「また茶会に誘って貰い感謝する、ナギサ、ミカ、セイア」
「別に気しないでくれ、私たちの仲じゃないか、と言ってもこの中で一番交友を結んでいるのはミカだけどもね」
「感謝ついでに聞きたい事があるんだが」
「なんだい?答えれる事なら答えよう」
俺は持ってきたケーキをテーブルに置いて周りを見渡してから言う。
「この茶会メンバーはどう言う人選で?」
ティーパーティー、カヤ&ユキノ、ヒナ、サオリ&ヒヨリ、リオ&トキ、プレナパテス、俺。各勢力のトップと言える人選が居るんだけども。
「私が誘ったんだよ」
「プレナパテスがか?」
「うん、そろそろみんなにも休みを入れた方が良いと思ってね。交流会って言う体で休みを取ったんだ」
「…なら先生を呼んでやれよ。あいつは一番忙しいんだぞ」
「今日はホシノたちと遊園地に行くって言われて断られちゃった」
じゃあしょうがない、休んでるなら俺がとやかく言う必要もないからな。その調子で先生には定期的な休みを入れてほしいところ。
「……私はなぜここに居るんだ」
「うわーん!お菓子の家の魔女みたいにここで太らせて美味しく頂かれちゃうんですぅ!」もっきゅもっきゅ
「語弊のある言い方をしないでくれますか!?」
「食べられるって思うならまずその菓子を食べる手を止めようか」
着いた時点で既に口いっぱいにマカロン頬張ってちゃ説得力がないぞヒヨリ。さては結構余裕だな?
マカロンをひたすら摘んでいるヒヨリを横目にサオリは眉間に皺を寄せている。この顔は本当にどうして自分がここに居るのか分かっていない顔だ。決して最近ヒヨリが食べすぎているのでダイエットさせようかと悩んでいる顔ではない。
「…すまないが私は帰らせてもらう。私はここに居て良い存在では」
「サオリ姉さん!このロールケーキ美味しいです!食べてみてください!」
「い、いや、だから私は…」
これはプレナパテスに呼ばれてついて来たのは良かったがその場所がトリニティだった事に落ち着けないと思ってるな。良し良いぞヒヨリ、そのままサオリを押し止めろ。
「錠前サオリさん、よろしければ紅茶もどうぞ」
「だから…私はかえ」
「良いじゃんサオリ!ゆっくりいけばさ、久しぶりに一緒にお話ししたいな」
「ミカ……分かった。頂こう」
ヒヨリに腕を掴まれミカに肩を押さえられたサオリは観念して椅子に座るが、差し出されたロールケーキや紅茶には口を付けなかった。
「…で?本当になんでこの面子なんだ。休みを取れって言うなら別にここじゃなくても良いだろう?」
「そうなんだけどね…この際だから何か愚痴とか、困ってることとかないかい?ストレスとか溜め込みすぎると良くないからこの際だしみんなで愚痴を言い合ってもらおうかなって思って」
「お前正気か!?そう言うのは先生と生徒の間でやるべきだろ!?なぜ各学園のトップとか言う爆弾面子で愚痴の言い合いだなんて発想になるんだ!?」
座った椅子から立ち上がりツッコミを入れるとプレナパテスは笑顔でサムズアップして俺に声を掛ける。それはもう清々しい程の良い笑顔で。
「リジーが居る場所が一番安全だからね!」
「俺を核シェルターか何かと勘違いしてないか貴様!?」
「…プレ先生は引っ越して来たばかりなのにリジーの事凄く信用してるね。やっぱり弟である先生が信用してるからかな?」
「え?……あぁ、うん、そんな所だよ」
プレナパテスが弟と言う単語で俺を見るが俺は首を振って隠すようにと伝える。プレナパテスが並行世界の先生と言うことはあの時アトラ・ハシースに潜入したメンバーとカンパニーの幹部以外には知らされてないからだ。突然並行世界だのなんだの言われても混乱するだろうし、この二人の事情については知っている人数は少ない方が良い。
「それにしても愚痴かぁ…ナギちゃんとか結構溜まってそうだよね」
「…空崎ヒナ、あなただけ一人だけのようだけど、どうかしたかしら?」
「最初はアコが一緒に来ようとしたのだけど、イオリが止めている間に一人で来たわ。話が拗れそうだったから」
「……独断専行でアビドスで暴れたしなあいつ」
それとなんだったか、地獄への道は善意で舗装されていると言う言葉を思い出した。
「この間もマコトが黄金のマコト像を設置し始めたし」
「あの方、何がしたかったのでしょうか。会議の時も終始腕を組んで目を瞑っていましたし」
万魔殿か、俺は全く知らないな。ゲヘナで関わりがあると言えば便利屋68と美食研究会…あれ?どっちも指名手配受けてるんだけど。特に便利屋68がうちの会社の依頼をよく受けてるのとか黙ってた方が良いよな?
