「凄い賑わいだな。百鬼夜行の祭りはいつもこんな賑やかなのか?」
「“そうかな?私はいつもと雰囲気が違う気がするけど、それより祭りって?“」
「なんだ。知らなかったのか先生、近々ここで20年越しの祭りが開催されるみたいでな、その祭りの名を「百鬼夜行燈籠祭」…俺とコンの目的もその祭りだ」
先生も祭りを目当てにやってきたと思ったんだが予想が外れたな。なら今回は生徒に呼ばれただけか。
「確か、この祭りは百鬼夜行にとっては特別な祭りだとか」
「まさにその通りですの!これは学園に伝わる伝承なのですが…昔々、百鬼夜行学院は紛争の時代を乗り越えると、百鬼夜行連合学院に名を変え、生まれ変わりました。しかし、争いが終わったとがいえ、すぐに傷が癒えるはずもなく……そこで、人々の不安を解消するべく、当時の百鬼夜行で中心になっていた方が提案したのが、この「百鬼夜行燈龍祭」です」
うむ、その地区の祭りはその場所の個性が強く出る。今回の祭りを通して何か得るものがあるはずだ。
「過去の傷を燈龍に乗せ、これからの未来を願う……そうして、皆の心を通じ合わせるのだと聞きましたわ」
「“でも20年前に廃止って……どうして?“」
「ええと……それは……当時の詳しい状況までは身共も聞いておらず……そこまでは」
俺も現地人に聞いたけど誰も彼もが分からないと口を揃えて言うから何にも分からなかった。20年前の事なら知ってる人が居てもおかしくないんだが。
「そんな些細な事、重要ではありませんよ」
「はいっ!?」
「いえ割と重要だと思うんですが、20年ですよ?そんな大事なお祭りが20年も開催されなかった理由…とても気になります!」
「ははは!好奇心旺盛なお嬢さんだな!君らはお手伝いさんかい?それとも、早く来ちゃっただけの観光客かな?まあ、どちらでも構わんが……この光景は中々のもんだろう?」
確かに、ここまで賑やかなのはキヴォトスじゃそう見ない。
「20年前に何があったのかは知りませんが……こうしてお祭りを復活できるのは喜ばしい事です」
「ああ、そうだな。なんたって、百鬼夜行はお祭りの学園だからな!」
「なにせあんな出来事がありましたから……自然とみんな、力が入ると言いますか」
「おかげで忙しくて目が回りそうだよ!まさに猫の手も借りたいとはこの事だな!ハッハッハ!」
いやハッハッハって、全然困ってるようには見えないんだけども。それだけ祭りが楽しみってことか。
忙しなく動いている人たちを見渡していると、見覚えのある後ろ姿が角材を運んでるのが見えた。
「見覚えがあるって言うか…サオリ!?」
「ん?…あぁ、リジー、それにコンと先生か三人共祭りの前に下見に来たのか?」
「俺とコンはそうだが…先生は知らん。お前は?」
「バイトだ」
バイトか…俺よりも先にこの祭りのチラシを見つけてたのか。じゃあ近くにスクワッドも来てるのか?
「先日、周辺をパトロールしていたらこのチラシを貰ったんだ。姫たちにも見せたら行きたがっていたから、少しでも姫たちの為に出来ることはないかと考えた結果、祭りが上手くいくよう手伝う事にした」
「そうだったんですね。私たちはスズカさんたちの為のパンフレット作りです!」
「…お互い考えることが似ているな。出来れば私も協力したいが…」
「お〜い!サオリちゃん!その角材はこっちに持ってきてくれ〜!」
サオリは作り掛けの屋台の近くで呼んでいる人に目を向けてから苦笑しながらこちらを見る。
「バイトが忙しくて手伝えそうにない。祭り当日は姫たちと一緒に回るつもりだが合流することがあれば一緒に回ろう。またな」
「あぁ、サオリも怪我をしないように気をつけろよ」
…彼女も祭りを楽しむのが分かった安心したと言うところでさっきから先生が会話に入り込んでこないんだが、どうしたんだ?
そう思い後ろを振り返ると雀の獣人がユカリの事を追いかけてそのままどこかに行った姿が見えた。どうしてそんなことになってるんだと困惑しながら先生を見ると先生も困惑しているようだった。
「“嵐のような子だった……そうだ。これから陰陽部に行くけど、二人が良ければどう?“」
「陰陽部か、遠慮しておく。陰陽部と縁を持つのも悪くないが今はそれよりも優先することがあるんでな」
「はい!私たちの最重要ミッションはスズカさんたちが祭りを楽しめるようにすることですから!」
「“そっか、それじゃあ二人とも、またね“」
それにしても陰陽部か、先生は相変わらずとんでもない組織と関わりを持ってるなぁ。あ、結局なんの用でこっちに来たのか聞けてない…まぁ、また今度聞けば良いか。
−−−ある程度百鬼夜行の地理を把握した俺たちは会社に戻り幹部総出でパンフレット作りに勤しんだ。追記するなら情報量が多すぎて整理するのが大変だったと言っておこう