「オラオラオラァ!怪我をしたくなきゃそこを退きなぁ!」
「隠れても無駄だよ。こう言う屋内は私たちにとっては庭も同然だからね」
「お前たちは包囲されている!地元のかーちゃんが泣いてるぞ!」
「カノン……それは少し違うと感じるのですが」
それに俺たち5人しか居ないぞ。何処をどう包囲してるんだ。
「やはり来たか!裏切り者め!だがここでは例のパワーローダーは使えまい!それにお前が派手に動けばこの脆いビルがどうなるかな?」
「あぁ〜なるほどそう来たか。考えたな」
「当然だ!お前一人を相手にするのにどれ程の損失を被ることか!!」
どれくらいだろうな……正直言って分からん、俺自身の能力は何処まで通用するんだろうな。そもそもこいつ自信満々にパワードスーツを封じたとか言ってるがそもそもメンテナンス中だから変わらないぞ。俺対策だとしたらそこだけはちょっとお粗末だったな。
「制圧射撃開始!あのポンコツをスクラップにしてしまえ!」
「おっと危ない!」
シールドの後ろに体を隠すようにしながら前進しHGで敵を撃ち抜いていく。索敵はコンに任せっきりだったから不意を突かれる事もあるがそこは頑丈さが売りの俺の体が弾いてくれる。
「俺を潰したかったら戦車でも持ってくるんだったな!」
「お前に戦車をぶつけたら戦車が壊れるに決まってるだろう!?これ以上お前なんかに金を掛けられるか!」
「貴様ら俺のことを対軍兵器か何かと勘違いしてないか?」
「どっちも同じだ!」
全然違うと思うんだが!?こいつらの中で俺の存在はどんな化け物になってるんだよ!
「ええい!子供相手に何を梃子摺っている!そんな奴らさっさと倒してしまえ!」
「狙いが定りません!何処から攻撃されているのか不明です!」
スピアたちはそれどうやってんだって言いたくなるくらい見事に相手の死角に潜り込んで一人ずつ確実に仕留めていく。あの四人が今までどうやって生活していたか分かったような気がする。
「足の速さならモモイにも負けないんじゃないか?」
「いやモモイの奴はユウカから逃げる時限定だろーが」
それもそうか、なぜかその瞬間だけは大砲かと言いたくなるような爆発的なスタートダッシュを決めるから、運動神経は良いと思うが…もう少しその運動能力の使い道はなかったのだろうか。
「ぺちゃくちゃぺちゃくちゃと余裕でいられるのも今のうちだ。やれ!」
相手の中隊長らしき男が指示を出すと天井が崩れて上からスモークグレネードのような物が降ってきた。
「うん?これは……マジで!?」
降ってきた物に気付いた俺は大慌てでシールドを地面に置いて薙ぎ払い近くに落ちている物を弾き飛ばす。元々ピンが抜けているのも相まって飛ばした直後に青白い光が爆ぜた。
「お前らEMP爆弾とか正気か!?」
「我々は既に対EMP加工を施しているから支障などない。お前はそうでもないようだが?」
「この野郎、人の嫌がる事ばかりをして心が痛まないのか!」
「お前が言うな!お前がぁ!!」
先にやってきたのはお前たちだろうが!こっちは必死こいて復興作業しているのに文字通りとんでもない爆弾を仕掛けやがって!
「クソ!子会社の理事をやっていた頃よりふざけているな、お前!会話しているだけで疲れてくる」
「ふはははは!会社に居た頃の俺はもっと疲れた!」
普通考えたら良くもまぁ黒服の情報だけで砂漠の兵器を探そうと思ったな。そんな事考えてる余裕が無かったから今まで考えない様にしてたが、それだけ黒服の情報が正確だったのか、それとも誘導が上手かったのか。普通のキヴォトス人なら知り得ない情報を黒服たちは持ってるんだよな。
「っと、その辺の考察はまた今度にして今は目の前の事に集中しないと」
「なんと言うか、社長…またなんとも面白いシールドの使い方をするね。知ってるかい?それはあくまで銃弾から身を守るためのものであって決して相手を殴打する為の武器じゃないんだよ?」
仕方ないじゃないか。ここじゃフルバレット出来ないし弾薬もあまり持って来れてないんだ。弾薬の消費を抑えれる手頃な武器と言えばこれだけだったんだよ。
「ええい!EMPを投げ続けろ!奴を止めろぉ!」
「その鬱陶しい攻撃をやめろ!それやられると帰った後が一番怖いんだよ!!」
説教以上に俺に効果があるやり方をしっかりと熟知して来てるから最近下手な事が出来ない。いや別に心配させたい訳じゃないんだけども。
「とか言いつつ投げられてる側から当たりそうな物だけ弾いてるよね」
「対EMPコーティングは時間が無くて出来ない分、反射神経と動体視力の特訓を集中的にしていたからな!」
「安全確保が出来てんのは良いけどよ!ちょっと時間掛かり過ぎてんじゃね!向こうの騒ぎもそろそろ治り始めてる気がするぜ!」
スピアの言う通り。当初の予定以上に時間が掛かってはいるが寧ろ作戦通り行くことなんてあまりない、何処かで必ず何かかズレる。今回の場合は敵の防御が分厚かったと言うところ。こう言う場合の対処法は。
「………突貫!!!」
「「「はあああああ!?」」」
一点突破あるのみ!脳死戦法とも言う。
「ふはははは!跳ね飛ばされたくなければそこを退くがいい!ふははははははは!」
「ふ、ふ、ふ、ふざけるなぁ!!!」
「シャチョーのふははスイッチが入った!これはもう勝ったな!私はお風呂に入って寝る!」
「カノン、それはフラグと言うんじゃなかったかい?」
ビルが脆かろうがそうじゃなかろうがそんな事はもうどうでも良い!銃が使えない?ならパンチとキックで押し切れば良い!小難しい作戦も精密な射撃も必要無し!ほら、良く言うだろう?力こそ正義!