「私は最近、あまりに忙しさに胃に穴が空きそうですよ。ここ最近ずっと一緒に昼食を摂っているハイネが癒しに見えるくらいには」
「なんか不服そうだなおい」
「……不服ではないから困るんですよ。このままではハイネに餌付けのような事をしてしまう日が来てしまいそうで」
餌付けって、犬かなんかかそのハイネって子は。
「ユキノ、カヤとそのハイネって仲が悪いのか?焼肉のクーポン渡すくらいには仲良しだと思ったが」
「…側から見たらカヤが一番仲良くしているのはハイネに見える。実際私も彼女とカヤは仲が良いと思っているが」
「別に嫌いって訳では無いんですよ。ただ、ハイネとはそこまで深く関わった覚えがないのでどうしてあそこまでグイグイ来るのか分からず怖いんですよ」
あ〜自分が特に何かした訳ではないのに向こうは凄く親し気って言うのは、あれか、カヤが覚えてないだけで何かしたか、それかそのハイネってのが純粋にコミュ力強者なのか。
「私はイズミちゃんとかアルちゃんとかに会ってるとパテル派の子たちが威嚇しちゃってさ、トリニティから出る時はいつもコソコソしないとダメなんだよね〜」
「……ミカさん?ゲヘナ生に友人が居ると聞きましたけどそのお二方は確か指名手配されている方では?」
「え?……あ!ナギちゃんが何を言ってるかちょっと分かんない☆!」
「ミカさん!?」
テヘ☆!とウィンクしながらシラを切るミカにナギサは落ち着くためなのかカタカタと震えるティーカップに口を付けテーブルに置く
これミカの交友関係バレたら色々ヤバいのでは?この面子で良かったと思えば良いのかそれともこの人数にはバレたと嘆けばいいのか……いや意外と口が固い面子だから問題ないか。
「愚痴…愚痴か……すまない、リジーの所では不自由なく暮らせているから愚痴と言われても特に浮かない…強いて言うなら広くて移動が不便と言う事だろうか」
「…誰もアバンギャルド君が良いデザインだと言ってくれないわ。どうしてなのかしら」
「「「「…………」」」」
リオが真顔で言った言葉で場に沈黙が訪れた。ミカは無言でロールケーキを食べ、ヒナは素知らぬ顔で紅茶を飲み、トキは目を閉じたまま後ろに佇んでいる。カヤはいつも閉じているように見える目を若干開いてユキノを見る。ユキノはそんな視線から逃れるように顔を思いっきり逸らしていた。サオリとヒヨリはどちらも首を傾げている。この二人はそもそもアバンギャルド君を知らないので無理もない。セイアはシマエナガと戯れている。プレナパテスは…なんだその顔、どう言う感情なのかさっぱり分からんぞ。
「それは……………えっと、とても斬新なデザインだからこそ理解し辛いのではないでしょうか?一般の方が芸術を「あぁ、芸術ってこう言うものなのですね」と感じるように、リオさんのアバンギャルド君もその類なのかもしれません」
「そう、そう言うものなのね」
誰も言葉を発さないのでナギサがオブラートに包んでリオに伝え、リオも納得した。
「…俺は斬新で良いと思うけどな、アバンギャルド君」
「そうよね。やっぱりあなたならそう言ってくれると思っていたわ」
「リオ様が楽しそうでなによりです」
俺が名前を付けるとそのまんまだったり、カイザーマンとかどこぞのドラゴン召喚しそうな名前になったりと良いセンスとは言えないからなぁ。そう言う斬新な名前が出るだけでも羨ましい。
−−−俺とリオがアバンギャルド君の話で花を咲かせているとナギサたちは何故か残念なものを見るような顔をしていた。