成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百十六話 何を話そうか

 

 「ふぅ〜こうして改めて見ると、ほんと砂漠だなぁ」

 

 バルコニーから見える広大な砂漠を見て思う。ガラスや魚の餌にしてるお陰で一部の区域は埋まっていた建造物が掘り出されるくらいにまで減らす事が出来た。それでも減ったように見えないんだから途方もない。

 

 「う〜ん、マジで分からんな、なんでアビドスは砂漠化したんだ?普通そんな突然、一つの地区が埋まりかけるとかあるか?」

 

 それこそ人為的だと言われた方が納得できる。ビナーはビナーで相変わらず行ったり来たりしてるからそれもまた人が戻ってこない原因の一つでもあるし。あいつマジで何がしたいんだ?

 

 「……考えたところで仕方ないか」

 「…何が仕方がないの?」

 「…この声、クロコか、まだ寝てなかったのか?」

 

 ホシノたちと一緒に寝てた思うんだが、眼が覚めたのか?それとも騒がしくて起きたのか、だとしたら申し訳ないな。

 

 「なんだか眼が冴えた。だから少し話を聞こうと思って…あの時、続きを話してくれる約束だった」

 

 確かにしてたな、そんな約束っぽいこと。まぁあれは俺が一方的に取り付けた約束だったけど。

 

 「どこから聞きたい?いや、いっそ最初から聞くか?」

 「最初からお願い」

 「分かった」

 

 そうだな、最初の事だし成り変わり云々の所は誤魔化して話すか。

 

 「途中まではお前の知っての通り、俺はアビドスに一週間で3億クレジットを返済しろと言った後の話だ」

 

 あの時は家に帰っている最中だったんだよな、そろそろ家だと思ったらいつの間にか見覚えのない一室で機械の体になってたんだからな、現状把握したらほぼ詰みの状態だったし。

 

 「ホシノが自主退学をして、俺がアビドス高校に攻撃を仕掛けた後にまぁ、考えたんだ。これ先生居る時点で計画失敗してるよな?って」

 

 実際はアビドス高校に襲撃仕掛けた後の段階だったから俺自身は何も知らないんだけど。

 

 「そこから俺は必死で一番害の無い方法で事態を終わらせる方向に舵を切った。武力行使は無理だとしても、ホシノ誘拐の件については黒服と手を切ってしまえばなんとかなるからな」

 「…それで成功したの?」

 「あ〜……半分成功で半分失敗と言ったところか」

 

 カイザーマンだとかカイザーキックだとか色々と醜態晒しながらも計画は続行するしかなかったんだよなぁ、声さえ変えていれば完璧だったのに。

 

 「俺の正体はバレバレ、部下の目を欺けはしたけど先生たちには無理だったし、計画が終わったら後は借金の返済額を良心的な金額に変えて、居ても居なくても変わらない印象の薄い借金相手としてフェードアウトするつもりだったのに、黒服はやってくるし先生は単身でスーツ売ってくれと直談判しに来たし…信じられるか?日にちが経っていたとは言え敵の本拠地に単身で乗り込んできたんだぞ?スーツを売ってくれと言う為だけに…俺のあの時の緊張感を返して欲しい」

 

 あの時は人生で一番脱力したわ。遂に左遷させられるか!?ってビビってたら商談だったんだから。

 

 「ん、先生ならあり得る。ロボットのプラモデルでもやし生活になるくらいには計画性が無いから」

 「待ってその話は初耳なんだけど?プレナパテスもそうだったってことはこっちの先生もそうだって事だよな!?アホか!?」

 「それでユウカに家計簿を管理されてる」

 「生徒に家計簿を管理されてる教師って……はぁ」

 

 そう言えばそんな話もあったな、朧げだけど、先生がふわりんとか言うソシャゲとおもちゃで浪費したんだっけか。

 

