シン・ダンガンロンパZZZ   作:塵山ちくわ

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本日第三話です。
第一話、第二話がまだの人はご注意ください。


おかえり絶望学園③ 二回目の自己紹介

「ボクの名前は苗木誠」

「この学校には、超高校級の幸運って肩書きでスカウトされた、普通の学生で……」

「唯一の取り柄は人よりちょっと前向きなことくらい……かな」

 

そんなボクの自己紹介に周りは少し怪訝そうな顔をしている。

 

「超高校級の……幸運?」

「そんな才能もあるのか……」

 

小さく呟かれた日向クンの言葉がみんなの気持ちを代弁しているのだろう。

 

「そう、ボクは純粋に抽選のみで選ばれた超高校級なんだ」

「まぁ、閉じ込められているような状況に巻き込まれているのはむしろ不幸かもしれないけどね」

 

苦笑いするボクに葉隠クンが反応する。

 

「何言ってんだ、苗木っち」

「こんなん学校側のレクリエーションに違いねぇべ!」

 

相変わらずな葉隠クンがボクに続いて自己紹介をしてくれる。

 

「俺は葉隠康比呂!」

「超高校級の占い師だべ!」

 

俺の占いは3割当たる、という陽気な葉隠クンを皮切りに続々と自己紹介が始まった。

超高校級のスイマー、朝日奈葵。

超高校級の王女、ソニア・ネヴァーマインド。

超高校級のメカニック、左右田和一。

超高校級のアスリート、終里赤音。

超高校級の極道、九頭龍冬彦。

大人組が一人ずつ自己紹介をし、全体の約半数が自己紹介を終えていた。

残ったのは、十神クン、霧切さん、日向クン、それと元希望の戦士である5人の子どもたちだった。

 

「……俺は十神白夜。超高校級の資本家だ」

「チッ……こんな茶番、いつまでやっているつもりだ?」

 

ちょうど折り返しとなる八番目に自己紹介をしたのは十神クンだったが、ボクには気になるところがあった。

もちろん、彼の才能についてだ。

あまりにも協調性に欠ける十神クンの自己紹介に、みんなが言葉を失っている中、ボクはその点について指摘することにした。

 

「遮ってごめんね、十神クンの才能って……」

「超高校級の資本家、だったんだね」

 

恐る恐るたずねるボクを睥睨し、腕を組んだままの十神クンが面倒くさそうに答えてくれる。

 

「それがどうした?」

「本当は、超高校級の完璧とでも名乗りたいところだがな」

 

「アハハ……()()()、十神クンだね」

「高校生なのに資本家なんて聞き慣れない呼び名だったからつい気になっちゃって……」

 

相変わらずの十神クンの様子を見て苦笑いしつ

つ、なんでもないような態度を装う。

 

「フン……、まぁいいだろう」

 

なにを思ったのか、再度ボクを睨みつけた十神クンは無表情のまま壁際へと歩いていってしまった。

あの様子では、自分の才能が超高校級の御曹司から超高校級の資本家へと変わっていることに、違和感を覚えてはいないのだろう。

思えば、終里さんの才能も超高校級の体操部からアスリートへ変わっていたし、ここにこの場の謎を解くヒントが隠されているのかもしれない。

 

「中断させちゃってごめんね!」

「残りの人の自己紹介もお願いしていいかな?」

 

ボクが霧切さんの方を向いてお願いをすると、意図を察してくれたのか気まぐれか、続いて霧切さんが自己紹介を始めてくれた。

 

「…………名前は……霧切響子……」

 

そして沈黙。

以前の記憶からこうなると予想していたボクは、気を取り直して日向クンの方を向こうとするが、そこで他の人の声が響いた。

 

「霧切……ちゃん?……はどういう才能でこの学園に来たの?」

 

先ほどのボクのように恐る恐るたずねる朝日奈さんに対して、霧切さんが素っ気なく返す。

 

「なんで……教えなくちゃダメなの?」

 

「うわー……ドン引きだべ」

 

