「え〜つまりぃ?社長は百鬼夜行に呼ばれた先生が、その後百花繚乱っつう組織の立会人になったのに何か理由があるって?」
「立会人になるだけなら問題はなかったんだが。偶然の重なり合いが問題なんだ」
「んなこと良くあるだろ?悪く考え過ぎ……って言えねぇのがなぁ。社長と先生だから否定できね」
なんかもうそう言う体質なんだろうか。
「それはそうと、先生はどこに居るんだ?モモトークでも「大丈夫だからみんなと祭りを楽しんでね!」って返ってきて完全に気を遣われてるし」
「しばらく歩き回るしかないですね。百花繚乱の生徒と一緒だと黒服さんが言ってましたし見つけやすいと思いますが」
「やれやれ、私たちも百鬼夜行の祭りを楽しみにしていたのだけどね」
「まぁまぁ!いつもみたいにサクッと解決してからいっぱい遊べば良いでしょ?簡単簡単!」
今回は言うほど簡単ではないと思う。百花繚乱の幹部に立会人を拒否された上に、継承戦を行うための相手が行方不明。これじゃそもそも継承戦自体が出来ないんじゃないか?…黒服が言ってた幹部ってのが全員って訳じゃなかったり?
「何にせよ先生が見つからない事には何も出来ませんが」
「………おい、てめぇ、何をサラッと付けてやがる」
「ひょっとこさんです」
「なにサボってんだ!ショウ!遊ぶのは後だってさっき言ってただろ!」
姿が見えないと思ったらお面買いに行ってたのか。
「まぁ!隊長はまさか私がただ遊んでいただけと仰るのですか?」
「お前の事だから十分有り得る!」
「私、信用がないのですね。悲しいです!およよ〜」
なんならお前、片手にフランクフルト持ってるの見えてるぞ?気分は既に祭り状態じゃん。
「それはそれとして、先程お店の方に聞いたのですが先生と百花繚乱の方をあちらで見かけたらしいですよ?」
「その情報を先に出せよ!?時間ねぇんだぞこっちは!」
「ふふ、久しぶりのお祭りでついはしゃいでしまいましたわ」
それはちょっと気が早いかな!祭りは夜だから!すっごく楽しみにしてるところ悪いんだけどもしかしたら祭りが中止にになる可能性もあるから!
「で、こっちの方に歩いて来たは良いが。先生はどこに…って居たな。あの建物の中に入っていくぞ」
「百花繚乱の生徒と一緒ですね……あれ?あの人はユカリさん?」
やっぱりか、黒服の言っていた先生と行動している百花繚乱の生徒はユカリの事だったみたいだな。大方、陰陽部に呼ばれた先生が百花繚乱絡みのことでどうにかしてほしいと頼まれたのを引き受けたんだろ。
ぞろぞろと入るのもあれだからコンとスピアだけを連れて建物の中に入る。
「…今日は来客が多いね」
「客は客でも俺たちはそっちの先生に用があるだけだが」
「シャチョー、言い方がなんか怪しい感じだよ」
「今まさにお礼参りをしに来たチンピラのようなセリフだったね」
え、そんな風に聞こえたのか?
横目でコンを見るとコンも同意するようにコクコクと頷いている。どうやら相当チンピラぽかったらしい。
「“確かリジーはパンフレットを作るのに忙しかったんじゃ?“」
「それはもう終わった。ただ先生に聞きたいことがあってな、それで探しに来たんだ」
「“聞きたいこと?“」
「まぁ、先にそっちの用事を優先した方が良さそうだが…」
察するにあの猫又生徒に立会人を頼みに来たってところだろうし、だがもう片方の生徒は知らんな、誰だ?
「え〜っと、初めまして、俺は海崎リジーと言うものだ」
「あ!これはご丁寧にどうも、私はお祭り運営委員会委員長の河和シズコと言います!」
お、お祭り運営委員会と顔合わせが出来たのは良いな。祭り頼む時にやりやすくなる。
「“あ、そうだ。リジーは勘解由小路の巫女って知ってる?“」
「勘解由小路?」
「丁度先生にその話をしていたところなんですよ!」
「………あぁ、この祭りだからか」
一瞬なんのことだか分からなかったが。コンと百鬼夜行について調べた時に知った知識がここで役に立つとは。
「勘解由小路は代々、百鬼夜行の祭事や行事などの役を担ってきた由緒ある家系だと記憶してるが…合ってるか?」
「…合ってる。ならその立場の話はするまでもないかな、百鬼夜行の誰もが、その名を知っているのだから」
「“…歴史の長い一族ってこと?“」
と言うか先生!お前はなぜ俺に聞く!地元民がそこに居るだろ!地元民が!!俺より詳しい相手が居るんだからそっちに聞けよ!
