『始めたなら、最後を見届けるべき』彼女はそう答えた。 作:Celtmyth
原作:魔法少女にあこがれて
タグ:ガールズラブ アンチ・ヘイト アンチ・ヘイトは念のため 原作既読推奨 ネタバレ注意 エイプリルフール
この作品は原作最新刊までのネタバレを含み、尚且つ物語の半ばから話が始まっています。原作既読でなければわからない内容となっていますので『始めからじゃない』『ネタバレは嫌だ』と言う方はお戻りください。
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これはある決断をした少女の、そのワンシーン。
この作品は原作最新刊までのネタバレを含む上に物語の最中からの開始となっております。『話が最初からじゃない』『アニメより先のネタバレはヤダ』と言う方はお戻りください。
これはある少女が決断した先の、ワンシーン。
ギィ、ギィ、ギィ
『物事には真摯に、行動には責任を』
それは教えであり、座右の銘とも言える物だった。古びた洋館を歩いている時に思い出す事でもないけど、ふと、と言える所でもあった。
ギィ、ギィ、ギィ
ただいつもは毎朝のルーチンとして口にする言葉で、それから次の朝まで出てこない言葉でもある。一日に何度も思い浮かべる物でもなかった。幼い事から聞いた言葉でもう心に刻まれた言葉だからだ。
ただ思い当たる事はある。これからすることを思うのなら、改めて気合を入れた、そんな感じなのだろう。
ギィ、ギィ……
歩くたびに鳴った廊下の軋みが止む。なぜなら私が歩くのをやめたからでもある。そして目の前には行き止まり、古びた壁がある。そして向こうには結界で隠蔽されている魔力が三つ。
「……さて、始めましょう」
手に持ちながらこれまで鳴らなかった錫杖を廊下に突き立てシャラン、と鳴らす。
「紹介するよ。彼女はシスイテンブ。僕の個人的な用事のために奔走してくれる子だよ。シスイって呼んでくれていいよ」
ヴァナリータの隣で佇む僧衣に錫杖と装飾をこれでもかと飾った少女をそう紹介した。
「なんだよヴァナリータ。新人か?」
「違うよ。さっきも言ったけど僕の個人的な用事に奔走してくれるからエルノミータ所属じゃなくて僕の直属だ」
「直属、ねぇ……」
「まぁ実を言うとこの間のシオちゃんズに捕まった時、彼女には介入して貰ってたんだよ」
「「はぁ!?」」
そこへ突然の事実。その件は第二勢力の魔法少女チーム『シオちゃんズ』に自分たちエルノミータのメンバーに正体が見破られた事だ。この間、場を設けて話し合ったが彼女たちの総帥の目標もあって対策などなかった。
「今回、彼女には正面から彼女たちの正体を探るのが目的だったんだけど、丁度イミタシオに何かあった様で足止めでパンタノペスカとしか戦えなかった訳だから失敗だったね」
「なんだよー。役に立たねーなー」
「………」
「………なんか言えよミイラ坊主!!」
短気なレオパルトは黙っていたシスイを罵倒したが、それでも彼女は沈黙を保った。他のメンバーが相変わらずと思いつつ、その蔑称は確かにと思う所でもあった。彼女たちが不審に思う点が、シスイが自分の顔をマスクで隠している事だった。
魔法少女は変身中に認識阻害の魔法が発動するため、変身を見られていない限り正体は露見しないし、エルノミータの彼女たちも例外ではない。シオちゃんズにはその場面を見られていたからこそ正体が露見したと思うが、現時点でその真偽はわからない。
「まぁ今回は顔合わせだ。僕の方はシオちゃんズを調べるから手は多いほうがいいからね。―――だから君の考えを聞かせてほしいかなマジアベーゼ?」
場の空気が悪くなる、ともいかないが雲行きが怪しくなりそうな所でヴェナリータは同じく黙っていたエルノミータ総帥、
「………」
「」
じっとシスイテンブを見つめるマジアベーゼ。隣には
「……シスイテンブです。今後とも顔を合わせる事もあるでしょうからよろしくお願いします」
「うおしゃべった!?」
