勇者爆発バーンノギワカバーン   作:I-ZAKKU

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 待たせたなルーテナント、そして新章開幕だ!
 


『離れていても、私と千景の魂は常にお前たちと共に在る』

 回想終了。これが私のようであってあまりにもかけ離れてしまった見た目と、振る舞いを絶やさない巨大人型ロボットとの初邂逅の話である。

 どうしてそうなったのか、存在してしまうに至るようになったのか心底理解に苦しむ存在は、今や私たちの日常に完全に溶け込んでしまっている。共にあの憎き略奪者を打ち倒す、仲間として……だが……

 

「ワカバーン」

『なあ若葉。何度も言っていることだが、我が名はワカバーンではなくノギワカバーンだ。いつになればお前は正しくノギを付けて呼んでくれるようになるんだ?』

「……それくらい別にいいだろう。渾名みたいなものじゃないか」

『しかし…だなぁ……』

「若葉ちゃん、ノギワカバーンちゃんはご自分の名前に強い拘りを持っているんですから……。大事な名前をそれくらい別にいいからと、本人の希望を無視して毎度簡略化されては、彼女も居た堪れない気持ちになってしまいますよ?」

「いや、そこまで変わるような違いでは無いだろう? たった二文字だぞ……」

「親しき仲にも礼儀あり、ですよ?」

「……しかし…だなぁ……」

 

 ……ひなたの言っている事は尤もだ。ワカバーン……こいつの存在は見た目や言動を筆頭に受け入れ難くはあるが、決して嫌っているわけではない。むしろ初めて出逢った日の大盤振る舞いの活躍を目にした時からずっと、複雑ではあったがとても頼もしい味方であると認識している。

 

 だが、露骨にこの私を機械化したかのようにしか見えない奇天烈な見た目と、私その物の声を聞いているかのような発言や仕草がどうしても受け入れられないのだ……。

 

 このロボットの正体については、私たち全員何となく察しがついている……というより、議論と考察の末に出された結論が持つ説得力ゆえに、望んでもいない数奇な運命を運び込まれてしまったと言えよう……。

 

 私は私、乃木若葉としてあいつと出逢うまでの11年と、出逢ってからの3年間を、計14年間ただひたすら真っ直ぐに、他者からの模範となる人間として全うに生きてきたつもりだ。意地も誇りもある、それなのに何がどうしてこんな訳の分からんロボットなのか……。どこでどのようなボタンをどのように掛け間違えてしまったのか……。

 

 だから、これは私の最後の抵抗だ。たったの二文字、些細な差異であったとしても、乃木若葉は乃木若葉でしかないのだ。乃木若葉はノギワカバーンを認めるわけにはいかない。

 若干の罪悪感はあれども、奴自身が言ったようにあれは私、乃木若葉とは一切合切関係はない。ゆえに、ノギワカバーンではなくともワカバーンで良いではないか……。

 

『カッコイイのに……』

「素敵ですのに……」

『なあ』

「えぇえぇ」

「息がピッタリだなお前たち……」

 

 ……まぁ、こんなやり取りは私たちの間で既に日常茶飯事になってしまったので、特に気にする事でもないのだがな。

 

「……いい加減、話を戻すぞワカバーン。ひなた」

 

 咳払いをして、仕切り直しも兼ねて今度はひなたにも呼び掛ける。ワカバーンも手の平に座るひなたも、うって変わって真剣な表情で私の方を向く。

 

「今日で3年だ……奴らに全てを奪われたあの日から」

『……ああ』

「私たちはこの3年間で力を付けてきた。お前のようなハチャメチャな力には届かぬだろうが、それでも奴らには十分太刀打ちできるくらいにはな」

 

 2人の視線を身に受けて、私は改めて海の向こうと四国を取り囲む巨大な植物の壁を見る。

 

 あの日、私と友達になってくれた彼女たちを殺した憎き化け物、【バーテックス】と名付けられた異形の存在。奴らはあの日私たちの前に現れて、私や彼女たちの力によって討たれたものの、全てでは無い。

 

 奴らは島根のあの神社だけではなく、日本中……世界中に現れて絶望と厄災の惨劇を振り撒いていた。数多の数え切れない命が、奴らに奪われてしまったのだ……。

 

 あの壁は、バーテックスから人々を守るために四国に現れた土地神が、【神樹】が張った結界だ。この内側にいる限り、あの地獄の様な惨劇は起こらない……だが、過去に奪われてしまった数多の命は戻ることは無い。

 そして何よりも、奴らバーテックスは、いずれこの壁を越えて再び絶望を齎そうとしているのだ。

 

 私たちは神に選ばれた。奪われた世界を取り戻す正義の剣として、私たちは【勇者】になったんだ。

 あのような惨劇など、二度と繰り返させてなるものか…!

 

「何事にも報いを…私は必ずバーテックスに報いを受けさせる」

『報い……乃木の生き様を貫くか……それも良い。だが、決して見失うな! 己の誇りを!』

「無論だ!」

「ふふ、私も若葉ちゃんについていきます」

 

 神の声を聞き、それを届ける【巫女】のひなた。

 神の使者を称する不可思議ロボットのワカバーン。

 

『私たちの手で、世界と人々の未来を守り抜こう!』

 

 世界を救う、同じ志を持った者たちと再び、誓いを交わす。

 

 そしてそれは、私たち3人のみに非ず。

 

 

「ノギワカバーーーン!!」

 

 

 馴れ親しんだ快活な声が、快晴の空の下に響き渡った。この場にいる者の中でも最も目立つ、巨体のワカバーンが真っ先に目に入るからなのだろう、最初の呼びかけの対象は奴になる。

 

「若葉ちゃーーん!! ヒーナちゃーーん!!」

 

 それでも間髪入れずに私とひなたの名前も、嬉々とした感情を多分に込めて届けられる。

 

 実は数日ぶりとなる、あいつの気持ちのいい声が聞けて、私もひなたも決意を固めたばかりの表情が緩むのを感じた。そうして声の元となる後ろを振り返ると、そこにはやはり、満開の笑顔を咲かせ、こちらに向かって手を振りながら走る仲間、高嶋友奈の姿があった。

 

「友奈。帰ってきていたのか」

「おかえりなさい、友奈さん。長旅お疲れ様でした」

「うん! 高嶋友奈、ただいま丸亀城に帰還しました!」

『うむ、待っていたぞ友奈! やはりと言うべきか、お前たちのいないこの数日間は少し物寂しくてな…』

 

 私と同じ神の力を得た勇者、高嶋友奈。私たちと同じ歳の中学2年生で、性格は明るくて天真爛漫。端的に言って気持ちの良いやつだ。

 

「あははっ! 私も早くみんなに会いたかったよー! ってヒナちゃん高いとこ座ってる! 大丈夫落ちない!?」

『安心しろ。このノギワカバーンがそのような不始末を起こすものか』

「ふふふ、とってもいい眺めですよ友奈さん。ノギワカバーンちゃんの手の上は」

『友奈もひなたと一緒にどうだ? 今なら反対側の手が空いてるぞ』

「登る登る! 座る〜♪」

「躊躇いなく行ったな……」

 

