成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百四十話 真夜中に食べる甘味とは背徳的ではありませんか?

 

 【 ショウ視点 】

 

 「久方振りに帰ってきましたが……条約のお陰なのかゲヘナの方々が時々見えますね。実に良いことです」

 

 お父様やお母様の迷惑にならないようにと思い我慢していましたが、それでも煌びやかな雰囲気の裏に渦巻くドロドロとした政治争いに嫌気が差し衝動のまま飛び出してしまった。その後はどうしようかと悩んだものですが隊長や社長に会えたことは本当に幸運な事でした。あの方の会社は角つきだとか羽つきだとか関係なく、まさに自由な会社です。

 

 知り合いに見つからないよう夜に訪れた。そしてそんな真夜中にスイーツをこっそり食べるのが私の密かな趣味でもあった。

 

 「あ」

 「……もご」

 

 行きつけのスイーツ店に入るとこの店限定のパフェを三つほどテーブルに並べた正義実現委員の副委員長、ハスミ様が居た。

 

 「………美味しいですよね。このお店のパフェ」

 「…そ、そうですね。ショウさんもパフェを食べに?」

 「はい、真夜中こっそり食べるスイーツが好きで度々ここに訪れるのです」

 

 ハスミ様に許可を貰い、彼女の対面に座ってパフェを注文する。

 

 「こうして会うのは数ヶ月振りですね。ハスミ様」

 「私の事を様と呼ぶのも変わりませんね。呼び捨て構いませんと言いましたのに」

 「これは癖のようなモノですのでお気になさらず」

 

 元々私は人に対して様付けをする習慣がありませんでした。“様“と付けるとどこか余所余所しい気がして好きではなかったのです。ですがナギサ様やミカ様などティーパーティの方々に失礼があってはいけないよう習慣を付けた結果、名前を呼ぶときに咄嗟に様がつくように…これはこれでメイドのフリをするのに役立ちそうですね。今度メイド服を買ってみましょうか。いっそのこと部隊のみんなでコスプレパーティも良いかも知れません。絶対に楽しいです。

 

 「最初聞いた時は驚きました。まさかショウさんが不良になってしまうとは」

 「トリニティは私には合わなかった。そう、ただそれだけの事だったのです。私は表情筋があまり動かないので冷たい印象になりがちですか。政治とか派閥争いなどはくっっっっそどうでも良いです。友人と一緒に戦車でドライブしたり今のように深夜にこっそり甘味を食べる事の方がずっと有意義なのですから」

 「私もショウさんと食べるパフェが好きでしたが深夜にこっそり食べているのは初耳ですね。それと仮にも貴族の令嬢なのですからもう少し丁寧な言葉使いをしてください」

 

 それはそうです。なにせ正義実現委員会にバレないようこっそり隠れながら食べるのが楽しいんですから。あと…。

 

 「外遊家の娘として生まれたからには自分に素直に生きていきたいとおもうのです」

 「…はぁ、ショウさんの御両親の苦労が目に浮かぶようです」

 「お言葉ですがハスミ様、私に娯楽の楽しさを教えたのはお父様なのですよ?」

 「…はい?」

 

 パフェより先に届いたメロンジュースを口に含み喉を潤す。このスイーツ店はソフトドリンクも美味しいのでついつい飲み過ぎてしまいますね。

 

 「こうして真夜中に食べる甘味の味も、ゲームで遊ぶ楽しさも、友人と遊ぶ嬉しさも、全てお父様が教えてくれましたよ。最終的にお母様にバレて鬼のような形相でお父様が連れて行かれましたが」

 「………この親にしてこの子あり、ですね。まさか親子揃ってこうだったとは」

 

 それは褒め言葉なのですか?なんだか貶されているような…いえ、気のせいですね。

 

