「あの、リジー……彼女は何をやってるのですか?」
「え?」
コンに指差ししながら言われた方向を見ると、ロングコートとマスクに帽子、更にはサングラスと不審者感丸出しのベアトリーチェが壁の裏に隠れてた。
「何やってんお前本当に」
「っ!シィイイ!静かにしてください!彼女にバレてしまいます!」
「彼女?……スズカじゃないか」
ストーカーしてるのか?なぜに?
「…えっと?」
「…ストーカーは犯罪ですよ?ベアトリーチェさん」
「これはストーカーではなく見守っているのです!彼女に何か起きないかと!」
「なら普通に声を掛けろよ」
見つけたのが俺とコンだったからまだ良かったが他の人ならヴァルキューレ行き待ったなしだぞ。
「あ!動き出しました。行きますよ!リジー」
「え、ちょ、俺は行かないって力つよ!?」
「離してください〜!」
引き剥がすことが出来ない!なんでこんな力強いんだよお前!
コンと一緒に引き摺られてスズカのストーカーに加担することになってしまった。人数増える方が逆に怪しいだろ。
「あのなぁ、スズカにだって友達の付き合いがあるだろ?こんな影からコソコソと見守る方が鬱陶しがられるって」
「そんな事を言っているうちに危険な目に遭ったらどうするんですか!」
「今こうしてストーカーしてる方が危険だっての」
スズカはコハルと一緒に買い物をしていて、楽しそうにしている様子がよく見える。
「…何も危険な事なんて無さそうだが?」
「トリニティの生徒といる事が既に危険なんです!!トリニティはアリウスを追い詰めた学園ではないですか!!」
「お前が言うなよ!お前がまともな教育してればアリウスは普通の学校になってただろうが!」
「はうぁ!?」
ベアトリーチェが胸を抑えて蹌踉ける。ダメージ受けるならそもそも言うなよ。
「っく!確かに私が悪かったですけどそれとこれとは話が別です!」
「何が別なんだよ!普通に微笑ましい光景じゃないか!」
「確かに微笑ましいですが、何か不測の事態が起きないとは限りませんよ」
「お前もなに同意してるんだよ。良いからストーカーをやめて帰る……ぞ?」
今のはコンの声じゃないな。誰だ。
後ろに振り返ると正義実現委員のハスミが帽子とロングコートと言う組み合わせの格好で立っていた。
「…お前もか」
「コハルは何かとトラブルに巻き込まれやすい様なので、こうして時々見守っているのです。何も問題はありません」
「問題しかねぇよ!お前も何やってんだよ!正義はどこいった!」
「後輩を守るのも立派な正義です」
澄ました顔で何言ってんだ。これ俺じゃ止められないぞ。二人の暴走を。
「どうしましょうリジー、このままではお二人に見つかってしまいます。私たちだけでもここから離れましょうよ」
「ダメだ。いまここで目を離したら何をやらかすか分かったもんじゃない。見張るぞ」
コハルとスズカに絡んだ相手がヤバいかもしれないからな。
「あ、不良が彼女たちに絡みに行きましたよ!」
「落ち着いてください、もしかしたら不良らしき見た目なだけで友人の可能性があります」
不良っぽいって、あれうちの傭兵だよ。ベアトリーチェは見た事あるだろうが。
「ねぇお母さんあの人たち何やってるの?」
「っし!見ちゃいけません!」
「………はぁ」
距離を離しながら歩いてて良かった。あのまま一緒に行動してたら俺まで不審者扱いを受けてたよ。
「…不審人物の通報があり見に来てみれば…何をしているんですか?」
「あぁ、カンナか、見ての通り、ストーカーどものストッパーだ」
「…ストーカー自体をやめさせる事は?」
「あれを見て出来ると思うか?」
あの二人から近寄り難いオーラが周りを漂っていて、関わったら酷いことになりそうな予感を感じさせた。
「なんと言えば良いのか…お疲れ様です」
「とにかく、あの二人が何かしそうになったら大事になる前に俺たちで止めるぞ。カンナ、あの二人にいま声を掛けるのはやめておけよ。絶対に騒ぐ」
「そうですね。私も騒ぎを起こしたいわけではありませんので、そうさせてもらいます」
三人でため息を吐きながら、どうにか騒ぎを起こさないようにフォローしていく事にした。
「あ、あの男スズカにぶつかっておきながら謝罪すらしようとしません!処します!」
「やめろベアトリーチェ!そんなのよくある事だろうが!騒ぎを起こすな!」
ベアトリーチェがロボ市民に発砲しそうになるのを止めたり。
「あの男性、コハルの事をイヤらしい視線で見ていますね。対処しなくては」
「待ってくださいハスミさん!あれは目付きがそう見えるだけであの人が見てるのはコハルさんの後ろにある商品です!」
ハスミが何もしてない相手を捕まえようとするのを止めたり。
「お前たち、これ以上何かしたら注意だけじゃ済まないぞ!」
「何も悪い事はしてないではないですか!」
「いまこうしている事自体が悪い事だ!」
とにかく揉め事を起こしそうになる二人を止めて注意をしても全く聞き耳を持たず。苦労していると。
「あれ?そこに居るのは社長にコンちゃんに、カンナさんですか?どうかしましたか?」
「…いや、偶然ここで出会ってな、コンと一緒に買い物をしようと思って店を回ってたんだ」
「そ、そうです。凄い偶然ですね、スズカさん」
見つかったー!?だから言ったのに!こんな事してたら普通に見つかるのは分かってた事だろうが!
「…そこに居る女性は?」
「ッエ!?いえいえいえいえいえ!私はただの通りすがりですよ!ここに来るのは初めてでしてこちらの方に道を聞いていましたの、おほほほほほ」
「そうだったんですか!」
挙動不審になってるじゃねえか!そうなるなら最初からするな!
「あ!でしたら私たちと一緒に行きませんか?今日はコハルちゃんがミカさんとお出掛けする為のお店の下見に来てたんです!」
「えぇ!?そんな、お友達と一緒にいる所にお邪魔するのは…」
「気にしないでください!コハルちゃんも大勢の意見を取り入れたいと言っているので!」
押しの強いスズカに戸惑い、目線で俺に助けを求めベアトリーチェ、まだ直接会う心の準備が出来てないなら無理をしなければ良いのに。
「あ〜彼女の案内なら、俺がするからスズカはコハルと楽しんでくると良い」
「そうですか?…社長がそう言うならお任せします!では!」
顔が隠れていたからバレずに済んだけど、スズカじゃ無かったら騙されなかっただろうな、こんな言い訳。純粋な子で良かった。
「ほら、今日はもう帰るぞ」
「そ、そうですね。見つかってしまったのならこれ以上は無理ですね」
「…仕方がありませんね」
こうしてスズカに見つかったことで終わらせることが出来た。
−−−もちろん二人はヴァルキューレに連れて行かれてお叱りを受ける事になった