成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百五十話 またやっちまったかもしれん

 

 「はぁ……はぁ……」

 「“ユカリ!“」

 「み、身共は…って大丈夫です、わ…」

 「こ、ここまでする必要はないんじゃ……ちょっと酷すぎませんか!?」

 

 百花繚乱は終わったと思い知らせるためとは言え、容赦が無いな。さて、どうしたもんか。殆ど事情の知らない俺たちが首を突っ込んでも事態が好転する気がしない。

 

 「これが百花繚乱の継承戦。分かったよね、これが現実だよ。ナグサ先輩と「継承戦」をしたところであんたじゃ勝てない。あんたのわがままは所詮、夢物語。最初から独りよがりのままごとだったってこと」

 「み、身共、は……ただ、身共は……皆様と百花繚乱としての活動していたあの日々を……取り戻したくて……」

 「ハッ……笑わせないで。ナグサ先輩を倒して委員長になる、だなんて言ってるけど……私にも勝てないようじゃ、それは夢とすら言えない。私はレンゲと違って優しくないから、ハッキリ聞くよ。本当にナグサ先輩を倒して、元に戻りたいと思ってる?」

 

 流石にこれは止めた方が良いんじゃ。だが、俺が止めたところで、どうすれば良いのか分からんぞ。あぁもう、もどかしいな!!

 

 「答えられないよね。そもそもあんたが百花繚乱に居るのだって、家を継ぐまでのお遊びなんだから」

 「おい!流石に言って良いことと悪いことが!「リジー様」…ショウ?」

 

 普段は俺の行動に対して何も言わない。いや、むしろもっとやれと煽るショウが俺のことを止めた。お面越しで表情は見えなかったが。もうしばらく見守っていろと言うことか?

 

 「…シャーレの先生に聞くけど、そこのお嬢様は、あんたに全てを打ち上けた上で助けを求めたの?自分は勘解由小路の人間であり、家に生まれた者の「義務」がある–––けれど自分のわがままで百花繚乱の活動を続けたいって、そういった家の事情を、本人の口から聞いた?」

 「…」

 

 あの反応からすると、話してないんだろうなぁ、だけどそれもしょうがないと思うぞ。先生は気にしないかもしれないけど、自分が貴族の娘ですなんて言ったら。そんなもん、貴族の娘としか見られないじゃないか。

 

 「そんなわけないよね。だって全部、お遊びなんだから。あんたには百花繚乱が無くなっても帰る場所がある。初めから私たちとは違うの。そんなあんたが語る、脳天気な夢に付き合わされる身になってよ」

 

 「ほんと、正直……反吐が出る」

 

 あぁ〜どうすりゃ良いんだこれ。百花繚乱のストーリーは知らないからこのまま進んで良い方向に進むのかどうかも分かんねぇ。けどほっとけないし。

 

 「お嬢様のお遊びはもうここまでにしてくれないかな。ねえ、そろそろ夢から覚めた?」

 「……」

 「認めたら?百花繚乱ごっこ(・・・)は、もう終わったんだよ」

 「はい!そこまで!」

 「「!?」」

 

 思わず間に入ってしまった。どうしよ。

 

 「まず、二人とも、冷静になりなさい」

 「…横から入り込んで来てなに?私は元から冷静…」

 「だったら「反吐が出る」なんて言葉は間違っても出てこないと思うがな、それは相手を必要以上に傷付ける言葉だと分かった上で口にしてるのならお前は相当冷たい人間なんだろう」

 「だったらなに?言ったでしょ。私はレンゲ違って優しくないって」

 

 先生に後でフォロー頼めると良いんだけど。

 

 「そうか、なら…俺が今からユカリに対して百花繚乱の存続がどれほど難しく、どれだけ不可能なのかを親切丁寧に説明してもお前は止めたりしないな?」

 「…何それ。あんたに何の権利があってそんなこと」

 「ん?逆に聞くが俺はただ。難しいと言う事を説明するだけだ。お前にそれを止める権利はあるのか?百花繚乱の事を諦めてるお前に。ユカリが諦めれば百花繚乱の解散は決まったも同然だ。何せ彼女だけだからな、継承戦を挑もうとしてるのは」

 

 久しぶりにやったぞこの悪役スタイル。どこまで通用するか分からんがもうヤケだ!やれるとこまでやってやる!