するとシスイの方から声をかけてきた。思わず驚くレオパルトは身を跳び上がらせる程で、同時にロコとルベルを驚いたが発言したシスイと向けられたマジアベーゼがお互いの視線を外さずにいた。
「……ええ、よろしくお願いします」
「はい」
「挨拶は終わったね。申し訳ないけど彼女にはこの後も調査に出てもらうからここまでだ。それじゃあね」
「はいヴェナリータさん。情報が入ることを期待していますよ」
「ああ」
ヴェナリータの背後に転移の穴が開くと彼はそこへ来ていき、続くようにシスイも消えていった。
残った5人、その内の3人はベーゼの方を見る。
「アンタはどう思うのベーゼ。あのヴェナリータの直属ってだけで怪しいだけど」
「アタシも同意だ。あと雰囲気だがありゃ年上だぞ」
「えっ、そうなの!?」
「そうだよ」
「つーか疑問なんだけど~。ベーゼちゃん
「はぁ? 何言って―――」
レオパルトの言葉に疑問を持ったロコだがすぐに気づく。
マジアベーゼが大人しい。あの魔法少女が好きで好きでしょうがないあのマジアベーゼが新しい魔法少女を前にして大人しかったのだ。それに気付いたロコとルベルは戦慄を覚え、そしてベーゼの返事を待つ。
「……ったんです」
「えっ、なに?」
絞るように聞こえた声にレオパルトが聞き返すとベーゼは項垂れるように四つん這いになる。
「なんだか本能的に、彼女を推すには何かが違うと思ったんです! この私が! 魔法少女を前に! こんな感情を抱くなんて! どうした事なのですか―――――!!」
それは慟哭の叫びだった。推しに興奮しない不可解さと、その正体に気づけない自身の不甲斐なさに対する心の声だった。
それを見てロコとルベルはドン引きし、レオパルトはこれを幸いに慰めた。ついでにアリスも慰めた。
そしてそのマジアベーゼの勘は、シオちゃんズの正体を見破ってしばらく経った後に判明する。
この戦いはある意味、魔法少女とエルノミータ両陣営に波紋を与える事となった。
「
ベーゼ率いるエルノミータはすでに撤退している。しかし今回はシスイテンブの介入がなければ危うい状況だった。しかしそれをシスイが、
名を『
僧衣・錫杖・無駄に飾った装飾姿と打って変わって菩薩のように布を纏った裸足姿。しかしエルノミータの魔法少女であるため、健康的な女体が大部分に露出されている為、どこか背徳で官能的だった。
しかし侮るなかれ。その実力は隔絶していた。
「チィ! 坊主の恰好しとった時は対策する気も起きんほどの技の多さやったのに、こっちは逆に無骨な体術中心のくせして逆に隙があらへん!」
京言葉で悪態つくは
「おいアズール、そっちは!?」
「ハァ……、ハァ……。なんて純粋な愛……」
「何感じてんねん!!」
すぐそばの
「こちらとしてはエルノミータが撤退したことで目的は達成しているわ」
「なら、なんであんたも逃げてへんの?」
「私も一度、貴女たちの実力を感じてみたかったの。シオちゃんズのベルゼルガとパンタノペスカしか戦ってなかったからね」
「つまり、うちらの実力を見たかった、ってことかいな」
「ええ。それで結果がこれなら―――、いや」
シスイが言葉を途中で止め、真化しても変わらない包帯顔の視線が明後日に向く。サルファは何やと思ったがその視線の先から覚えのある魔力を感じた事で彼女も気づく。
「みんな遅れてごめん!」
「マゼンタ!」
サルファ達を庇うようにシスイの前に現れたのは
「無傷ね。アリスちゃんに遊ばれたみたいね」
「うっ。まぁ真化する間のなく逃げられたのは確かだけど……」
情けない話だったが魔法少女たちは真化しなかった事に安堵したが、ここで
真化しようとするものなら止めたい。しかし状況的に止められるないだろうし、止められたとしても改めて彼女に疑いを持たせる可能性も否定できなかった。特にサルファはその懸念が強く、ここでボロボロの自分が情けなくて涙を流した。
しかしここで、展開が変わる。
「まぁいいわ。マジアマゼンタ。貴女はトレスマジアの最初の一人目。それは間違いないかしら?」
「えっ、うん」
「そう。――――貴女、何のために魔法少女として戦うの?」