「どうしたどうしたぁ!俺対策をして来たのだろう?ならばもちろん“これ“も対策しているのであろう?」
上からEMPを投げつけて来る兵士も天井が思ったより高く無かったから下からシールドをぶっ刺して足場を崩し下の階に落とす、それ以外の奴はひたすら殴る蹴るしながら前進する。
「っく、粘着弾を撃て!奴の足をその場に縫い付けてやれ!」
粘着弾だとかこの世界来て初めて聞いた。そんなのあるのか。あれか?キヴォトスの外じゃ色々と制限の掛かってるトリモチか?こっちの方のトリモチは知らんけど。
「粘着弾装填完了!砲撃かい…うわ!?」
「アタシらが居てやらせるわけねぇだろ!」
RLに弾を詰め込み射撃体制に入っていた兵士はスピアたちが後ろから倒していく。これなら妨害は心配ないな。
「あぁ、あの悪夢だ。またあの時の悪夢が始まるんだ!銃をどれだけ撃っても止まることの無いあの悪夢が!やってられるか!俺は逃げる!」
「あんな怪物相手にするくらいならクビになった方がマシだ!」
裏切り者、対軍兵器と来て今度は怪物扱いか!何なんだ!俺が怪物と言われる様な事をしたか!?
心の中でツッコミを入れていると次から次へとビルから逃げ出す兵士が出始め、最終的には最初から最後まで奥を陣取って命令していた奴とそれの護衛らしき兵が二人残った。
「………まだやるか?」
「ヒィ!?こ、降参する!だから命だけは助けてくれぇええ!」
「あ、逃げた」
「社長はあれだな、味方からすればすっげぇ頼もしいけど相手からすれば恐怖の象徴だな。次カイザーコーポレーションとヤル時は社長前に出せば終わんじゃね?」
…否定できないのがまた。おかしいなぁ、俺そんな怖いか?いや図体がデカいし声もデカくしてるから高圧的ではあるだろうけど、あれって完全に未知のモノに恐怖する眼だったんだが。
「やれやれ…あの時と変わらずの無茶苦茶を見せてくれる。カイザー…いや失礼、今も当時も海崎と名乗っていたな」
「そう言うお前は随分と割に合わない仕事をしているじゃないか?お前程の男ならこれがどれ程リスクかと言う事は理解してると思ったが」
俺はこの戦いから始まってからずっと高みの見物を決め込んでいた相手にほんの少しだけ嫌味を込めて言葉を返す。
「随分と買われているな、しかし私も社会人、上司の命令には逆らえないのだよ。お前にも覚えがあるだろう?」
「ほう?かなり焦っているようだなプレジデントは。それで?逃げ出さずに態々姿を見せたんだ。こんな雑談がしたい訳じゃないよな?“ジェネラル“」
しかも最低限、自分の身を守る事が出来る部隊まで連れて。
「もちろんだ。此処にサーモバリック弾を起爆させる装置がある」
「はぁ、クッソまたこのパターンか」
「まぁ落ち着くと良い、此処で一つ、交渉をしないか?無論断った所で起爆させるつもりはない。私たちがこの場を去るまでの間大人しくして貰うだけだとも」
此処でか?こんな所で何を要求されるか分かったもんじゃないが…時間的にもあっちが爆弾を確保してておかしくない。
「良いだろう。受け入れるかどうかは内容次第だが、話は聞こう」
「素晴らしい、互いにとって悪い結果にならないと保証しよう」
理事のデータに残っているジェネラルが何と言うか、ムカつく奴みたいなのしか残ってないからどうにも信用出来ないが。そこは理事の偏見だと思い込む事にしてとにかく冷静に話を進められる様に努力しよう。
−−−今回の事は交渉に失敗したら本当に危ないかもしれないからな