「…なんだって?ベアトリーチェが夜、こっそりとバッグを持って出掛けてるのを見た?」
「はい、黒いローブ姿だったので最初は気のせいかなと思ったんですけど、ローブのフードから赤い肌がチラッと見えたので、あれは絶対にマダムです!」
多くの人が寝静まる夜に、俺はスズカとコンの二人に呼ばれたと思ったらそんな話を聞かされた。
……今のベアトリーチェが変な事を考えてるとは信じられないが。スズカたちに知られたくない何かがあるのか?
「え〜とですね。どうやらベアトリーチェさんは最近、花やボードゲーム、などを持って外に出掛けてるみたいですよ?」
「コン、お前も見てたのか、なら声を掛けるなりして何をしてるのか聞けば良かったんじゃないか?」
「私たちも最初は声を掛けたんですが。凄く挙動不審になりながら出掛けて行ってしまったので…」
最終的に声を掛けられないまま見逃したと…なんだか前にスズカをストーカーしてた時と状況が似てるな、あの時も挙動不審だったし。
「それで、二人ともこんな夜遅くに俺を呼んだってことは、ベアトリーチェの後を付けるつもりか?」
「社長だったら良い感じに話を聞き出してくれそうだったのでつい」
「リジーだったらなんだかんだ放っておかないと思いましてつい」
う〜ん、素直!良いんだけど、良いんだけどね!キミたち寝なよ!夜中のベアトリーチェを見つけるって一体どんだけ夜更かししてるんだよ!
「はぁ、なんだか段々キヴォトスに追跡者が増えてきた気がする。で?ベアトリーチェの場所は分かってるのか?」
「ベアトリーチェさんの後を防犯カメラで追跡した結果、トリニティ領内の端の端、トリニティが有していない領域に移動しているみたいです。そこから先はカメラが設置されていないので正確な場所までは分かりませんが」
「トリニティの端の端?」
なんでそんな所に、エデン条約の事もあるからベアトリーチェが自分からトリニティに行くとは考え難い、けどその端、トリニティ外に何の用があるんだ?
ボードゲームや花を持って誰も有してない領内に行く理由はなんだと考えていると、心当たりが思い浮かんだ。
「…あいつのいる場所分かったかもしれん」
「本当ですか!」
ただ、その場所にいるベアトリーチェと会わせて良いかどうか。
「……この際だ。良い機会だと割り切ってしまうか」
「…?何がですか?」
「気にするな、こっちの話だ。それじゃあ二人とも、俺に着いてきてくれ、案内するから」
入り口に誰も居ないことを確認して、二人をこっそりと連れ出す。出来ればこの事を知ってる相手は少ない方が良い。
【
出来る限り人目に付かないようアリウス分校に移動した。深夜とは言え人が全く居ない訳じゃない。
「あの、社長?ここって私たちの学校ですよね。本当にここにマダムが居るんですか?」
「まぁこの場所の話題を出す度にダメージを受ける彼女を見てたら疑いたくなるのも分かるが、間違いなく居るぞ」
と言うかベアトリーチェから相談を受けていたと言うかなんというか。は〜人に相談しておいて一人で何してんだか。
「お、ほら、早速見つけたぞ」
「え!どこですどこです?」
「あそこ」
地下墓所でも良く目立つ赤い肌の彼女を指差すと、当の本人は俺たちに全く気付かず。奇妙な声を上げながら雑草を抜いていた。
「ふんぬぬぬぬ!なんなんですかこの草は!やけに硬くありませんか!?他の雑草はすぐに取り除けると言うのに…待ってくださいこの根っこはまさか……草と思っていたこれは木!?」
なんでこんな風になったんだろうなぁ。元があの崇高に執着していた頃の彼女とは思えない変化。
「この!どこまで伸びてるんですかこれ、除草剤を持ってくるんでした。いえ、いっそ手榴弾で吹き飛ばして…」
「何を考えとるんだ貴様!?」
「あら、リジー、あなたもここに来たのですね。丁度良いので手伝って………え?」
「えっと、こんばんは〜マダム」
木の根を吹き飛ばすとか物騒な事を考えているベアトリーチェにツッコミを入れると、彼女は俺の方に振り返りながら声を掛けるが、途中でスズカとコンが側に居るのに気付き固まった。
「き」
「「「き?」」」
「キャアアアアアアアアアア!?なぜここにスズカ来てるのですかぁああ!?秘密と、秘密だと言いましたよねぇ!?」
「揺らすな揺らすな!貴様が不審者丸出しの格好でここに来るからだろう!?と言うかよく今までそれでバレなかったなぁ!?」
発狂したかと思えば俺の胸倉を掴んでガクガクと揺さぶりキレられる。
「お、落ち着いてくださいマダム!冷静に!冷静にです!」
「そうですよ。お墓参りがバレたからと言って何かが変わるわけじゃ無いんですから、と言いますか。なぜリジーがこの事を黙ってたのか気になります。相談ってなんのことです?」
それもこの後しっかり話すから今はこいつを引き剥がすの手伝ってくれない?力が強くて引き剥がせない。
−−−この後、俺を揺さぶるのを辞めさせ落ち着かせるのに三十分は掛かった