 差し出された巨大な掌の上に、あたかもリスのようにスルリと乗り込む友奈。ひなたもそうだが、気心知れた相手とはいえ友奈も相当に大胆というか肝が据わっているというか……。

 

『上げるぞ。そら!』

「うっひゃぁ~!! 高い高い!! すっごい景色〜!」

「うふふふ! 風が気持ちいいですね~!」

「……楽しそうだな……」

 

 思い思いの反応を見せる友奈とひなたは微笑ましくはあるのだが、少々複雑な気持ちも無くはない。はしゃぎすぎと思う反面、友奈はまだしも物心着く前から一緒にいるひなたですら、あの様なあどけない無邪気さを表に出すなど……。

 

「……ノギワカバーンに嫉妬してる?」

「っ!?」

 

 向こうにそのつもりは無いのだろうが、完全に不意を突かれて身体が跳ねた。後ろから掛けられたその言葉に反射的に振り返った所で、柔かな笑みを浮かべていた彼女と目が合った。

 

「ふふっ、ただいま。わかちゃん」

「あ、えぇ…おかえりなさい……」

「ゆうちゃんってば、帰って早々なんだから。まあ向こうにいる間も楽しみでそわそわしてたし。ヒナちゃんも一緒になってるし……で、わかちゃんは嫉妬?」

「い、いや別に…!」

「じゃあ2人が羨ましいとか? わかちゃんもノギワカバーンに遊んでもらいたいとか」

「違います。無いです。それだけは」

「真顔で真剣に否定しなくたっていいんじゃないかな…?」

 

 ……い、いかん、色々と露骨に顔に出てしまったようだ……。いや確かに2人が楽しそうなのは良い事なのだから、そこに悔しさを感じるのは間違っているはず……。

 だが私ではなく、ワカバーンの奴がいとも容易くあいつらを喜ばせているとなると、如何せんモヤモヤとした言葉にし難い何かが燻ってしまう……情けない。

 

「でもまぁ………ノギワカバーン! それ傍から見たら危ないし、丸亀城の外から目立っちゃうよ!」

『ムッ…』

「楽しませるのは全然悪い事じゃないし、ノギワカバーンもそんな失敗はしないとは思うんだけど……貴女はとっても大きいんだしさ。みんなは良くても外から見た人たちはビックリして心配しちゃうよ?」

『……それは……その通りだな……申し訳ない……』

「ゆうちゃんもヒナちゃんも、分かった?」

「「はーい」」

「……なんだか母親みたいですね……」

「それ、別に褒め言葉になってないよ、わかちゃん……」

 

 むっ……そうなるのだろうか? しかし、彼女はここで過ごしている者たちの中でも教師を除けば最年長の17歳。それ故に皆からはかなり頼りにされている存在だ。

 

 ひなたと同様に巫女として我らを支えてくれる、横手茉莉さん。『その陽だまりのような温かい包容力はまさに、ここにいる皆にとっての母親のような存在であると言っても過言では無いと思うのだが……

 

 とでも思っているのだろう若葉? ふぅ~…相変わらずデリカシーが無いなぁ…』

「なっ…!? 勝手に私の思考を読むな!! あと貴様にだけは言われたくはない!!」

「2人とも、喧嘩はやだよー?」

 

 当の横手さん本人にポンポンと宥めるように肩を叩かれてしまい、多少の不満を深呼吸と共に吐き出した。実際この様な事で言い争うのは愚かな事でしかなく、虚しいかつ無意味だ。デリカシーが無いというのは些か心外ではあるのだが……。

 

 その間にひなたと友奈はワカバーンの手の上から降り、私たちの元に歩み寄る。

 

「ヒナちゃん、若葉ちゃん、ノギワカバーン! お土産いっぱい買ってきたんだ〜。写真もたくさん撮ってきたからノギワカバーン、後でおっきな画面でみんなにも見せたいな〜って!」

『うむ、千景が戻ってきたら私の中のプロジェクター機能を使わせて貰うといい』

「うん!」

『写真のデータを送ってくれるのであれば、チェキカメラ機能で現像する事もできるぞ。サイズはB0判しか対応してないが、解像度の高さは安心するがいい』

「B0判……?」

「ゆうちゃん、ほら、一昨日行った映画館のポスター。あれのサイズがB0判」

「うーん…写真だとそのサイズは私たちには大きすぎるかなぁ…」

『なんと…!? だが、大は小を兼ねると……』

「……今更だが、どうしてプロジェクターだのカメラだの、どうでもいい機能が備え付けられているんだ…?」

『どうでもいい……だと…!?』

 

 バーテックスとの戦闘に全く必要性が感じられない機能はこれで何個目なのか……こめかみを押さえてため息がこぼれる。

 世界を取り戻す神機とやらなのか、娯楽を提供する装置なのか、はたまた私の尊厳を弄んで羞恥を味合わせる為にあるのか、ワカバーンの事が時折分からなくなってくる………いや、そもそも分からんことだらけだコイツは。実に。解せぬ。切実に。

 

「うふふ。満喫されていたようで何よりです。茉莉さんも、久しぶりの休暇はいかがでしたか?」

「お陰様で、ボクもゆうちゃんと一緒でとっても充実できたよ。わざわざボクたちのために時間を作ってくれて、本当にありがとうね、ヒナちゃん♪」

 

 私が3年物の悩みのタネに頭を抱える隣で、ひなたたちは和気あいあいと談笑を続けている。お前たちには私にのしかかっている奇天烈な圧が見えていないのか……。

 

「……もしやこの現状を受け入れきれていないのは私だけか……?」

『……どうでもいいなんて事はないだろ……どれもこれもとても便利で画期的な素晴らしい機能なんだぞ……若葉の意地悪め……』

「意地悪ではない……」

 

 気が付けばそこには、落ち込むように頭部を抱えて項垂れるワカバーン。なぜお前もこちら側なんだワカバーン……お前だけが……。

 

「なんか2人とも同じポーズになってる。やっぱりそっくりだよねー。若葉ちゃんとノギワカバーンって」

「そっくりも何も、そりゃあだって……ねぇ」

「若葉ちゃーん、ノギワカバーンちゃーん、行きますよー」

「『あ、あぁ、すまない。今行く』」

「あ、ハモった」

「…………」

『若葉……仲良しだな、我々は』

「いいから行くぞ…!」

 

 向こうで3人とも微笑ましくこちらを見てくる。気恥しくて早足になる私を追う様に、ワカバーンは大きな足音を立てて後を付いてくる。まったく……。

 

「ねえ、ノギワカバーン。改めて言っておきたいんだ」

『ん? 何だろうか茉莉?』

「ほら、今日って7月30日でしょ。バーテックスが現れた日……世界中が、滅茶苦茶にされた日」

 

 横手さんがワカバーンに投げかけた言葉は、私たち一同の耳にも勿論入っていた。

 

「ボクたちが、貴女たちに出会えた日」

 

 それは先ほどまで私が思い返していた過去の記憶と同じで、そして……同じではない、彼女たちの間だけで紡がれた物語。

 

 

 

 

勇者爆発バーンノギワカバーン

Bang Hero Bang Nogiwakaburn

 

 

 

これまでの 勇者爆発バーンノギワカバーン は!!