 「とりあえず続けるぞ。やってきた先生を摘み出してから俺は外で昼食を取りにラーメン屋に行ったんだその時にセリカに出会って…咄嗟に嘘の名前を言った」

 「それが海崎リジー?」

 「そう、まぁ騙される筈もなく俺はそのままアビドスまで連行、アビドスの生徒たちは俺にホシノ誘拐を謝れと言うのとなぜ今になってそんなことをしたのかの説明を求められて、あくまで俺の利益の為だと言って話を強引に終わらせた、つもりがまた先生が今度はスーツだけじゃなくパワードスーツも売ってくれと言ってきたのでその時はもうキレたな。こっちは真面目な話をしてると言うのに……だから良い値段で売りつけてやったわ!」

 

 思い出しただけでも腹が立つな、こっちは職を失うかどうかの瀬戸際だったってのに呑気にスーツの事を考えやがって。

 

 「で、今度は落ち着いたと思ったらミレニアムから要請が掛かったからアビドスは任せたって言って早々に去っていくし、俺の計画は全部先生のせいでパーだ」

 

 任された以上は彼女らの事を見とかないと責任問題になるし。

 

 「でも…そんな一方的な事、あなたなら無視する事だって出来たよね?ホシノ先輩から聞いたけど、あなたはみんなの為に色々な案を出してくれた。私のところのあなたと違って、誠実に向き合ってくれた。どうして?」

 

 溜め息を吐きそうになる過去の出来事を思い出してげんなりとしているとクロコからそんな言葉が聞こえてきた。

 

 「……当時は関わりたくなかったとは言え、先生は俺を信用して彼女達を任せたんだ。一方的だったとは言えその信用された分くらいは仕事をしようと思っただけだ」

 

 言い訳がましく聞こえる理由を言うとクロコが僅かに口角を上げ笑う。

 

 「やっぱり、あなたは先生に負けず劣らずのお人好し」

 「お前らの中の俺のイメージは全員お人好しなのか?クロコ、お前は他の世界の俺を見たならそんなイメージは無いと思ったんだが?」

 「見たから言ってる。あなたは他の世界のあなたと違って、異常にお人好し、突然変異」

 「突然変異!?」

 

 そんな未知のミュータントを発見したみたいな言い方しないでくれるか!?俺がおかしいのは自覚してるけどそんな風に言われるのは心外だぞ!

 

 「…だから余計に不思議に思ってる。どこのあなたを見ても変わらなかったのに。どうしてここのあなただけはそうなのかって」

 「……………今から言う事は秘密で頼むぞ?誰にも言いたくない事なんだ」

 

 俺は少し考え込み、クロコならやたらめったらに誰かに話すことは無いと思い話すことにした。何かしらの事件がある時は大抵ボイレコ撮られてるからな。

 

 「先生がアビドスに帰って来れば俺はそのまま借金相手として一切の関係を断ち切るつもりでいたんだ。ホシノが俺の部下の教官になる事を選んだから出来なくなったけど」

 

 成り変わったばかりで心に余裕が無かったのもあるし、カイザーPMC理事はアビドス編の第一章でその役割をほぼ終える存在だったのもある。左遷さえされなかったらその後は先生に全部任せれば原作の事も気にせず物語は進んでいた筈たったのになぁ。

 

 「そして、ホシノ達を雇った後で俺宛に依頼が来た。ミレニアムから」

 「…それがリオだった?」

 「そうだ。最初にリオを見た時に、ミレニアムの生徒会長とは思わなかったが、いや今はそんな事どうでも良いんだ。リオは『名も無き神々の女王』…アリスにキヴォトスが滅ぼされると言うデータを俺に見せてきた」

 

 あれは本当に驚いた。たった一人であれだけの演算を繰り返していたんだから。

 

 「そのデータの結果がまぁ酷いもので、気が遠くなるほどの演算をしても結果は『名も無き神々の女王』は目覚め、アリスがキヴォトスを滅ぼすと言う結論ばかりだった。僅かにそうならない可能性があったものの、あれを楽観的に見れるほどお気楽な性格をしてないんでね。だから俺は自分の為にリオを信じてアリスを殺す事に協力した」

