をだらしなく落とし、余裕そうな表情である。

 

「飛行場姫様。具申デスガ、今ハ兵ニ防衛戦ヲヤラセルワケニハ……」

 

「ウルサイ! オ前モダ! 必ズ生キ残レ!」

 

 カメンライド! エグゼイド! ムテキゲーマー! 

 

 失敗した失敗した失敗した!!

 こんなのに勝てるわけがない。

 わたしたちに出来るのは、ガタキリバの体力ギレのみ。

 素直に付き合うんじゃなかった。

 変身前に攻撃するべきだった!

 恐怖がわたしの思考を冷静にしていく。

 

 カメンライド! グランドジオウ! 

 

「なのです!!!!!!」

 

 カメンライド! オーズ! 

 フォームライド! タジャドル! 

 

「ソイツニ攻撃シテモ無駄ダ! 下手スレバ紫ノ奴ヨリ強イ!」

 

 カメンライド! クウガ! 

 フォームライド! ライジングアルティメット! 

 

「ソイツニモ近ヅクナ! 遠距離カラ攻メロ!」

 

 カメンライド! エグゼイド! 

 フォームライド! ノベルゲーマー! 

 

「戦闘能力皆無ダガ、現実改変能力持チダ!」

 

 カメンライド! 電王! 

 

「ソイツハ知ラン! ダガ警戒シロ!」

 

 カメンライド! ジオウ! 

 フォームライド! ジオウⅡ! 

 

「ソイツハ未来予知ト局所的時間停止ヲスルゾ!」

 

「先ホドカラ何ヲ……仰ッテ」

 

「アレヲ見ロ!」

 

 わたしの指さした先、青色の炎を纏うレ級が黄金のムテキゲーマーに一撃で破壊されていた。

 どれだけ攻撃をしても全て無敵で弾かれて。

 歩みを止めることもできなくて。

 その速さは輝く流星の如く。

 レ級が一秒で砲身を向けるころには、もう既に千発の攻撃が叩き込まれている。

 まさに最強。その意思が折れない限り、奴を倒すことは不可能。

 ヲ級が唖然とする。

 

「アソコニイル奴ラハ皆、似タコトガデキルンダ!」

 

 わたしの言葉にようやくヲ級も事態の深刻さを理解したようだ。

 目を見開いて明らかに狼狽を隠しきれていない。

 名のある最強の豪傑共が、ただの雑兵のように沈んでいく。

 そんな光景にヲ級は二度、三度見。

 しかし次第に口は乾いた笑い声を出すかのように、にぃと引き延ばされていく。

 

「ソウダ、本体ヲ倒セバ」

 

 そんなことに希望を持っていたのか。

 心苦しいけれど、わたしは言わなければならない。

 

「アイツラハ、アレ全テガ本体ダ。誰ヲ倒シテモヒトリ生キ残ッテイル時点デマタ増殖スル!」

 

「ソンナ無茶苦茶ナ!? ソンナコトスレバ、イズレ限界ガ」

 

「ドウヤラ、ソレモ難シソウダ」

 

 体力ギレなんて誰だって思い付く。

 わたしだって思い付く。

 なんたってエグゼイドムテキゲーマーの攻略方法は、変身させないことだから。

 他にもムテキキラー、オーマジオウ、バールクス、ゼインといるだろうが、そんなのうちの深海棲艦にはいない。

 そんなムテキがヴェールヌイと雷を守っている時点で、わたしたちには何も出来ない。

 クロノスのような絡め手を使えない。

 おまけに、

 

 カメンライド! ブラック! 

 カメンライド! ブラックRX!

 

 あいつらがいる。

 あれは変身者の能力だから無いだろう。

 けどもしも、その時不思議なことが起こった、なんかされたらわたしは立ち直れない。

 いや、元よりノベルゲーマーがいる時点で詰んでいる。

 あれは変身者の望む未来にする能力。

 エグゼイド、小説版限定フォーム。

 

 カメンライド! ギーツ! 

 カメンライド! ゼロワン! リアライジング! 