 

 私は誇り高き正義の使者、勇者ノギワカバーン。西暦2015年7月30日……絶望の輪廻の始まりとなるこの時代にやってきた私は、ここで魂の友である郡千景と運命的な邂逅を成し遂げる。

 

 私は勇者ノギワカバーン。千景よ、私と共にこの世界を守ってくれ……!

 

 ええ勿論よノギワカバーン! 人々の美しい命の煌めきを、あんな奴らに奪われてたまるものですか!∠(。ゝ▽・)キラッ☆

 

 人類滅亡を目論むは、謎の怪物バーテックス。無情にもバーテックスの毒牙は、罪無き人々に襲い掛かる!

 

 そんな……なんて酷い事を……! 千景、もう許せないんだから(*`Д´)ノ!!!(怒)

 

 千景!! 私たちの力を合わせるんだ!!

 

 ノギワカバーン……ありがとう…!

 

 シュィイイン!! ズババババババッ!!

 ギュオオオオオオン!! ドガアアアン!!

 シュバッ!シュシュシュシュ!! グギャアアアア!!グォォオオオオ!! シュゴオオオオ!!

 グルォォオオ!! ドガァアアアン!!

 

 必殺!!

 千景斬ーーっ!!

 またつまらぬものを

 斬ってしまった!☆⌒(ゝω・)

 

 ドッカァアアァァアンッ!!!!

 

 すごいぞ千景! よくやった!

 

 うん! やったーーーっ! あなたのおかげよ! ノギワカバーン!∩(>∀<*)∩

 

 これからもよろしく頼む。千景

 

 こうして2人は出会い、人類は反撃の狼煙を上げる……!

 

 2人は絶望の淵に立つこの世界を救うために、長い戦いの道を歩み始めたのだ!!

 

 さぁ行くのだ千景、そしてノギワカバーン! その力と正義を示し、奪われた世界を取り戻すのだ!!

 

 

 

 

私の名前はぐんちゃん!? 高嶋友奈横手茉莉 この出逢いも運命の!?

 

 

 

 

勇者爆発バーンノギワカバーン

Bang Hero Bang Nogiwakaburn

 

 瞬間、言葉に出来ない、気色の悪い謎の悪寒が全身を駆け巡った。

 

「ぬァ!!!!」

『どぉおうっ!!?』 

「ッ…!? 〜〜〜ッッ!!」

 

 前代未聞のあまりにもな悍ましさに包まれ、それを振り払うべく咄嗟に足が出た。死に物狂いのそれが目の前の計器盤に炸裂してしまい、あの馬鹿の驚嘆の声が響いた。それよりも考え無しにぶつけた足がものすごく痛くて、今はこいつの事なんかどうでもいいけど……! いや良くないわよ……!!

 

『ち、千景……!? なぜ急にコックピットを蹴りつけるんだ!!?』

「う、うるさい……あ、アンタ……! な……何なのよ、さっきの毒電波は……!?」

 

 悪寒が走るのと全く同時に脳内に変な声が、映像が視えた気がする……! なにかがキャピキャピとしたニチアサ的なテンションと特撮的なノリではしゃぐ姿が見えた気がする……!! あれは何だ……どうして私はさっき見た気がするあれを何も思い返せない……!?

 

『ど、毒電波……? なんの事だ……大丈夫か千景……?』

「とぼけてんじゃないわよ……! 急にあんな……あんな…………あ、あれ……?」

 

 …………何を見たんだっけ、私……。いやでもあの不気味が過ぎる寒気は……? 鳥肌だって出てるのに……あ、あれ……?

 

『………疲れているのか? いや、疲れていても無理も無い状況ではあるのだが……』

「いや、その…………なんでもない……」

 

 ……もうよそう、こいつが言ったように、疲れているだけなのかもしれない。

 あの大量の白い化け物……人を喰い殺すような恐ろしい存在……。そんな奴らの事を知ってしまって、これまでの日常から非日常に足を突っ込んだんだって、今になってようやく現実を受け入れてしまえば、当然ね……。

 

『っと、よかった、見つかったか』

 

 このロボットの中にある巨大なモニターには、茂みの中に落ちている巨大な刀が映っていた。さっきのあの化け物共と戦っている時に落としてしまった、こいつの武器。私が使って、たくさんの化け物を倒した……

 

(私が……倒した……化け物を)

『千景……千景』

「……ん」

『みんなの元に戻ろう。彼ら彼女らにこれからすべき事を伝えなければならん。それに…』

「……わかったわ」

 

 拾った刀を鞘に収めるのを見届けて、そのままノギワカバーンは来た道を引き返す。

 これからすべき事……これからどうなるのか、そもそもこの謎のロボットが何をしようとしているのか、私には何も判らない。

 このノギワカバーンは、私の協力を強く求めて、結果的にあの化け物共を倒した……じゃあ、その後は?

 

 こいつの言い分では化け物は世界中に現れている。なら、まだ何も安心できる状況にはなっていない事なら誰にでも解る。このまま続けて奴らを全滅させるまで戦うのか、それとも……

 

「…………ノギワカバーン……これから、どうなるの?」

『……すまない千景……この後ももうしばらくだけ、私の我が儘に付き合ってほしい』

「それって、どれくらい?」

 

 理解の範疇を越えた、フィクションの非現実同然と化したこの世界で、私自身の未来は何一つとして判らないままだった。

 そんな状況に、私はあとどれくらい身を晒し続ければならないのか。

 

 あと30分? 1時間? 半日? 丸1日? 1週間? 

 

「世界中からあの化け物がいなくなるまで? 命を賭けて?」

 

 当然そんなのは………無理。終わりが全く見えない命懸けの戦いに身を投じる覚悟なんて、そんなのあるわけがない……。

 

『……それについては、千景が自分の意思で決めてほしい。危険な道程ゆえ、私はお前に無理強いできる立場に無いのだから』

「…………」

『だが私が千景の側にいる限り、お前の身は必ず護りきる! このノギの名と誇りにかけて、約束しよう!』

「………意味はわからないけど、そうしてよ。ちゃんと」

 

 出会った時から一途に変なやつだけど、ノギワカバーンはあの村に居る人たちよりも信じても大丈夫……それはきっと、間違いじゃないって、そう思いたい……。

 そう思っている間はせめて、こいつの期待には応えてあげたい……。

 

 ───なせば大抵、なんとかなる!

 

 ───千景も自分の力を信じてやれ!

