成り変わりカイザー理事の奮闘物語   作:CoCoチキ

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百七十二話 どうやってひっくり返そうか

 

 【 リジー視点 】

 

 「まぁ、そうなるよな」

 「対策委員会の相手してカイザーコーポレーションの相手っての幾ら何でも無理っすよね」

 

 どちらか一方に集中してたらまだなんとかなってた可能性はあるが。この二つを相手するのはな。

 

 「これで終わりでしょうか?」

 「用意した戦力が、全て……」

 「まさかこれ程の強さとは……」

 

 対策委員会や俺とかヒナにぶっ飛ばされてるから弱いと思われがちだが普通に強いんだよなカイザーPMC。

 

 「いや、あり得ない。ネフティスがカイザーと手を組むなんて!」

 

 さて、理由によっては案外あり得るかもしれないぞ。例えば。アビドスを取り返そうとしてたり?

 

 「ほぼ不意打ちでアビドスの権利買い取ったからその報復っすかね」

 「お前も俺と同じ考えか。ネフティスにはそれなりに利益をくれてやった筈なんだがなぁ」

 「いや〜アビドスがまた賑わってきたからその分の利益が丸々欲しいとかじゃないっすか?前のセイント・ネフティスみたいに」

 

 そこまでは流石に考えたなかったな。お互いの利益になってる間は手出ししてこないと思ってたんだけど見通しが甘かったか。けどなぁ。あの爺さんと手を組んで良い思いが出来るとは考えられない。

 

 「スオウさん……!?」

 

 来た。

 

 隣に居る警備とまだ問題に首を突っ込むつもりはないと言うフリをして何でもない雑談をしつつ会話を聞く。

 

 「なっ……ま、まさか寝返って!?」

 「いいや、そうじゃない」

 「ぷ、プレジデント……?」

 

 本人が来るのかよ!カイザーコーポレーションの幹部級が出張ってくると思ってたのに面倒だな!

 

 「彼女は、もともとカイザーPMCに所属していた」

 「……昔の話だ」

 「行く当てのないあなたを誰が拾ったと!?まさか、恩を仇で返すとは……!」

 「誰が助けてほしいだなんて頼んだ?」

 

 なんか昨日より言葉が刺々しいなスオウ。やっぱいきなり連絡してきて良いように使われそうになったなら良い感情はないよな。

 

 「……ジェネラル」

 「大人しくしてもらおう」

 

 ジェネラルが指を鳴らすとゾロゾロと追加の戦力が入ってきてネフティスを無力化した後、私募ファンドと共に奥の方に連れて行かれた。

 

 「…海崎、君はどうするかね?」

 「私の事は無視かと思いましたよ。元社長?」

 「今更取り繕わなくても結構」

 「そうか、じゃあ俺も一緒に行かせてもらおうか。内容によっちゃ俺の話し相手があんたに変わるだけだ」

 

 いつでも銃を引き抜けるようポケットに手を入れながらプレジデントの後に続くように歩く。

 

 「ご苦労だったな。お陰で莫大な利益が得られたよ」

 「プレジデント、こちらが例の情報です」

 「ほう…列車砲……面白そうじゃないか。こんな素晴らしい物がアビドスにあるとは……なぜ、私に教えなかった?」

 

 カイザーコーポレーションに協力を持ち掛けた時点で情報は抜き取られてる可能性を考慮すべきだったなこいつらは。いつの間にか手駒を職員に紛れ込ませて逆らえないようにするから。

 

 「分析によると、類を見ないほど強力な非対称戦力兵器のようです」

 「「黒服」と連絡が途絶えてから、随分と経つ。新しい力を探していた矢先に、雷帝の遺産が見つかるとは」

 

 黒服の名前が出てきて一瞬ビクッとしたが。そりゃそうだよなウトナピシュテムの本船の事教えたのあいつだし。ってかまた知らない単語が出てきたな誰だ雷帝って…。

 

 「良いだろう、列車砲は我々の物とする」

 「なっ!」

 

 ここはもう口を挟んでも良い頃だろ。

 

 「ちょっと待て、プレジデント…その列車砲とやらも砂漠横断鉄道の施設に含まれるなら俺の所有物だろう?勝手に決めてもらっては困るんだが」

 「…それは尤もな話だ海崎、しかし、それは12時までにアビドス対策委員会が到着、更に彼女たちが契約継続の意思を示さなければいけない。違うかね?」

 「あぁ、合ってる。けどな例えば彼女らが契約を破棄したとして、所有権はネフティスと私募ファンドの物だ。今更カイザーコーポレーションが我が物顔で横取り出来るわけない」

 

 どっちにしてもカイザーコーポレーションに所有権が渡ることはない。さて、どう答える?