 

「チャンスダ! ソノ黄色ト水色ノ奴ヲ動カセ! ソイツガ穴ニナル!」

 

 とは言うが、案の定というべきか、変身した電たちは物凄い。

 万夫不当のフラグシップたちが、電たちの一蹴りで地平線の彼方まで飛んで行く。

 瞬間移動したり、一面凍らせたり、時間止めたり、加速したり、召喚したり、燃やし尽くしたり、ビーム出したり、やりたい放題。

 昭和と令和ライダーの力を考えると、やっぱりバールクスじゃ無理だ。

 

 一秒立つ頃にはフラグシップが百隻以上沈んでいる。

 万や億の軍勢が居ても、一分立つ頃には6000隻も沈むこととなる。

 こんなの、どう相手にすればいいって言うのか。

 本当に耐久出来るのか。

 

「生キ残レ! 必ズ、生キ残ルノダ!」

 

 指示を飛ばしたところで、どうにもならないものだってある。

 数ある電のひとり、ディケイド21がわたしに接敵する。

 

「これで決めます!」

 

 ファイナルアタックライド! 

 ディディディディケイド! 

 

 無数のカードがわたしに狙いを定める。

 飛び上がった電はカードを潜るたびにキックの威力を上げていく。

 しかもホーミングしてくるし。

 21なのに激情態仕様かよ。

 

 逃げられない。

 眼前にまで迫る電。

 わたしは両腕をクロスさせて衝撃に備える。

 

「グウウウウウッッ!!」

 

 キックの衝撃がわたしの腕を突き抜ける。

 少ししてあることに気が付いたわたしは、腕を大きく振り被る。

 電が弾かれる。

 仮面の下がどんな表情をしているのか分からない。

 分からないがどうにも困惑しているようだ。

 

 そしてわたしも困惑していた。

 ディケイドコンプリート21の必殺技を受けておいて、擦り傷程度で済んでいる? 

 はっとわたしはヲ級の言葉を思い出す。

 

『貴女様ハ通常ノ姫ニ比ベ、ソノ力ハ約一億倍以上』

 

 そうか。

 わたし、装甲も体力も一億倍以上あるんだ。

 相手が最強フォームだったから、つい。

 心が負けを考えていた。

 わたしは電に拳を突き出す。

 

 インパクトの直前。

 瞬間移動でムテキゲーマーが割り込んでくる。

 だがわたしはムテキゲーマーごと、電を殴り飛ばす。

 ダメージは無いだろうけど。

 

「ダメ……まだ……」

 

 電の変身が解除された。

 数百以上の英傑が一瞬にしていなくなる。

 流石にあんな無茶苦茶を通したからだろう。

 ヴェールヌイと雷が電を抱きとめに行く。

 自己修復を遥かに通り越した疲労は、その身を蝕んでいる。

 電は口から大量の紅を吐く。

 

 電はヴェールヌイと雷に支えられながら両膝と両手をつく。

 途絶えることのない戦意で、残り百程度となった深海棲艦を見据える。

 相手は死に体なのに。

 なぜだかそれが怖くて仕方ない。

 でもわたしは自己暗示のため、高らかに笑う。

 

「ド、ドウヤラガス欠ミタイネ。ソウダ、アンナノヲズット維持デキルワケナイ!」

 

「こはっ……かはっ!」

 

「モウ呼吸スルノモ辛イ? 大丈夫、スグ楽ニシテアゲル。私ハ強敵ヲ拒マナイ。楽ニナッテ、今度ハ私タチト共ニ行キマショウ」

 

 わたしは電に近付いていく。

 僅かに残った深海棲艦を連れて近づいていく。

 うん、艦娘と深海棲艦は表裏一体。

 取って取られて終わらない将棋盤。

 

 本当は怒りたいけれど。でも、これから仲間に成るのだから。

 だったら怒りはいらない。

 

 視界の端でヴェールヌイが立ち上がった。

 その手に持っているのは大量のカード。

 

「電、私の力も使って」

 

「響、お姉ちゃん?」

 