 

 

「ノギワカバーン」

『うん?』

 

 あの時本気の想いで届けてくれた言葉は、孤独に死にかけていた心を奮わせてくれた物だったのだから。

 

「……………なんでもない」

『むぅ、またか千景……なんの事だったのか気になるじゃないか……』

「うるさいわね……なんでもないんだって」

『まぁ、話したくなったら話してくれればいい。それまではゆっくりと待つさ』

「…………ええ」

 

 ……気恥ずかしいなんて思いを感じるなんて、それもどことなく新鮮な気持ちで……気に食わないけど、そこまで悪いものではなかった。

 

 話している内にノギワカバーンの巨大な腕が木々をかき分け森を抜け、半壊した神社の境内に出た。

 そこに居るのはここであの白い化け物に襲われていた人たち。命を脅かすその化け物たちはいなくなったとはいえ、みんなが皆死にかけのような表情、もしくは未だ消えない恐怖に泣き崩れている人がいる。

 

 携帯電話を耳に当て、あの異常事態をどこかに伝えようとしている人もいれば、一言も発する事が出来ないまま、絶望したように携帯を持った腕が力なく落ちる。

 ノギワカバーンが言うには、あの悲劇が起こっているのはこの国はおろか全世界……既に通信回線がパンクしていたり基地局に被害が出ていても全然不思議じゃない。

 

 ……ここで死んだ人だってたくさんいるのだから、彼らにとってはひとまず命が助かっただけのこの状況でもどれだけ絶望的か……。恐くて当然。私だって人の事は言えないし、でもこの状況をどうすればいいのかは……。

 

 でも、そんな化け物たちの影に囚われていない人が2人、残っていた。

 

「どわぁあ!!? ま、また出たァ!!?」

「……やはりどう見ても、ロボット若葉ちゃん……」

 

 ……ノギワカバーンの面影しかない女の子と、その子の傍にいる黒髪の女の子。前者の方は刀を探しに行く前に見えた時は、明らかに混乱していた様子だったから……少しだけ落ち着いていたのかしら? 少しだけ……。

 

 私は最初あの女の子……ノギワカバとノギワカバーンは繋がってるんじゃないかって思っていたけど、あの反応を見れば絶対に違うって誰でもわかる。

 

 ……じゃあ結局こいつって……

 

『皆の者!! 落ち着いて、私の話を聞いて欲しい!!』

 

 私の思考を遮る、ノギワカバーンの声が響く。ここにいる全ての人たちの視線がコックピットに乗る私にも向けられるようにも感じて緊張が走る……。

 

『この周囲に現れた恐るべき敵は、そこに居る彼女、勇者乃木若葉と! この私ノギワカバーン、そしてもう1人の勇者、郡千景が征伐した! 君たちの命を脅かす者は、もうここにはいない!!』

「ノギ……ワカバーン……!!? ノギ……ワカバーンンン”……!!?」

 

 その宣言を受けて雷に打たれたみたいに、化け物関連じゃない何かに怯えていた少女はその場に崩れ落ちた。まぁ………なんというか……。

 

「先程の……聞き間違いでは…なかっ…たぁ……」

「若葉ちゃん、若葉ちゃん。今はあの方のお話を聞きましょう…!」

「ナ……ナントイウ……コトダ……ナント……」

『唐突にどうした若葉! しっかりしろ! 大繁盛しているうどん店の行列に並び、ようやく順番が来たタイミングで肝心のうどんが売り切れてしまった、みたいなヨボヨボシワシワとしょぼくれた顔で地べたに這いつくばるなど! …………それは……そうなって泣きじゃくっても仕方がないな。うむ』

「馬鹿なの?」

『とにかくそのような状況でもないのに、その無様な姿を周囲に晒す事が、気高き乃木家の人間のする事か!!?』

「気高き乃木家の人間はうどんが食べられなかったら泣き喚いても許されるの…?」

「やめろぉ……! そのふざけた口調をやめろぉ……!」

「若葉ちゃんと同じ口調ですよ?」

「それが嫌なんだ!!」

 

 ……なんというか、おそらくこの場で一番不遇な彼女の反応に妙な親近感を覚えるわ……。なんだか彼女に対して、私なんかは緊張で気後れしているだけなのを思うと申し訳なくなる……。

 

 ……とはいえ、ノギワカバーンの宣言に、ここにいる人たちに少しばかりだけど落ち着きが見え始めていた。

 そもそも彼らはみんな、ノギワカバーンやあの女の子の方のノギワカバが化け物を倒すのを目撃している。怪しいロボットだけど、命を救ってくれた存在から紡がれたその言葉には信憑性があり、そして何より、希望に縋りたかったのだろう。

 

『しかし、いつまでもここが安全という訳では無いのだ。今はただ、奴らが居ないだけの凪の時に過ぎん。この場に留まり続けるのも、結果的に危険極まりない』

「っ!? ま、待て…!! あの化け物は全て倒したんじゃないのか…!? 奴らがここにまたやって来るというのか!?」

『……ここだけではない。見ろ、奴らが出現した天は世界中を覆い尽くしている。君たちが体験した惨劇は、世界中で起きているんだ』

「馬鹿…!? そんな事を言ったら……!」

 

 ノギワカバーンは容赦なく、彼らが縋りつこうとする希望のという名の梯子を外す。彼らにとって残酷な事実をそのままぶつけてしまった……。

 案の定全員の顔から生気が抜け落ちる。悲鳴、嗚咽、怒声がそこら中で……。

 

 ……どうするのよ、この状況を……心臓の鼓動が早まる中、そう思いながらここからじゃ別に見えもしないノギワカバーンの顔を見上げた時、その声は力強く響き渡る。彼らの絶望を切り払うように。

 

『ゆえに、諸君はこれから四国へと避難するのだ!』

「…………は? し、四国に……?」

『そうだ。既にこの国の土地神達がそこに集結し、四国全土を取り囲む聖なる結界を生成しつつある。この結界はあの化け物、バーテックスの侵入を防ぐ強固な壁となる。つまり、四国の地こそが人類にとって唯一の安息の地になるのだ』

「…………」

 

 辺りにどよめきが走る。四国に避難? 土地神? 結界? 非現実的な……何を言っているんだこの怪しいロボットは……と、誰もが思ったことだろう。私だって、これまでのこいつの事が無ければ同じ事を思っていたはずだ。

 …………なんだか私、突拍子もないこいつの言動に慣れ始めてる?

 

 というか実際、ノギワカバも顔を困惑と疑念に染めてこっちを見上げてきているし……。

 

「……い、いきなり何を言い出すんだ貴様……? 言うに事欠いて……神だと? 急にそんな話をされた所ではいそうですかとなるものか……!?」

『……では逆に聞こう。お前たちを襲ったあの化け物は何だ? 若葉、お前の身に宿った大いなるその力は何なんだ? お前の目の前に立っている、勇ましくカッコイイ謎の巨大人型ロボットはなんだと言うのだ!?』

「……っ!」

「最後の1つ、やかましいわよ……」

『もっとも私はそれらの答えを知っているが、そんな事はどうでもいい。私が言いたい事はすなわち、既に事態は現実的だの非現実的だので語れる域では無く、全てを受け入れ、この地獄から生還すべく適応していくべきという事だ!』

 

 正当化が上手いわねこいつ……。確かに言っている事は正しいし、的を得ているけれど……それでも受け入れ難いものは受け入れ難いでしょうに……。

 

『信じ難いであろうが、今は私の言う事を信じてほしい! 諸君らの命を繋ぐには、これが最善策なのだ!』

「みなさん! この方の言っている事は事実です!」

「えっ…?」

「ひなた……!?」

 

 ここに来て、ひなたという女の子が口を開いた。その眼差しには力強さがあって、ノギワカバーンの訴えを後押ししていく。

 

「ここから四国への安全な避難ルートは、既に私の中で導かれています! 時間はかかりますが全員が生きて四国まで辿り着けるルート! 私が案内できます!」

 

 叫ぶ。これまで特に目立った様子の無かったなかった彼女が、一歩踏み出して前に出て皆に向けて訴えかける。

 安全なルートを案内できるって……私もノギワカバも、彼女の思いもよらぬ発言に呆気にとられてしまった。彼女は……いったい……?

