百二十一話 慣れた。もう慣れたぞ俺は
「ん〜?」
俺はいま、弾薬の在庫書類と睨めっこをしていた。最近、この会社の職員たちもホシノたち相手に大分粘るようになったからその分戦いが激しくなり弾薬の消費量も上がった。
「その影響で訓練に使う弾薬の補充が不足気味か〜少し休憩するか」
ペンを置いて紅茶を淹れてソファに座る。フッフッフ、紅茶の淹れ方も手慣れたものよ。今ではナギサレベル……とまではいかないがトリニティと負けず劣らずにはなったんじゃないか?
「…うん、美味い。コーヒーも悪くないんだけどカヤみたいに豆の目利きとか出来ないからな〜」
「お〜い社長。カヤから依頼が来てるぞ」
「おっと?平和な時間の終わりか?」
ここ最近、俺に直接依頼が来る時は何かしらの問題が起こる前触れだと思い始めた。エリドゥ然り、エデン条約然り。そして大体は先生が絡む案件なんだよな。
「んな大袈裟な、ただの依頼だぜ?」
「その依頼が今後の大問題に繋がる可能性があるんだよ、それで?カヤの依頼はなんだ?」
「本人が来てるし、直接聞けば良いんじゃね?アタシも内容聞いてないし」
え、本人来てるのか?
「こんにちは、リジーさん。突然お邪魔してすみません、急ぎだったものでして」
「気にするな、コーヒーを淹れるから適当に座って待っててくれ」
カヤが直接来るとなるとこれは秘密裏に動かしたいと言う事か?それともただ単に慌てていたから直接来たとかか?……後者はないな、カヤに慌てた様子は無かったしそこまで切迫詰まってるという訳ではないだろう。
「人払いは必要か?」
「いえ、これはこの会社にも関係する事なのでスピアさんもここに居てください」
「え、アタシも?」
頭の上で腕を組んで素知らぬ顔をしていたスピアも自分に話が来るとは思ってなかったのか『マジで?』と面倒くさそうな表情をカヤに向ける。
「はい、早速本題なのですが、こちらの映像を見てください」
タブレットの画面を向けられ、その画面を見るとどこかの路地裏に居るオートマタが映った映像を見せられた。映像の中のオートマタたちは何かを取引している様子で、現金が入っているアタッシュケースと中身不明の箱を交換していた。
「…ふぅむ?怪しいオートマタが怪しい取引をしているくらいでこの会社が関係するとは思えないが」
「えぇ、これだけを見れば確かに関係がありません」
「あ〜つまり取引じゃなくてなんか別のとこに問題があるってことか?」
もしかして取引で使われてた物の中身とか箱が問題だったりするのか?このパターンだと中身の物が俺の会社で使われてる物とか、箱が俺の会社で使われてる物とかありそうだ。
「こちらは箱を所持していたオートマタが身に付けていた物です。現場に駆けつけたFOX小隊が発見したのですが」
カヤが懐から大樹を模ったエムブレムを取り出してテーブルに置く。
「…うちのロゴだなこれ、所々違うけど、予想以上に放って置けない案件が来たんだがどうすれば良い?」
「…現実逃避を止めようぜ?社長」
「FOX小隊が到着したすぐ後に連邦生徒会の部隊が到着したので回収出来たのはこれだけですが。現場にはこれ以外にも証拠が落ちていました」
不味いな、面白いネタを探してる記者共からすれば良いスキャンダルだしうちに敵対している会社からはうちを潰す機会を与える事になる。
「現場に落ちていた物はなんだったんだ?」
「はい、催涙弾とダイナマイトです」
「………ん?それだけ?」
「だけです。正直、相手側の意図が全く読めません。何を目的としてカンパニーと偽るのか、取引の品がどう言う意味を持つのか」
けど安心は出来ないな、相手側はこれを意図的に見つけさせようとしているのは理解出来た。これがもしFOX小隊ではなく連邦生徒会が見つけたなら俺は暫く拘束されていた筈だ。
「…実際に現場に行くしかないか?」
「え?本気ですか?FOX小隊がエムブレムを回収したと言いましても、他の場所で同じような事がされてエムブレムが発見されれば自分の首を絞めに向かうようなものですよ?」
いや、そうなんだけど実際に見てみないと分からない事もあるだろうし。せめてその物資を受け取った相手が向かった方向を調べられれば何を目的としてるのか分かるかもしれない。その事をカヤに伝えると溜め息を吐いてソファに体を沈めた。
「私が依頼をしようとした事はまさにその事なんですが。本人が調査しようとするとは考えていませんでした」
「だからアタシも一緒にって言ってたのかぁ」
俺に依頼をする場合は俺が直接動く事を前提に考えてした方が良いぞ。何せ今までがそうだったからな!
「それで場所はどこなんだ?」
「…わかりました。教えますが気を付けてくださいね?場所は……」
−−−変な噂が出始める前に解決できると良いんだけどな