成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百七十話 色々と複雑な関係なようで

 

 「……おかしい」

 「何がおかしいんすか社長」

 「今日一日エンジニアくんの姿を見てない」

 「そんな時もあるんじゃないっすかね」

 

 警備のやつは居るのに。いや、こいつの相方が居ないな。どうなってんだ本当に。

 

 「お前の相方は?」

 「相棒なら風邪引いたんで休むらしいっすよ」

 

 風邪か、なら居ないのも納得だが、エンジニアくんはどうして居ない?昨日の話を共有しようと思っても全く見つからんのだが。

 

 「…しょうがない、ちょっと外に探しに行ってみる。もしかしたら足りない備品とか調達してるかもしれん」

 「あ〜じゃあ俺も付き合うっす。これでも警備兵なんでちゃんと仕事してるとこ見せないと」

 「これでもも何もお前は元から警備兵だろうが!」

 

 自分で言うくらいには警備兵の仕事やってないのかお前は!全く。そもそも昨日はどこ行ってたんだお前。

 

 「…あれ?エンジニアさんのモモトーク既読付かないっすね。あの人業務用モモトークに連絡入れると割とすぐ既読付くんすけど」

 「だからおかしいって言ったろ?」

 

 エンジニアくんどころか先生にも連絡が届かんし。コンも既読だけして返信返さないし。

 

 「あの〜」

 「話なら後にしてくれノノミ、いまはエンジニアくんを……ノノミと誰だ?」

 

 聞き覚えのある声に話しかけられたから振り向くとノノミの隣に片目を眼帯で覆ったコートと少女が佇んでいた。

 

 「…私は朝霧スオウ。ハイランダー鉄道学園、理事会直属の管理監察官だ……一応。ネフティスの代理でもある」

 「…スオウさん」

 

 その割には不本意そうな顔してるけど。え?ノノミとどう言う関係?なんか複雑な事情が垣間見えるんだが。

 

 「ある人物からお前ならば私の目的を叶えられると聞いた」

 「誰か知らんが俺はランプの魔人じゃないんだぞ。誰だ俺をそんな風に言ったのは」

 「…これを見せれば分かるはずだと言っていたな」

 

 スオウがポケットに手を入れ取り出したのは見覚えしかない忌々しい車の鍵だった。

 

 「あいつか…本格的に塩でも撒いて除霊してやろうかな。んで?あいつの知り合いが俺に何の用だ?」

 「…車の鍵で伝わるものなのか。これはお前たちの間の暗号か何かなのか?」

 

 暗号と言うより俺が良いように利用された苦〜い記憶だな。今回のことでカイザーコーポレーションが表にしろ裏にしろ関わってくるのが確定した。そしてこれはジェネラルからのプレジデントが妨害、もしくは何かを狙ってると遠回しに伝えようとしてるメッセージだ。分かりづらい伝え方して本当に腹が立つな。

 

 「ノノミ、お前は何でスオウと一緒に居る?」

 「人質…でしょうか?一応」

 「………爆弾発言をしてる自覚はあるか?」

 「…はい」

 

 ノノミからしても一応と言ってるから完全な人質ではないんだろうがそれでも人質と言う事は。カイザーコーポレーションがノノミを人質に?…いや、あの爺さんがそんな証拠を残すような真似しないか。

 

 「とりあえずお前の望みというのはなんだ」

 「本気の小鳥遊ホシノと戦わせろ」

 「お前、ホシノに何か恨みでもあるのか?」

 「いや、ない」

 

 意味が分からん!ホシノに恨みがないのにホシノと戦わせろ。お前ツルギとかネルみたいに強いやつと戦いたい戦闘狂なのか!?

 

 「俺がそれを叶える為のメリットは?流石に初対面でしかもうちの職員を人質にするような相手を前にはいそうですかと頷けるわけがないだろ?」

 「今回の総会でネフティスが何を企み、ネフティスと共に居る組織が何をしようとしているのか知りたくはないか?」

 「情報が俺に対するメリットだと?」

 

 俺が少しだけ威圧しながら問い掛けるとスオウは目を逸らさず小さく頷いた。それだけ自分の持ってる情報に自信があるらしい。

 

 「あの、私からもお願い出来ませんか?リジーさん…スオウさんはその、悪い人ではありませんから」

 「…ご令嬢、私は」

 「お願いします。リジーさん」

 

 なんだこの空気、スオウとノノミの間だけ凄く重たい空気が蔓延してる。ノノミに悪い人じゃないって言われてもスオウの話題なんて今まで出した事ないだろ。どう言えば良いんだこれぇ。

 

 「あ〜ノノミお嬢様、あんたとそのスオウさんって人はどう言う関係なんすか?」

 

 ナイスだ警備!良いパスをしてくれた!それがずっと気になってたんだよ俺は。

 

 「…スオウさんは、本来であれば私と一緒にハイランダー鉄道学園に入学する生徒で、私の護衛なんです」

 

 護衛か、ん?ハイランダー鉄道学園に入学予定だった?ならアビドスに入学することにしたなら一緒にアビドスに来ないのはおかしいんじゃ。

 

 「私はご令嬢がアビドスに入学した時から役目を無くし、ネフティスに忘れられたままハイランダー鉄道学園に入学した。ご令嬢にはその事を知らされなかったが」

 「じゃあなんでノノミお嬢様はスオウさんのこと護衛だって知ってるんすか?」

 「ご令嬢がここに来る道中で私を知りたいと言ったから教えた。ただそれだけだ」

 

 そりゃ気不味いわな、ノノミは知らなかったとしても護衛だけ別の学校に入学ってのは……居心地悪かったろうなぁ。

 

 「理由は分かった。俺が本気のホシノと戦えるよう場を整える。いつが良い?」

 「…出来るだけ早い方がありがたい、が、急かしはしない。万全の状態でなければ意味がないからな」

 「了解だ。取り引きは成立、ネフティスと他の組織が何をしてるのか教えてもらおうか」

 

 さて、砂漠横断鉄道に一体どんな魅力があるのか。事と次第によってはノノミには悪いが。

 

 −−−ネフティスとの全面戦争も視野に入れないとな

 





 「攻略法その3_英雄に十分な準備時間を設けさせない。事前に情報を得た所で時間がなければ対処は難しい。あなたの弱点はまさに…時間そのものでしょう?ヒヒッ、ヒッ……イヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒッ!」
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