 

「ひなた……お前まで何を……?」

『これは今説明しておいた方が話が早いな。四国に土地神たちが集結していると言ったが、人類の未曾有の危機に対して神々はいくつもの救いの手を伸ばしているんだ。その中の1つに、神々の声を聞く事が出来る神聖なる才能を持った者に、導きの声を与えている。ひなたはその才能を持った者、巫女と呼ばれる存在なのだ』

「神の声……? もしや、あれらがそうだというのか……」

 

 ……ロボと人間のノギノギズだけじゃなく、あの女の子も不思議な力があるって事? ノギワカバーンの口ぶりからして、私もノギワカバと同じ力があるみたいだけど、それも神様由来の力……? ノギワカバーンは神の使者を称していたし、そいつを操作できた以上やっぱりそういう事でいいのかしら…?

 

『ちなみに、美佳も巫女の才能に目覚めている』

 

 コックピット内部のスピーカーからノギワカバーンの声が聞こえる。これは外の人たちにではなく、この話を私にだけ伝えようとしているからそうするのだろう。

 

「美佳……花本さんも?」

『それもひなたと美佳はそれぞれの勇者の導き手として巫女の才を開花させている。素質の高さは他の巫女よりも優秀な物を有していると言えるな』

 

 最初に見窄らしい姿の私に手を差し伸ばしてくれた、ちょっと変わった様子の、優しい女の子。

 ノギワカバーンはあそこは大丈夫だと言ってたけど、果たして本当に無事なのかしら……。あいつの言うことを信じられないわけじゃないけど、こっちで惨劇を目にした以上心配が勝る。彼女と別れてから、かれこれ20分も経つ………えっ、まだ20分??? ………なんて濃厚すぎる時間。さすがは全人類の危機……。

 

 ……ともかく、その巫女の女の子がいれば、みんなの命は助かると言っている。今更私がどうこう疑う気は無いけど、問題は他の人たちが信じられるかどうか……。

 

「若葉ちゃん! 皆さん!」

 

 ノギワカバーンを受け入れられない様子の、あの少女は

 

「……私がひなたの言う事を信じないわけがないだろう」

 

 真剣な面持ちで迷いなく、言い切った。そこにあるのは、彼女が大切な人に対して抱いている、どこまでも確かな信頼だった。

 

「みんな!! 私は全員が助かると言ったひなたを……そして、私たちを助け、生き残るための道を示してくれたこのロボットを信じたい!!」

「若葉ちゃん……!」

「どうか貴方たちも共に四国に……彼女たちを信じて、生きるために走ってくれ!!」

『若葉……!』

 

 周りの人たちから騒めきの声が上がる。疑念は、やはり簡単に消えるものじゃない……

 それでも、彼らは少しずつ俯いていただけだった顔を上げて前を向き始めていた。

 戸惑いはある。それでもみんな、死にたくはないと、生きたいという願いが、自ら動く力となる。

 

 そんな光景を目にして、絶望的な流れが、ノギワカバーンが求めた物に完全に変わったことがわかった。

 

『若葉! みんな! 感謝する!! 四国までの避難は時間を要するだろう。限度は限られているが、ここでできる限りの支度をしてくれ! 何でもいい、食料や水を所持している者たちは集めて分け与え、近くに車がある者はここまで運んできてくれ!』

 

 指示を飛ばし、それに従う人たちが動き出した。みんなが四国に向かうために、生きるための準備を始める。

 

『……忘れてはならんな。千景、一旦……』

「待て。まだ肝心な事を聞いていない」

 

 何かをしようとしたノギワカバーンを止めたのは、彼女の声。

 

「信じると言った手前、味方である事に今更疑いはない。だが、お前は色々な事を知り尽くしている……化け物の事も、我々の事も、私やひなたに宿ったこの力の事も」

 

 その瞳は真っ直ぐにこちらを覗いている。ノギワカバーンを信じると言った、彼女自身の言葉。それを確固たる物にするためにも、彼女は問う。

 

 

 

 

「お前はいったい、何者なんだ?」

 

 

 

 

 ただの言葉にしては、妙に重く感じるその問い。

 私自身、その答えを知りたい。未だ謎に包まれた、こいつの事を。

 

 

 

『……そういえばまだ名前だけで、ちゃんとした自己紹介ができていなかったな!』<ヴォン

 

 ……ん? ちょっと??? コックピットのモニターに彼女たちの姿じゃなくて何かの映像が映し出されているのだけど????? 70年代ぐらいの作画のアニメーションが……

 

 

 

『改めて名乗ろう! 私は!

 

<ゴゴゴゴゴゴ!!

 紅蓮より希う祈りが世界を蒼天へ導く!

<キュピィィンッ!!

 

<ギュォオォオオオオ!!

 熱き血潮に研ぎ澄まされし(あらがね)は、久遠を越えて煌めきし滅多留(メタル)の華へと返り咲く!

<ブッピガァァンッッ!!

 

 闇の因果を断ち、絶望を焼き尽くす閃光と成りし勇者! 

 

<ドォッガァアアアンッッッ!!!!

 

 ノギワカバーンだ!!  では!』

 

 

 

 

「まるで意味が分からんぞ!!!!」

 

 ……両手で顔を覆い尽くす私の耳に、清々しいほど全く同じ意見を持つ叫びが届いた。

 ポンコツが……一瞬でも期待した私が本当に馬鹿だった……!! この局面ですらもふざけ倒すなんて、信じられない……!

 

 無駄にカッコイイのも、余計に腹立つ!!

 

「意味わからんし、長い!!!無駄な口上が!!! それから何だこのアニメ映像は!!? プロジェクターか!? 目からそんな物が出ているとか構造がおかしいだろ!!」

「そっちでも観えていたの…!?」

「………………」

「ひなた! お前からも言ってやれ!! 何かこう……何かを!!」

「…………原作………のわ…ゆ……?」

 

 頭が痛くなる中、不思議と解る操作方法を手繰り、モニターの画面を切り替えて外の彼女たちを映す。するとひなたという女の子が先程までとは明らかに違う神秘的な雰囲気を宿し…………原作?

 

「……企画・編集 ノギワカバーン、プロデューサー 乃木若葉、メカニカルデザイン 大赦、総監督 神樹様、チーフマネージャー 上里ひなた、監督・技術提供 郡千景…………あのぅ、私の頭の中にこのようなテロップが見えたのですが……」

「「知らない!!!!」」

 

 監督技術提供って何!? それ以外も何!? あの女の子も急にふざけだした、わけじゃないみたいだけど、もしかしてさっきポンコツが言っていた神の声とやらなの!? そうだとしたら、なんて馬鹿げた凄い能力の無駄使いなの!?

