ダンジョンにボンゴレ十代目が行くのは間違っているだろうか   作:薔薇餓鬼

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申し訳ありません。今回はクロームとティオナの戦いをやるつもりでしたが、次回に引き延ばします。

今回はあの男の登場。そしてあんまりいい話ではありません。ご了承下さい。


標的(ターゲット)160 操り人形(マリオネッタ)

 

 

 

 

 

 

────ツナ&クロームサイド

 

「ボス。ごめん、駄目だった……」

 

 幻術で欺く事に失敗した為、少女は申し訳なさそうな表情を浮かべながら謝っていた。

 クローム(どく)()。10代目【ファミリー】の霧の守護者にして幻術使いである。見た目は普通の少女であるが、過去に交通事故に遭い内臓が失われており、自分の幻覚の力で作った内臓で延命しているという特異な少女である。

 

「気にするな。これも想定内だ」

 

 クロームの幻術は並大抵の者では見破る事はできない。それに自分が幻術が使えるという事が知られている時点でフィンが対策を立てない筈がない上に、個々の絆が強い【ロキ・ファミリア】であれば欺く事ができない可能性は考慮していた。

 

「どうでもいい!! てめぇら全員、血祭りにあげてやる!!」

 

 想い人(フィン)の姿を利用されて事でティオネは目を血走らせ、殺意を剥き出しにしていた。

 

「こんな単純な手で冷静さを欠くとは。都市最強【ファミリア】の幹部が聞いて呆れますね」

 

「あぁ!?」

 

 第3者の挑発によって、ティオネは周囲を見渡すが、それらしい人物が見当たる気配がなかった。

 するとクロームの肩に乗っていたフクロウが翼を羽ばたかせ、宙に浮く。

 霧フクロウ(グーフォ・ディ・ネッビア)。クロームの(ボックス)アニマルである。クロームはムクロウと命名した。

 

「ですが悲観する事はありませんよ。貴方のような愚かな者は嫌という程、見てきましたから」

 

「ティ、ティオネ……あ、あれ……!?」

 

「はぁ!?」

 

 するとクロームの肩に乗っていたフクロウの左目が赤く染まり、六という文字が刻まれ、流暢(りゅうちょう)な言葉を話していた。フクロウが当たり前のように人語を話す光景にティオネとティオナは、驚愕を禁じ得なかった。

 

「何の用だ(むくろ)?」

 

 六道(ろくどう)(むくろ)。10代目【ファミリー】のもう1人の霧の守護者であり、他人の体を乗っ取る事ができる禁弾、憑依弾を製造した【エストラーネオ・ファミリー】の生き残りである。

 かつて憑依弾を使用し、ツナの体を乗っ取り、マフィアの殲滅と世界中の要人の体を乗っ取り、世界規模の大戦を引き起こそうと企むも、ツナに敗北。そして【復讐者(ヴィンディチェ)】によって牢獄に投獄されたが、D(デイモン)・スペードとの戦いで尽力した事で出所が認められた。

 今、ムクロウが喋っているのはムクロウ自身が喋っているのではなく、ムクロウに憑依した骸が喋っているのである。

 

「仕事の経過報告に来ただけですよ」

 

「……首尾は?」

 

「簡単でしたよ。プライドと欲望だけ高く、自分が無能な存在だという事実から目を背け、他人の足を引っ張るだけの存在。僕が何度も見てきた愚かな人間達と同じでしたよ。僕のスキルを使わずとも、勝手に本性を露にして自滅してくれましたよ。あれでよくベル・クラネルを責められたものですよ」

 

「殺してないだろうな?」

 

「しませんよ。あんな連中、殺す価値もない。まぁいいトレーニングになりましたがね」

 

(な、何か怖い……!?)

 

(な、何のよこいつら……!?)

