「あ、リジー、もし今日スズカと会うことがあればそれとなく、それとなく私についてどう思っているのか聞いてください。それによって今後どうやって見守るかの方針を決めますので」
「見守る事は確定なのか……」
「当然です!」
流石にずっとストーカーさせるわけにもいかないし、ベアトリーチェの言う通りスズカたちに話でも聞いてくるか。このまま何もしないと俺の居ないところでとんでもない事しそうだし。
スズカたちが過ごしているビルに向かって、彼女を探しているとガスマスクを掃除している最中の彼女を見つけた。
「スズカ、ちょっと良いか?」
「なんですか?」
「え〜っと……あれからかなり時間が経つから聞くが、ベアトリーチェとはどう言う人物だったんだ?俺はあのバシリカでのベアトリーチェしか知らなくてな、アリウス生徒からはどう見えていたんだろうなと」
現在進行形で家で暮らしてるから知らないは嘘だけども。スズカは俺がゲマトリアと暮らしてるのを知らないし…大丈夫だよな?
「…マダムですか………」
「答え辛いなら答えなくて良いぞ?俺も絶対に聞きたいってわけでもないし」
「あぁ、いえ、ちょっと整理してたんです。私としても複雑な気持ちでして…嫌いでは…ないと思います」
「そうか…」
スズカがそう言うならそうなのかもな。俺は彼女たちから聞いただけだから当時がどれだけ悲惨だったのか、分からないし。
「マダムは、突然現れては過激派と穏健派の争いを終わらせて、地獄とも言える特訓などをやり始めました。上手く出来なければ食事を抜かれたり、更に厳しい特訓を課せられたり。そんな生活をしていると力が尽きて冷たくなった仲間も少なくないです…」
それで耐えれた子たちには洗脳の如く偽りと怒りと憎しみを埋め込まれていた。
「とても苦しくて辛くて、ただひたすらトリニティとゲヘナを恨むことしかできませんでした。でも、同時に思うんです。もし、あの時にマダムが来なければどうなっていたかと…」
スズカは眉を顰めて、自分の手を恐ろしいモノを見る様な目で見つめている。
「あのまま私たちだけだったら、きっともっと死人が出てました。過激派と穏健派がぶつかり合い、仲間同士で傷つけ合って、本当の意味でアリウスはキヴォトスから消えていたかもしれません」
ほとんど外との繋がりがないあそこじゃ、確かにそうなってたのかもしれないな。あの学校は知っている人が少ないから。
「マダムは、私たちの共通の指導者であり、敵でもありました。彼女が居たから私たちは戦う術を学ぶ事が出来た。彼女が居たから私たちは仲間同士で傷つけ合わずに済んだ……でも、多くの仲間が傷付きました。だから複雑なんです」
スズカはムスッと頬を膨らまして怒ってますと言う意思表示をしていた。
「「ストーカー」して私を追いかけるなら声を掛けて一言ごめんなさいって謝ってくれれば良いのにと」
「そうか……ん?…え!?気付いてたのか!?」
「赤い肌がチラチラと見えてましたら流石の私でも気付きます!」
ベアトリーチェ、お前の尾行は気付かれてたみたいだぞ。
「しかもお友達と出かける日にはほぼ後ろからついてきますし!」
「お〜い、昨日から始めたわけじゃないのかよ」
「社長!もしマダムに会うことがあったら伝えといてください!反省しているならこっそりついてくるのではなく、正面から謝りに来てくださいって!」
「お、おう」
ガスマスクを片付けてさっさとどこかに行くスズカを見送ってから、俺はこっそりと話を聞いていた彼女に声を掛ける。
「だ、そうだが?」
「い、いつから気付いてたんですか!?」
後ろかの壁から覗き見をしていたコートの不審者、改めベアトリーチェを呼ぶ。
「最初から、俺が家を出た時から後をつけてただろ…それで?スズカはああ言ってるけど?」
「……今度お詫びの品を持って謝罪しに行きます」
「スズカの好きな物を教えようか?」
「いえ、出来れば私だけで選びたいので遠慮します」
まぁ、切っ掛けは作った。後はベアトリーチェ次第ってところか。
−−−後日、スズカと一緒に食事をしているベアトリーチェを良く見かける様になった。