 

 「夢物語なのだろう?ごっこ遊びなのだろう?ならはっきりと言ってやれば良いじゃないか。百花繚乱は「止めて…」……なぜ?」

 「…態々言う必要、ないでしょ。もう、終わったんだから」

 「終わった?何が?ユカリの中では百花繚乱は終わっていない。なら…彼女の中の百花繚乱を終わらせてやれば手っ取り早いじゃないか。世間知らずの小娘は、現実を知り、ごっこ遊びから手を引くのだから」

 

 キキョウが歯を食い縛り俺の事を睨みつける。後ろの方でユカリが困惑しシズコがオロオロとしているのが見えるが。先生が落ち着かせている。これは任せてくれてるって事で良いんだよな?

 

 「所詮は貴族の道楽、必死こいてやっている訳じゃない。飽きたら辞める。出来もしない目標を掲げてまだ夢を見ている」

 「……が」

 「ん?声が小さくて聞こえんな。何だって?」

 

 「あんたが!ユカリの何が分かると言うの!!」

 

 煽ったとは言えキキョウの大声に驚いてしまい、若干仰け反っている間に銃を下から突きつけられた。

 

 「お前が言ったんじゃないか…貴族の道楽に付き合わされるのはもうごめんだって」

 「確かに…私はそう言ったよ。けどね。みんなが口を揃えて、これで百花繚乱は終わり、全部壊れてしまったんだって言うの…なら本当に壊れてしまう前に終わらせてしまうのが情というものでしょう……?」

 

 本音を引き出すことが出来れば良いなぁくらいには思ってたけど結構効果的だった。ナギサ襲撃の時も思ったけど俺ってこう。そう言う雰囲気があるのかね。相手をムカつかせるオーラみたいな。

 

 「誰よりもナグサ先輩に憧れていた彼女が、これ以上傷つく前に–––まだ帰る場所がある、あの子には……深い傷になる前に」

 「…自分が傷をつけて遠ざける?ハッ!矛盾だな、そうして百花繚乱から遠ざけたユカリの行末は…勘解由小路という家に縛られた小娘にしかなれんよ。帰る家がある?あぁ、それはなんて素晴らしいことなんだろう!家に帰ればユカリは何も心配がなくなる!……まぁ、もう今のユカリには会えなくなるだろうが」

 「!?…あんた、何を?」

 

 これはショウが貴族だから分かったことなんだが、貴族って結構しがらみが多いみたいだからな、跡取り娘ともなればそう言う風に教育されて“自分“という個を常に殺し続けれなければならない。常に家の責務を背負わされてそうであれと周りから押し付けられて、優しかった性格の友人が変わったり、壊れてしまったりしたのを見てきたって…俺には分からないけど。多分、物凄いショックを受けただろうな、ショウのやつ。

 

 「当然だろう?勘解由小路に戻れば、ユカリはもう勘解由小路ユカリとしてしか見られない…勘解由小路の跡取り娘としか見られない。誰もがこう褒め称えるのさ、「あぁ、流石は勘解由小路の跡取り娘!」ってな、そこには彼女の努力も、過程も、関係ない…ユカリの行動全てが“勘解由小路“としての行いにしか見られないのさ」

 

 ナギサ襲撃の時みたいな情報が無いからこれ色々と突かれればヤバい場所あるかもだけど今持ってる情報でなんとか。いやお前ら後方で腕組みしてないでなんかフォローしてくれよ!?

