「おぉ!この魚美味いな!」
「フレッシュくんも食べる事が出来るんですね〜」
「こいつもオートマタだからな。腹も減るし喉も渇く、見た目がサメってところ以外は普通のキヴォトス人だぞ」
それにしてもフレッシュくんへのバイト代がまさかここの賄いとはな。よくそのヒレでフォークとナイフと綺麗に使えるなぁ。俺が設計した以上に彼は器用なのかもしれない。
「そう言えばここって休憩ポイントってあるのかな?こうして食事をしてるからこれ自体が休憩っぽい感じはするけど…」
「俺が設計した訳じゃないからなぁ、分からん。けど無かったら無かったで銃弾の補充が出来ないからあるんじゃないか?」
普通に考えればこんな大規模施設造って何やってんだ!って言うところなんだろうけど…ここに入る前、お客がかなり多かったからなぁ。発端は警備が書類の提出忘れたせいだから何も言えん。
「…あの〜上にあるホドらしき物体はなんでしょう?」
「上?あぁ、ありゃホドクレーンだな、定期的にエリア間を移動したり、ゲームエリア限定でクレーンを操作して、適当なモノを持っていけるぜ。他の場所にいる人を連れてったりな、そう今みたいに……」
クレーンが降りてきて料理長以外のここに居るメンバーを鷲掴みにした。
「はぁ!?おいこら!離せ!」
「うわ!リジー暴れないで!落ちる!」
「安全面の設計に問題ありね」
「俺もか!」
大きな音で「大当たりー!やったね!ヒャッフー!」と変にハイテンションなクレーンに掴まれながら移動させられると、今度は突然地面に落とされた。
「いて!」
「着地」
「ん…」
俺は尻から落ちてトキとクロコは見事に着地、プレナパテスはクロコにお姫様抱っこをされリオは俺の上に落ちてきた。
「…シロコ、ちょっと恥ずかしいんだけど」
「……落下時の安全面にも難ありね」
「そもそも人を落下させるな」
フルコース料理の途中だったってのに一体誰だ!俺たちをクレーンで引っ掴んだやつは。
「“リ“ジー“ー“ー“!“」
「モモイ!?誰だ!誰に泣かされた!?」
「“ぐ“や“じ“い“ぃ“ぃ“!“」
ゲームで負けても滅多に号泣しないモモイが俺に飛びついて涙で顔をぐしゃぐしゃにしていた。一体ここで何があったんだ?
「リジー、あれ見てください!リジーの偽物が居ます!」
「俺の偽物?」
アリスの言っている意味が分からないが、とりあえず言われた方向を見ると、何やらマントやどこかトゲトゲしたマスクと魔法少女とか戦隊モノに出てきそうな悪役が仁王立ちで立って、モモイのヘッドホンを手に取っていた。
「はっはっはっは!偽物?いいや!俺様は本物の“ カイザーマン“だ!そこの少女には現実の厳しさと言うのを教えてあげたに過ぎないのさ」
「……はぁ?」
カイザーマンて、おい、久しぶりに聞いたぞその名前。そもそも四足歩行じゃねえか!あいつ!
「…お姉ちゃんがあの偽カイザーマンと勝負して負けた瞬間にヘッドホンを取られちゃって…」
「返して欲しくばこの俺様に勝て!」
「今こそリジーのもう一人の顔!カイザーマンの出番です!モモイの仇をとってください!」
いやモモイ死んでないからアリス、だけどもアトラクションで人のモノを取るのは頂けないな。
「……仕方がないか」
カイザーマンなんてキヴォトス無双の収録以降はやるつもりなかったんだが。
「俺の名は通りすがりのカイザーマン!リジーカンパニーより派遣されたスーパーエージェントである! この俺の名を語り悪行を重ねる存在よ!覚悟するが良い!はっはっはっはっは!」
「あれがリアルカイザーマン、初めて見ました!」
「社長、お前ほんとにやってたんだなそれ」
え、スピアと組んでたのか、それにスズカも……なんでカメラ構えてる?スズカ。
「なに?俺様がもう一人だと!?」
「俺は自分の事を俺様とも言わないし足は2本だ!何より。貴様にはカイザーマンに必ずと言って良いほど必要な要素が存在しない!」
「必要な要素だと?何を馬鹿な」
「人のモノを勝手に取るんじゃない!それでもスーパーエージェントのする事か!カイザーキィック!」
偽カイザーにハイキックを食らわせて仰け反らせてヘッドホンを奪い返した。
「あ!お前!人のモノを勝手に取るんじゃない!犯罪だぞ!」
「貴様が言うな!モモイ、取り返したぞ」
「“あ“り“が“ど“う“ぅ“!“」
「そろそろ泣き止めって、ほらハンカチ」
ヘッドホンと一緒にハンカチを渡して地団駄を踏んで悔しがっている偽カイザーを見る。
「貴様〜!せっかく俺様が手に入れた戦利品をよくも取ってくれたな!ゲームで勝負だ!」
「ほ〜う?この俺に勝負を挑むか、良いだろう。俺は貴様と違って戦利品などは要らんぞ。スーパーエージェントだからな!」
「その言葉、忘れるなよ!ステージの上に上がれ!」