霧切さんの、にべもない返事に葉隠クンが思わずといった様子で言葉をこぼす。

ついさっきの十神クンの自己紹介で冷えきっていた場が、今の霧切さんの返答でさらに冷えこんでしまった。

そんな中でも態度の変わらない霧切さんもまた、十神クン同様さすがといったところだが、次に自己紹介をする人にとってはたまったもんじゃないだろう。

 

「おいおい……こんな雰囲気の中で自己紹介するのかよ……」

「あー、俺の名前は日向創」

「才能は……ごめん、俺も言えないんだ」

「いや、言えないというより……」

「俺自身も自分の才能がわからない、思い出せないんだ」

 

ボクにとっては予想通りの、おそらく他の人にとっては予想外の自己紹介をする日向クンに、みんなが驚きかあるいは疑いの目を向けている。

 

「さっきから黙って聞いてりゃ適当なことばかり言いやがって……」

「そこの女もだ!」

「なんかやましいことでもあるんじゃねえのか?」

 

口火を切ったのは九頭龍クンだった。

たしかに、この閉鎖的な状況で自分の情報を明かさない二人は怪しく映るのかもしれない。

 

「いや、俺は本当に……」

 

慌てた顔をしながら否定する日向クンに対して、九頭龍クンが詰め寄ろうとしたその時だった。

 

「それは違うのではないでしょうか?」

 

それまで黙っていた新月クンが口を開いた。

 

「たしかに、お二人の言動には怪しいところがあります」

「しかし、この場で情報を隠したとして、それで何になるんですか?」

「僕らには周りに伝える情報を選ぶ自由はありますが、わざわざ情報を隠す動機はないはずです」

 

九頭龍クンは新月クンの指摘に気勢を削がれているようだったが、構わず新月クンはさらに続ける。

 

「それに怪しいといえば、貴方の眼帯も、苗木さんの()や腕のギプスも怪しいでしょう」

 

まさか自分に火の粉が飛んでくるとは思っていなかったため、思わず新月クンのことを二度見してしまう。

腕のギプスはともかく、(アンテナ)はそんなに変かな……。

少し落ち込んでいるボクを他所に、新月クンが自己紹介を始めた。

 

「申し遅れました」

「超高校級の生徒会長の新月渚です」

「歳の離れた皆さんとも、友人になれると嬉しいです」

 

堂々とした新月クンの姿につられて、他の子どもたちも自己紹介を始める。

 

「オレっちは大門大!」

「超高校級の体育委員だーい!」

「運動のことならなんでも任せるんだぜ!」

 

「あ、ボクちんは超高校級の美術部、煙蛇太郎……」

「自転車のギアの部分って見てると不安になるよね……」

 

「オッスメッスでございます!」

「超高校級の演劇部、空木言子と申します」

「どうぞ、よろしくお願いいたします!」

 

順調に、順調に進む自己紹介は、ついに最後の一人を残すところまできた。

そう、()()の番まできたのだ。

無意識のうちに拳を固く握り、呼吸が浅くなる。

周りから違和感を抱かれないようにできるだけ自然体を心がけるが、それでも、彼女への警戒心を取り繕うのに精一杯だった。

 

「モナカはねー、モナカって言うんだ!」

「……なんて、ちょっと子どもっぽすぎますかね?」

 

無邪気な子どものような発言と、大人のような落ち着いた言葉。

 

「塔和モナカは、超高校級の学級委員長である!」

「これも違いますね……」

 

わがままな王様のような態度と、落ち込んだ気弱な表情。

まるで、どこかの絶望的に飽きっぽい女子高生のようにキャラクターをコロコロと変えていく。

その様子は、記憶を失ったみんなからするとコミカルに映るようで、さきほどまでの凍りついた空気はどこかへ行ってしまっていた。

 

「ごほん!」

「みなさんとお友達になれて、モナカはとっても幸せです!」

「これから仲良くしてくださいね!」

 

最終的にお茶目な、あるいはぶりっ子とも取れるようなキャラクターに落ち着いた彼女が話し終え、ようやく全員が自己紹介を終えたと思ったその時だった。

塔和モナカの自己紹介が終わるのをまっていたかのようなタイミングで、スピーカーから"声"が流れ始めた。

 