 

 「そ、そんなこと「ないって?」…」

 「言えないよな。だって俺がこうしてその可能性を話したんだから、はっきりと言ってやろう。お前の優しさはユカリを「隙あり!」どぉわ!?」

 

 予想外の方向からタックルを食らって一回転しながら転けた。反応すんのそっちなのか!?

 

 「キキョウ先輩に意地悪しないでほしいですの!キキョウ先輩はと〜っても優しい人なのですから!!」

 「…そのお優しい先輩はお前の事を傷付けたのに?」

 「そ、それは身共のことを思ってやってくださいましたの!キキョウ先輩は毎日身共の歯磨きちぇっくをしてくださる程優しい先輩ですの!」

 「ほ〜う、それはそれは…ん?歯磨きチェック???」

 

 なに歯磨きチェックって、園児のお母さんかなんかかよ!?

 

 「ユカリ……あんた」

 「確かに、キキョウ先輩に勝てない身共ではナグサ先輩に勝てないかもしれません。いえ、勝てない事など承知の上でした……それでも、身共は皆様と過ごす穏やかな日々を取り戻したかったのです」

 

 やるだけやって後先生に丸投げするつもりが。ユカリを再起動させた上により強い意志を灯させてしまったようだ。うん。これで分かったことあるんだが、この世界、大人の悪意に弱すぎね?

 

 「…あ、あの!!私が口を出すことではないかもしれませんが。一度、しっかりと話し合った方が良いと思います!それに、冷静になってと最初に言った筈の海崎さんが熱くなっては意味がないじゃないですか!」

 「うっ!それを言われると痛い」

 「ってか社長はいつまで転がってんだよ」

 

 起きる機会を失っただけだ。別に好きで転がってたわけじゃない。

 

 「はぁ、先生に用事があって来ただけなのになんで首を突っ込んだんだ俺は」

 「“あ、そう言えばそんなこと言ってたね。今なら聞けると思うから聞くけど、なんだったの?“」

 「いや、いい。お前はあの二人の話し合いに付き添ってやれ。今だったら素直な気持ちで話せるだろ」

 「“なんだか、ごめん“」

 「気にするな。俺が居たら話し難いだろうし散歩してくる。コンやスピアたちを残していくからなんかあったら伝えろ」

 

 俺は先生にそう伝えて、その場を後にする。後で話し合いの結果を教えてもらうためにコンたちを残すし、なんか起こっても大丈夫だろ。

 

 「そうだ。散歩ついでにこの地区の特産品とか見ていくか」

 

 久しく見ていなかった和服や、畳なんかの古き懐かしい物を見たり。買ったりして散歩という名の買い物になったのはまぁ、仕方ないの事だ。

 

 【 二時間後 】

 

 「よし、そろそろ話し合いも終わってるだろうし戻るか」

 

 頃合いを見て先生たちの所へ戻ろうとすると人通りのない路地から声を掛けられた。

 

 「久しいな。海崎リジーよ……この世界に定めれた役割から逸脱した存在よ」

 「…俺は会いたくなかったよ」

 

 声を聞いた瞬間そいつが誰か分かり、人が居ないことを確認してから路地裏に身を隠した。

 

 「お前も、私も、この世界によって役割を定められた存在、なぜそう嫌悪する?」

 「嫌悪とかじゃなくて嫌な予感しかしないから会いたくないだけなんだが?“フランシス“」

 

 薄暗い路地を睨み付けると、そこからゆっくりとした足取りで、あの日、あの瞬間、この世界にやって来た来訪者が姿を表した。

 

 「そうか、ならばその予感は的中していると言えるだろう。故に私はお前に選択肢を与えに来た」

 「……選択肢?」

 

 何を言ってるんだこいつは。嫌な予感が的中していると言うのに選択肢?

 

 −−−本当なら無視して離れた方が良いのだろうけど、少しでも百鬼夜行の情報を引き出すために俺は奴の話を聞くことにした

 

 

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