「……」
戦意がなくなっているアリウス生徒の前に立つ。
「アリウス生徒諸君、俺は確かに復讐の先についてああ言ったが、復讐のやり方は色々とあるのだよ」
「…復讐の、やり方?そんなの、滅ぼす以外に何があるって言うの」
あ、これ本当になんにも知らないパターンだ。なんかご飯が食べれない苦しさとか言ってる子もいたし。
「それはな、幸福に生きることだ」
「…幸福に生きること?」
「そう。貴様らが腹を満たし、良く眠り、良く遊び、そんな幸せな日常を送ることが復讐となる!ゲヘナよりも幸せなんだぞ!と見せ付けてやれば良いのだ!」
だから殺しなんてやめましょうね?危ないんで。うん!……俺も人のこと言えないけど。
「でも、そんなの無理だよ。隙間風が多い寝床でみんなと身を寄せ合って、暖を取っても、次の日には隣で寝てた筈の子は冷たくなってるんだから。私たちは言われた通りのことを言われた通りにやることしか許されない。私たちのことを知らないからそんな無責任なことを言えるんだよ! Vanitas vanitatum et omnia vanitas!!マダムは全てが虚しいことだと言っていた!私たちに幸福な未来なんて訪れないの!!」
アリウス生徒の一人の手を引き立ち上がらせて俺は目を合わせる。
「うむ、だから責任とってキミたちアリウス生徒をうちで引き取ろうと思うんだけど」
「……ふぇ?」
「だから、キミたちアリウス生徒をうちの会社で引き取るって言ったんだよ。流石にアリウス本校に居る子たちはまだ無理だけど、今ここに居る子たちなら引き取れるし」
「……え?」
さっきまでの傭兵モードを解いて、素の口調で喋ると、ガスマスク越しでも分かるほどポカンとした顔をしていた。
「引き取るって……え?」
「なんだ?キミが言ったんだろ?無責任だって」
「そ、そうだけど…」
「うちは衣食住全部揃ってるぞ?証拠の品は、ほれこれうちの施設」
俺の携帯にどんな施設があるのかを見せたらそれを見てるアリウス生徒は驚きと困惑の声、それを見れてない生徒は必死に見ようと飛び跳ねたり肩車をしたりとか色々とやっていた。
「なにこのゲームセンターって」「猫カフェ?食堂と何が違うの?」「ふかふかの枕にふわふわの布団!」「見たことない食べ物がいっぱい」「水族館?水の族?」「見えないよー!」
待て、アリウス生徒はカレーも知らないか!?
「な、なぁ、この中で知らない食べ物はどれかあるか?」
「……パンとスープ以外全部!」
……最初の子が言っていたマダムとやらには話す必要がありそうだな。
「…うちにくれば好きなものを食べれるよ?もちろんアリウス分校にいるキミたちの仲間も一緒に」
「!!!…暖かい、寝床に、冷たくないご飯」
うん、なんか凄い泣けて来たんだけど。なんでこの子らこんな不幸な目に遭ってるの?
「…もう、隙間風で凍えながら寝なくて良いの?」
「流石にクーラーガンガンに掛けられたら普通に寒いだろうけど、そうだな」
「暖かいご飯もお腹がいっぱいになるくらい食べれるの?」
「おう、冷たい方が美味しい食べ物もあるぞ?豆腐とかアイスとか」
全員で詰め寄らないでくれガスマスクの子が一斉に詰め寄るのはある種のホラーだぞ。
「……学校にいる子たちも一緒に?」
「もちろん!だってキミたちを受け入れたのにそれ以外の子たちをを受け入れないことだって無責任だろ?こう見えて俺はお金持ちだし、土地もかなり余裕がある」
カイザー理事のせいでかなりの住民が出て行ったからな。
「キミたちはどうしたい?ゲヘナに銃を持って復讐するのか?それとも、引き金を引く以外で復讐をするのか。これはキミたちが決めるべきことだ。俺も嫌がる子を無理に引き取れないからな」
そう言うとアリウス生徒は俺に背中を向けてヒソヒソ会話し始めた。キミら意外と考えることできるじゃん。マダムの言うこと以外聞けない!とか言われたらどうしようかと思ったよ。
生徒のヒソヒソ話が終わったら、俺に色々と聞いてた子が俺の前に来た。この子が代表なんだろう。
「…決まったか?」
「…うん、私たち、行く…ううん!行きたい!もう冷たい寝床も、冷たいご飯も嫌だ!」
「…決まりだな、よろしく頼むよ。そうと決まればアビドス傭兵団!夜が明ける前に撤収!彼女たちを丁寧に会社に送り届けるぞ!」
「「「了解!」」」
俺は隠れて貰っていた傭兵たちに彼女たちをグループに分けてもらって別々のルートで会社に到着するように誘導してもらう。流石にこの人数の移動となると一斉にやるとバレる。
「キミたちの仲間のことも引き受けた!今は体を休めると良い!……」
「よっと、理事、お前ってやっぱお人好しだよな。悪役ムーブしてる時との温度差がすげぇよ」
「……そんなに?」
「おう!雰囲気がもうまるっきり違うぜ」
スピアに言われて考えてみるが。そこまで雰囲気変わってない気がするんだよな。俺は向こうでこちらを見てる先生たちに聞くことにした。
「なぁ、俺ってそんなに雰囲気変わってるか?」
「えっと、別人みたい」
「“そうだね。あなたの元の性格を知っていても圧倒されるかな“」
先生と聖園ミカの言葉に全員が頷いて同意した。
「う〜ん、俺はただ単に顔を使い分けてるだけだけどな」
−−−傭兵としての俺はそんなに威圧的か