(リジー、勘解由小路の名前が出た時からユカリさんの様子が変なんですが。もしかして?)
(そのもしかして…だろうな、色々とタイミングが悪かったかもしれん)
(あ〜ややこしい事になってんだな?話の流れが不穏じゃねえか)
俺たちがコソコソと話してる間に話はどんどん進んでいき、ユカリがなんの目的でここに来たのかと言う事をキキョウと呼ばれた猫又生徒に立会人を頼んでいた……が。
「…うん、言葉にするまでもないかもしれないけど––––」
「–––断る」
キキョウはその申し出を一刀両断した。これには先生たちも予想外で目を見開き驚いていた。
「あっ、え?ど、どうして……!?」
「“…っえ“」
「な、何故ですかキキョウ先輩!?先輩は今もこうして調停室に居るくらいですから、当然……当然、身共の考えにも……」
「賛同すると思っても、仕方がない…か」
「“…リジー?“」
解散間近の組織に残り続けると言うのは、何も組織を存続させるためだけじゃあない。なんともまぁ…損な役回りを。
「そっちの人は分かってるみたいだね」
「…これでも会社のトップなんでね」
組織のトップが居ない上に解散まで言われちゃ、その部下の殆どは何も出来ないだろ。
「そう…あの人は–––百花繚乱に帰ってこない。いや………確かに一度帰って来たと言えばそうかもしれないね。アヤメ委員長から受け取った「証」を–––返却する為に」
「ナグサ先輩が……「証」を、返却……?そ…そんなはずは……」
「証」?百花繚乱の委員長である証明…なんて単純なものじゃなさそうだな。何か特別な意味があるんだろう。くっそ、今の今まで百鬼夜行のことを調べてなかったのを悔やまれる!
「私たちを見捨てたあの人を、もう百花繚乱だと思わない方が良い」
「ですが……それでも!」
「なら、仮にあんたが望む通り「継承戦」を行うとして–––ナグサ先輩を倒して、委員長の座を引き継ぐ。その考え自体は立派だと思うよ。ただ、何か忘れてるんじゃないの?」
「……!」
「あんたが–––ナグサ先輩に勝てるとでも?」
不味いな、今回の一件は間違いなく百花繚乱の存続を目的としたもの、だが肝心の幹部がこれじゃあ、どうにも出来ない。マジでなんも手出し出来ねえなコンチキショウ!
「あの人は強いよ。あんたよりも、ずっと」
「いいえ……!身共は……身共は……勝てますわ!身共は……百花繚乱の、えりーと……ですから!」
「私にも勝てないのに?」
「や、やってみなければ分かりませんの!」
場の空気がどんどん重苦しいものへと変化していく。ユカリは完全に相手のペースに乗せされて熱くなっている。
「分かりました……そこまで仰るのであれば、ここで身共の実力を証明して見せましょう!キキョウ先輩、あなたに模擬戦を申し込みます!」
「–––分かった。そんなに言うならあんたを夢から覚まさせてあげる」
「私に「継承戦」を申し込めば良い」
不味い、キキョウの方もヒートアップして来た。どっちでも良いから落ち着かせないとお互いにとって良くないことに。
「忘れたなんて言わせないよ。百花繚乱の正義は力の優劣で決まる。どうしても認めさせたいなら、私をねじ伏せれたら良い」
「……!!」
「“待って。二人とも、まずは落ち着いて……“」
先生の声を掛けてはいるがこれじゃあ焼石に水、何か気を逸らせるような話題はないのか!
「…社長、どうするよ?」
「……どうにもならんなぁ、今回ばっかりは。困ったことにな」
−−−その後、始まったユカリとキキョウの「継承戦」は一方的と言うしかない、戦いにすらならない。いや…させてもらえないモノだった。