どことなくボクシングやレスリングとかのリングにそっくりなステージの上に登り、辺りを見渡すとなんだか怪しげな柱や照明が上に設置されていた。
「ルールは簡単だ。降参するか、ステージの外に出されるか。戦闘不能になるかだ。俺様が勝てばそのボディーを貰おうか」
「貴様、本当にアトラクションのエネミーか?それともバグったのか?」
「やかましい!ここでは俺様がルールなのだ!」
とか言ってるけど?と言う目線を恐らくここの案内役であるケテルに送ると物凄い勢いで首を横に振られた。
なるほど、つまり機械の暴走か…。
「はっはっはっは!貴様が真のカイザーマンだと言うのならその肉体を俺様が手に入れて成り代わってやる!」
あ〜それは無理だな。俺がその成り変わり主だし。
「では行くぞ!食らえ!カイザースタチュー!」
「ん?」
偽カイザーが突然ボタンを取り出しカチッ☆!と押すが特に何も起こらなかった。何がしたいんだこいつ。
「リジー!後ろ!」
「後ろ?おっと!?」
モモイが注意をした方向を見ると野球ボールのような物体が飛んできて顔を少し逸らすと、何やら透明な物質で出来ているようで中に液体が入っているのが一瞬見えた。
「ッチ!余計な事を」
「リジー!それに当たったらめちゃくちゃ臭い液体が出るから気を付けて!」
「なに?……なるほど、俺も少しは真面目にやらないといけないようだな」
一旦ボコボコにして修理に出さないといけないみたいだ。そもそもこいつは故障したのはいつだ?……いや本当にこいつ故障か?前のドッキリみたいに嘘でした〜なんてオチじゃないよな?…ありえそう。
「ならこれでどうだ!カイザースタンプ!」
「照明を落としてくるとはなんとも古典的な。お返しだ!」
「なに!?グハァ!!」
今度は別のリモコンで上の照明を落としてきたのでキャッチした後、ハンマー投げの要領で投げ返した。
「これぞ、カイザースイング」
「社長!動画はしっかり撮っておきますね!」
それはなぜ?そんな人気なのかカイザーマン。
「貴様ぁ!アロハシャツなんてふざけた格好しやがって!」
「ッフ、これはカイザーマンビーチスタイルさ。熱でオーバーヒートをしないよう工夫したのがこのバトルスーツだ!」
ただのレンタル衣装なんだけども。今の俺ってカイザーマンだから。ね?
「なんて汚い真似を!」
「それは貴様だろ!俺は正々堂々と反撃したに過ぎない、いくぞ!カイザーパァンチ!」
「当たるか!カイザースラッシュ!」
剣!?ふざけるなよなんでキヴォトスでそんな物騒な刃物置いてんだよ!
抉り込むようにアッパーを食らわせようとしたところ偽カイザーの足から剣が飛びでて、慌てて剣を避けた事で無茶な姿勢になりバランスを崩したところを足払いで払われた。
「ッグ!うぉ!?」
「避けたか、運のいいやつめ」
俺の隣に剣が突き刺さり、その場所にはさっきまで俺の肩があった。こいつ俺の事壊す気満々じゃねぇか。
「頑張れカイザーマン!盗人野郎をやっつけちゃえー!」
「アリスちゃん、私は動画撮ってるから私の分まで応援よろしくね」
「はい!頑張ってください!カイザーマン!勇者が応援バフを掛けます!」
モモイからは若干、恨みのようなモノが見えたんだが気のせいだろうか。それはそれとしてミドリ…お前もか。
「うるさぁい!カイザーマンは俺様だぁ!」
「隙あり!カイザースイング!」
「うぉおお!?目が回るぅううう!!」
偽カイザーがモモイ達に威嚇した隙を突いて足を掬い上げジャイアントスイングでステージの外に放り投げた。
「そぉれ!」
「バカな!この俺様が!!この」
「この!!俺様がぁあああああ!!!
−ドカーーーン!!
「えぇえええ!?爆発した!?俺そんなダメージ与えてたか!?」
機能停止させれば良いと思ってたのがまさかの結果になってしまった!やべぇこれ弁償しないとダメだよな!?
「あ、お気になさらず。アレには良い薬になったでしょうから」
「そ、そうなのか?」
魔法少女系に出てきそうなマスコットっぽいケテルに言われて少し落ち着いた。けど、壊したのに良い薬になったってのはどう言う意味だ?
「アレは遠隔操作タイプの機械でしてね。本体の方はこことは別の所に居るのです。何を勘違いしたのか。自分がキヴォトスを支配出来る!と増長しお客様からロボのパーツとなりそうな部品をゲームの賞品と称して強奪していたんです。何度注意したり、ロボを没収しても反省しなかったので良い気味ってもんですよ全く、そもそもアトラクション内しか活動範囲を広げていないのに支配も何もないでしょうにね。お客様や他のエリアにいるガイド役の迷惑も考えろってんですそうは思いません?オーナー」
「お、おう」
相当ストレス溜まってただろうなこのマスコット。口を挟む事すら出来ない勢いで捲し立てたぞ。
−−−このアトラクション……マジでどうなってんだ?