 

 得体の知れない喋るフクロウを当たり前のように受け入れ、不吉な会話を交わすツナと骸を見てティオネとティオナはおぞましさを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時間は少し遡り。骸がムクロウに憑依する前。

 

「てめぇ!! 今のは俺がトドメを刺しただろうが!!」

 

「ふざけんじゃねぇ!! 手柄を一人占めしようとしてんじゃねぇ!!」

 

 冒険者達の側には倒した怪物(モンスター)のドロップアイテムが落ちており、ドロップアイテムの所有権を巡って口論していた。

 

「雑魚の癖に偉そうな口利くんじゃねぇ!! 万年Lv.1の落ちこぼれ野郎が!!」

 

「てめぇ!! 人の事を棚に上げてよくそんな口が聞けたな!!」

 

「ま、待て!! 俺はそんな事、言ってねぇ!!」

 

「てめぇしかいないだろうが!!」

 

「ガハッ!!」

 

 自分が喋っていない筈なのに、なぜか自分の声で相手を罵倒した事に慌てふためく。しかし罵倒で頭の血が登った冒険者は慌てふためく相手の冒険者を殴った。

 

「てめぇやりやがったな!!」

 

「ゴハッ!?」

 

 しかし殴られた冒険者も黙っていられる筈もなく、冒険者を殴り返した。そしてそこから本格的な喧嘩が始まった。

 するとドロップアイテムは霧のように消えていくが、頭の血が登った冒険者達は気づかず殴り合いを続けるのであった。

 

「本当に救いようがない人間達ですね」

 

 するとその様子を骸が冷めた目で見守った後、元の姿に戻って路地裏へと去って行く。先程の武装した怪物(モンスター)は骸が幻術で創造したものである。

 冒険者達が偽物の怪物(モンスター)を追いかけるように仕向けさせ、同時攻撃を放ったところで、死んだように見せかけ、どちらが倒した分からないようにさせる。そうなれば懸賞金目当てでダイダロス通りに来ている冒険者達は、ドロップアイテムの所有権を巡って口論になる。後は冒険者が化けた骸が冒険者の声を真似し、罵倒しプライドを刺激する事で殴り合いに発展させたのである。

 

「仮にも都市の危機というのに、都市の事よりも自分に泥を塗られた事が優先するとは。分かってはいましたが、やはり我々の世界と同じくこの世界にも醜い人間しかいないようですね」

 

 骸は先程のようにLv.が低く自分のプライドを傷つけられる事を嫌う冒険者を見つけ、裏で操っていた。だが誰も仕組まれたものだという事にすら気づかず、骸の掌の上で踊らされていた。

 これはツナのアイデアではない。というよりもツナではこのアイデアを思いつく事すらなかった。これは人間の事を誰よりも愚かで醜い事を知り、ツナ達の世界でもトップクラスの術師である骸だからこそ思いつき、実現できた事である。

 

「てめぇ!! 手柄を独占する為に怪我したフリをして嘘の情報を流しやがったな!!」

 

「な、何の事だ!?」

 

「とぼけんじゃねぇ!!」

 

「ガハッ!?」

 

 怪我した冒険者に成り済ました骸が、他の冒険者に武装した怪物(モンスター)の偽情報を流した。そして情報が嘘だと分かった途端、冒険者は嵌められたと勘違いし、本人(オリジナル)を殴ってしまう。

 

「どけ!! これは俺のもんだ!!」

 

「るせぇ!!」

 

「ゴフッ!?」

 

 ある者達は幻覚でできたドロップアイテムを落として置くだけで、勝手に争っていた。高額な懸賞金欲しさに完全に我を忘れてしまっていた。

 損失回避の法則。人間は自分の手に入る物を失う事を恐れるという心理。懸賞金目当てダイダロス通りにいる大半の冒険者は他派閥と折半するよりも、独占する事を望んでいる。そうばれば何としでも独占を図ろうとする。実際、懸賞金を独占しようと多くの【ファミリア】は結託せず情報の共有を行っていない。

 基本的にオラリオの【ファミリア】同士の仲は悪い。なぜならオラリオは英雄の都。英雄になろうとやって来た者ばかり。故に自分以外の他人など蹴落とすべきライバルでしかない。他派閥なら尚更。しかも冒険者達は気性が荒い者達が多い為、衝突するのは自明の理である。しかし街中で抗争など起こされては困る為、戦争遊戯(ウォーゲーム)が存在しているのである。

 他の場所でも骸は冒険者の欲望やプライドを刺激し、利用し、冒険者同士を争わせるように仕向けていた。そして大半の冒険者が利用されているとも知らずに争っていた。

 

「これでよくベル・クラネルの事を非難できたものですね」

 

 今回のベルが非難されたのは、内容は緊急時に利益を優先した事。そしてベルが短時間で【ランクアップ】した事に嫉妬していた冒険者達は、今回の騒動に便乗してベルを非難した。にも関わらず今、多くの冒険者達は懸賞金を手に入れる為に他者を迷いなく攻撃した。あれだけベルの事を非難していたのにも関わらず。