 

 それに、リオはすごく疲れているようにも見えた。表情があまり変わらない彼女だけど、俺の目にそう見えるほど心に余裕が無かったように見えた。

 

 「何故かあの時は一人であれこれしようとしてるリオが、放っておけなかったのもある。なんだか昔、似たような人が居た気がして……いや、今のは忘れてくれ」

 

 もしかしたら俺の前世の知り合いか誰かと重ねてたのかもしれない。その誰かすらもう覚えていないのに不思議な話だ。

 

 「…リオの計画に協力した結果はアリスは生き残り、俺たちは負けた。幸いな事にリオはミレニアムと言う居場所を失う事が無かったし。彼女らに人殺しをさせる事も無かった。先生の妨害のお陰と言える。物凄く腹立たしいが」

 

 もう解決した話だったけど、せめて少しでも良いから、誰でも良いから、リオの事を理解して欲しかった。そしたら少しは違った結果になったのかもしれない。

 

 「…もしかして、その時にリジーは変わった?」

 「変わった……まぁ、そうだろうな。ゲーム開発部と関わって、リオと関わって、先生達と戦って…断言出来る。リオやモモイ達と関わらなかったら、俺は此処には居なかった」

 

 リオのエゴを貫くと言う強い想いに惹かれて、モモイの絶対に諦めないと言う強い想い惹かれた。

 

 「あの時だ。あの時から俺は彼女達の可能性を見たくなった。彼女達が辿る物語を、見てみたくなった。泣いて、笑って、怒って、そんな当たり前の日常を送る彼女達の……あの輝きを」

 「…ベタ惚れだね」

 

 自分の事しか考えていなかった俺には、本当に眩しく見えた。関わらないようにしよう。破滅しないようにしようと考えていた自分がとてもちっぽけな存在に思えるくらいには。

 

 「あぁ、大ファンだ。彼女達が描いてく1ページに俺の人生を捧げても良いと思う程に惚れ込んでいる。あの時、お前に言ったように彼女達の事を守れるのなら俺は、俺に持てる全てを使ってでも守る。その結果が彼女達に嫌われ憎まれたとしても……俺はそれでもずっと守る。もちろんその中にはお前も入っているんだぞ?クロコ」

 

 俺はあっさり肯定するだけじゃなく、心の内に秘めていた決意の事も聞かせ、驚いたように目を見開くクロコに対して少しだけ笑ってしまう。

 

 「どうだ?重いだろ?嫌われても守るだなんて言われても、誰だって困るだろ?『これから嫌われるような事でもするのか?』とか『そんな事になったら掌を返すんじゃないのか?』みたいに思われるから誰にも言わなかったけどな」

 

 いや〜俺でも流石にどうかと思うくらいには重いよな。人生を捧げても良いとか。

 

 「…思うわけない、そんなあなただからこそ私や先生は救われたんだから」

 「……あ〜これまでの出来事を話すつもりだったのが。全く別の話になったな」

 「別に構わない。聞いててとても興味深かったし、私の中にあった疑問も解消できた」

 「そりゃ何より、ほら!お前もさっさと寝ろ!明日も遊ぶんだろ?」

 「もしかして、照れてる?」

 

 別に照れてない、これ以上は何かを話す空気感でもないし、俺はともかくクロコは寝不足になるかもしれないだろ?

 

 「お前以外の誰かが聞いてたなら俺も恥ずか死んでたかもしれないけどこの事はお前しか知らないからな。別に問題ない」

 「そっか、うん、それじゃあお休み、また今度みんなの話を聞かせてね」

 「あぁ、良いぞ」

 

 −−−そうしてクロコが部屋に戻った後は、なんとなく寝る気分では無くなったから夜が明けるまで星を眺めていた

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