 

『おお、流石は神樹。伝達した神託をこうも早くひなたに届けてくれるとは!』

「神託って事はやっぱり!! ってかあんたねぇ!! 人が信じたいって思っているのにこの悪ふざけは何!?」

「真面目に答えろ! 貴様、どれだけ私をコケにすれば気が済むんだ!?」

『な、何を言う…ちかD、わかP!? 私はいつだって大真面目だぞ!』

「「誰がちかDよ(わかPだ)!!!!」」

「……友達作りが苦手な若葉ちゃんが、ディレクターさんとは既に息ぴったり……これは果たして、喜ばしい事なのでしょうか……?」

「そこマネージャー!! 乗らなくていいからこんな茶番!!」

 

 滅茶苦茶が過ぎる……! 世界中が危機だって話なのに、ここではこんな事をやっていて許されるの……!? その戦犯が事情通のポンコツなのも絶対おかしいでしょ!?

 

『私は何者かという問いかけ通りの答えを述べたではないか!! であればもう一度答えよう……私は! 世界の意思が我を呼』

「変わってるではないか!!」

「しつこいのよ、あんたのその長い口上を聞くの!!」

『なんだお前たち!? 揃いも揃って言い掛かりをつけるのは止めないか!! ておいコラ千景ぇ!! 腹いせに適当にボタンを連打で叩きつけるんじゃない!!』

「あぁ……みなさん、一旦落ち着いて……! 言い争っている場合ではないでしょう……!?」

 

 ヒートアップする私たちを諌める彼女の言う通りではあるのだけど、全部こいつが悪いから……! イライラしながらも散々叫んで苦しくなった息を整える。

 

「えっと、若葉ちゃんが言いたいのは、つまりはノギワカバーン……さん? あなたは若葉ちゃんとは……どのようなご関係で……?」

『どのような……とは?』

「いえ、だって…そっくりですし……」

『…………そうだろうか? その様な事など初めて言われたが……』

「そりゃ初めてでしょ、今直接言われたばっかなんだから……というかそれ嘘でしょ…! しらばっくれるんじゃないわよ…!」

『んん~……仮に似ていたとしても、ただの偶然だろう?』

「「どんな偶然!?」」

 

 彼女たちの外見と口調、100人中100人が似ていると答えるに決まっている。それをこいつはまさに赤の他人のようだと惚けている。本気で言ってるならこいつの目と耳は文字通りのポンコツじゃないの。

 そして極めつけにノギワカバーンはビシッと指先を彼女、ノギワカバに突き付けて、高らかに宣言する。

 

『こいつは勇者乃木若葉。私は勇者ノギワカバーン。そこに違いしかないだろう!』

「違わないだろうが!?」

「……………」

 

 ……流石にもう分かった。こいつは自分の事について、真面目に話す気が無い。徹底的に誤魔化して、隠し通すつもりだ。

 

 少しは、信じられるやつだと思っていたのに……

 

『そもそも私の外見など今はどうでもいいだろう! そんなよく分からんものを考えるよりも、私には他に優先すべき大事な事が残っているんだ!』

「……どうだか。どうせそれもくだらない事なんじゃないの?」

 

 くだらない。本当にくだらない……。どうせ私の事なんか、自分を動かしてくれるのに都合のいいやつとしか思っていない。だからふざけ倒して、薄っぺらい上辺だけの言葉を残していくんだ。

 

 どうせ、これも

 

『………アレだ』

 

 ノギワカバーンが指で示した先にあったのは、半壊した神社の……

 

『あの中にいる人たちを、埋葬してやりたい』

「「「………っ!」」」

 

 ここからは見えないけど……あの化け物に、惨たらしく殺された人たち。私も一目見た、あの……。

 

 そういえば私、それにノギワカバたちも、今生き残っていること、これからどうしていくのかばかりで、考えてなんかなかった……既に殺されてしまった人たちの事なんて。

 

『間もなく私たちはこの場から立ち去らなければならん。その前に無念の内に亡くなったあの者たちの魂を鎮なければ、彼らはずっと、闇夜に包まれるこの世界に晒され続ける事になる』

 

 死んでしまった人たちはもう、どうにもならない……。恐怖そのものが目の前まで迫って、そして殺された……。

 私も感じたあの底知れない恐怖が永劫に刻み込まれる……それがあそこにいる人たちに与えられた、死というもの。

 

 埋葬とは、死者を弔いその後の安寧を願うもの。ノギワカバーンはその定めを覆すことは当然できなくても、あの人たちの魂を救おうとしている……。

 

「……それならば私も……あそこには、私たちの友達も……」

「…私も、お手伝いを……」

『駄目だ。私一人で埋葬する』

「なっ!? 何故…!」

『……友人の亡き骸を悼みたいという気持ちは痛い程分かるが、あの惨い遺体に直接触れて、その胸を痛みや悲しみで締め上げてまですべき事では無い。彼女たちも友達のお前たちがより傷付くことなんか、決して望まない』

「………」

『出発の前に、彼女たちの前で心からの祈りを捧げればいい。それでお前たちの友達はきっと、安心して報われる』

 

 ……友達の亡骸……? あそこで、あの化け物共に殺されたのは、彼女たちの友達……。

 

「…………すまない……頼む」

「………お願い…します……」

 

 彼女の顔に滲んでいたのは、大きな悲しみ……。今は居ない化け物が与えた、深い傷跡……。

 

『勿論だ。千景も外に出て、少し休んでいてくれ』

 

 再びこいつのコックピットのハッチが開く。言った通り、本当に1人で埋葬するようだ。さっき私に言いかけていたのも、明らかにこの事……ノギワカバーンはさっきからずっと、絶望に包まれながら死んだ人たちを助ける事を考えていた。

 

『代わりと言ったらなんだが、若葉とひなた……彼女に服を貸してやってくれないか? 汚れてしまっていてな……それと軽く食べられる物もあれば、それも恵んでやってほしいのだが……』

「あ、ああ……修学旅行中、だったから……。着替えと菓子であればまだあの中のリュックに……」

『恩に着る。千景、外に』

「え、ええ」

 

 直前まで気持ちを裏切られたと思っていたのに、そんなのなんか関係無いという気持ちで言われるがままに外に出た。降りるように伸ばされた手の平の上にも、一切の不快感を抱かずに乗ることができた。

 

 だって、今ならなんとなく分かるもの……本当にどうでもよかったんだって。ノギワカバーンにとって真面目に自分語りをするよりも、そっちの方を考える事が何百倍も大切なのだから。

 ……もっともそれで誤魔化して変な馬鹿をするぐらいなら、最初から普通にそう言えって思うけど……心底強くそう思うけど……!