「悔しいけど、あれと戦えるのは電だけだから。ここまで戦ってくれた妹に、まだ戦ってもらうなんて。姉として不甲斐ないけど」

 

 ヴェールヌイは電にすべてのカードを押し付ける。

 電は震える手でカードを手に取る。 

 

 ヴェールヌイのディエンド能力、電のディケイドの能力。

 そのすべてのカードがひとつに集う。

 

 あそこまで疲労していて変身できないかもしれない。

 でも、変身できるかもしれない。

 

 もし変身されたら、わたしは間違いなく沈む。

 いや、このさい変身できる出来ないはどうでも良い。

 速攻で沈めないと、わたしたちに平和は訪れない!

 

「変身サセル隙ヲ与エルトデモ!」

 

「それくらい、作って見せるさ。妹が頑張っているのに、姉が頑張らないわけにはいかないだろう?」

 

「当然よ! 電、しっかりやりなさい!」

 

 ヴェールヌイが前に出る。

 雷も鼓舞するかのように、電の背中を叩いて矢面に立つ。

 

「ドケッ、邪魔ダ! 私モ行ク! 深海棲艦タチ、電ニ変身サセルナ! 変身サセタラ沈ムト思エ!」

 

「暁お姉ちゃんが繋いでくれた。響お姉ちゃんが託してくれた。雷お姉ちゃんが励ましてくれた。電はもう誰にも負けません! あなたを助けます!」

 

「止メロォォォォォ!!」

 

 ヴェールヌイの持つカードと電の持つカードが重なっていく。

 全ライダーの力がひとつになっていく。

 光り輝く黄金の灯。

 その炎に焼かれたカードは、やがて一枚のカードとなり、電の手に落ちる。

 全ライダーの力を手にし、過去と未来を繋ぎ、並行世界を歩むその名は。

 

「電は海の平和を守る艦娘だから! 変身!」

 

 カメンライド! 

 

 電の変身の余波でわたし以外の全ての深海棲艦が吹き飛んだ。

 わたしは立ち尽くすしかない。

 わたしの仲間たちが沈んでいった。

 全員、沈んでいった。笑うしかない。

 わたしに付き従ってくれたヲ級ももういない。

 わたしはもう、ひとりぼっち。

 もう、歩く気すら起きない。

 眼前にいる存在は、わたしなんかよりも遥かに強大で。

 

「電の本気を見るのです!」

 

 ファイナルアタックライド! 

 電が飛び上がる。

 眼前へと迫るキックを前に、わたしはなすすべなんか無くて。

 

「オノレ、オノレ艦娘ゥゥゥゥ!!!」

 

 だけど、それも良いかもしれない。

 もう深海棲艦はわたししかいない。

 他の深海棲艦たちは、今頃艦娘となっていることだろう。

 ならば最後のわたしが消えれば争いは消える。

 そしていつか。

 

 最後、わたしの視界に映ったのは白い――

 

 *  *  *

 

 そこでわたしは目を覚ました。

 全身汗でびしょびしょ。

 もし、もしあの一撃が当たっていたら……。

 ア艦これ怖い。

 

 なんてことを思い出す。

 どれだけ鮮明に思い出そうとしても、どれだけどんな答えを返そうか考えても。

 わたしにはこの一言しか思いつかなくて。

 しっかりと時雨を見上げ、はっきりと口にする。

 

「酷い夢でした!」

 




暁が王蛇の理由:王蛇の弟の名前、王蛇の俳優さん。詳しくはシャンゼリオンで。

ヴェールヌイがディエンドの理由:響鬼は主役ライダーだから。不死鳥のライダー多くない?

雷が雷の理由:名前。

電がディケイドの理由:ディケイドでガタキリバやりたいなと思ったから。

本編で没の理由:言わずもがな電が手に負えない。敵でも味方でも。ガタキリバからのひとり平成ジェネレーションは負ける気がしない。バールクスでも、多分無理。
平成ライダーを無効化しても、昭和ライダーになられたら意味がない。
そして一番の理由が艦これ×仮面ライダーは、作者的に長続きしなさそうだなと感じたため。


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