成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百五十九話 燈龍に想いを載せて…

 

 「はいよ!たこ焼きの海苔抜き二人前、熱いから気を付けて食べろよ」

 「ありがと〜!」

 

 あの出来事から一週間、屋台や屋台に使われる出し物はあの炎でそこそこ燃やされてしまったが百鬼夜行に来ていた俺の部下たちのお陰で被害は最小限に抑えられた。後から聞かされたが先生の方も百花繚乱についての問題を解決できたようだ。それで…現在俺が何をやってるのかと言うと。

 

 「む、エンジニア君、新しくマヨを出してくれないか。そろそろ無くなりそうだ」

 「どうぞ。ソースの方も補充しておきましょうか」

 「頼んだ」

 「社長、タコの追加持って来たぜ!」

 

 これを機にお祭り運営委員会と顔繋ぎが出来ればと思い、祭りのやり直し準備を手伝い幾つか屋台を出す事にした。俺とエンジニア君と警備はたこ焼きの屋台だ。蛸に罪はないからな…例えムカつく相手を思い出すとしてもそれは蛸とは関係ないんだ。

 

 「たこ焼きを3つお願いします!」

 「はいよ!ってスズカたちか、三人で祭りを周ってたのか?」

 「はい!最初は部隊のみんなと周るつもりだったんですが、せっかくのお祭りなんだから友達と見て来てと気を遣ってくれましたので、お言葉に甘えさせてもらいました!」

 

 スズカの部隊員も友達だとは思うが、彼女たちの場合は境遇が境遇だったからどっちかと言うと仲間意識とか家族意識の方が強いのかもな。

 

 「それと、たこ焼きを買いに来たのもあるのですが。そろそろお祭りのメインイベント、燈龍流しが始まるので一緒にどうかとお誘いに来ました」

 「俺もそうしたい所だが…」

 

 たこ焼き焼いてるしなぁ。いつか祭りをやる為にやっておきたい気持ちはあるが、忙しくて手が離せない。

 

 「ここは私たち二人でも問題ありませんので行ってきてはどうですか?」

 「そーそー、社長、今回も大忙しだったんだろ?俺らも燈龍流しが始まったら適当な場所で流しとくからよ」

 「ふむ…ならそうさせてもらおう」

 

 申し訳ない気持ちを抱えつつどうしても逃せないイベントだったので二人に屋台を任せてからスズカたちと移動する。

 

 「あいつら全員バラバラに行っちまったから暇だったんだよな〜アタシ、スズカたちと合流出来てラッキーだったぜ!」

 「私はお二人と楽しみたかったので丁度良かったです!初のお友達と行く初めてのお祭り!良い思い出になります!」

 「あ、コン、口の横にソース付いてますよ。ちょっと拭き取るでこっち向いてください」

 

 楽しんでるようで何よりだ。正直あの怪異事件が起きた時は中止を覚悟してたが、百鬼夜行の人たちが中々に逞しくてあっという間に再開まで漕ぎ着けたんだよな。なんと言うかびっくりだ。

 

 運営委員の人から燈龍を受け取り、四人でさぁ流すかというところでスズカが静かに語り出す。

 

 「仲間たちが一人一人と亡くなっていく中で、どうして私だけが生きているんだろうとずっと悩み続けていました……」

 

 燈龍の灯りが一つ、また一つと水の上に浮かんでいく。

 

 「苦しくて、寒くて、寂しくて…それでも私はみんなの隊長だから…みんなを守らないとって、生きて、生きて、生きて、生きて。生き続けたんです」

 

 スズカは目を閉じた。アリウスの残酷だった頃を思い出しているのだろう。彼女は、隊長と言うたった一つの肩書きを持っていただけの一人の生徒でしかなかった。だが、その一つの肩書きが彼女の生きる理由になった。

 

 「それでも、冷たくなっていく仲間は減らなくて、みんなを墓に埋めていく度に泣いて、もう…どうにもならないんじゃないかと諦めかけた時に、皆さんに出会ったんです」

 

 彼女はゆっくりを目を開け、柔らかな笑みを浮かべる。

 

 「あの会社に居る時、これは限界が訪れた私が見ている都合の良い夢なんじゃないかと疑ってました。私の願望が現実のように見せ掛けているんだって……でも、暖かな寝床が、暖かい食事が、冷たくて優しい大きな手が…全て現実だって教えてくれるんです」

 

 ゆらゆらと水の上を流れていく灯籠を見つめながら、彼女は続ける。

 

 「夢のような日常が……奇跡のような幸福が、私たちにこの世は虚しいだけじゃないと背中を押してくれるんです。だから、私はこの燈龍に今までの体験を載せて流したい…私を守ってくれたあの人には届かないかもしれない。私に夢を託してくれたあの子には届かないかもしれない…それでも……こんな私に夢を…希望を託してくれたみんなにこの想いを届けたいんです」

 

 ゆっくりと祈るように膝を折り、慈しみながら燈龍を流した。その目には涙が浮かんでいてポタリポタリと水面を揺らす。

 

 「このお祭りが初めてで良かった。もし、届くなら…私たちは幸せだって伝えたい…もう、心配しなくて良いよと…彼女たちが少しでも安らかに眠れるように」

 

 俺は彼女の話に耳を傾ける。なんとなく口を挟んではいけないような気がして、ただ黙って燈龍を水に浮かべた。ただ…

 

 −−−この先も、歩み続ける彼女たちの道が明るく幸せに満ちた未来である事を切に願う

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