 

 文句を言う前に、ノギワカバーンは置いてすぐに神楽殿に進んでいた。壊れた屋根の上から木片やら道具やら、遺体やら、色々なものが散らばる中を物色する。

 やがて取り出した物を両手に包み込み、私たちの元に戻ってきて、それらを地面の上にたくさんのリュックやバッグを置いた。

 

『中にあった荷物はここに。着替えはこれだな。3人とも、今のうちに気を休めておけ』

 

 そう言ってノギワカバーンは再び神楽殿に向かう。私は目の前に置かれたリュックに手を伸ばし……固まった。

 

 リュックの表面に大きく飛び散った、真っ赤な血。乾いてもいないそれは、犠牲になった人たちの証明を有り有りと突き付ける。

 

「このキーホルダー……つい先程教えていただいたキャラクターのものですね……」

「……ああ、これはあの子の……」

 

 ここにはもう居ない……この世から居ない……突然、何も悪いことなんかしていないのに、理不尽に……彼女たちの友達は、殺された。

 

「………何故……あの化け物共は……!」

「……若葉ちゃん……」

「……何故、彼女たちが殺されなければならなかったんだ……! あんなにも、心優しい者たちが……何故……!」

 

 激しい怒りと深い悲しみの2つしかなかった。形見となってしまったリュックとキーホルダーを握りしめる彼女に、私は掛ける言葉が分からなかった……。

 

「…………私……着替えてくる……」

 

 ……それだけしか、言えなかった……。

 

 返事はなかった……いや、聞こえなかった。服だけを持って足早で逃げるように、彼女たちから離れて……

 

 

 

 その近くを通った時

 

 

 

『…………間に合わなくて、すまない……』

 

 

 

 これ以上壊れないよう、細心の注意を払った両手でそれを包み込んでいたノギワカバーンが呟いた言葉が、私の胸を深く突き刺した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無駄に時間を掛けてしまって服を着替えてそこに戻った時、ちょうど彼女たちとノギワカバーンは、先程までは無かった大きな石が突き立てられた墓標のようなものに手を合わせていた。

 

『来たか、千景……お前まだ水すらも飲んでいないそうじゃないか。早く出発の準備を……』

 

 ……ようなもの、じゃなくて、正真正銘墓標なのだろう。この下に、犠牲になった人たちがいる。

 

 私が……助けられなかった人たちがいる。

 

「……………ごめん……なさい……」

『えっ、いや、別に責めてなんかないぞ…?』

「……………」

『………わ、若葉、ひなた。彼女に食べ物と水を……』

「え、あ、あぁ……」

 

 ……っ、まずい……! 話し掛けられ……! 私、彼女たちに何を言えばいいのか……!

 

「「「………あの…あ……っ」」」

 

 ……言葉が被った。無駄に気まずくなるだけの単純な事故……なんで、こういうときに……!

 

「そ、そちらからでいい。何だろうか……?」

「えっ、あ、いや……あの……」

 

 ………この感じで来るなんて、思ってなかった。

 私が来ると思っていた感情は、彼女たちの言葉には無かった。今までたくさんの人から幾度となく浴びせられてきたものだから、有るか無いかの違いなんてすぐ分かる……。それなら、今は……

 

「その……着替え、ありがとう……吐いてしまって、臭うし、気持ち悪かったから……」

「それぐらい全然構わない。というか助けてもらった身として、その程度の報いなど逆に足りないくらいだ」

「はい。あなた方が来てくださったから、私たちや向こうの方々は生きていられるのですから……」

 

 ……2人は、本当にそれしか思っていない。それしか言わない。助けてもらった、感謝している……そんなこと……

 

「っと、これを。君の分の食料……といってもお菓子とここの水道水だが、食べるといい」

「いい……食欲、無いから……」

「………無理もないですが、お互い精神的にかなり来ているでしょう? せめて水ぐらいは飲んで、こっちが食べたくなった時に食べてください。ですから、受け取ってください」

「……ありがとう……」

 

 その言葉と一緒に、ようやく彼女たちの目を見ることができた。

 向こうも安堵しているような、ホッとした穏やかな笑み。場違いに感じてしまう私が再び目線を外すまで、ずっとその温もりを感じられてしまった。

 

「……そうだ、まだ肝心の自己紹介がまだだった。私はその……乃木若葉……という…」

「………………」

「………乃木……わかばーん…ではなく、乃木若葉…。それで、こっちが私の幼馴染の……」

「上里ひなたと申します。あなたは……チカゲさん…で、よろしいしょうか…? あのロボット若葉ちゃんとテロップからそのような名前が聞こえてきたのですが」

「…え、えぇ……私…郡、千景……」

 

 テロップて……。まぁ単なるノギワカバーンの入れ知恵ってだけだから、気にするだけ無駄なんだけど……。

 

「うむ、郡だな……ところで、郡はどうしてここに?」

「どうしてって……あのロボットに一緒に来てくれって……連れて来られただけで……」

「そ、そうか……では、あの変なロボットはいったい何者なんだ……?」

「…………こっちが聞きたいわ。逆にあなたなら知っていそうだと思っていたぐらいだし……」

「知るわけがないだろう!? どうしてそうなる!?」

「鏡を見れば分かると思う……」

「ロボット若葉ちゃんですからね………っ」

「ぐう…!」

 

 ぐうの音……。やっぱり彼女も否定できないのね……。

 

『ふふっ、早速友情を育んでいるようだな。安心した。感心感心……と言いたいところだが』

 

 私たちの様子を楽しそうに語る機械音声。でもすぐに低くなったその声は、さっきのように再び重く響く。

 

『ひなた、何が見えた?』

 

 まるで、戦に赴く戦士のように……。

 

「……星屑の一群が……ここに向かって……」

「星屑……? 一群……まさか……!」

 

 またあの化け物たちがここに来る。

 

『思った通り、我々に与えられた時間は少なかったな。直ちに出発するぞ!! 皆の者、聞いてくれ!!!!』

 

 辺りに居る人全員に聞こえるぐらいの大声を響かせた後、ノギワカバーンが前に立つ。

 

『ただ今再びこの地に奴らが現れるとの神託が下された! よってこれよりここに居る全員が生きて四国に到達すべく、移動を開始する! 先頭には進むべき正しき道を示す巫女、上里ひなたと、殿には追随する邪悪を切り伏せる勇者、乃木若葉を配置した布陣を組むのだ!』

 

 みんなが無事に生き残る避難ルートが分かると断言した、上里さん。そこに化け物を倒せる力を持ったノギワカバ……乃木さん。を守りの要にする。実に理にかなった陣形だと思う。異論は別に思い浮かばない……

 

「……って、待って、私たちは?」

『……いや、私と千景はここで君たちとは別行動を取らせてもらう』

「「「え…?」」」

 

 ……言葉が、一瞬遅れた。意味が上手く飲み込めなくて……。

 

「……待て、別行動とはどういう事だ!? お前たちも一緒に四国に向かうのではないのか!?」

 

 一瞬でここに居る全ての人たちに不安が募るのが見えた。

 みんながみんな、あの化け物共を圧倒して全滅させたこいつの勇姿を見た。こいつが居てくれれば、四国への逃避行も大丈夫なんじゃないかって希望が見えていたはずだ。それが一緒に行かないなんて……

 

『若葉とひなた、お前たちがこの場にいる人々を安全に四国まで送り届けるんだ。私と千景は、他の地に赴き、そこにいる人々を助け出し四国まで連れて行く』

「……!」

 

 ノギワカバーンが見据えていたのは、より大勢の人々の命を救う道。戦力を分けて、助けられる人数を増やす……それならあながちおかしな行動なんかじゃない、正しいと言えるもののはず……だけど……

 

「……あんた、それ……どれだけの人を助けるつもりなの?」

 

 世界中の人々が襲われているって話なんでしょ……。その全部を助け出すことは、とてもじゃないけど無理に決まっている。現実的な話で、まず間に合わない。

 じゃああとは、どれだけの無茶をして出来る限りを救う気なのか……それでも、きっと、途方もない数なんじゃないのか……。

 

 

 その数を全部救い出すのも、本当に可能だと言うつもりなの……?