 かつて【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】は冒険者を名乗る者達全てに圧倒的な力による洗礼を浴びせた。だがそれは下界の救済の為に1人でも多くの英雄を産み出す事が目的であった。

 しかしベルを疎ましく思っていた冒険者の中には、徒党を組みベル以外にも有能な人材である者に洗礼を与えていた者達が少なからずいる。しかし【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】とは違い、自分よりも有能な人材に対する妬みと、自身のプライドを塗られた事への逆恨みによる洗礼。幻覚によって露になった本性を見て、呆れ果ててしまっていた。

 

「何やってんだてめぇら!! おかしいって事に気づけよ!!」

 

 一方で1人の中年の人間(ヒューマン)の男が争い続ける冒険者達に向かって叫ぶも、頭に血が登った冒険者には男の声は届いていなかった。

 モルド・ラトロー。【オグマ・ファミリア】所属の冒険者であり、【噛犬(ルフィアン・ドッグ)】の二つ名で知られているLv.2冒険者である。

 モルドはかつて最速でLv.2になったベルに逆恨みし、洗礼を与えた人物である。とある1件でベルの勇姿を目にし、ベルへの評価を改め、今ではベルのファンになっており、【アポロン・ファミリー】の戦争遊戯(ウォーゲーム)の賭博では【ヘスティア・ファミリア】に賭けていた。今回、ベルが他の冒険者を攻撃した事で住民や冒険者が非難する中、モルドはベルの事を擁護していた。

 モルドも決して頭のいい人間ではない。ベルと出会っていなければベル、非難し目の前の冒険者のように争っていただろう。だがあれだけベルの事を非難していた冒険者がベルと同じく手柄欲しさに殴り合っている光景を見て、流石に違和感に気づく。

 

「……おかしい」

 

 モルドと同じくフェルズの魔道具(マジックアイテム)、幻想花を使って幻覚を見せていたナァーザも違和感を覚えていた。

 ベルから幻想花を渡された際、耐異常の発展アビリティ所有者には防がれてしまう事を聞いていた。だから発展アビリティを持たないであろう、Lv.1の冒険者を狙って匂いを嗅がせていた。しかし今、発展アビリティを持っているであろう冒険者までもが惑わされている事に違和感を覚えていた。

 

「武装した怪物(モンスター)の目撃情報が錯乱してる!!」

 

「どうなってるの!?」

 

「これじゃどれが本物か分からないわ!!」

 

 骸が武装した怪物(モンスター)を創造し、分散させ、冒険者同士を争わせたせいで情報の真偽が定かでは無くなり、どれが本物の情報なのか分からず迂闊に動けないでいた。

 

「何やこれ……」

 

「子供達が争っている……」

 

 一方でダイダロス通りにいたロキと金髪の男神はこの光景高台から見ていた。

 この男神の名はディオニソス。【ディオニソス・ファミリア】の主神であり、とある目的の為にロキと協力している。

 

「ディオニソス様」

 

「フィルヴィスか」

 

 すると黒髪のロングヘアーの赤緋の瞳のエルフの少女がディオニソスの元に現れる。

 この少女の名はフィルヴィス・シャリア。【ディオニュソス・ファミリア】の団長にして、【白巫女(マイナデス)】の二つ名を持つLv.3の冒険者である。

 

「急に冒険者同士が争いを始めました。しかも情報が錯綜して武装した怪物(モンスター)の行方が分からなくなっています」

 

「何だと?」

 

 フィルヴィスからの報告を聞いて、ディオニソスは違和感を覚える。

 

(都合が良すぎる……)

 

 計ったかのようなタイミング。【ヘスティア・ファミリア】に有利な状況。ロキは明らかに何者かの仕業だと睨んでいた。

 

(闇派閥(イヴィルス)の仕業か? いや、こんな真似がバレれば自分らの存在が公になって自分らの首を締めるだけや……そうなるとドチビしか考えられへんが、子供達を愛してる奴がこんな真似をする訳も、眷属にやらせる訳があらへん……」

 

 この状況を作り出したであろう犯人についてロキは考え始めるも、答えは出なかった。

 

「誰や……!? 一体誰の仕業や……!?」

 

 

 

 

 




なんか地味にまだ登場させてないキャラを出しちゃいました

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