「それでは本日の会議を致しましょう」
「…お前ら元の拠点どうした」
何故かうちの家で開かれるゲマ会議、色彩はなんとか退けたんだから会議する時は元の場所でも良いと思うんだが。
「キヴォトスの外にある拠点は既に場所を特定されてしまっているので破棄しました」
「…破棄したのか」
「えぇ、古代文明の遺産である遺物も殆ど失ってしいましたので。名も無き神々の女王、失礼、アリスさんに差し上げたブローチはその遺物の中でも残っていた数少ない物でした」
ウトナピシュテムの本船に対する対策を持っていたと言う慢心なのか、それとも単純に見つけられなかっただけなのか。
「さて、本日の議題なのですが、我々の「崇高」について、改めて話し合いをしたいと思います」
「はぁ?いやいや、そんなもんお前らが元々独自の方法で探ってた事じゃないか、今更そんな会議する必要あるか?」
初心に戻ってと言う意味での会議なのか、それともただ単純に崇高を求める方法が変わったのか。どっちなんだこれ。
「まず、私の崇高は「神秘」と「恐怖」は両立する事が出来るのかを実証する事でした。しかし、残念ながら現状はそれを証明する手立てがありません」
「完成間近であった我が芸術も、色彩による侵略によって創造を中断せざるを得なかった」
「私は自身が崇高へと至る為にロイヤルブラッドの神秘を手に入れましたが。崇高とは程遠い姿へと変貌しました」
「…私はまだ不確定要素が多いのでここでは黙秘をさせていただきます」
「そういうこった!」
あぁ〜うん、そうだな。けどな?
「お前ら、俺が組織の一員じゃないって知ってるよな?なんでどこもかしこも俺の事を会議に捩じ込んで来るんだ」
「第三者の視点からの意見も貴重ですので」
お前らの中で俺は第三者なのか?思いっきり邪魔してると思うんだけど。
俺が今までゲマトリアの関わってきた事件の事を振り返っている間に会議は進み始めた。
「ベアトリーチェ、あなたは何かないのですか?「崇高」へ至る為の新たな手段や候補などは」
「私の新たな「崇高」は既に確立しています」
ベアトリーチェが今までにないドヤ顔を見せて俺たち、というか黒服たちに自慢気に語り始めた。
「私の崇高とは、それ即ち……」
「アリウスです」
「ん?」
「ほう?」
「…む?」
「……?」
俺も思わず彼女を見る。アリウスは確か前に失敗させた筈だよな?と思い、今の彼女ならロイヤルブラッド以外に何か平和的な方法があるのでは?と一瞬期待する。
「正確に言えばアリウスの生徒たちこそが崇高だったのです!彼女たちは愛らしくもあり凛々しくもある。彼女たちを虐げていた私の事を受け入れてくれる程の天使でもあるのです!彼女たちが楽しく伸び伸びと過ごしている微笑ましい姿を見ることこそが至高にして「崇高」そのもの!!彼女たちこそが崇高の体現だったのです!!!」
「……すみませんベアトリーチェ、それは本当に崇高へ至る為の探求なのでしょうか?」
絶句、この一言に限る。この淑女スズカたちに対する愛しさ限界突破してるんだが、おい大丈夫かゲマトリアこんな調子で、そのうちベアトリーチェに別の意味で洗脳されるんじゃないか?
「あなたならば分かるでしょう。リジー、生徒を守護し支えるあなたならば!いえ、寧ろこの中ではあなた以外には居ないと断言出来ます!」
「え…あ…おう。そうだな、うん」
崇高云々はともかくとして否定は出来ん。彼女たちの可能性を見たいと言ったのは紛れもなく本音だし。
「黒服もいつも研究室に籠ってないでこの間のように生徒と交流してみれば良いのですよ。そうすれば彼女たちがどれ程尊く愛おしい存在なのかが理解できますので、マエストロも芸術を追い求めるのであればミレニアムに行ってみればよろしいのでは?あそこは日々様々な発明品が生み出されていると言われていますし、ゴルコンダとデカルコマニーはレッドウィンターなどどうでしょう?あそこにはかなり大きめの図書室があると聞いた事があるのですが…リジーに頼めば入れるのでは?彼はレッドウィンターの生徒会長と仲が良いと猫カフェの店員が言っていましたし、ちょっと皆さん聞いていますか?これは大事な会議なのですよ。この会議こそが我々ゲマトリアの命運を握っていると言っても過言では−−−−−−」
デカルコマニーにすら相槌が出来ないほどに捲し立てられ誰もが無言のまま視線で会話していた。
(おい黒服、ベアトリーチェを止めろ!キリがないぞ!)
(そんな事が出来ていたらとっくの昔にやっていたことでしょうね。マエストロは何かないのですか?)
(無茶振りをするな黒服よ。今ここで口を挟めばどうなるか理解できぬそなたではあるまい?ゴルコンダ、そなたこそ奇策があるのではないか?)
(……………彼女のメンタルを玉砕させる事が出来ればと考えますが、無理でしょうね)
(そう言うこった!)
「聞いているのですか!?」
「「「「イエス!マム!」」」
「そ、そう言うこった!!」
−−−こんな調子で終始、会議はベアトリーチェの独壇場となってしまった