 

 

『……私のこの手で、守り切れるだけの人の命……だな』

「……それって……」

『千景、お前は懸念しているのだろう? 正義の使者ノギワカバーンは、世界中の人々を助け出そうと言い出さないのか……と。

 

 ……それができれば、どれほど良かっただろうな……』

 

 

 

 言葉が、出なかった……。ノギワカバーンの発したその言葉は、完全に、諦めの境地に達してしまった人のものだったから……。

 

『全てを救うのは不可能だ。それを成し遂げるためには私の手は……小さすぎる』

 

 翼をもがれながらも太太しい態度で諦めるのは性にあわないと言い放ったこいつが、世界中の人々を救う道は諦めていた。それなのに、こんな事を言うなんて……。

 

『そりゃあ諦めたくはないさ……だが、不可能なものでもそれを覆す事ができるものもあれば、結局どう足掻こうとも変わらないものはある……悔しいがそれが当然というものだ』

 

 ……その通りだ。

 0.01%と0%。その2つにはたった0.01%のあってないような誤差しかないが、そこには決して重ならない絶対的な壁がある。

 こいつが言っている不可能とは、そういうことだ。0%で確定している失敗への道を選ぶことは、誰にでも分かるようにただの間違いでしかない。

 

『その代わり私は、私が救える全ての命を全力で救いたい……それしかできないのだ、私は……取りこぼしてしまう多くを、見捨てる事もまた……な』

「…………」

『そんな私を役立たずの人でなしと蔑むのであれば、大人しく受け入れよう。何とでも言うがいい……』

「……蔑むわけがないだろう……」

 

 乃木さんと上里さんは、ノギワカバーンの言葉に静かに首を振る。

 

「……悔しいが、私にだってそいつを成し遂げる手段は皆目見当も付かない……だが……」

「……少なくとも私は、私たちは、1人でも多くの命を救わんとするあなたの志は、とても立派な物としか思えません」

『……若葉……ひなた……』

 

 ……本当に、馬鹿ね。その上カッコつけで、見たこともないぐらい真っ直ぐで、全力で……やっぱり、眩しい。

 

「……ノギワカバーン。早く私をあんたに乗せて」

『千景……』

「……私が動かさないと、あんたはただのポンコツじゃない。……助けられるだけの人を、救わないといけないんでしょ?」

『……ああ。ありがとう』

 

 そんな奴が私なんかの力を求めている。私なんかの存在を必要としてくれている。なら、私なんかもこいつの持っている眩しさとやらに近づけるかもしれない……。

 まだしばらくの間は、力を貸してやってもいい……ハッチに乗り込む間、私は漠然とそんなことを考えていた。

 

『……さて、みんな、不安にさせるような事を言って申し訳ない。だが、先程の私と千景は別行動を取るという考えを改める気は無い……しかし、みんなが生きて四国に辿り着けるというのは断言する! 私たちが居なくとも、君たちには若葉とひなたが付いているのだからな』

 

 点灯したモニターの画面に映し出された人々の不安は完全に拭いきれてはいなけど、慌てふためいたり絶望している人は居ない。彼らもまた、知っているから。ノギワカバーンの陰に隠れかけているけど、彼女も自分たちの命を守ってくれた勇姿を、はっきりと。

 

『若葉、ひなた。そちらは頼んだぞ』

「ああ……必ず皆を無事に四国まで守り抜いてみせる!」

「四国でまた会いましょう。千景さん、ノギワカバーンさん」

『うむ! 離れていても、私と千景の魂は常にお前たちと共に在る!』

「何だそれは……」

「何よそれ……」

「ロボット若葉ちゃんは人間若葉ちゃんよりもキザっぽくて新鮮な感じがしますねぇ」

「一緒にしないでくれ…!」

 

 つかの間の別れ。ノギワカバーンは断言したけど、先の分からないこれからの逃避行に不安が無いなんて事は無いはずだ。

 

 口下手な私から、そんな彼女たちにかけられる言葉は

 

 

 

「……気をつけて……」

 

 たった一言、それだけしか思い浮かばない。

 

「うむ。そちらもな、郡!」

「また向こうで会えたら、その時は色々とお話しましょう」

「………!」

 

 祈りと、約束が、私に向けて返ってくる。私なんかに……まっすぐな気持ちを……。

 

『…………因みに若葉、千景は小学6年生。お前たちより一学年上だ』

「「えっ」」

「まぁ」

 

 ………年下だったの、あの2人………

 

「……会ったばかりの上級生に……タメ口と、呼び捨てを……!?」

「あぁ……若葉ちゃんが罪の意識に苛まれて……! 申し訳ありません千景さん、私もてっきり……」

「……いや、別にそれくらい、気にしてないけど……」

 

 そんな締まらないやり取りを最後に、彼女たちは四国へと旅立って行く。最後尾の乃木さんの足取りが悪かったのは、なんというか……このポンコツ、余計な事を……。

 

 

 

『では私たちも急ごう。ノギワカバードの翼も千景の霊力が共有され、回復しているはずだ』

「次はどこに行こうって言うの?」

 

 彼女たちを見送って、私たちも次なる目的地へ。その場所とは……

 

『奈良県だ』

 

 ……また少し遠い。けど、こいつの飛行速度なら十分かもしれない。

 

「……話を変えるけど、勇者っていうのはつまり、あの化け物を倒せる人のことで合ってる?」

『ざっくばらんに言えばそうなる。』

「じゃあ、奈良県にも他にも勇者がいるの? 乃木若葉みたいな、あの化け物を倒せる人と合流するの?」

『無事に目的を果たすことが出来れば、そのつもりだ』

「目的……?」

『若葉たちの時には間に合わなかった。だから尚更と言うべきか……絶対に、救い出したい者たちがいる』

 

 ……間に合わなかった。どうしてもその言葉だけは、私にも重くのしかかる。こんなにも苦しいのは……私ももう、嫌……。

 

「分かったわ。それでどんな人なの?」

『……名前は知らない。顔やどんな人なのかも分からない……』

「えっ」

『一応、その人たちの苗字と性別、奈良県に住んでいるという事だけは分かっているんだ』

「………は、えっ…? それだけ……? 住所は……?」

『知らん』

「………外見の特徴とか……」

『………おそらくは優しそうな雰囲気をしていると思う』

「思う………」

『断言はできぬが、絶対そうだ。間違いない。多分、おそらくきっと』

「断言できるのかできないのか、結局どっちよ…!?」

 

 こいつ、何でも知っているような態度を取るから大丈夫なんじゃないかって思ってたけど、知らないの……!? そんな曖昧な情報で……やっぱ馬鹿じゃないこいつ!

 

「苗字と性別と、奈良県のどこか在住………それだけしか知らないって逆に何でよ……?」

『……そうだな。情報が少なすぎる。それなのに私は、その他多くの人たちよりも、その人たちを最優先にしようとしている……まったく、なんて最低な奴なんだ………それでも、あいつを天涯孤独にさせたくはない』

 

 

 

『友の家族を、救ってやりたいんだ……』

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