 

 「君は些か性急過ぎるな。海崎、会社のトップに立つ者として余裕を身に付ける事をお勧めする」

 「話を円滑に進めるために腹の探り合いを延々とし続けるよりは良いだろう?」

 

 特にプレジデントとは長々と話してるとこっちが不利になる。

 

 「ならば私も逐一説明するより答えを見せるとしよう。さて、私募ファンドの諸君、この書類にサインしてもらおうか」

 「こ、これは、買収だと!?ウチのタヌキダイスキ工業を……!?」

 

 ………そう来たか。

 

 「これが君の求める答えだ。満足したかね?」

 

 今の状況で私募ファンドはカイザーコーポレーションの提案を断る事は出来ない。それなら俺が買収するか?となるとそれもまた難しい。兵が警備しか居ない俺じゃカイザーコーポレーションより良い状況を出しても頷かせることは出来ない。まいったなこりゃ。

 

 「こ、んな横暴が許されるのか……!」

 「ふむ、知らなかったのなら教えてやろう。カイザーのエンブレムが「タコ」である理由は、それだけ多くの会社を従えているからだ。良かったではないか。これで今日から君たちは我々カイザーグループの一員になれる」

 

 今ここで大暴れして台無しにしても良いが。それだとプレジデントは強制的に契約を破棄して列車砲をモノにしようとする。我慢しかないか。

 

 「これで私募ファンドは我々カイザーグループの一員だ!あぁ、実に喜ばしいな。当然、代表権限も私の物になるわけだが、異論はあるかね?」

 「……いいや、ない。さっきも言ったが交渉相手がネフティスからカイザーに変わるだけだ。俺はアビドス対策委員会が来るまで待ってるさ」

 

 歯痒いな。先生のように奇策を出せない俺じゃあ現状打破の方法はホシノたちを待つ事しかない。

 

 「あとは正午まで守り通せば、列車砲は私の物に…他にも手段など幾らでもあるがせっかくなら活かさない手はない。ジェネラル、12時までアビドスを足止めしろ」

 「………」

 「…どうした。ジェネラル」

 「………」

 「…どう言うつもりだ?ジェネラル」

 

 ジェネラルは命令が聞こえてないかのように黙ったままそこに佇み続けた。プレジデントが少し苛立ち始めた。頃にあいつはプレジデントに向かって肩を竦めた。

 

 「申し訳ございません。プレジデント、その命令は承諾しかねます」

 「…なんだと?」

 「私はそこの海崎リジーとある契約をしていまして。勝手ながらカイザーグループの利益になると思い結んだ次第です。その契約内容の一部に私と私も部下が妨害しない事が条件にございますので。私はアビドスを攻撃できません」

 「……なぜ、私に教えなかった?」

 「カイザーグループの利益の為です」

 

 なんか流れ変わったな。プレジデントのやつ大分苛ついた感じでジェネラルを睨んでるし、杖を持つ手が怒りで震えてる。

 

 「…良いだろう。今はその事については置いておく。ならば私の代わりに足止めをしろと伝えてこい」

 「分かりました」

 

 ジェネラルがこの場を去ったから次の怒りの矛先は俺に向いた。

 

 「…やってくれたな。海崎」

 「何のことやら。契約を持ち掛けてきたのはジェネラルからだ。俺を恨むのは御門違いじゃないのか?」

 「…ふん、どちらにせよ。アビドスが来なければ君には何もできない。そこで大人しく見ているが良い」

 

 出来るだけ挑発して冷静さを奪いたいが。それでも勝ちを確信してるプレジデントの余裕を崩すのは無理だったか。

 

 −−−だが、チャンスはまだある。今はただ待つだけだ

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