俺は最初の頃に、アビドスの治安維持のためにアビドス中の傭兵を雇用した。そしてその規模はミレニアム、トリニティと地区を移動する度に噂を聞きつけた傭兵たちが集まってきた。理由は様々だった。「ただ暴れたい」「居場所がない」「楽に稼ぎたい」「評判を聞いたから」そんな彼女たちを俺は全員雇った。中には物好きだなとか言うのも居たけど関係ないな。結果としてちゃんと仕事をしてくれてるんだから。
「理事…いや、社長、今動ける傭兵は全員ここに来たぜ!」
「そうか、分かった」
俺は椅子から立ち上がり、彼女たちを見渡す。ほんと、目に付く全員を雇用していったから所属も色々だ。スケバン、傭兵、ヘルメット団よくこれだけの人数が集まったもんだと俺でも思う。
「…我が傭兵たちよ、まずはこうして集まってくれたことに感謝する」
今回は派手にやるつもりだからな。正直、カイザーPMC理事の肩書は今は邪魔だ。
「今日集まってくれたのは他でもない、ゲヘナとトリニティの不可侵条約についてのことだ。二日前の晩、知っている者もいるだろうが俺は先生に依頼をされた。そこでアリウス分校と言う学校が反対して強硬手段に出た。それをどうにかすることは出来たのだが、根本の解決になってはいない」
傭兵団のみんなはそれがどうした?と言う顔をしている者がほとんどだ。俺も、先生に依頼をされなければ目の前にいる彼女たちと同じ顔をしてただろうな。
「前置きはここまでだ。俺は条約が結ばれるその日、アリウス分校が何かをしてくると踏んでいる。そこで貴様たちにはアリウスの生徒たちを保護してもらいたい。もちろん手段は問わない、保護と言っても憎しみに満たされた彼女たちを無傷で捕まえるのは非常に難しい」
しかし、しかしだ。
「…同日、二日前の晩にアリウス生徒の子供たちが仲間になった。彼女たちは酷く怯えた様子だったよ。話を聞くと、寝床は隙間風の吹くボロ小屋」
「……」
何人かの傭兵が顔を顰める。
「食事はパンと冷え切った薄いスープ」
「……ッチ」
隣でスピアが苛立たし気に舌打ちをする。
「明日には隣に居た友が、物言わぬ冷たい屍に」
なんて腹立たしいことか。
「…俺はそれが非常に苛立たしい、聞けばこのような教育を行った存在がアリウスに居るらしい、アリウス生徒が教えてくれたよ。その存在の名は『マダム』とね」
いや、言い繕うのはやめよう。話を長引かせてしまうのは俺の悪い癖だ。彼女たちにはこんな長ったらしい演説は必要ない。
「俺はエデン条約が結ばれる時に起こる騒動を利用してマダムを殴りに行く!それはなぜか?俺が気に入らないからだ!貴様らは自分の心配をして好きに暴れて行動しろ!俺が許す!」
「っへへ!ようやく長ったらしい演説は終わりか!聞いたからお前ら!アタシらはアタシらのやり方で好き放題すんぞ!」
「「「「おぉ!!!」」」」
このビルに集めた物資を漁り、彼女たちは準備を進める。
「…けどよ。アリウスの生徒が心配なのは本音だろ?」
「あぁ、だからこそあんなふざけた教育、いや!洗脳をしたやつを許せないんだ!!」
「…ま、アタシもあいつらの境遇には同情するさ。殴りに行くんならアタシも連れてけよ」
珍しく怒った様子のスピアに俺は思わず質問をした。
「なんだ?お前はこう言うことには今みたいに同情することはあっても怒ることなんてないと思ったが」
「……昨日仲良くなったやつが居るんだよ。そいつの分の礼をたんまりとしてやらねぇとな」
「…なんだかんだ言いつつお前も気にしてるじゃないか」
俺にお人好しなんて言っておきながらちゃっかり仲良くなってんだもんな。
「うるせぇよ。アタシに友達居ても良いだろうが」
「いや、微笑ましいなと思っただけだ」
−−−そして俺は照れ隠しに殴られた。結構痛い