「……か、勝てましたわね」
「当然です!この私とリジーが居て負けるだなんて有り得ません」
う〜ん、あのチンピラたちの話を鵜呑みにするなら情報のすれ違いを起こしてる?チンピラAは他の誰かが言ったと証言して、チンピラBはAがやろうぜ!と言ったと証言してる。つまり誰が言ったか分からん状態になった。ああ言う集団なら有り得そうな話ではある…か?
「さっきのは一体何ですの?とーっても凄かったですわ!一つひとつの指示が的確で、呼吸がぴたりと合うような感覚……まるで、幼い頃、共に過ごした愛犬と再会を果たしたような……もしや……あなた様は遠い昔に生き別れになってしまった幼馴染なのでしょうか?」
「犬どこに行った!?」
「それに先生はキヴォトスの外からやって来たので幼馴染でもないと思いますよ?」
「あら……そうでしたか」
露骨に落ち込んでるし。そんなガッカリする事か?
「いやはや、お嬢さんの動きも素晴らしかった。その格好……百花繚乱の子だね?」
「百花繚乱?」
「リジー、あれですよ。百鬼夜行の調停役…所謂風紀委員の事です。現在は「解散令」と言うのが出されて謹慎中らしいのですが…なぜ「解散令」が出されているのかは不明、委員長と副委員長も所在が分からずとのこと」
あぁ、確かにあったな、名前だけは聞いてたがそんな事になってたのか。
「そっちのお嬢さん、中々詳しいなぁ、流石はリジーカンパニーの御令嬢と言ったところだろうか」
「リジーカンパニーの御令嬢?……い、いえ…それよりもそのお話については語弊があると申しますか……今、確認しているところと言いますか」
「…確認、ですか?」
つまり真相はまだ定かではなく、その噂が出てると?けどコンの情報網に引っかかってるしな。彼女には悪いけども確かな話だと思うが。
「身共がここに居ると知られたら、逃げて来たのがバレてしまう…とやっぱり、ここは何も言わない方が……ううーん……」
事情がありそうだが、本人が隠したがってる以上は余計な詮索はしないでおこう。今は他に優先したい事もある。
「どうやら事情があるようだな。まあ、詳しいことは分からんが……助かったよ、お二人さんに、カンパニーのお二方。ありがとう。てっきりどこかで落としたものかと思っていたから…」
「いえ!これくらい……もしお困りでしたら、いつでも身共が力になりますの!」
「私たちカンパニーはキヴォトスのどこでも駆けつけますのでどうぞお気軽に連絡してください!」
ちょ、コンそんな事言って大丈夫か!?流石にうちの職員でもどこでもは難しい気がする……いや、案外いけそうだな。多種多様な社員と傭兵たちと様々な武装が存在するから文字通り火の中水の中でも行けるような気がする。なんなら宇宙には既に行った。
なんだか他にも行けそうな所がありそうだと言う思考を一旦振り払って当初の目的であるマッピングを再開しようとしたところで百花繚乱の子が声を掛けて来た。
「改めて、ご挨拶を申し上げますわ」
とそこで一旦言葉を切り、目を閉じ。一気に見開いた。
「身共は、かで……っ!…ユ、ユカリと申します。先ほどは助かりましたの」
「“困っている生徒を助けるのは当然だからね“」
「気にするな、ああ言う輩には慣れてるからな」
先生に関しては案の定だ。と言うかお前ほんとになんでここに居んの?祭りだからって事でこっちの顔見知り生徒にでも呼ばれたか?せっかくなので祭りを楽しみましょうって。
「ええと?人助けを当然のように行い、そのうえ誇ろうすらしないなんて……ッハ!」
おい、それ何に気付いたんだ。絶対違う事考えてるだろ。
「そういえば身共、レンゲ先輩から聞いたことがありますの……!そう言った行為は巧妙な罠なのだと!初めは優しい方だったのに、後になって「オレだよ!オレ!」と言い、あり得ない額の金銭を要求する不届き者が居るとか居ないと……!」
「ゴフッ!?」
「り、リジー!!気を確かに持ってください!傷はほんの致命傷です!」
「“それ手遅れだよ!?“」
い、一部合ってるとこがあるだけになんも言えねぇ。だ、だがそれも大分改善されたからセーフ、寧ろ今まで以上に発展してるから良くなってるはず!
「“え、え〜こんな感じだけど私はシャーレの先生で、こっちはテレビとかで見た事あるんじゃないかな?彼はリジー、リジーカンパニーの社長だよ“」
「なんと……どこかで見たことのある方だと思いましたが、元カイザーPMC理事にして「貴様ら全員黙って座れ!!!質問がある者は挙手をしろ!!!」と記者の方々を沈黙させただけでなく、貧困に苦しんでいた子供たちを守護するあの方でしたの!」
そこかぁ!キミが知ってるのそこなのかぁ!しかも守護するってそんな大層な言い方しなくても。大袈裟なんだよ色々と。
「あ〜リジー、ユカリさんが言った事は全てネット情報に記載されてる事実ですよ?誰もがもうダメだと諦めていたアビドスを盛り上げエデン条約での混乱をたった一日で収束させ、身寄りのない生徒に居場所を用意して、カイザーコーポレーション所属にも関わらず同じ所属の不正を暴き、シャーレ奪還戦での大立ち回り……更にあまり多くには知られていませんが赤い空事件の活躍、リジーの事を英雄視する人は少なくないです」
「なんじゃそりゃあ!?初耳なんですけど!?」
英雄って、俺と掛け離れた存在だろ!?それこそこの世界の主人公である先生が英雄視されるのは分かるが俺!?
「アビドスから根を張るように手を広げていく事から“砂漠の大樹“なんて二つ名もありますよ?良かったですね!暁のホルスやゲヘナ最強のような二つ名がリジーにも出来ましたよ!」
「嬉しくない!寧ろこそばゆいわ!しかもそれだとホシノやヒナと同格に見られてるって事じゃないか!正気か!?」
「“こうして、キヴォトス最強格の仲間入りを果たした海崎リジーであった。めでたし、めでたし“」
「貴様面白がってるだろ!」
冗談じゃない、正義実現委員のツルギやC&Cのネルとも同格って言ってるのと同じだぞ。自分でもあの四人とどれだけ差があるのかは分かってるつもりだ。
「ふむ……このご恩は、どうすればお返し出来るのでしょう。–––決めましたわ!せっかくですから、百鬼夜行をご案内します!」
「なんと!リジー、これは渡りに船!地元民の案内があるなら想定よりも早くマッピングが終わりパンフレット作りに専念出来ます!」
確かに、これを機に百鬼夜行とコネを作るのも良いかもしれない。アビドスで祭りをするのはまだ先だが、お祭り運営委員会とコネが出来れば大助かりだ。
−−−それからはユカリに百鬼夜行を案内してもらい、おすすめの食事処や遊戯施設を教えてもらいながら情報を整理していると多くの人が忙しなく動いている場所に出た