「キーン、コーン……カーン、コーン……」

 

ありふれたチャイム音。

話をしていたみんなの声が静まる。

 

「あー、あー……!」

「マイクテスッ、マイクテスッ!」

「校内放送、校内放送……!」

 

スピーカーからあの声が流れ、モニターにはそのシルエットが映り始める。

 

「大丈夫?聞こえてるよね?」

「えー……、ではでは」

 

それは場違いなほど能天気で明るく、思わず眉をしかめたくなるほど不快で絶望的な声だった。

 

「えー、新入生のみなさん」

「今から、入学式を執り行いたいと思いますので……」

「至急、体育館までお集まりくださ〜い」

「……って事でヨロシク!」

 

声が止まり、シルエットも消える。

静まり返った玄関ホールに、少しずつ音が戻り始める。

 

「な、なんだったんだ……」

 

新月クンが言葉を漏らす。

他の人も多くは今の放送に戸惑っているようだったが、一部はそうでないようだった。

 

「フン、俺は先に行くぞ」

 

その筆頭である十神クンが誰よりも早く玄関ホールから出ていく。

 

「チッ……!」

 

先を越されたことにイラついているのか、舌打ちをしながら九頭龍クンも出て行った。

それを見ていた周りの人も動き始め、一人、また一人と玄関ホールから出ていく。

 

「なるほど、そういうことね……」

「これは入学式って催し物の一部だったってか」

「こりゃ笑えるべ!」

 

笑いながら出ていく葉隠クン。

 

「ほーん、よくわかんねーな」

「行こうぜ、朝日奈!」

 

朝日奈さんを連れて出ていくのは終里さんだ。

 

「塔和さん、でいいかな?」

「僕らも行こう」

 

少し他人行儀な新月クンが子ども組に声をかけ、出ていこうとする。

 

「モナカでいいよー」

「新月くんは優しいんじゃな〜」

「みんなも一緒に行こー!」

 

それに応じる塔和モナカは、こちらに一瞥をくれることもなく、子どもたちを引き連れて出ていく。

今のやり取りで、新月クンにも記憶がないことが分かったが、果たして彼女はどちら側なのか……。

 

「ソニアさん!!!」

「よかったらお供させてください!」

 

そんな不安を抱いていないであろう左右田クンがソニアさんを誘う。

ソニアさんも特に断る理由がないからか、一言二言話した後、そのまま二人で玄関ホールをあとにした。

 

「さて……俺らも行くか」

 

残ったのは、先ほどの自己紹介で才能を明かせなかった二人と、ボクだった。

 

「うん、ここにいてもどうしようもなさそうだしね」

「あぁ、そうだ」

「移動する前に二人に伝えておきたいことがあるんだ」

 

ボクがそう言うと若干身構えるような顔をする日向クンと、一応話は聞いてくれそうな無表情の霧切さんがこちらを向いた。

 

「ボクは、日向クンと霧切さんのこと信じてるよ」

「会ったばかりなのに何を信じるんだって感じかもしれないけど……」

「とりあえず、同級生の中に味方が一人はいるんだっていうことを覚えていて欲しいんだ」

 

そのボクの言葉に対して先に反応をしたのは、意外にも霧切さんの方だった。

 

「そう……」

 

と言っても、ほんの一言だけ反応を示して先に行ってしまったのだけど。

 

「苗木……って言ったか?」

「ありがとうな!」

「そう言ってくれる奴が一人いるだけでめちゃくちゃ心強いぜ!」

 

笑顔で感謝を述べる日向クンを見て、少しだけ不安が和らいでいく気がする。

 

「俺は苗木の髪、いい髪型だと思うぞ!」

 

おそらく信頼への礼として日向クンがボクの髪を褒めてくれる。

しかし、そんなに変かなこの髪型……。

 

「と、とりあえずボクらも行こうか」

「……入学式ってやつに」

 

そこに待ち受けるのは絶望か。

それとも……。

 

 




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