 「ショウさん、トリニティに戻ってくるつもりはありませんか?」

 「…すみません、ハスミ様、あの頃のようにハスミ様と二人だけの夜を懐かしむ気持ちがないと言えば嘘になります。ですが私は自由を求めたのです」

 「そうです…ちょっと待ってください紛らわしい言い方をしないでくれますか!?あの頃はショウさんと一緒に勉強をしていただけですよ!?」

 「あら♡あんなにも優しく腕と腕を絡め合っていたと言うのに忘れてしまったのですか?」

 

 椅子からガタっと立ち上がりほんのり顔を赤くするハスミ様を見て表情が動かないので心の中で少しだけ微笑む。

 

 「ショウさん!?あれは同じ姿勢では体に悪いのでお互いに伸びをしただけのことでしょう!?」

 

 ハスミ様はこんな冗談にも引っかかってくれるので一緒に居て楽しくはあるのですが正義実現委員会の仕事もあるのであまり遊ぶこともありませんでしたし。

 

 (あそこの人ってもしかして…)

 (でももう一人の方は勉強してただけだって言ってるよ?)

 

 あ、これは不味いですね。私だけならともかくハスミ様まで巻き込まれで勘違いされるのはよくありません。こう言うの冗談はハスミ様と二人きりか友人と一緒の時にしましょう。

 

 「ふふ、冗談です」

 「な!?…あなたの場合は真顔で突拍子もない事を言うので心臓に悪いんですよ。気をつけてください!」

 「ハスミ様が綺麗に反応してくれるのでつい、魔が差しました」

 

 知り合いと居ると気が緩んでしまうんですよね。あまりそう言う感じに見られてないませんが……顔を解したり笑顔の練習をした方が良いのでしょうか?

 

 (ほら、あの無表情な方が冗談だって言ってるじゃん?)

 (でもあの二人の雰囲気なんだかただの友達って言うには近くない?)

 

 あ、あれ?おかしいですね。大概の方はこれで誤解を解けたりするのですけど。

 

 「聞いていますか!ショウさん!」

 「ちょ、ちょっと待ってくださいハスミ様、いまこの状況で顔を近づけるのは…」

 「?…また訳の分からない事を言って話題を逸らそうとしているんですか?」

 「ち、ちが。いえ本当に現状この態勢は非常に不味いですってば!」

 

 トリニティの生徒と思わしき子たちが少し離れた位置、しかもハスミ様の後ろ姿しか見えない場所に座って私たちの事を見ながら会話している。その様子にハスミ様はまるで気付いていなかった。

 

 (え、え、え?ちっか!何あれ何あれ!?凄く近くない!?)

 (い、いや、もしかしたら内緒話してるのかもよ?)

 (でもあの距離、絶対チューしてるって!)

 

 あ〜!いけません!お客様!それ以上はいけません!どうか、どうか誤解しないでください!私とハスミ様は至って健全な関係なんです!

 

 そう声を上げたかったがここで否定する方がかえって本当だと思われそうでできなかった。

 

 「は、ハスミ様、その話は後日ゆっくりとお聞きしますので今は押さえましょう…ね?ここは公共の場、何より飲食店ですし」

 「む…それも……そうですね。せっかくのパフェ、味わって食べなければいけませんね」

 「…ほ」

 

 今が真夜中で良かった。幸いにもあのお二方以外に私たちの事を見ている人が居ませんので後は噂が変な方向に広がらないように…。

 

 「それはそれとして、条約の時、ショウさんも現場に来ていたでしょう?その時のお礼がしたいので後日二人だけで会える日はありますか?」

 「ハスミ様!?」

 

 そんな燃え盛っている火にガソリンを注ぐような発言をしてしまっては!?

 

 (聞いた!?二人きりで会える日はありませんかだって!)

 (じゃ、じゃあ本当にあの二人は…)

 

 案の定今の発言によって後ろのお二方の勘違いが加速してしまった。こう言う時に耳が良いのが恨めしいです。

 

 −−−せめて、せめてあのお二方の間だけで盛り上がって欲しいところなのですが…!

 

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