それはマゼンタだけではなく他の五人にも意図が読めなかった。他の魔法少女には聞かれなかった言葉であり、逆になぜマゼンタに向けたのかわからなかった。
しかしマゼンタは真摯にその言葉を受け止めた。
「みんなを守るために、悪いことをするエルノミータを止める為だよ! 正義の魔法少女として!」
まっすぐに、ありきたりとも言える理由を堂々と答えた。青臭い、そう思えてしまう程のものだったがそれがマジアマゼンタと言う魔法少女であった。
「なるほど」
そして尋ねたシスイはそう返した。質問した側としてはあまりにも呆気な―――
「その体たらくで?」
圧し潰されそうだと錯覚した。さすがにその感覚はシスイからの鋭い眼差しと低い声、怒りに似た気迫を向けられた事によるものだった。それでも息が詰まったかのように呼吸が苦しくなっていた。
「正義感。純粋。確かに貴女は魔法少女の理想の姿よ。仲間達に信頼され、子供たちに愛され、悪の総帥にも尊敬される。なのに貴女は自分の現状を知らない。多くの人たちの気遣いを知らずに受けている」
「なっ、何の事?」
「私から言える事じゃないわよ。さて、答え次第じゃここで撤退するつもりだった訳だけど、それが答えなら貴女には特別講義をしないとね」
シスイが一歩を踏み出す。それをマゼンタは戦いを始めようとしていると構えを取り、同時に仲間達の様子を伺う。シスイが歩いたと同時に先ほどを圧も消えていたがダメージの有無が復帰への時間を伸ばしていた。
このままじゃみんなが危ない。マゼンタはそう判断した。
「真―――」
「
マゼンタが真化するよりも先にシアンがその言葉を紡いだ。
エルノミータの総帥と幹部たちはナハトベースでその様子を視ていた。自分たちの変身とは明らかな違いがあるその光景。
魔法少女たちは目の前の起こる光景に目を奪われていた。あまりにも覚えのある気配を感じさせるその変身を。
そして、シスイテンブはその姿を晒した。
先ほどまでの修行僧のような、かと言って真化前の僧侶服の姿でもない。それは王道とも言える騎士の姿。両手のハルバード。盾のような浮遊する肩当て。背中には光り輝く両翼はまさに神話の戦乙女。しかしその表情は包帯から兜に変わっても窺えない。
「
彼女はその姿の名を告げると同時に片方のハルバードを突き立てる。まるで地震を思わせるほどの地響きを鳴らした。
「真化が二つ!?」
「どうなってんだ!? まさか別の形態があるのかよ!?」
「それはないよ」
「あっ、ヴェナリータ! てかさっきないって言ったよな?」
「ああそうだよ。真化は一人に一つだ。なのに彼女にもう一つ真化がある理由は彼女の胸元が答えだ」
「胸元っていったい何、がっ!?
「「はぁあああああああ!?」」
「その姿は……」
「どうして!?」
「あっ、ヴァーツ!」
「何出てきてんねん! ここは戦場――」
「どうして貴女がトレスマジアたちと対峙しているんですか!?」
「えっ? 彼女を知ってるの?」
「当たり前です!」
「そうさ。あのハート形の変身アイテムが何よりの証明」
「しかし魔法少女狩りの最中に失望と不幸があり」
目の案でかつて仲間とも言えたヴァーツが正体を明かしていると思いながら、ナハトベースではヴェナリータがエルノミータの皆に正体を明かしているだろうと想像した。ならと、ここで改めて伝えてもいいとシスイテンブにしてマジアシトリンの彼女は宣言する。
「私はシスイテンブにしてマジアシトリン。正道を外れたとしても結末まで退場することはしないと決めた魔法少女。――始めたなら、最後まで見届けるべき。それが私の答えよ」
悲しみと責任感の板挟みになった少女は、決断を下せる大人になっていた。
「残念だけどこれはエイプリールフール作品だから続かないよ」
character profile
■■ ■■/シスイテンブにしてマジアシトリン
年齢 :17歳
誕生日 :6月12日
好きな食べ物 :母直伝のフレンチトースト
嫌いな食べ物 :激辛中華
周囲からの人物像:責任感の強い子
現在