成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百二十四話 見たくない物を見てしまった

 

 「…どうやらこっちは貨物列車が通る貨物線みたいだな」

 「つまりこっちはハズレか?ッチ、先生たちの通路が当たりかよ」

 「隊長、そうとも言えないよ。貨物線に見張りが居るって事は彼らは貨物列車を使って物資を運んでいると言う事、ダイナマイトや催涙弾以外にも何か運び込んでいるかもしれない…」

 

 そうだよな、流石にその二つだけってのはあり得ない、あるとすれば禁製品の薬か、兵器か。

 

 「…ねぇ、私たちに嫌がらせをする会社ってどんなのなんだろうね?」

 「そう言えば、ロゴの偽造の事に集中しすぎて考えてなかったですね」

 「細部が違うとは言え会社のロゴだ。あれが一つじゃなくこの件の関係者全てに配られているとしたら金と技術が必要になる」

 

 俺の知ってる会社だとあの化粧品を扱っているサミュエラと、ネフティスか?だがあそことは仲良くやってるしな。

 

 「めっちゃ単純に考えりゃあそこしか無いんじゃね?」

 「まぁ、そうなんだがあそこはかなりの損失を被った筈だぞ?そんな事をする余裕なんてどこにもないと思うが」

 「分からないよ、今でこそアビドスは賑やかになって来たとは言え当時の彼らは社長に管理を任せてあの舟を掘り当てようとしてたんだからね」

 

 維持するのに相当な金が掛かったのは確かだ。なんとか資金稼ぎの方法思いついたから色々と落ち着いたものの………いや割と騒々しい日常だったな。

 

 「ただ、あそこは無いと思うぞ。あそこを知ってる俺だから言うが確実に勝てる、もしくは勝つ見込みがある場合じゃないと動かん」

 「アビドスのあれは勝つ自信があったって事か?」

 「そうだな、確実な情報と時間を掛ければ見つかると上は考えていた。ただあまりに時間をかけ過ぎて圧力を掛けてきたが……はぁ」

 

 思い出すだけでも疲れる。ビナーを相手取りながら広大な砂漠に埋まっている兵器を探せなんて、今にして思うとかなりの無茶苦茶をやらされてたよな。

 

 「あ〜シャチョーが過去を思い出して遠い目してるよ〜」

 「…ご苦労様です」

 「優秀な部下のお陰でバレずには済んだがそれでも気持ち的な意味で胃痛が酷かった」

 「優秀な部下と言えばよ。あのエンジニアの野郎なにもんなんだよ?この前実践演習に付き合ってくれたけどゴリアテとドローンを同時操作してやがったぞ?」

 

 それは俺にも分からん、情報操作に機械のメンテナンスでかなり世話になってるが成り変わりする前から居たし。前に聞いた時はスーパーエンジニアと誤魔化されたから殆ど何も知らん。

 

 「あ、お前たちそろそろ静かにするぞ。声が聞こえてきた」

 

 雑談をしていたら声が聞こえて来たので静かにさせる。角から顔を出して相手の様子を見るとどうやら俺たちに背を向ける形で立っているみたいで今みたいに角から顔を出すからこっちに来なければバレる心配はなさそうだ。

 

 「よし、これで今日の荷は全部だな…」

 「後は上からの指示を待つだけですが。こんな事に意味があるのでしょうか?」

 「知らないな、結局俺たちは指示をされた事を指示された通りにする事しか出来ないんだ。余計な事を考えてる暇があるならお前も手を動かせ」

 

 どうやら丁度、列車から荷を降ろしている最中だったらしい兵士の横に箱が積まれている。

 

 「…おい、社長、あの箱見覚えがねぇか?」

 「………見覚えしかないなぁ」

 

 小声で声を掛けてきたスピアに返事をし俺は頭に手を当てて項垂れる。“カイザーコーポレーションのロゴ“が入った箱を見てもう色々と察してしまった為だ。

 

 「…しかし、これは明らかに越えてはいけない一線では無いでしょうか?今からでも連邦生徒会に告発すれば…」

 「どうにもならんだろうな、俺たちが辿り着く前に消されるに決まってる」

 

 なんだ?越えてはいけない一線とかなんだか物騒な事を言ってるな。そんな危険物を運んでるのか?

 

 「…では我々はただ黙って惨劇の引き金を引くしかないと?」

 「俺たちがやらなくとも代わりの誰かがやるだろうよ」

 「……そうですか」

 「ほら、荷は降ろしたんだから戻るぞ」

 

 会話をしていた兵士は不満ありありと言った様子で荷を端に置いていき、俺たちの隠れている場所とは別の方向から出ていった。

 

 「今のうちに箱の中身を見に行くぞ、ミライは俺と中身の確認、スピアとカノンとショウは見張りだ」

 「「「「了解!」」」」

 

 足音を立てないよう早歩きで箱まで移動した。箱は縦長で明らかにダイナマイト以外の物が入っているのが分かる形だった。それをミライと慎重に蓋を外し中を覗き込む。

 

 「…そんな、馬鹿な!?」

 「…社長、これは一体何だい?ヘリや戦闘機に載せるようなロケットに見えるけど」

 「これは、いや間違いない…こいつは対ビナー用に製造されたが威力が高過ぎる為の禁制品となった『サーモバリック弾』だ。広範囲爆劇を行いビナーに逃げる隙すら与えずに破壊する筈だった兵器…これは全て破棄された筈」

 

 一体どうしてこれがここに。

 

 「…サーモバリック弾?もしかしてあの時の?でも、彼らがどうやってこれを…軍事施設で厳重に保管している筈なのに…」

 「何か心当たりがあるのか?」

 「私も噂やニュースでしか聞いたことがないけどね。それでも良いかい?」

 

 俺は頷き、ミライに続きを促す。

 

 「社長がまだ理事だった頃、カイザーインダストリーの弾薬工場が大量破壊兵器を生産していたのは社長も知ってるよね?社長には対ビナー用として伝えられていたんだから。もちろんそれは連邦生徒会によって禁止されている破壊兵器で当時はSRTによって解決したとされていた。残った爆弾は威力が高過ぎるが故に処理が出来ずにとある軍事施設で今も厳重に管理されていた……筈だった」

 

 それが何故かここにある。つまりカイザーコーポレーションはこれを盗んだ?いつからだ。いつからこれを所持していた?

 

 「いや、そんな事よりもこんなのが爆発したら子ウサギタウンどころか、ダイナマイトを巻き込んで別の地区まで余波が届くぞ。そんな事になればキヴォトスは大混乱に陥る!俺の会社を潰す為にそこまでするかあのジジィ!」

 

 いっそあの時は無理矢理にでもジェネラルを捕まえて証拠を。駄目か、あのジジィはどんな人材だろうと容赦無く切り捨てる。

 

 「クソ、今はこの爆弾はどうにも出来ん。一度会社に戻って作戦を考えるぞ。早急に爆弾を処理しないとキヴォトスが危うい」

 「そうだね。先生たちと合流して情報を整理しよう」

 

 蓋を戻して誰かが来る前に来た道を急いで引き返した。そもそも手に負えないから禁制品になったって言うのにこんな物まで持ち出すとは。そんなに俺が憎いのか?…憎いと言うより邪魔なのか。

 

 −−−そうだとしても、もう何度訪れたか分からないキヴォトスの危機に俺はため息しか出なかった

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